2010/09/16

ギャルド復刻CDの復刻環境について

今回、グリーンドア音楽出版から発売されたギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の復刻CDについて、これまでも何度か書いているが、復刻環境をまず説明しておきたい。

復刻技術の全面的な監修を行ったのは、おなじみ木下直人さんである。世界でも指折りの"ギャルド研究家"でありそのコレクションの数には定評がある。単純に音盤のみの収集にとどまらず、その音盤を再生するための装置についても情熱を注ぎ、長期に渡る試行錯誤の末に完成したシステムが、今回の復刻に使用されている。

SP再生装置の中核をなすのが、ピエール・クレマン Pierre ClementのSP用カートリッジ"L5"である。このPierre Clementのシリーズは、1950年代から1960年代にかけて、フランスの主要な放送局やレコード会社で使用されていた。このカートリッジを利用することで、1950年代のフランスで鳴っていた音を忠実に引き出すことができるというわけだ。実は、単純に中古を購入しただけではダメで、ダンパー(針を支えるゴム)が古くなっている状態から工夫して修理を行ない、なんとか利用できる状態へと復帰させたということも伺っている。

ノイズは未処理。こんにち発売されている多くの"復刻盤"と名が付くCDは、ほとんどにデジタルの音響処理が施されていることと思う。確かに、ノイズリダクションの技術は年々進歩しているが、何かしらの処理を加えるということは即ち、原音にも変化が加わってしまうということになる。ダイレクトカッティングされた音で、確かにノイズは多いのだが、それ以上に吹奏楽のその音がはっきりと、クリアに聴こえてくる。

いつだったかこのブログでも書いたが、木下さんが行っているのは、単純に音を取り出すことではなく、当時のAtmosphéreを現代へと蘇らせる…"芸術の復刻"と呼ぶに相応しい仕事だと思う。この素晴らしい復刻を、ぜひ多くの方に聴いていただきたい。CDの詳しいレビューは、また今度。

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