2008/12/23

サクソフォーン・フェスティバル2008二日目

聴いた順に、ダラダラと書いていきます。

♪東京ミュージック・メディアアーツ尚美
G.ビゼー/徳備康純「"組曲『アルルの女』第一番"より前奏曲、カリヨン」

徳備氏の新アレンジ(3月に聴いたR.シュトラウス「サロメ」のアレンジは圧巻であった)が演奏されるとのことで、朝イチから出かける。途中乗り換えに失敗し、しかもよりによって都営新宿線から京王線の接続を逃したため、一曲目に間に合わないかと思ったが、会場に着くと石渡会長の挨拶の途中だった。
で、ビゼー。指揮は松雪明先生。各楽器にそれぞれ独奏を配置し、バックと絡めるというアイデアで書かれているアレンジだった。驚いたのが、SATBそれぞれの音色の使い分け。徳備氏のサクソフォンの扱いの長けっぷりは、サロメのアレンジでも感じたが…。もともとがシンプルな楽譜だけに、逆に難しいとも思うのだが、まさに名作の再創造という印象であった。

♪国立音楽大学
B.ウィーラン/柏原卓之「リバーダンス」

国立音楽大学サクソフォン科の定期演奏会でも聴いた演奏の再演。おお、気付けばあのときステージ上でお見かけした方、お話させていただいた方が!今回の指揮は、滝上典彦氏。一度聴いているだけあって、前聴いたときと比べてしまったりするのだが、なんだかもっと速いぞ。びっくりしたー。
ちょいとカットが不思議だったのを除けば、個人的には三鷹のホールで聴くよりも印象が良く聴こえた。やっぱり、かなりパーカッションが効果的に使われているだけあってウィーンホールのような高天井だと、前で聴いているとパーカッションが響きすぎてしまうのかなあという気がするのだ。今回のパルテノン多摩では、後ろのほうで聴けたため、全体のまとまった響きを堪能した。

♪東邦音楽大学
O.レスピーギ/野村秀樹「"ローマの祭"よりチルチェンセス、主顕祭」

アレンジの野村秀樹氏は、「日本の四季メドレー」などでも知られているバンド指導者/編曲家。「サックスオケでローマの祭かー、なんか緩くなりそうな感じだなあ」と聴き始めたのだが、導入部から熱い演奏にぐっと引き込まれた!主顕祭の騒がしさもなかなか良かったのだが、特にチルチェンセスの集中力がものすごかった。佐々木雄二氏の指揮も、情熱的。

ここで、お金をおろすため会場をいったん出て駅前へ。戻ってくると、プロムナードコンサートの真っ最中。小沼理恵さん率いるルナソワールSQが演奏していた。カホーンを主体とするパーカッション(藤橋万記さんによる)を交えた四重奏、素敵だなあ。で、ちょうどこのとき大ホールでやっていた「ボレロ」のアレンジが、けっこう面白かったらしい。聴けなくて残念!

♪くらしき作陽大学
E.エルガー「弦楽セレナーデ」

やはり、貝沼氏の指揮に興味がありまして(笑)。演奏は良かったはずなのだが、曲の印象は、あまり残っていないなあ。曲がかなりスタンダードだからかな?ちなみに、指揮を務めたサクソフォン吹きのうち、貝沼氏が最年少だったようだ。

♪武蔵野音楽大学
A.コレルリ「コンチェルト・グロッソ op.8-6」

クリスマス・コンチェルトとしてもお馴染みの短調の名作。サクソフォンとの相性はばっちりで、フランスのEnsemble Squillanteなどが取り上げるなど、演奏事例も多い。ソプラノサックスが、互いの音を重ねていくところなどは、なんともいえない気持ちになるなあ。指揮は須田眞氏。って、ええ!なんだか、意外なほどにお年を召しており、ちょっとびっくりした。
少し響きが単調だった。もう少し多彩な響きが聴きたかったかもー…というのを、サクソフォン合奏に求めること自体、間違っているような気もする。

