2007/08/28

Todd Oxford「Finesse」

私は中学~高校~大学1年と、吹奏楽の中でずっとバリトン吹きであった。いっぱい練習したけれど、ヘタクソもヘタクソで、音色はひどいわ、さらに音程に関しては今思い返してみても顔を覆い隠してしまうほど恥ずかしいわで、自分の演奏に関しては何ともな思い出しか残っていない(笑)。が、バリトンサックスの持つ独特の中低音域サウンドは、アルトやテナーよりもなんとなく魅力的に思えたし、コントロールも楽だったしで、楽器そのものは好きだったっけな。

そんな経歴もあり、バリトンサックスのことはけっこう身近に感じている。バリトンサックスによる以前ドルチェ楽器に立ち寄って倉田さんと話したときに、話題になった(というか、こちらから話題に出した)CD。トッド・オックスフォード Todd Oxford氏のアルバム、「Finesse(Equilibrium EQ 22)」。私が初めて手に入れた、全編バリトンのアルバム。久々に引っ張り出して聴いている。

・フランク「ソナタ」
・バッハ「無伴奏チェロ組曲第一番」
・ボザ「即興とカプリス」
・ボノー「ワルツ形式によるカプリス」

特別にヘンな委嘱現代作品があるわけではなく、弦楽器からの改作(どちらも大曲!)と、アルトのために書かれた超有名無伴奏曲を、バリトンで演奏してしまったというもの。下手に取り組むとただのキワモノにしかならないであろうが、この録音は凄いのですよ!どこまでも隙のない音楽作りが好感度高し。

たとえばフランク。実は、この録音で初めてこの作品に触れたせいか、もうヴァイオリンによる演奏は軽すぎてしまってなかなか聴けないほど。深いヴィブラートを伴う暑苦しく太い音色で、ピアノパートもソロパートと一緒に高潮してゆくさまは、眼前でライヴが繰り広げられているかのよう。しかし音程や音色が崩れるわけでないのも立派。第3楽章で第2主題が回帰したときの強靭な慈しみさはどうだろう?第4楽章の、まるで一編のドラマを見ているかのような構造等々、挙げていけばきりがない。

後に続く無伴奏作品も、バリトンサクソフォンならではの音量・音色の変化と、バリトンサクソフォンならざる超高運動性能(!)を発揮しつつ、最後までまったく飽きさせずに聴かせてくれる。やや濃厚すぎるきらいもあるが、技術的に完成された上にさらに、オリジナリティ溢れる解釈(ヴィブラートの位置が特徴的)を付加した「無伴奏チェロ組曲」。そして、お相撲さんが体格に似合わずクラシック・バレエを見事に踊っているかのような、「ワルツ形式のカプリス」…唖然、次の瞬間には拍手喝采。いやはや、単なるネタCDでは、全くもってない!

オックスフォード氏のオフィシャルサイトで、一部が試聴できるようだ。フランク「ソナタより第4楽章」、バッハ「無伴奏チェロ組曲よりプレリュード」、ボザの「カプリス」、ボノー「ワルツ形式のカプリス」他。

バリトン・サックスのCDと言えば…栃尾氏の「影の庭(Meister Music)」、ライリーのサクソフォン作品集と一緒に、ようやくゲットした。そのうちレビューします。

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