2008/06/12

Tristezas de un Doble A

無人島に持っていく80分のCD-Rを編集するとしたら、間違いなく入れるであろう音楽。そして、自分が死ぬ前日に必ず聴きたい音楽。アストル・ピアソラ Astor Piazzollaの「AA印の悲しみ Tristezas de un Doble A」の、1986年11月のライヴ録音。

これを超えるタンゴは、おそらく先にも後にも存在しない。いやそれどころか、タンゴだけではなく、クラシック、ジャズ、即興などの音楽ジャンル全てが、この20分間に集約され、昇華されていると言っても過言ではない。

長い長いピアソラのバンドネオンの即興。どこまでも引き伸ばされるフレーズは、胸をかきむしるような思いに満ち溢れている、そのバンドネオンがひとたび収束すると、引き続いて、絶妙なロウ・テンポで現れるコンソーレのベースとシーグレルのピアノ。ここでは、ピアノとバンドネオンが呼応しながら絶妙な即興を繰り広げる。モントリオール盤に比べて自由闊達に這い回るベースも、神秘的な雰囲気をかもし出す。およそ10分過ぎたところで、ようやくプレリュードとなるが、ここでのテンポも、他の録音に比べると実にゆっくりである。低音で泣き喚くスアレス・パスのヴァイオリンと、バランスを構築するオスカル・ロペス・ルイスのギター。

再び場面は即興へ。やや急速調なコード・プログレッションへと突入し、ピアノもギターもベースも加わっての大インプロヴィゼイション大会。中間部では、まったく別の曲が3つほど挟まれるが、これも即興の中でその場限りで生み出されたメロディなのだろうな。まるでリベルタンゴのようなコード進行が提示されるところまで…。そして最後の、炎のように疾走するプレスト。数回余分にに繰り返されつつも、なんとか速度を落としてフィニッシュ。続く喝采から、いかに聴衆が興奮しているかを感じ取ることができる。

うーむ、凄いなあ。映像媒体としたら、1984年のモントリオールのものが一番だとは思うけれど、録音媒体としてはこの1986年の演奏が最高だ。

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