2009/02/03

藝大院の学位審査会

「平成20年度東京藝術大学大学院音楽研究科(修士課程)学位審査会公開演奏会」の最終日、管打楽器のセクションのうち、サクソフォンの演奏者は3名、10:00より30分ずつの持ち時間で各人が2曲を披露した。公開審査ということだったが、ぱっと見50人以上の聴衆が集まっていた。関係者が多かったかな?客席後方には、おそらく管楽器科の教授陣・講師陣である先生方が着席し、審査を行っていた。

石橋梓
E.デニゾフ - ソナタ
J.イベール - コンチェルティーノ(1920年代のアドルフ・サックス社製楽器を使用)

ピアノは羽石道代さん。デニゾフは、とてもスタイリッシュな演奏だった。ピアノとのアンサンブルの面でもかなり精度が高く、とても楽しめた。大好きな曲だが、実演を聴くたびにはっとさせられるなあ。こういう音楽を、いったいどのように着想するのだろうか。
イベールは、遠目で見ても非常に状態の良い古楽器を使用して演奏された。デニゾフと比較して、ヴィブラートを深めにして演奏しているように聴こえた。音色は、確かに現代の楽器とはかなり違うもの。演奏はどうなることかと思ったが、コントロールや音程の破綻は殆どなく、純粋に音色の美しさとイベール独特の軽やかさに酔いしれた。あわよくば、マウスピースやピアノも当時のものを使用したら面白かったかもしれない。

田村哲
D.ベダール - ファンタジー
M.ナイマン - 蜜蜂が踊る場所(マリンバ2台版)

ナイマンが素晴らしかった。およそ17分(スコアは30ページ!)に及ぶ大作だが、最後まで独奏、マリンバともに驚異的な集中力を維持していた。特に最後のコーダ部では、敷き詰められる大量の音符に、聴いているこちらが息をするのを忘れるほどであった。こりゃすごいや。
マリンバの素朴な音色の上で軽々と歌うサクソフォンは、さながらバレエのような情景を想起させる…っていうか、もともとバレエ音楽が基になっているんだっけ。同曲のマリンバ2台への編曲版(オリジナルではない)は、まだほとんど演奏されていないということだが、オーケストラ版の実演機会がないなかで、この名曲が広まるきっかけになってくれれば良いな、とも思った。
ベダールは、ソプラノサクソフォンの実演では今まで一回しか聴いたことがない曲だったが、すべての音域に渡る音色の美しさを堪能した。いかにもフランス産の一口菓子的なコンサート・ピースという趣で、もうちょっと重い曲(フィトキンの「Gate」とか)を聴いてみたかったなー、なんて。

伊藤あさぎ
野平一郎 - 舵手の書
A.カプレ - 伝説(室内オーケストラとの演奏)

「舵手の書」は、最近ドゥラングル教授のCDも発売されたばかりでかなり聴き込んでいるが、聴く度毎に新しい発見があり、素晴らしい名曲である。今日は、指定のメゾ=ソプラノではなく、ソプラノ歌手との演奏。サクソフォンの演奏(鬼気迫る!)が良かったのは言うまでもないが、デュエットのアンサンブルの妙を感じられたのも収穫だった。
カプレは…何よりもまず、今までこの曲ってサクソフォン協奏曲だと勘違いしていたのだが、そうか、室内オーケストラの作品だったのか!舞台下手より、vn, vn, va, vc, cb, fg, sax, cl, obと並び、サクソフォンはその室内アンサンブルの一員として神妙なアンサンブルを繰り広げていた(と言っても、こういう並びの中だと、やはりサクソフォンという楽器の雄弁さを再認識するのだが)。サクソフォンの他で印象に残ったのは:クラリネットの方がかなり上手かった。弦楽器の方は、トップの方は以前佐藤淳一さんの博士リサイタルで演奏しているところをお見かけしたような。コントラバスの音が、なんか妙にジャズっぽく聞こえて面白かった。…といったところ。

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