2011/12/03

【復刻記事】ハバネラSQライヴ盤

ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット(BASQ)の演奏を聴いてこのCDのことを思い出した。2006年の4月の出版であり、ずいぶん前のことなのでブログ記事としても埋もれてしまっていたのだ。ブログというやつは日々の更新には便利だけれど、アーカイヴとしての機能は弱い…。5年以上前ということは、例えばいまの音大生の中にはこのCDの存在を知らない方もいるわけで、紹介の意味で再度記事を掲載する。

私がこれまで手に入れたサクソフォン四重奏のCDのなかでも、まちがいなく3本の指に入るものである。これを聴かずしてサクソフォン四重奏を聴いた気になってはいけない…というのは誇張表現だろうか。例えばクセナキス「XAS」やグラズノフの「四重奏曲」など、alphaレーベルからセッション録音がCDリリースされているが、こちらの録音を聴いてしまうと全然別物だ…もちろんセッション録音のほうが安定度や質といった面では上回るのだが、ダイナミクスやテンションなどはライヴ盤のほうがずっと上である。

理屈抜きにしたサクソフォン四重奏の興奮を味わうことができる。これって、高校生の頃、デザンクロの四重奏曲の第3楽章を初めて聴いた時の興奮に似ているな(笑)。超オススメ盤…だが、現在入手は難しいかもしれない。

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ハバネラ・サクソフォン四重奏団のCD「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。タイトルどおり、昨年5月に行われた第5回大阪国際室内楽コンクールの実況録音盤で、読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。

何回か聴いてみたが、うーん圧倒的。ハバネラは今までセッションレコーディングのCDでしか音を聴いたことがなくて、丁寧な解釈をして丹念に音楽を運ぶような印象が強かったのだが、この録音では異常なテンションの高さのせいかまるで別の団体のように聴こえる。しかし実際に聴き終えると、これぞハバネラサウンドであるという強いアイデンティティを感じ取ることができた。現代にあって演奏にアイデンティティを感じさせる奏者ってほとんどいないのだから、やっぱりすごい四重奏団なのだなあ。

一次予選のデザンクロからまったく手抜きなしの全力勝負。しかし気負いを感じることはなく、純粋に良い音楽を奏でようとする意思が秘められているようにも感じる。音程が良いとかバランスが良いとかは当たり前で、決められた枠の中で各々が主張をしながらアンサンブルが動的に組み上がっていく。三楽章なんか音を間違えてるしタテだってあまり合ってないのに、ものすごくうまく聴こえる…なんだこりゃ。しかもめちゃくちゃ速い(笑)。

ドナトーニや野平はいわゆる「現代作品」。ドナトーニの冒頭、四本のサックスが極小音量でそれぞれのモチーフを奏でるところなんかも、ありえないほどの安定性。対して野平作品ではCDの音が割れるほど鳴らす、異常なまでのダイナミクス。一本一本の音色はぜんぜん違うのに、ユニゾンではオルガンでも聴いているようなパワーだ、うーむ…。

最後に向かって華麗なaccel.を魅せるグラズノフの終楽章、今まで聴いたどんな演奏よりもカッコイイし、加えて品格を湛えている。爆速のエンディングを聴き終えたあとに残る高揚感が心地よい。ロマン派にありがちなトリルや装飾音を多用したフレーズも、ここまで自然に…まるで四人の他愛のないおしゃべりを聞いているようだ。グラズノフに続いて最後を飾るクセナキス「XAS」はもう凄すぎて何がなにやら。現代作品ではあるものの、音楽は常に淀みなく流れていく。

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