2013/01/19

佐藤淳一サクソフォンリサイタル(奏楽堂デビューコンサート・シリーズNo.60)

昨年のドビュッシー・コンサートのときも、その企画の面白さと演奏の素晴らしさに感銘を受けたものだが、今回もまた非常に興味深い催しだった。

【奏楽堂デビューコンサート・シリーズNo.60 佐藤淳一サクソフォンリサイタル】
出演:佐藤淳一(sax)、菊地裕介(pf)、田野倉宏向(electro)
日時:2013年1月19日(土曜)14:00開演
会場:旧東京音楽学校奏楽堂
プログラム:
G.フォーレ/D.デファイエ - 幻想曲
C.ドビュッシー - ラプソディ(ヘンレ版)
M.ラヴェル/D.ワルター - ソナチネ
P.ブーレーズ - 二重の影の対話
G.グリゼイ - アニュビスとヌト
P.ジョドロフスキ - Mixtion

前半は、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルという、近代フランスを代表する華やかな作品たち。菊地裕介氏のピアノに乗った、佐藤さんの固有の暖かみのある音色が心地良い。フォーレの幻想曲は、なんとデファイエ氏によるアレンジメントということで、こんな楽譜があることを初めて知った。デファイエ氏の録音も、残っていないはずだ。ドビュッシーは最近話題のヘンレ版(ドビュッシー・コンサートでも経験済みだったため、改めて興味深く聴いた)、ワルター編のラヴェルは、まさにブラボーだ!

旧奏楽堂で奏でられるブーレーズ、というのも、なかなかオツなものだ。ライヴ演奏のパートにおいては、響きの少ない(しかし不思議と聴きやすい)ソロ部分、そして"影パート"においては完全な闇とはならず、カーテンの隙間から自然光がわずかながら入ってくる。現代のコンサートホールを想定して作曲されたこの名曲が、旧奏楽堂で奏でられるという稀な機会を楽しんだ。「アニュビスとヌト」は、バリトンサクソフォンによる演奏。この曲をバリトンで演奏されるのを聴いたのは初めてだったかもしれない。たぶん多くの方がそう思ったと思うのだが、改めて「アニュビス~」を聴くと、単音を軸に音楽を展開していくシェルシの作品との関連性を強く感じる。そもそも、グリゼイはシェルシに影響を受けてスペクトル楽派を創始したのであった。

ジョドロフスキの演奏も良かった。この曲のソロパートは、どちらかと言えばパリを思わせる大都会的な雰囲気よりも、少しラテン的要素や極東的要素が感じられる演奏のほうが面白い気が常々している。そのためか、ララン氏の録音は私の中ではスタンダードとなっているのだが…本日の佐藤さんが、どのように料理してくるのかとても興味があった。日本人的な感性を取り込んだ演奏は、実に説得力あるものだ。一部ペダリングによる事故(?)があったものの、音響パートも非常に満足行くものに仕上がっており(多面体スピーカーの効果もあるだろうか?)、こういった素晴らしい演奏で「Mixtion」が多くの聴衆に認知されるのは嬉しい限り、である。アンコールは、ラモーのコンセールを2曲(なんと菊地裕介氏はチェンバロを演奏)。

本日の演奏会を聴き、サブタイトルともなっている「フランス音楽・響きの潮流」について私なりに考えた結果は、後日ブログで書きたいと思っている。アンコールの前に佐藤さん自身の考えが舞台で話されたが、聴衆のみなさんは、演奏と併せてそれをどのように捉えたのだろうか。

3月には、トーキョーワンダーサイト本郷で、サクソフォンとエレクトロニクスの演奏会を開催予定とのこと。こちらも楽しみである。

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