2013/04/26

東京私的演奏協会第104回演奏会(Sax:大石将紀)

"跡見学園女子大学マネジメント学部イシカワカズ研究室"なる団体?個人?が運営する演奏会に、サクソフォンの大石将紀氏が登場。無伴奏作品(1曲だけテープ音楽アリ)をずらっと並べた鮮烈なプログラム。

【東京私的演奏協会第104回演奏会】
出演:大石将紀(sax)、鈴木治行(operation)
日時:2013年4月26日 19:30開演
会場:渋谷区文化総合センター大和田4F大練習室
プログラム:
酒井健治 - Initial S
鈴木治行 - 句読点 III
鈴木治行 - Perception III
藤倉大 - SAKANA
江村哲二 - Intexterior No.9, Op.15

客席には、あまりサックスっぽい方がいなかったような(塩安さんぽい方をお見かけしたのだが)。みなとみらいでも聴いた「Initial S」は、大石将紀さんのみならず白井奈緒美さんの演奏でも聴いたことがあるが、お二人ほどのレベルまで到達してしまうと、あとは個性を楽しむべきなのだろう。誤解を恐れず言えば、大石さんは草書体、白井さんは楷書体、という印象を受けてる。今日の演奏は、残響がほぼ無い会場ではあったものの、素晴らしかった。

2曲目、3曲目は鈴木治行氏作品(作曲者臨席)。句読点シリーズに関するコンセプトが作曲者から話された。それによると、ある音楽の流れの中で異物を使ってその流れを断ち切る、という意思が働くフレーズやサウンドが多用されているとのこと。また、サクソフォンとテープのランダム再生のための「Perception III」も近いコンセプトを持っているそうだ。「Perception III」は、半偶然性も取り入れた面白い作品で、さらにサクソフォンとテープが互いに相反するものを奏で続けるというところも面白かった…というより、なんだか可笑しかった。

藤倉大氏のSAKANA。初めて聴いたときは何度か聴く機会があるうちに少しずつ解ってきたような。その繊細なダイナミクスのコントロールや、驚異的なまでに高速なフレーズなどから、さらに突っ込んだところに面白さを発見したい。曲と演奏が技術的・音楽的に高レベルすぎて、"解ってきたような"とはいえ上手くコトバに落とし込めないのだ。

最後に夭逝の作曲家、江村哲二氏のテナーサクソフォンのための無伴奏作品「Intexterior No.9」。1995年の所産。これがまたショッキングな作品・演奏だった。まるで日本版のクリスチャン・ロバ「ハード」といった趣で、ハードロックのようなビートや高速フレーズが、聴衆に大きな刺激を与えた。この作品、もともとは齋藤貴志氏に捧げられたとのことで、今となっては推測するしか無いが、おそらく江村氏は齋藤貴志氏を通じてロバの「ハード」もしくは他の作品を聴いたのではないだろうか。テナーサクソフォンの扱いとして「ハード」と類似するアイディアが各所に盛り込まれていた。いやあ、カッコ良かったなあー。気になる方は楽譜買ってみてください(Amazonで買える→江村哲二/インテクステリア第9番)。

それにしても、大石さんの演奏は、何度聴きに伺っても毎回新鮮な発見や驚嘆があり(今回は特に「Intexterior No.9」がそれにあたる)、そういった演奏家のコンサートにこそなるべく足を運びたいものだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