2010/01/25

Lament on the Death of Music

さて、どこから紹介したものか。Amherst Saxophone Quartetという名前は日本ではほとんど知られていないし、この刺激的なアルバムタイトルが気になる方もいるだろうし、あの「チェンバー・シンフォニー」を切り口にしてもいいし…。そもそも、買ったきっかけすらも、とっくに忘れてしまった。きっかけは「チェンバー・シンフォニー」かなあと思ったのだが、たぶん日本で同曲が流行るよりも前に買っていると思う。

Amherst Saxophone Quartetは、ニューヨーク大学州立大学バッファロー校のメンバーによって1978年に結成されたサクソフォン四重奏団。ニューヨーク州立大学というと、サクソフォンの世界ではバッファロー校よりもラッシャー派の本拠地とも言うべきフレドニア校のほうが有名だ。だが、この四重奏の構成メンバーは、経歴を見てもラッシャー派とは縁がなさそう。と思いきや、このCDの録音時点(1998年)では、アルトのメンバーのみを入れ替えて活動しているようで、そのRuss Carereというメンバーは、フレドニア校の出身なのだそうで。だが、やはりラッシャー派のプレイヤーに師事したという経歴は見つけられなかった。

Salvatore Andolina, soprano saxophone
Russ Carere, alto saxophone
Stephen Rosenthal, tenor saxophone
Harry Fackelman, baritone saxophone

そのアムハーストQが、同時代の作曲家の作品に取り組んだCD「Lament on the Death of Music(Innova 516)」。この不可思議なアルバムタイトルは、1曲目の作品名をそのまま持ってきたものである。

Leila Lustig - Lament on the Death of Music
Chan Ka Nin - Saxophone Quartet
Anita D. Perry - Quartet for Saxophones
Andrew Stiller - Chamber Symphony

この作品リストを見ると、ちょっとサクソフォンをかじったことのある方ならば、「あ!」と思うだろう。そう、なんと、アンドリュー・スティラーの「チェンバー・シンフォニー」が収録されているのだ。国内では、雲井雅人サックス四重奏団の演奏とCDによって一躍有名になった作品。第2楽章の旋律に心奪われた方も多いのではないだろうか。雲QのCDが発売されたのは2004年か2005年頃だから、それよりも6年ほど前に、すでに同曲を取り上げたCDがあったということになる。

一曲目は、なんとソプラノ(声楽)とサクソフォン四重奏のための作品。怪しさ満点の作品だが、一線超えたものを表現しようとする雰囲気が伝わってくる。美しく、艶やかで、そしてちょっと恐ろしい曲。最初のネリフが、「Music died yesterday.」ってねえ…。二曲目は、たくさんのリズムやハーモニーが織り込まれた作品。一曲目も二曲目も聴きやすく、また、自分たちで吹いたとしても、アピール度は高いのではないかな。

三曲目と四曲目は、巷の"新"古典主義作品がしっぽを巻いて逃げ出すほどの、"新しい"作品だ。外見上はアレグロ~アンダンテ~スケルツォ~フィナーレという、ハイドンあたりとまったく違わぬ構成を持ちながら、飛び出してくる音楽は実験的、かつ刺激的。ただし、ゲンダイオンガクにありがちな不協和音や歪んだリズムのようなものは出てこなくて、あくまで古典的な和声の上で構築されたものだ。どちらも、非常に聴く価値のある音楽だと思う。

私は「チェンバー・シンフォニー」はこのCDで慣れ親しんでいたため、個人的にはこの演奏がスタンダードだ。演奏のレベルは大変高く、技術的な不安を感じるどころか、柔軟な音色と良く練り上げられたアンサンブルで、作品の魅力を軽々と引き出すまでに至っている。惜しむらくは、やや録音が悪いことか。InnovaらしいといえばInnovaらしい、ちょっとこもったあの感じそのまま。

探してみたところ、Amazonで買えるようだ(→Lament on the Death of Music)。

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