♪トリビュート・トゥ・シュトックハウゼン
K.シュトックハウゼン「誘拐」
K.シュトックハウゼン「友情に」
K.シュトックハウゼン「男の子のデュエット」

東京芸術大学を聴きたい気持ちを抑えて、小ホールへ。ラヴェルの「クープランの墓」を演奏していたらしい。
さて、シュトックハウゼン「誘拐」は、私も大好きなソプラノサクソフォンとテープのための作品。パンフレットには、詳細な曲目解説が載っていたが、そうそう、もともとはアコースティックのための作品なのだよな。「誘拐」を演奏したのは白井奈緒美さんだが、白井さんの演奏を聴くのは二度目で、9月に門天仲町ホールでやっていたシュトックハウゼン作品の演奏会では、サクソフォンの圧倒的なコントロール能力に加え、さらに極限的な身体的動作による音源位置の移動と、白井さんの実力を思い知った。…はずだったのだが、この日の「誘拐」の演奏!!あれはもの凄かった。曲の開始と同時に客席後方から白井さん、「友情に」の10倍は難しいんじゃないかと思われる超絶フレーズの嵐を暗譜で演奏!!しかも、客席の間をあっちこっち飛び回りながら…呆気に取られるほかない、まさに驚異の15分間だった。演奏者は最後にステージ袖に引っ込み、舞台上にはいつの間にか月が昇っていた。
間断なく、大城正司氏の演奏で「友情に」。シュトックハウゼンを意識したような真白の衣装で登場した大城氏。以前から感じていたが、氏のコンテンポラリー作品に対する造詣の深さは相当なもの…何年か前にフェスティバルで聴いた、武満徹「ディスタンス」の演奏を思い出した。「友情に」は、「誘拐」での飛んで跳ねての演奏の後だけに、余計にどっしりした印象が残った。特にダイナミクスのレンジは、おそらく白井さんの演奏よりも広いように感じる。
そんな対照的なお二人の、ソプラノサクソフォンによるデュエットで「Knabenduett」。もしかして国内初演?そんなことはなかったのか?だが、こちらも好きな曲なので、生で聴けてよかった。この曲では音源位置の移動はなく、舞台上での演奏だったが、それでも暗譜!す、すごい…。
そうだ、願わくば、演奏者自身による解説があったら、なお良かったかも。特に「誘拐」って、サクソフォンの世界ではそれほど有名な曲でないから、終わった後にポカーンとしている方が多かったような(笑)。

♪クローバー・サクソフォン・クヮルテット
G.バッコ「ロッシーニ」
林田祐和「パッション」
J.フランセ「"小四重奏曲"より冷やかし、滑稽なセレナーデ」

12月頭の演奏会は伺えなかったので、楽しみにしていた。ロッシーニの作品をパロディ(とまではいかないか)風にアレンジしたバッコ作品に、林田祐和先生?の自作、そして2007年5月のリサイタルで聴いたフランセ。続く石毛里佳作品と、ボザは、大ホールへ移動していたため聴くことができず、残念。あ、CD買わなきゃ。東京文化会館のリサイタルで聴いた集中力の塊のような演奏とはやはり違って、たくさんのお客さんの中でのリラックスした雰囲気。田村真寛氏によるトークを挟みながら、比較的スタンダードなレパートリーが演奏された。クローバー四重奏団、そもそも、アンサンブルというものに対する捉え方が違うように思える。相当な量のリハーサルを行っていると思われるが、おそらく本番ではそこから開放され、縦の線や音程をその場のテンションで捉えているのではないかと感じる。
聴き所は、やはり「パッション」。まさか独学の作とは思えない、高密度なコンサート・ピースで、クローバーSQにぴったりのダイナミックなグルーヴを伴う作品だった。かなり無茶な筆致も見られたが、そこはさすがに独奏でも活躍するサクソフォン奏者たち!高難易度の譜面を、完璧に消化しきっていた。
プログラムには載っていなかったが、フランセを聴くことができたのも嬉しかったな。以前聴いたリサイタルの中で、グラズノフとともに印象に残っていたのが、このフランセだった。第3楽章のここまで説得力のある演奏は、クローバーSQの独壇場でしょう。

