2008/01/31

マスランカ「レシテーション・ブック」内のメロディ

ディヴィッド・マスランカ David Maslanka氏が作曲したサクソフォーン四重奏曲「レシテーション・ブック Recitation Book」には、賛美歌からのメロディの引用が数多く見られる。スコア分析しながら気になってあれこれ調べていたのだが…。いろいろ聴いているうちに、練習している楽譜とまったく同じメロディが出てきて、びっくり!

実は、賛美歌のメロディを作曲家が様々に拡張してカンタータというものを作曲する?のだということ。そんなわけで同じメロディが、随所に聴かれるのですね。とりあえず「レシテーション・ブック」で引用されている賛美歌のメロディのうち2つについて、バッハを例に挙げて、同じような賛美歌のメロディの引用例を調べてみた。

「レシテーション・ブック」の第2楽章 Prelude/Choralは、「イエス、我が喜び」というメロディを引用した長大な前奏曲と、それに続くコラール。元のメロディの作曲者は1598年生まれのドイツの作曲家、ヨハン・クリューガー Johann Crügerであり、楽譜は次のようなものである。楽譜は、このサイトから引用させていただいた。


このメロディを基礎としさまざまな作曲家がカンタータを書いているが、特に有名なのが、バッハの作によるもの。歌詞がないものでは、次のコラール中でメロディが引用されている。

BWV358:いわゆる、「C.P.E.バッハ編纂のコラール」より。比較的素直な伴奏が付与されている。
BWV610:オルガン小曲集より。かなり革新的な和声で書かれており、なかなか刺激的。
BWV713:オルガンのためのコラールより。フーガ形式。元のメロディはなかなか聴き取りづらい。
BWV753:装飾音が付与された力強い冒頭部分が印象的。後半は、失われているとのこと。
BWV1105:ノンマイスター手稿からのコラール。挟み込まれるインタラプトが新鮮。

声楽曲としては、「Sehet, welch eine Liebe hat uns der Vater erzeiget(見よ、いかなる愛を父はわれらに示されたるか)」の第8曲や、モテット「Jesus, meine freude(イエス、我が喜び)」の第1曲他、多くの作品にこのメロディを見ることができる。

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第5楽章 Fanfare/Variationsは、「アダムの罪により、ものみな滅びたり」というメロディの変奏となっているが、基礎となるメロディは、次のようなものである。作曲者は不詳、ヴィッテンベルグにおける1533年の作とされるものである。楽譜は、このサイトから引用させていただいた。


単旋律だけで実に美しいメロディだ。バッハの作によるもののうち、たとえば明確に「Durch Asams Fall」の名を掲げている器楽曲は次の3つ。

BWV637:一聴して外観が良く分からなくなっているが、たしかにオリジナルの旋律を聴き取ることができる。
BWV705:オルガン小曲集から。他の三声が取り付くことで、重厚な印象の曲に変化している。
BWV1101:ノンマイスター手稿からのコラール。フーガ形式で、最後は輝かしく終わる。

声楽曲としては、カンタータBWV18「Gleichwie der Regen und Schnee vom Himmel fällt(天より雨くだり雪おちて)」の第5曲や、BWV109「Ich Glaube, Lieber Herr, Hilf Meinem Unglauben(われ信ず、尊き主よ、信仰なきわれを助けたまえ)」の第6曲にメロディの引用が聴かれる。

(MIDI関係は、Tanubach氏のサイトへリンクを張らせていただきました。http://jsbach.blog68.fc2.com/)

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