2011/08/13

上野耕路アンサンブル"Polystyle"

先週末に上野耕路氏のライヴを観に行ってノックアウトされてしまったのだが、その勢いで上野耕路氏のCDを買ってしまった。これがまたなかなか良い感じで…なぜ今まで入手しなかったのかと悔んだほど。昨日の帰省途上で、3回ほどループして聴いてしまった。

上野耕路アンサンブルという団体…上野耕路を中心とした、総勢16名からなる室内アンサンブルである。そのクレジットを見ると、上野耕路(pf.)、赤木りえ(fl.)、佐々木理絵(fl)、秋山かえで(cl.)、遠藤朱実(asax.)、石田裕美(tsax.)、矢島恵理子(bsax.)、田澤麻美(tp.)、古田儀左エ門(hr.)、増井朗人(tb.)、国木伸光(tub.)、東佳樹(mrb.)、石崎陽子(mrb.)、松永孝義(bs.)、鶴谷智生(dr.)、秋山久美子(vo.)…という感じで、これはまるで小編成の吹奏楽ではないか!純粋なクラシック・サクソフォン的興味としても、遠藤朱実氏や石田裕美氏が参加しており、注目盤と言えるだろう。バリトンサックスの矢島恵理子氏という名前は、クラシック方面ではあまりなじみがないが、どちらかというとジャズの方面を中心に活躍している奏者。

下記情報は、N2のサイトからコピペ。作品はもちろん、全て上野耕路氏作曲によるもの。
「Polystyle(VAP VPCC-81480)」
1.1979 5:52
2.Gyration 4:59
3.This Planet Is Earth! 6:24
4.Litost 6:24
5.Perpetuum Mobile 3:21
6.Rosa 4:42
7.Sledding 9:04
8.Histoire 5:55
9.Euforbia 6:59
10.Beguine Magnetica 2:05
11.Tropici Di Vetro2:55
12.La Maledizione del Faraone 5:36
13.Pieces of Dream 5:10

上野耕路氏流の"大衆音楽"が、まとまった形で眼前迫ってくるのは感激である。最初の「1979」というトラックから、上野節全開。演奏はなんともユルく隙だらけ(しかし技術的には超高度)、心が揺さぶられ・リズムに突き動かされるような響き。まぎれもなく、他にはありえないここだけの上野耕路氏の音楽だ。ちょっと言葉で書くのは難しいので、ぜひAmazonあたりで各曲の最初の30秒を試聴してもらって(→「上野耕路アンサンブル:Polystyle」)、ビビビときたら購入して頂きたい。

各ミュージシャンはそれぞれ非常に良い仕事をしている。とにかく音数が多いスコアだが、耳をすましてみると各奏者のセンス溢れる音がちりばめられているのが判る。先日のライヴにも出演していたトランペットの田澤麻美氏は、多彩な音色でバンド全体のサウンドをリードするし、フルートのお2人のサウンドの彩は、上野耕路氏の音楽になくてはならないものだ(と思う)。後半はヴォーカル入りの曲だが、秋山久美子氏の歌声の伸び、完璧な音程感覚は鳥肌モノ。外国語曲がちょっと舌足らずなのも、これはこれでアリなような。上野耕路氏の美しく・時にカッ飛ぶピアノについては言わずもがな。

そして、サックス隊も大活躍!まずバリトンサックスの矢島恵理子氏(先日のライヴにも出演)は、そのエッジの効いた音で抜群の存在感を示しており、曲に独特のビート感を与えている。遠藤朱実氏は、言い表すことのできない美音…妖艶な雰囲気担当なのかな?と思っていると、「Histoire」では石田裕美氏とともに怒涛の高速フレーズのソロも担当しており驚かされる(アルモSQでの立ち位置を思い出した)。この曲はクラシック・サクソフォン的には一番の聴きどころだろう。早いビートでも落ち着いた感じの遠藤氏と、妙にスリリングな(ミスも一か所。笑)石田氏のテナーサックスの掛け合いが面白い。

一番のオススメは「Euforbia」かな。7分と長めの曲のなかに、インスト・ピアノ・ヴォーカルの魅力が詰まっている。メロディも和声も美しい。その美しいメロディの裏で、サクソフォンを中心とした、管楽器が縦横無尽に駆け回るのも◎。全体的に録音はローパスフィルタを通したようなジャズバンドの古めかしい録音を聴くような雰囲気だが、それが合っているのかもしれないな。

セルフカヴァー曲多数。「Beguine Magnetica」は、ゲルニカ「新世紀への運河」のファーストトラック「磁力ビギン」である。「Gyration」(トマジの「協奏曲」をさらっている方からするとジラシォンと発音したくなるが、ジャイレーションと読みます)は、「電離層からの眼指し」からの「地球ゴマ」。「Tropici Di Vetro」「Pieces of Dream」は同じく、それぞれ「百華の宴」「夢の端々」。「太田蛍一の人外大魔境」からは「La Maledizione del Faraone」こと「ファラオの呪い」が収録。カヴァーとはいえ、全く違うアレンジがなされており、一聴しただけではわからない曲も。

ちなみに、ライナーの解説が面白い。英語と日本語で書かれているのだが、書いてあることが(内容はだいたい合っているのだが)全然違うのだ(笑)。これはぜひ読んでいただきたいところ。CDはAmazonから入手可能(→「上野耕路アンサンブル:Polystyle」)。

0 件のコメント:

コメントを投稿