2009/10/29

Abato plays Façade

これも、島根県のF様に送っていただいた。ウィリアム・ウォルトン William Waltonの「Façade」は、イギリスの女流詩人エディット・シットウェル Edith Sitwellの詩に、ウォルトンが音楽をつけた作品。私にとっては「Façade」というと、どうしてもあの驚異的なシカゴ・プロ・ムジカの演奏(DONAXさんによるレビューはこちら)を思い出してしまうのだが、ここで演奏されているのは歌い手にHermione GingoldとRussell Oberlinを迎え、もとの詩をつけたバージョンである。演奏メンバーは、以下。

Thomas Dunn, conducter
Hermione Gingold, voix
Russell Oberlin, voix
John Solum, fl
Theodore Weis, trp
Charles Russo, cl&bscl
Vincent Abato, sax
Charles McCracken, vc
Harold Farberman, perc

シカゴ・プロ・ムジカ盤の演奏に慣れていると、どうも他の演奏を聴けなくなってしまうのが苦しいところだが(あの演奏の前においてはやむを得ないか笑)、雰囲気という点ではいかにも"エンターテイメント!"という趣に仕上がっており、ひとつの完成されたアルバムとして大変価値あるものだと思う。

男声パートであるRussell Oberlinの「アメリカン・エンターテイメントの一番美味しいところを持ってきました!」的な語り口は、これはもうある意味音楽や娯楽の「公理」みたいなもので、そのことについて文章として起こすのが憚られるほどの普遍的な楽しさを持っている。アバトのサクソフォンが、また良い味を出しているのだ。語りの2人と、インタープレイ的にアンサンブルを繰り広げるTango-Pasodobleなど、じっくり聴いてみると、その豊かな音楽にぞくぞくする。

完璧さを追求したシカゴ・プロ・ムジカ盤、楽しさを追求した本盤、という住み分けで聴くと、それぞれの良さが際立ってくるかもしれない。どちらが良いかは、お好みで。

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