2010/06/30

ダヴィッド・ワルター氏のマスタークラス

急遽情報を仕入れて、アクタスまで聴きに行ってきた。いくらサクソフォン吹きの私でも、オーボエ奏者ダヴィッド・ワルター David Walter氏の名前くらいは常識として知っている。パリ国立高等音楽院教授、モラゲス木管五重奏団のオーボエ奏者として、世界の第一線で活躍中のプレイヤーであり教育家だ。

1人目の受講生は、ベンジャミン・ブリテンの「6つのメタモルフォーゼ」を演奏。物語を湛える曲だけに、ストーリーに即した場面転換のことについて多く言及していた。物語が変わる瞬間の、間合いの取り方やイントネーションの変え方など。「あなたが求められることは、音楽を使って聴衆にストーリーを伝えることです」と。5曲目の「Narcissus」などは、ワルター氏が身振りをしながら受講生が曲を吹くと、現実と鏡面世界の差がよりくっきり表れるように思えた。

2人目の受講生は、バッハの「協奏曲ヘ長調」を演奏。一部音程の不安定さについて、かなり容赦無いツッコミが。不安定な音程をヴィブラートでごまかそうとするとさらに音が崩れていくことを指摘し、お腹の支えをステーブルにし、ストレートな音で練習することを心がけることを再三にわたって口に出していた。一瞬でもいつもの癖が戻るようなら、「いまなぜ戻った?」と、、、怖っ。自分の中で出来てしまっているクセを打ち消すように、頭をつかった練習をとのことです。

オーボエを久々にキチンと聴いた印象。受講生お2人とも、有名な音楽大学を卒業された方だったが、弱音のコントロールや、音程の支えなどに明らかな問題が聞き取れた。素人目に聴いてもそうなのだから、オーボエという楽器って難しいんですねえ。ワルター氏のコントロールは、相当洗練されたもの。空気に溶けて消えていくオーボエの弱音だなんて、初めて聴いたよ…。

それから、ワルター氏、いろんな物事に対して明確な「説明」を求めていた。答えられない受講生タジタジ…なんだか聴いてるこちらまで気まずい雰囲気になっちゃっいました(´・ω・)笑。これも人事ではなくて、普段から音やフレーズ一つ一つに具体的な説明を持って演奏しないと、ダメだということだと思う。「ここは何をイメージして吹いていますか?」とか「ここのフレーズで一番大切な表現は何ですか?」と訊かれたときに、即答できるようではないと、たとえアマチュアとはいえ、音楽などできないのかもしれない。

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