2011/05/15

スロヴェニアのサックス作品集:Saksofonija

以前ブログ上で、スロヴェニアの国際サクソフォンコンクールのライヴ録音、というCDを紹介したが、そのCDと一緒にミーハ・ロギーナ氏と李早恵さんに送っていただいたのが、この作品集である。スロヴェニア産のサクソフォン作品を、スロヴェニア出身の奏者が吹いているという、オムニバス・コンセプトアルバム「Saksofonija(Edicije DSS 200550)」である。

Saksofonija / Saxophonia
Pavle Merkú - Charis II za baritonski saksofon solo (Matjaž Drevenšek)
Pavle Šivic - Suita za altovski saksofon in klavir (Betka Bizjak Kotnik)
Janez Matičič - Repliques za altovski saksofon in klavir (Betka Bizjak Kotnik)
Larisa Vrhunc - Leseni kamni za flavto, saksofon in klavir (Trio Slavko Osterc)
Peter Šavli - Zeppelin 2 za flavto, saksofon in klavir (Trio Slavko Osterc)
Ivo Petrić - Burleska za kavrtet in saksofonov (Zagreb Saxophone Quartet)
Janez Matičič - Kvartet za saksofone "Memory" (Zagreb Saxophone Quartet)

以下、作品や奏者について徒然なるままに書いていく。

CDを再生すると、突然聴こえてくるのがバリトンサクソフォンの独奏。5分弱の短い作品だが、端正な落ち着いた作品で、少しバッハの旋律線に似た弧を描いたりと、耳によく馴染む作品だ。ここで演奏を担当しているのは、ザグレブ四重奏団のバリトンサクソフォン奏者としても有名なMatjaž Drevenšek氏。以前ブログの記事にも書いたが、Drevenšek氏はスロヴェニアサクソフォン界最大の立役者と言っても良いだろう。それほどの人物であれば、CDの冒頭トラックを飾るのも不自然なことではないが、演奏も見事で驚いてしまった。音色はニュートラルで美しく、激しい跳躍、フラジオ音域だってなんのその。

続く「Suita」は、Betka Bizjak Kotnikという女流奏者による演奏。作品としては、やはりこれもすんなりと耳に入ってくる。特殊技法をそこそこ使ったりと響きは現代的なのだが、なぜだろうか。例えばフランスやドイツあたりの現代作品だと、聴くのも憂鬱になる作品だってあるくらいなのに。この曲に限らず、CDに収録されている作品のほとんど印象はすべてこんな感じだ。なにか、スロヴェニアの土壌のようなものがそうさせるのだろうか。「Repliques」は、先に紹介したコンクールの実況録音のファイナル曲として収録されていた。さすがにテンションの違いはあるものの、こちらの演奏も佳演と言えるだろう。

Trio Slavkoは、サクソフォン、フルート、ピアノの三重奏団体。「Leseni kamni(英語ではWooden Stonesと訳される)」は、この曲だけは点描的な響きで、まるで環境音楽を聴いているような感じ。ただ、点描的な音世界のなかに集中力が続くというよりも、終始柔らかい響きがスピーカーからは流れる。人を拒むような難解さはあまり感じられない。作品タイトル通りのSE(もしくはパーカッション?)の音も聴こえてきて、なかなか面白いと思った。「Zeppelin 2」は…うーん、こっちのほうがよほどよく判らない…。

最後の2曲は、四重奏作品。演奏は、おなじみZagreb Saxophone Quartetである。ここで面白いと思ったのは、Janez Matičič氏の作品。多面的なスタイルの音遊びに終始する曲だ。演奏は、突き放すような感じはなく、ずいぶんと親しみを込めている(変な言い方をすれば)一音一音を慈しむような感じさえ受けた。

全体を通してデッドな録音だが(まさかスタジオ録音か?)、もともと奏者が持つニュートラルな美しい音色で、CDのレコーディングとしてはほとんど気にならない。

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