♪齋藤了
J.S.バッハ「チェンバロ・ソナタ」(曲名失念、後で修正します)

齋藤了氏は、自衛隊東部方面音楽隊に所属しているだそうだ。しかし、2000年までアルディSQに参加していたとは知らなかった…というと、アルディSQって、メンバーの多くが大学生のころから継続していたということになるだろうか。
バッハの作品は、齋藤了氏によるオリジナルの編曲。バロック作品のトランスクリプションはサクソフォンの世界ではすでに多く取り組まれているが、こういう新たなアレンジもいいですね。演奏は、良い意味で神経質かつ繊細。古楽器のような素朴なソプラノサクソフォンの響きが印象的だった。

♪ヴァンサン・ダヴィッド
C.ドビュッシー「シランクス」
L.ベリオ「セクエンツァVIIb」

期待度満点にてダヴィッド氏登場。フルート版がオリジナルとなる「シランクス」に始まり、その音にまず驚く。ソプラノサクソフォンなのに、指向性が全くないのだ。まるで体全体がスピーカーとなったように、おそらくホール内のすべての場所に向かって音が飛んでいたのではないかと思われる。で、「セクエンツァVIIb」…うわあ、これは衝撃的(笑)。まずはとにかく速っ!!楽譜どおりに演奏したら、確実に7分を超えるはずだが、明らかに6分前後でフィニッシュ。ダブルタンギングや重音の安定度、おっそろしいほど速いフィンガリングなど、衝撃的な部分を挙げていけばきりがない。で、もっともっと衝撃的だったのは、小ホールでの演奏だったのだが…。
あー、ところで、裏でHを伸ばしていたのがだれなのか、知っている方はぜひ教えてくださいm(_ _)m

♪クラウス・ウールセン
R.シューマン「3つのロマンス」
F.シュミット「伝説」

デンマーク出身、欧州での活躍が目覚しいクラウス・ウールセン氏。今年頭のJ.M.ロンデックス国際コンクールでセミ・ファイナリストに残るなどしている。ぱっと見40歳くらいに見えるが、まだ30歳ちょっとのはず…たしか。そして、プロフィール写真で見るよりも、若く見えるような(ん?)。
ソプラノサクソフォンを繰って演奏された「3つのロマンス」。まるでクラリネットのようなふくよかな音色で奏でられるシューマンは、サクソフォンといえどまったく違和感がない。というか、違和感がなさすぎて、やっぱり発音が難しいオーボエでやるからこそシューマン、って部分もあるのだろうが…。いやしかし、この美しい音はすっと心に染み入る。そして圧巻のシュミット。凄かったなあ。この曲を「良い曲だ」と感じたのは、録音・実演を通しても初めてかもしれない。ちょっと言葉では表現しがたい感動を味わいました。

♪クインテット・シルク
J.ノレ「アトゥ・サックス」

フルモー氏リサイタルでの演奏も記憶に新しい、五重奏曲の傑作。それまで立て続けにヨーロッパの奏者を聴いていたため、この和声の重厚さに、いきなり現実に引き戻された感じ(笑)。日本発サクソフォンの、ある種最良の形であると思う。演奏者のほぼ真正面で聴いていたので、平賀さんの音がストレートに聴こえた。それにしても、平賀さんのバリトンて、本当に上手いと思う。オットー・ヴォーチでも感じたことだが…。
シルクの演奏は、これまで演奏会形式で聴いたことがない。2010年にはリサイタルも予定しているそうだ。ぜひ聴きに行ってみたい。

