【五人囃子】
出演:西田紀子(fl)、波田生(va)、坂口大介(sax)、岩附智之(perc)、津花幸嗣(accord)
日時:2011年6月17日(金)19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷・コンサートホール
プログラム:
Mark O'Connor - Appalachia Waltz
Johann Sebastian Bach - Italienisches Konzert BWV971
Dmitri Shostakovitch - from "24 Preludes and Fugues"
星谷丈生 - Harmonic Design 2
Astor Piazzolla - Tango Ballet
~アンコール~
Francis Poulenc - from "3 Novelettes"
「すべて発音体が違う楽器でユニットを組んでみた」とのことだが、実際にライヴで様々なアレンジやオリジナルを聴くにつれ、その面白さ&収まりの悪さを様々な側面から感じることとなった。緩徐楽章では、なんとなく集中して聴かせることの難しさがあるなあなどと思ったり、かと思えば、高速なソロの掛け合いのような楽章では、こんな面白い演奏は聴いたことがないぞ…!と思ったり。
ということで、特殊な編成では、演奏の巧さだけでなくやはりレパートリーが聴き手の充実度に繋がる割合が大きそうだ。そういう意味で、今日は特に後半の演奏に感銘を受けた。星谷丈生氏の委嘱作品「和声のデザイン2」は、バッハ「イタリア協奏曲」をコラージュしてさらに現代的な要素をふんだんに加えた作品。バロック作品のコラージュというと、なんとなくブルーノ・マントヴァーニの傑作「タイム・ストレッチ」を思い出したが、こちらの作品はもっと明確に原曲の姿が見える。すでにベテラン作曲家の域に達している星谷氏だが、貫禄のある濃密なスコア、そして演奏者たちの集中力の高い演奏は、本日の演奏会の白眉であった。
前半の「イタリア協奏曲」も同じく星谷氏のアレンジだったが、アレンジの気合いの割にはちょっと演奏のほうが追い付いていない気がしたかな。バッハは、いかに優しく美しい表情を持っていたとしても、現代的な作品よりずっと難しいと常々考えている。バッハに影響を受けたショスタコーヴィチの「プレリュードとフーガ」の緩徐楽章も然り。速い楽章は凄く良かったのだけど…。
ピアソラは期待通りのカッコ良さだった。ピアソラ自身のクインテットだって、よく考えてみるとごちゃ混ぜなイメージだよなあ。誰がアレンジを施したのかは分からなかったが、各楽器の特性をとても良く生かしてあり、ピアソラらしい音が飛び出したのにはびっくり。坂口さんはバリトンサックスでメインでベースを受け持っていたが、時に叙情的な旋律を吹くと、これがまた美しくて。
演奏者はみんな名手揃いだったが、フルートの方がとても良い仕事をしていると感じた。管楽器のなかで最も技術的に&音楽的に成熟されているのはフルートだと良く言われるが、このくらいの上手さが普通なのだろうか…。いや、それにしてもピッコロからアルトフルートまでをこの安定度で演奏してしまうのは魅力的だ。サクソフォン以外の方に、坂口さんの音色を聴いてもらえたのは良かった。楽器としても(やはり"サクソフォン"の存在感は圧倒的だ!)、坂口さんという奏者としても(坂口さんのテナーサックスは初めて聴いたが、キラキラとした音色がそのままテナーにも表出している)。
ということで、なかなか面白い演奏会でした。一回きりに終わらせず、ぜひ二回、三回と続けていくなかで、魅力ある演奏やアレンジ、オリジナル作品をどんどんと産み出していってほしいな。
星谷氏はああ見えても1979年生まれなので、若手作曲家の部類に入ると思います。(笑)
返信削除> yamamotoさん
返信削除おお!?なんですと!?
あのMCの落ち着きっぷりや作風から考えると、とても1979年生まれには思えませんでした…。たしかに、外見も貫禄がありますね。