2011/02/26

幡田賢彦「5本のバリトンサクソフォンのためのパラフレーズ」

幡田賢彦「5本のバリトンサクソフォンのためのパラフレーズ Paraphrase for 5 Baritone Saxophones」(以下「パラフレーズ」)をダッパーサクセーバーズのイエロさんからご紹介いただいた。昨年のダッパーサクセーバーズさんの定期演奏会のために委嘱された作品である。初演はグルリカン・サクソフォンアンサンブル。グルリカンとは…バリトンの一番「管」が「ぐるり」という形状をしていることから名付けられた造語である(うろおぼえ)。

この「パラフレーズ」は、クラシック・サクソフォンの古今東西の名曲を散りばめた作品なのである。委嘱に際して、グルリカンのメンバーより作曲者へ有名フレーズ集が渡され、作曲者はそのフレーズを自由にちりばめて作品を構成したそうだ。まずフレーズ集も見せてもらったのだが、例えばピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」、デザンクロ「四重奏曲」、デュボア「四重奏曲」、他にもパスカル、リヴィエ、フランセ、シュミット、リュエフ、サンジュレ、プラネル、ボザ…と、挙げていけばキリがないほど、その数なんと50。そんな名曲の名旋律を集めて書かれた作品…面白そうでしょ?

スコアと録音を送っていただいた。スコアとフレーズ集を対照して眺めると、なんとなくどこに何のフレーズが使われているかがわかる。が、いざ録音を聴いてみると、もとの音楽上で使われている印象はかなり除去されて、音型としてのみ聴こえてくるように書かれている。また、おそらくオリジナルのフレーズもいくつか組み込まれており、何も知らない人が聴けば、この曲の中にサクソフォン・アンサンブルの有名フレーズが含まれていることは気づかないだろう。

つまり、パロディ音楽として作られたわけではなく(アルモSQの「焚き火の主題による変奏曲」やフランセの「組曲」の第4楽章ように…)、あくまでもフレーズを基に"再構築"された音楽なのである。個人的には、思いっきりパロディの方向に走ってみた作品、というのも聴いてみたい気がするなあ。

最後に、この曲のプログラムノートを引用しておく。

Paraphrase for 5 Baritone Saxophones
この曲は「古今のバリトンサックスの名フレーズのみで1曲演奏してみたい!」との企画のもと作曲され、この曲の初演のために「グルリカン・サクソフォン・アンサンブル」が結成されました。デザンクロ、ピエルネ、リヴィエなどのちょっとしたフレーズが曲中の至る所にさり気無く配置されています。作曲者幡田賢彦プロフィール:山口県光市出身、日本大学芸術学部音楽学科作曲コース卒。学部長賞受賞、第80回読売新人演奏会に出演。

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