♪ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテット
「ペガサス・ストリート」

持ち替えありの四重奏。ノーコメント…。

♪ランドスケープ
C.ドビュッシー「夢」
A.デザンクロ「サクソフォン四重奏曲」

こちらも楽しみにしていたカルテット。敬称略で、ソプラノ:ジェローム・ララン、アルト:原博巳、テナー:ティボー・カナヴァル、バリトン:大石将紀というメンバー。ラランさんについてはすでに国内でもお馴染みだが、テナーのカナヴァル氏は、フランスの奏者で、セルジー・ポントワーズ音楽院を卒業したプレイヤーだそうだ。ちょっと調べてみたら、SAXETERAのソプラノサクソフォン奏者として名前を発見した。
で、演奏なのだが、ドビュッシーの美しさにまず心奪われた。ピアノ版でも良く聴いていた曲だが、四重奏も美しいですね。SATBのそれぞれのプレイヤーの音色、そして音の飛び方が尋常ではない。
デザンクロ「四重奏曲」。めちゃくちゃ面白い!!デザンクロって、個人的にはデファイエ四重奏団までで打ち止めになっているような気がしていたのだが、こういう演奏を聴くとまだまだ可能性が無限に開けているのだなと思う。特に、速い楽章が面白かった。先走るテンポの中に、有機的なアンサンブルが見え隠れし、最初から最後までドキドキしながら聴いた。

♪フェロー・サクソフォン・カルテット
D.スカルラッティ「"3つの小品"よりプレスト・ジョコーソ」
J.リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
C.パスカル「サクソフォン四重奏曲」
R.ペック「ドラスティック・メジャーズ」
沖縄民謡をアレンジした小品(アンコール)

小ホールにて、YAMAHAプレゼンツのミニ・リサイタル。
フェローSQを聴くのは初めてだ。といっても、もちろん雲井雅人サックス四重奏団は良く聴いているし、林田和之氏のアルバムでも「ドラスティック・メジャーズ」のノリノリの演奏を楽しんだりもしている。しかし、今年の中ごろにあった林田氏のリサイタルは伺えなかったため、ライヴで聴くのは初めてだった。
スカルラッティから、キラキラした音色がホールを満たした。そして、リヴィエ、パスカルを、林田氏の絶妙なトークでつなぎながら演奏。ここまで比較的コントロール重視の軽やかな音色を聴いてきた中で、それらとは一線を画する、和声の捉え方、音色の捉え方が印象的だ。雲井雅人サックス四重奏団とともに、かなり独自の路線を走るように思えるが、ここまで完成された世界を構築するまでには多くの苦労があったのではないか。
ペックは、ノリノリの演奏に大興奮!国内でこの曲が演奏されるようになってきたのは、嬉しい限りだ。客席も大いに沸いていた!

♪ヴァンサン・ダヴィッド
P.モーリス「プロヴァンスの風景」
G.フォーレ「ヴァイオリン・ソナタ」
A.I.ハチャトゥリアン「"ヴァイオリン協奏曲"より第1楽章」
ソプラノ・サクソフォンのデュエットによる即興(アンコール)
ピアノのドローン上での即興(アンコール)

こちらも小ホールにて、野中貿易プレゼンツのミニ・リサイタル。
モーリスは、かなりテアトル的な表現があるものの、全体の流れの中では意外と素直な解釈かも…と思いながら聴き始める。かなりスタンダードなレパートリーであるし、余裕綽々、楽譜も殆ど見ずにサラサラと吹いていたが、第5楽章でぶっ飛んだ!なんだあの超速い「カブリダン」は…。今まで聴いた最速の演奏って、おそらくミュールかモレティあたりの演奏だと思うのだが、そんなものを軽々と超えるほどの超絶テクニック…。カデンツから最後までは、循環呼吸も使いながら間断なく音を敷き詰めた!なんだかこれは、曲のスタイルとかそういったことは全く関係のない、「ヴァンサン・ダヴィッドの世界」そのものだ。眉をしかめる向きもあろうが、これはこれで一つの完成された世界として楽しむべきだ。
フォーレでは再びソプラノサクソフォンに持ち替え。こういう作品を"普通に"聴かせる技術力の高さと、そして再びハチャトゥリアンで魅せる驚異的なテクニック。去年ミーハ・ロギーナ氏が来日した祭にも、李早恵さんとともに演奏していたが、こういった演奏を聴くと、日本のサクソフォン界が、いつの間にか世界から置いてきぼりをくらっているのではないかと、無駄な心配をしてしまう。カデンツァは聴いたことのないような感じだったが、ダヴィッド氏のオリジナルだったのだろうか?
アンコールに、平野公崇さん飛び入りでフリーの即興!場内大爆笑の連続で、昨年やはりこの場所で行われた坂田明氏と平野公崇氏の即興対決を思い出していた。そして、沼田良子さんを呼んで、ピアノのドローンの上で再び即興対決…と思いきや、盛大なオチをつけて終演。いやあ、面白かったなあ。

