2009/06/27

Erland von Kochの作品集

ノルディックサウンド広島で買ったCD、その2。

スウェーデンの作曲家、エルランド・フォン=コック Erland von Koch(1910 - 2009)の名前は、サクソフォン作品を多く手がけていることをきっかけに知った。一番最初は、たしか「サクソフォン協奏曲」のことを調べていて、探してみるとウェブ上の情報も多く、けっこうメジャーな作曲家なのだなあという認識に至った次第。

サクソフォンの作品としては、以下の19作品がリストに挙がっている(A Comprehensive Guide to the Saxophone Repertoireより)。ずいぶん多く書いているなと思ったら、シガード・ラッシャー絡みで多く作品を献呈しているようだ。有名なものとしては、「サクソフォン協奏曲」が筆頭ではないかと思うが、モノローグ・シリーズの一曲「Monolog 4」、四重奏としてはラッシャー四重奏団が「Miniatyrer」を頻繁に取り上げたり、ラージアンサンブルでは「モデラートとアレグロ」なんかもかなりメジャーではないかと思う。

作品名 (作曲年 - 編成)
Apocalyptic (? - S)
Melodietta (? - SATB)
Vision (1950 - A, orch)
Concerto (1958 - A, orch)
Danse No.2 (1967 - SA)
Miniatyrer (1970 - SATB)
Monolog 4 (1975 - A)
Concerto piccolo (1976 - S+A, worch)
Saxophonia: Concerto (1976 - SATB, worch)
Dialogue (1977 - SA)
Bagatella virtuosa (1978 - A, pf)
Cantelina (1978 - Bbsax)
Cantelina e vivo (1978 - SATB)
Moderato e Allegro (1981 - SSAAAATTBBBs)
Melos (1983 - ?)
Rondo (1983 - A, orch)
Birthday Music for Sigurd Rascher (1987 - AA)
Sonata (1987 - A, pf)
Danse No.2 (1994 - SATB)

で、そのフォン・コックの作品集がこれ。アナログ録音の復刻を含む5作品が収録されている「Erland von Koch Saxophone Concerto(Phono Suecia PSCD55)」。「サクソフォン協奏曲」の演奏は、もうLegendary Saxophonists Collectionで持っているので、買おうかなー、どうしようかなーと迷っていたのだが、ノルディックサウンド広島の店頭で聴いて、これは買いだ!と思ってしまった(笑)。「サクソフォン協奏曲」もさることながら、ほかの曲が大変良いのですよ…これは嬉しい驚きだ。

ノルディック奇想曲 Nordiskt capriccio
スカンジナヴィア舞曲 Skandinaviska danser
サクソフォン協奏曲 Saxofonkonsert (soloist: Sigurd Rascher)
スウェーデン奇想的舞曲 Svensk Dansrapsodi
性格的小品 Karaktärer

一曲目、ティンパニのリズム連打から始まる「ノルディック奇想曲」からやられてしまう。躍動感溢れるリズム、民族音楽の影響を受けた親しみやすいメロディ…まるで映画音楽かNHK大河ドラマかと思わせるような壮大な音世界。太陽の光が海面にキラキラ反射して光る中、風を受けてフィヨルドの上空を飛翔するような錯覚(なんだそりゃあ)に陥る。この6分30秒の曲から、ここ最近は感じていなかった、音楽を聴いたときの理屈抜きの興奮を味わうことができた。これはぜひ誰しもに聴いていただきたい!

他の曲も、どれしもがそんな感じで、17分間に渡って様々な楽想が交錯する「スウェーデン奇想的舞曲」も楽しいし、ヴァイオリンとピアノによる「性格的小品」は、宝石のような粒ぞろいのショウ・ピース。いずれの作品からも感じられるのは、民謡のエッセンスであるが、実際に民謡のメロディを引用した曲は一つもないとのことであるから、驚き。フォン=コックは民族音楽の宝庫と呼ばれるスウェーデンのダラーナ地方に長期間にわたって滞在し、その中で民謡のエッセンスを身に付けて、自身の楽曲のメロディを「作曲」したのだそうだ。

サクソフォン協奏曲は、これらの曲の中にあっては、やや地味な印象を受ける。このウェブページの紹介では「新古典主義」と表現されているが、まさにそんな感じだろうか。共通した楽想を持つ曲と言えば、あっ、ラーシュ=エリク・ラーションの「サクソフォン協奏曲」だ!!第1楽章のスタイルがありえないくらいに似ている、というのは先日のブログ記事でも書いた。そんなわけで、ラーションの協奏曲が好きな方にはけっこうオススメできるかもしれない。独奏パートを担当するラッシャーの、果てしない名人芸を堪能できるという意味でも。

以上、サクソフォン以外の点でもオススメできるCDである。曲が良い上に、演奏も録音も一級品なのだから…。お求めはノルディックサウンド広島でどうぞ(笑)。

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