2009/01/16

Collection Jeunes Solistes - Miha Rogina

ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏と李早恵さんのご厚意により、新譜「Collection Jeunes Solistes - Miha Rogina - Sphénogrammes(CREC-audio 08/064)」を頂戴した。ありがとうございます!「Collection Jeunes Solistes」は、メイヤー財団が出資するCDシリーズで、パリ国立高等音楽院の第三課程を修了したプレイヤーのために、1999年から毎年6枚ずつのペースで製作が進んでいるもの。1999~2007年のリストは、このページから参照することができる。

このCDシリーズ、どれも大変面白いコンセプトのもとに製作されており、ジェローム・ラランさんのものはマントヴァーニ、ジョドロフスキ、夏田昌和、ピアソラ、エスケシュというプログラムを、即興によってつないでいくというもの。また、アクソン四重奏団のCDは、ヴァルチャ氏の「インテルメッツォ」を挟みながら、シュミット、ショスタコーヴィチ、棚田文則というプログラムを取り上げていた。

今回、ロギーナ氏は、サクソフォンを含む室内楽作品を取り上げている。同じコンセプトのものというと、ロンデックスの「Musique de Chambre avec saxophone(EMI)」、カイル・ホーチ Kyle Horch氏の「Chambersax(Clarinet Classics)」、マリー=ベルナデット・シャリエ「havel - hurel - lauba - mefano - melle - rosse(Octandre)」くらいだろうか。メンバーやリハーサルの問題により、なかなかこういったアルバムが作られることは稀であり、そういった意味でも大変貴重な録音となった。

Paul Hindemith - Trio, op.47
Heitor Villa-Lobos - Sextuor mystique
Anton Webern - Quartett, op.22
Milko Lazar - Zakotne pesmi
Betzy Jolas - Plupart du temps II
Toshiro Mayuzumi - Sphénogrammes

Miha Rogina, sax / Sae Lee, pf&célesta / Barachir Boukhatern, alt / Amaya Dominguez, sop / Hélène Dusserre, fl / Arnaud Guittet, oboe / Srdjan Grujicic, gt / Anthony Lo Papa, ten / Kenji Nakagi, vc / Haruka Ogawa, pf / Vincent Penot, cla / Pierre-Olivier Schmitt, perc / Reine Takano, harp / Ryoko Yano, vn

サクソフォンを含む室内楽としてはお馴染みの、ヒンデミット、ヴィラ=ロボス、ヴェーベルンの他に、珍しい作品が3つ。特に、世界初録音となる黛敏郎作品が目を引く。

全体的な演奏の傾向は、かなりスピード感を伴ったスタイリッシュなもの。ヴィラ=ロボスなどではそれが少し物足りなく感じられることもあるが、それは贅沢な注文だろう。ヒンデミットでは、敷き詰められた音符の羅列の中に爽やかな風を感じ、テナーサックスとヴィオラという、中音域の楽器による聴後感とは無縁のものである。

ヴェーベルンの「四重奏曲」!これは、私も大好きな曲だ。ドゥラングル教授、クリステル・ヨンソン氏参加のもの、ヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏ほか、いくつか録音を持っている。例えば昨年聴いたヴァンサン・ダヴィッドのCDでは、そのスポーツカーのような速い演奏に飛び上がったが、ここでの演奏はそれが緩く聴こえるほどのもの…まるで、大気圏に突入した宇宙船のような、炎を上げながら猛スピードで目の前を駆け抜けていく演奏で(特に2楽章)。冒頭の勢いに飲み込まれたまま、いつの間にか最後までいってしまった。茫然自失…。

聴いたことのなかった、ラザールの作品やヨラス(ジョラス)も楽しい。ラザールの作品は、かなりポップでキャッチーなリズムや旋律線が聴きもの。サクソフォン、フルート、ピアノの三重奏という小さい編成のため、ロギーナ氏のサクソフォンをしっかりと堪能できるのも良いなあ。ヨラス!ドゥラングル教授がパリ国立高等音楽院のサクソフォン科教授に就任した年の、卒業試験課題曲である。おお、まさかここでこの曲を聴くことができるとは!おそらくCD中で、最もハードな作品ではあるが、不思議と耳を傾けたくなるのは、演奏者の力なのだと思う。

しかし、やはり最大の聴きものは黛敏郎の「スフェノグラム」!一度聴いたら、もうリズムやらベースラインやら旋律やらが頭から離れません。聴いていると本当に楽しくて、その音に身を委ねているだけで幸せな気分になる。しかし、この特殊な編成(fl, asax, marimba, voix-alto, pf(4hands), vn, vc)…リハーサルなど、なかなか大変だったのではないだろうか。だが、ここに収められている演奏から聴こえてくるのは、勢いがあって、しかし青空のように澄み渡ったサウンド。まったく、素晴らしいというほかない。

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