♪安井寛絵
B.ブリテン「オヴィディウスによる6つの変容」より4曲
棚田文則「Mysterious Morning III」

大ホールにて、今年の管打楽器コンクール・サクソフォン部門の入賞者ガラ・コンサート。現在ブール=ラ=レンヌ音楽院在学中の安井さんの無伴奏演奏である。フランスのほうではかなり活躍されているそうだが、演奏を聴くのは初めて。ブリテンの安定した演奏も良かったのだが、やはりコンクールでも演奏されたという「Mysterious Morning」が印象的である。個人的にめちゃくちゃ好きな曲で、空で歌えるほど聴き込んでいるほどなのだが、小柄な体から繰り出されるテンションの高い音楽は、まさに圧巻であった。
ちょっと面白かったのが、声を出しながら吹くところ。やはりというかなんというか、男の人が演奏するのとは、重音の響きが少し違ってくるのだなあ。

♪伊藤あさぎ
P.ヒンデミット「ヴィオラ・ソナタ」

以前修士リサイタルということでご案内頂いたときも、この「ヴィオラ・ソナタ」(と、確かティエリー・エスケシュの「リュット」だったかしらん)を演奏されていたとのことだが、その時は聴きにいけなかった。そんなわけで、伊藤あさぎさんのソロ演奏を聴くのはほぼ一年ぶり。渋谷のアンナホールで開催された、ドゥラングル教授のマスタークラスにて、受講者として「PCF」を演奏していたのだ。とにかく上手くてびっくりした覚えがあるが、ヒンデミットの演奏を聴きながらそのときの印象を思い起こしていた。修士論文提出直後で、大変な状況での練習と本番だったとのことだが、そんなことを感じさせず、最初から最後までピンと緊張の糸が張った集中力の高い演奏だった。今度はリサイタルなんかでいろいろな曲を聴きたいです。ぜひ!

♪田中拓也
H.トマジ「サクソフォン協奏曲」

本選と同じく暗譜での演奏。音量や響きといった点で、前2者との差異をやや感じながら聴き始めた。どこまでも音楽的で自然な響き、そしてまだ二年生とは思えない風格漂う演奏だった。現在東京藝術大学の2年次に在学中だそうだ。今後もいろいろな機会で田中拓也さんの演奏を聴く機会があるだろうが、その時を楽しみにしていたい。ピアノを弾いていた沼田良子さんは、ヴァンサン・ダヴィッド~伊藤あさぎさん~田中拓也さんと、あちらこちらで大活躍だった。そういえば、管打楽器コンクールの本選でも5人中4人弾いていたのだっけな。

