2009/02/23

Vent de Sax

Alphonse Leduc、というかRobert King, Inc.からダイレクトメールが届いて、何だろうなと思っていたら、新しい楽譜シリーズ発売のお知らせだった。「Vent de Sax」という、フランスの作曲家の新作を中心に取り上げたコレクション。ちょっと解説を読んでみよう。

これは、すべてのレベルのサクソフォン奏者のためにリリースされた、楽譜コレクションです。「Vent de Sax」では様々な作曲家の多様な作品を取り上げましたが、それらに一貫して言えるのは、今日サックス界で注目の的となっているタイプの音楽だ、ということです。/本コレクションは、まさにフランス音楽界のポートレイトだと言って良いでしょう。コンサート、フェスティバル、テレビなどで聴かれ、内容もセリーから、ジャズ、スペクトラル、ミュージック・コンクレートまで様々です。もちろん、即興を含むものもあります。/表紙の色が、楽譜のレベルを表しています(易しい←黄、青、赤、黒→難しい)。
ナンシー地方音楽院教授 Claude Georgel

ということで、新作の楽譜集なのだが、内容がかなり面白そうだ。フラグシップとなる編成は、「Saxophone et dispositif électroacoustique (avec CD)」ということで、つまりサクソフォンとテープまたはエレクトロニクスのための作品なのだ!以下、初期リリースのリストである。

Claude Barthélémy
- Le Dos des caïmans
- Gazebo
- Okawati's
- Ubud
Tomás Gubitsch
- ...And yet
- Des bords déments
- Clair-obscur
- Pour mémoire...
Jean Claude Risset
- Diptère
- Distyle
- Reprises
- Rumeur
- Saxatile
- Saxtractor
François Rossé
- Kanente
- Prélude à Kanente

ここまでが、すべてサクソフォンとエレクトロニクスのための作品。トーマス・ギュビッチという作曲家の名前は聴いたことがないが、プログレも演奏してしまうギタリストしての顔も持っているそうで、公式ページからたどれる作品は、なかなか面白い。これは、期待できそうだ。他の編成の作品は、次の通り。

François Rossé
- Jonction (Saxophone and Piano)
Claude Georgel
- Aiguille rouge (Saxophone Solo)
- Rivage pâle (Saxophone Solo)
Betsy Jolas
- Allô (Saxophone Duo)
- Oh là (Saxophone Duo)
- Scat (Saxophone Duo)
- Walking ground (Saxophone Duo)
Georges Aperghis
- Jeu à quatre (Saxophone Quartet)
Jean Louis Chautemps
- Carré de quatuors (Saxophone Quartet)

四重奏としてリリースされた作品の作曲者は、二人とも名前を知らない…。ベッツィー・ヨラスは無伴奏テナーのための「エピソード第4番」等で有名ですね。フランソワ・ロセは言わずもがな。

さて、この「Vent de Sax」だが、標準編成の作品群ももちろんだが、サクソフォンとエレクトロニクスという編成になるCD付きの楽譜が、とにかく面白そうだ。今まで、こういったサクソフォンとエレクトロニクスの作品を演奏しようとするときは、楽譜は大手出版社から出ているケースが多いものの、演奏に必要な肝心のエレクトロニクスパートの入手に関しては、直接作曲家にコンタクトしなければならない場合がほとんどだった。この状況は、サクソフォンとエレクトロニクスの作品の演奏の敷居を高め、ちょっと興味のある奏者がエレクトロニクス作品に取り組む際のハードルを上げていた。

だが今回リリースされたコレクションは、そういった状況を打破する可能性がある。なんせ、最大手と言っても過言ではないAlphonse Leduc社からの出版であり、しかも楽譜にエレクトロニクスパートが添付されているのだ!なんと、すでにアクタス等でも取り扱いを開始しているようである。買って、練習して、とりあえずラジカセでエレクトロニクスパートをかければ演奏できてしまう、というお手軽さが良い。もしかしたら、作品の中にはマイクやコンピュータが必要なのもあるかもしれないが…。

あとはあれだな、実際に作品が「面白い」かどうかということ、そして、できればこのコレクションを収めたCDをリリースしてほしい、というところが課題ではないだろうか。これらのリストの作品としての面白さは、このシリーズに作品が増えるかどうかに関わってくると思うし、CDは興味を持つきっかけとしての意味が大きくなるのだろう。

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