2008/12/31

Return to Forever, Light as a Feather

実家に戻ってきてから、タワレコで買ったいくつかのCDをちょろっと聴いてみる以外は、ずっと「Return to Forever」と「Light as a Feather」を聴いている。実家で年を越すとはいえ、配属希望用の書類を書いたり、修士論文を書き進めたりと、つくばにいる時とやっていることはあまり変わらず…。忙しい時期って、何か新しいものを聴くよりは、耳に慣れたお気に入りの音楽を流しっぱなしにしておくことが多い。

ジャズからフュージョンが分化した記念碑的作品であるとか、このアルバムによってチック・コリアが名声を獲得したとか、そういう歴史上の事実については、あえてつらつらと述べる必要もないか(クラシック・サックスの盤だったら、そうはいかないのだけれど)。

Return to Forever
Crystal Silence
What Game Shall We Play Today?
Sometimes Ago ~ La Fiesta

You're Everything
Light as a Feather
Captain Marvel
500 Miles High
Children's Song
Spain

チック・コリアの音楽に触れたのも最初だったし、いや、そもそも(広義の)ジャズに触れたのも、最初だったのである。それまで吹奏楽とサックスにしか触れてこなかった自分が、なぜこれらの音盤を聴こうと思ったのかは思い出せないが、その程度のバックグラウンドしか持っていなかった当時19歳の自分を大きく突き動かすものであった。えーと、何年前になるかな(苦笑)。

フルート/サックス、エレクトリック・ピアノ、ヴォーカル、エレクトリック・ベース、ドラムスという編成。サウンドは洒落ているが、聴きこむほどに何か巨大なものの一端に触れたような気持ちになる。チック・コリアは「Now He Sings, Now He Sobs」でもアルバム全体に哲学的なコンセプトを持たせていたが、あれはライナーノートにコリア自身のそういった説明があったからである。対して、これらアルバムにそういった説明がなされている、という話を聞いたことはない。だが確かに、言葉では表しがたい何かを、見事なチック・コリア・サウンドで描ききっているのだ。

…誤解を恐れずに言えば、一作目のアルバムで表現されているのは「宇宙」だろうか。ドローンで始まる「Return to Forever」から、少しずつ加速して、色とりどりの星空を旅するような、夢幻的な世界観を感じる。ジャケットに映った、青い海の上を飛翔するカモメは、われわれが乗り込む宇宙船か。二作目のそれは「人間の精神」だろう。愛とか、高揚感とか、無垢さといったものを、美しい部分も汚れた部分もひっくるめて、描き出しているような気がする。「500 Miles High」なんかは、歌詞を読んでいても少し表層から外れたグロテスクなものが見えるようだ。

リターン・トゥ・フォーエヴァーは、この2作品の発表以後、エレクトリック・ギターを加えて、よりヘヴィなサウンドを目指すこととなる。音作りの方向転換に、旧来のファンの何割かは失望したであろうが、しかしこのサウンドを「Return to Forever」と「Light as a Feather」で打ち止めたことは、それはそれで賢明な判断であったと言うべきだろう。おそらく、この編成でやれることはやりきってしまったのだ。

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本年最後の記事となりました。ブログに関する2008年の隠れた目標「365個以上の記事を書く」が、なんとか達成できてホッとしています。それでは皆様、どうぞよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

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