2008/04/30

久々にハバネラ

真面目に聴いたのは、久しぶりかもしれない。久しぶりとは言っても、所有しているサックス関連のCDの量がそこそこ多いので、一日一枚まんべんなく聴くとすると、あるCDを一年に聴く回数は、1 or 2回程度ということになってしまうのだが。ハバネラ・サクソフォン四重奏団のライヴ盤「The 5th International Chamber Music Competition & Festa 2005 First Prizewinner of Section II(Yomiuri Telecasting Corporation YC-0515)」。2005年5月に開催された第5回大阪国際室内楽コンクールで、ハバネラ四重奏団が見事グランプリを受賞した時の模様を記録したCDである。

A.Desenclos - Quatuor
F.Donatoni - Rasch
I.Nodaira - Quartet
A.Glazounov - Quatuor op.109
I.Xenakis - XAS

デザンクロとドナトーニが一次予選、野平が二次予選(もう一曲フランス物を吹いたようなのだが、CDには収録されていない)、グラズノフとクセナキスが本選ということになる。

さてこのディスク、例えば「クラシックサックスのCDで、あなたが考える最高のものを5つ挙げなさい」と言われれば、私ならば間違いなくその中に入れるであろうCDだ。圧倒的な技術、国際コンクールという場での緊張感やテンション、録音のコンディションや選曲に至るまで、こういったCDが世に生まれたことが奇跡と言うべきかもしれない。何で限定盤にしちゃったのかなあ、もったいない。

最初のデザンクロから、手加減なしの本気勝負。たまにとんでもないミスをするが、この強烈演奏のうねりの中では全く気にならない。音色の変化やダイナミクスの幅は、そこら辺のCDをまとめて吹き飛ばすようなレベル。ここまで表現を突き詰めてくると、ともすればハメを外しかねないとは思うのだが、全体を通してきっちりまとめているのはさすがではないか。

ドナトーニ、野平、クセナキスのような、一度聴いただけではワケの分からないような曲も、美しい音色とテンションで魅せる!今回改めて聴いてみて、野平一郎氏の「四重奏曲」における演奏技術に、特に惚れ直した。こういった迷路のような曲を、迷いなく一直線に進んでいくスタイルは、個々の技術的なベースがあってのことだろう。そして、何と言ってもこのCD一番の聴き所は、グラズノフ→クセナキスの流れ!最終部に向けてどこまでも速度を速めていく流麗なグラズノフと、聴き手を硬直させるほどのテンションを持つクセナキス…こんな演奏が現実に起こりうるはずがない、と思えてしまうほど。生で聴いたら、さぞかし興奮したことだろうな。

しかしこれは超常的な現象から生まれたものでなく、フランスのサクソフォン界の現在進行形の一部に過ぎない、というのがまた驚きで。日本で考えられていたサクソフォンの限界という幻想が、彼らの来日によって、そしてこのCDによって易々と打ち砕かれてしまったのだ。

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