2008/05/14

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その7)

[2007]
新作課題曲:
Frédéric Durieux - Gradiva
Tres bien:
Hugo Schmitt, Naomi Shirai

課題曲は、ソプラノサクソフォンのための無伴奏作品。さて、この年の卒業生である白井奈緒美さんに関しては、詳しい経歴を知らないのだが、くらしき作陽の出身だそうだ(あかいけさん、情報ありがとうございます!)。シュトックハウゼンの「誘拐」あたりの、生の演奏を聴いてみたいなー。Hugo Schmittは、Ensemble Squillanteのメンバー。

[2008]
新作課題曲:
Martin Matalon - Trame Ia
Frédéric Durieux - Übersicht
Tres bien:
Pascal Bonnet, Julien Chatelier
Bien:
Clément Himbert

マルタン・マタロンの「Trame Ia」は、ソプラノサクソフォンと指揮者付の小アンサンブル(バソン、ホルン、トランペット、コントラバス、パーカッション)のための作品。昨年に引き続いてFrédéric Durieuxが作曲した作品は、「Übersicht」というバリトンサクソフォン独奏のための現代作品。

審査員全員一致のTres bienを獲得したPascal Bonnet、そしてJulien Chatelierは、第4回アドルフ・サックス国際コンクールでの入賞歴がある。本選では二人ともティエリー・エスケシュの「暗闇の歌」を演奏していたっけ。また、ともにEnsemble Squillanteのメンバーである。Clément HimbertについてはUFAM国際音楽コンクール等での入賞歴を発見した。

2008年(2007 - 2008シーズン)の卒業試験は2008/5/31に行われました。課題曲・結果等については、李早恵さんとミーハ・ロギーナ氏のご好意により教えていただきました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

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…というわけで、7回に渡ってパリ国立高等音楽院、クロード・ドゥラングル教授率いるサクソフォン科の卒業生について、駆け足で見てきた。なんとか終わらせることができて良かった(実は他の記事に比べて、意外と手間がかかった)。Thunderさんがまとめた「マルセル・ミュールの生徒たち」の現代版ということでなんとなく始めてみたのだが、終わってみれば初めて知ることもあって、自らの糧にもなった。何か感想あったらコメントいただければ幸いです。

今度は「ダニエル・デファイエの生徒たち」をやってみたいが、たぶん今回とは比べ物にならない程のイバラの道だろう。リクエストがあればやるかも…。

元のデータの出典は、今年出版になったばかりのニコラ・プロスト著「Saxophone à la française」。フランスのサクソフォン界の歴史について125ページに渡ってまとめられた、なかなか読み応えのある本である。とは言っても、私はフランス語を全くと言って良いほど読めないので、データを参照するに留まっているのだが…。以前から詳細を知りたいと思っていた、パリ・コンセルヴァトワールのサクソフォン科の歴史がテーブルとして記されており、一連の記事執筆を開始する原動力となった。併せて、フランスの各音楽院(CNSMDP, CRR, CRD)のサクソフォン科教授の2007年現在のリストも載っており、卒業生が現在教職に就いている場合の調査の助けにもなった。

もう一つの参考資料は、Nonaka Saxophone Friends Vol.21の白井奈緒美さんのレポート。「ドゥラングル教授・パリ音楽院サクソフォン科と作曲家との交流を得て」と題された記事で、新作課題曲の各年度ごとの詳細が記されている。例えば「年度ごとの作品の委嘱者が誰か」「出版社はどこか」といった情報がありがたい。最後の一文「そして私たちは、直接作曲家にレッスンを受け、作品を演奏することができます」…当たり前のことだが、ちょっとうらやましいな。パリで活躍中の作曲家渾身の最新作に取り組み、ドゥラングル教授と作曲家にレッスンを受けて、卒業試験で演奏を披露することができるとは!

コンセルヴァトワールのサックス科の歴史は、それ自体がクラシック・サクソフォンの歴史と直接にリンクするものだ。このような資料を読み解いていくことが、サクソフォンの過去を理解し、未来を予期するきっかけとなれば良いと思っている。

4 件のコメント:

  1. 長編お疲れ様でした。
    資料として これからもきっと検索し続けられるでしょう。

    ところで、白井さんは、春先帰国されたようで、淡路のサクソフォンフェスティバルにご出演でした。(作陽音大のラージアンサンブル、サックスオケ)

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  2. > あかいけさん

    ありがとうございます。連載は初めての試みでしたが、意外と大変でした(^^;;

    白井さんの情報、ありがとうございます。早速本文のほうに追加いたしました。

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  3. 連載お疲れ様でした。
    とても勉強になりました。
    ぜひ、ドゥラングルの生徒たちの
    更なる連載と、デファイエの生徒たちを
    期待しています。

    デファイエの生徒たちは考えただけでも、
    大変そうですが・・・
    (^^;)

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  4. > あきちゃんさん

    ありがとうございます。とても励みになります。「ドゥラングルの生徒たち」は、2008年から先も続編を書きたいところなのですが、情報の入手先が問題ですね…。あと、教え子が本格的に活躍し始めるのは数年経って後、という点からも、記事として意味をなすかどうか疑問が残ってしまいます。20年後に再び編纂したら、面白いかもしれません。

    「デファイエの生徒たち」はやってみたのですが、大変そうです。デファイエ氏は20年間近く教授を務めていますし、卒業生の数も半端ないですので…。また、思い出したときにやってみようと思います。

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