♪有村純親、林田祐和、田村真寛 with Blitz Brass
M.レヴィナス「インキュヴァー Incurver」

パリ国立高等音楽院サクソフォン科の課題曲として、音楽院とセルマーの委嘱により作曲された、管楽アンサンブルのための作品。独奏に有村純親氏を迎え、なんか不思議なチューニングではあったが、期待度満点で、さあ、最初の一音!…そして会場に走った衝撃。ビビりました。
いやはや。しかも、もうちょいと展開があると思ったんだが(笑)。これ、試験曲なのにどうやって優劣をつけるのだろうか。委嘱して、出来上がってきたときの委嘱者の衝撃を想像することができる。ちょいと調べてみると、ポリフォニーによる和声の構築という、一見矛盾を孕んだテーマに沿って作曲されているのだと…よくわからん(苦笑)。やはり、ある種のスペクトル楽派って、ちょいと自分にとっては苦手かもしれない、なんてことを思ったのでした。


♪長瀬敏和 with Blitz Brass
田中久美子「セドナ」

知っている人は知っている、ランベルサール国際吹奏楽作曲コンクールの第一位受賞作。コンクールではダニエル・グレメル氏の独奏により演奏されたが、今回がおそらく国内では初演となったはずである。
隅々まで高密度に書かれた作品。独奏パート以上に、吹奏楽パートが重点的に書き込まれており、情報量の多さにやや追いきれない部分もあったが、傑作と呼ぶに相応しい。
田中久美子氏は関西で活躍されているので、長瀬氏が独奏抜擢となった、ということだろうか。長瀬氏の演奏を聴くのは、初めてである。いや、もしかしたら大阪市音楽団のコンサートマスターとしての演奏を、CDなどで耳にしたことがあるかもしれないが、とにかく独奏は初めてだった。…あれ、近いうちにリサイタルがあるんじゃなかったっけか(^^;

♪彦坂眞一郎 with Blitz Brass
長生淳「He Calls...」

大トリ、名作と名高い「He Calls...」を、もちろん彦坂氏の演奏で。めちゃくちゃカッコいいです。Blitz Brassも、さすがメンバーが若いせいだろうか、こういう曲に関してはノリの良さが良く見えるし、演奏のテンションも爆発するようだ。あまりに爆発しすぎて、独奏をかき消してしまうくらい。彦坂氏の独奏は、不思議とヴィブラートを抑えたスタイルだったが、「おーーーい」と聴衆を呼ぶような独奏サクソフォンの旋律線の中では、これはこれでありな吹き方なのかなと思った。
怒涛のカデンツから最後に向けての煽り、そして客席の沸きっぷりは、楽しかったな。

彦坂氏の演奏が終わってホワイエに出たところで、加藤里志さんと対面することができた。わざわざ声かけてくださって、ありがとうございました!

♪フェスティバル・オーケストラ
L.v.ベートーヴェン/金井宏光「交響曲第七番より第一楽章」

おなじみ、フェスオケにて〆の演奏。もともとがシンプルな楽譜だけに、サクソフォンオーケストラという編成でも、楽しく聴けた。このメロディを聴くと、「のだめカンタービレ」の名場面が脳裏に浮かんでくるのは、なんともはや(笑)。

ところで、フェスティバルオーケストラの演奏に先立ち、石渡会長の呼びかけで、今年逝去された圓田勇一氏に対して黙祷が捧げられた。圓田氏について、私は多くを知らないのだが、そういえばソプラニーノサックスを携えて、フェスティバルオーケストラに乗っていた初老の方を、毎年見ていた。
ソプラニーノといえば、この方と、各川芽さんと、そして最近では塩安さん、というメンバーであった。そうか、あの方が圓田勇一氏だったのかと認識したとき、とたんに圓田氏の逝去がリアリティをもって感じられるようになった。

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例年通り大合奏まで聴きたかったが、ちょっと疲れていたこともあって、ここまで聴いて先に失礼した。

なんだか運営のほうではいろいろあったようだが、くにすえさんを始めとする実行委員の方々、本当に何から何までお疲れ様です。こういった機会に参加できること・聴けることは、我々アマチュアにとって大変得がたい機会であり、そして、各々がその機会をとても楽しんでいる…ということが、企画運営側に少しでも伝われば良いのだが。余韻を楽しみつつ、また来年のフェスを心待ちにしたい。

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