といっても、アルトサクソフォンの「バラード」ではなく、テナーサクソフォンのための「バラード」の話。
スイスの作曲家、フランク・マルタン Frank Martinは、ジュネーヴ音楽院にゆかりの深い作曲家。バロック~古典のジャンルに傾倒したのち、指揮者エルネスト・アンセルメに影響を受け、近代の印象主義へと自らの音楽創作をシフトしていった。「近代の印象主義」といっても、たとえばドビュッシーの全体を通した浮遊感とか、ラヴェルの古典+オーケストレーションとか、そういう音楽ではなくて、どこか厳格な雰囲気を漂わせるなかに12音音楽をはじめとする新しい響きを織り込んだ、そんな作品が多いと思う。そんなにたくさんの作品を聴いたわけではないけれど…。
サクソフォンのための作品は、シガード・ラッシャー Sigurd Manfred Rascherに捧げられたアルトサクソフォンとオーケストラのための「バラード(1938)」と、テナーサクソフォンとオーケストラのためのバラードを作曲している。特に、アルトサックスの作品はメジャーですね。しょっちゅう国際コンクールの課題曲にもなるし…。
テナーサクソフォンのための「バラード」は、もともとはトロンボーンのために書かれた作品であるが、作曲者自身の意向により、テナーサクソフォンのためのヴァージョンも同時に出版されているというもの。アルトサックスの「バラード」と比べると、さすがに飛び道具的な派手さには欠けるものの、実に渋く厳格な"いぶし銀"的な作品であり、間違いなくテナーサックスにとって重要なレパートリーであると思う。高テンションのまま、たった8分で最後まで駆け抜けるというのもいいですね。コンパクトにまとまっていることも、この作品を佳作たらしめている理由だと思う。
大阪市音楽団の青木健氏のCDで、ピアノとの共演ながらなかなか気合いの入った演奏を聴くことができる。値段的にもお求め安く、他の収録曲も楽しく(スパークの「パントマイム」とか)て、テナー吹いている方には積極的にお勧めしたい。たしか、オーケストラと共演したLPもあったっけな(演奏者の名前失念)。CD化されているはず…。
テナーサクソフォンのバラードはDetlef Bensmann氏の演奏が独Kochから出ていました。
返信削除奏法・音色は苦しい・・・の一言なのですが演奏全体は一貫したムードがあって独特の魅力がありましたね。難しいわりに演奏効果のあがりにくいアルトのバラードより魅力的な曲のような気がします。
> donaxさん
返信削除思い出しました!そういえばそんな名前の方だったような。ジャケット写真だけは覚えていたのですが、ようやく一致しました。ちょっと探してみようかなあと思います。
> アルトのバラード
たしかに、地味といえば地味かもしれませんね(^^;
ただ、最終部のフラジオの煽りの、なんといいますかとてもヒロイックな感じは興奮しますねえ。