2009/10/26

La Escapada

なぜか、Molenaar EditionのことをMoleneer Editionと覚えていた…どこで間違えたんだろう。それはさておき、ジュリアン・プティ氏のアルバム第4弾。この記事で最後となる。

「La Escapada(Lyrinx LYR230)」という、サクソフォンとピアノで演奏されたアルバム。収録曲は、ファリャとかアルベニスとか、実にまっとうなクラシック音楽の小品たち。なのに、ジュリアン・プティという音楽家のすごさを知るには、このCD一枚だけでもこと足りてしまう。正攻法でいて、しかしそのベクトルがはるか雲の上に突き抜けてしまった、素晴らしい一枚。

普遍的なこと、普通であることを突き詰めていくのって、とても難しいと思う。北極星に向かって大砲を撃つようなもので、初速が足りなかったり、ほんの少し発射角がぶれてしまえば、最終的な狙いは目的地から外れたところになってしまうのだ。さまざまな条件が完璧である場合にのみ到達し得る境地…。

M.de Falla - La Vida Breve
M.de Falla - Suite populaire espagnole
H.Villa Lobos - Fantasia
I.Albeniz - Suite espagnole
F.Millet - La escapada

基本的にソプラノサクソフォンで演奏される。一曲目から、ファリャの「はかなき人生」のメロディがゆたかな弧を描く。上質で、耳当たりの良い澄んだワインのような音色が心地よい。技術的な難所であってもすらすらと進み、音色・音程はまったく破たんしないのは、見事というほかない。

ヴィラ=ロボスの「ファンタジア」を聴いている。隅々にまで神経が張り巡らされて、一音一音を、ここまで生き生きと演奏することが可能なのか!という驚き。音符ひとつを取り出したとしても、なんだか勝手に動き出しそうだ。高い技術は、みずみずしい音楽ただそのためだけに使われている、理想の形。

あー、自分のボキャブラリーが貧困なのが悔やまれるが、これは聴いてみてくださいとしか言えないなあ。vandorenscoresなどで買えるはずなので、お持ちでない方はぜひ。

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