2010/01/18

Miha Rogina Saxophone Concert

昨日は、ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏の演奏会を聴きに行ってきた。たしか初来日が2005年、フェスティバルでハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏し、日本のサクソフォン界に大きな衝撃を与えたのが2007年のフェスティバル。その頃から考えると、ロギーナ氏、そしてデュオのパートナー、ピアニストの李早恵氏の名前もすっかり有名になったと思う。この日の演奏会も、音大生らしき人たち、プロの人たちがたくさんいらっしゃっていた。

【Miha Rogina Saxophone Concert】
出演:Miha Rogina(sax)、李早恵(pf)
日時:2010年1月17日(日)14:00~
会場:アクタス・ノナカ・アンナホール
プログラム:
Paul Hindemith - Viola Sonata in F
Maurice Ravel - Sonatine
Piet Swerts - Klonos
Lucie Robert - Cadenza
Sergei Prokofiev - Sonata, op.94
Giacomo Rossini - Figaro Paraphrase

国内でもおなじみのレパートリーがたくさん演奏された。なんとなくディナンのアドルフ・サックス国際コンクールを視野に入れている印象を受けるのは、気のせいではないだろう。

アンナホールという狭い会場、状態が良いとは言えないピアノ、特別寒く感じる気候(ホール内も寒い!)と、コンサートとして決して良い条件ではなかったのだが、飛び出してきた音楽は驚異的だった。ヒンデミットの冒頭、最初のテーマが演奏された瞬間に、これは素晴らしいと。これだけ小さい会場で、サクソフォンという楽器でここまで安定し、自身に充ち溢れた演奏など、聴いたことがない。

ロギーナ氏のサクソフォンは驚異的なコントロールで、サクソフォンとしてはとっくに日本人の想像を突き抜けてしまっており、それどころか「クラシックの室内楽」の領域に踏み込んでいると感じた。李早恵さんのピアノは、あのアンナホールのピアノから、驚くほどの多彩な音色と音の形を引き出していた。いつもと楽器が違うのではないか?と思ったほどだ。このレベルは、棚田文則氏のピアノを聴いて以来か、いや、それ以上だろう。

そんな、それぞれの楽器でできることなど、とうに突き抜けてしまっている二人が、実に息のあった演奏を繰り広げているのだ。ヴィオラ・ソナタのような決め決めの曲でも、もともとピアノ独奏のために書かれたラヴェルの「ソナチネ」でも、デュオなのに、まるでひとりの奏者が奏でているかのような、一体感。聴いて楽しくないはずがない。

休憩直前のクロノス、そして休憩後に演奏されたロベールはすごかったなあ。ロベールなど、ホールでは収まりきらないほどの、会場を揺るがすようなテンションで演奏された…と思ったら、なんと演奏後に地震が…(笑)いちばんびっくりしていたのは、ロギーナ氏自身のようだったが。

プロコフィエフは、ロギーナ氏が演奏家としてライフワークとしている「ヴァイオリン作品のアレンジ」というジャンル。さすがにすべてがすべて、ホンモノのヴァイオリンを聴いている風にはいかないかも、と思っていたのだが、これも素晴らしかった。ヒンデミットがそうであったように、ハチャトゥリアンやプロコフィエフも、徐々にサクソフォンのレパートリーとして確立されていくことを予感させる演奏だ。

ロッシーニと、最後に演奏されたリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」は、超絶技巧の嵐。クラシックの端正さのみならず、最後はこのようなエンターテイメント性も感じさせてくれるのは、やっぱりサックス吹きだからだろうか。会場も大いに湧いていた。

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