2007/04/06

Frederick Hemke「Music for Tenor Saxophone」

このLP、見つけて注文した直後に復刻されることを知った…間が悪い。ま、良くある事だ。

フレデリック・ヘムケ Frederick HEMKE氏の演奏によるテナーサックス・アルバム「Music for Tenor Saxophone(Brewster Records BR 1204)」が本日到着。今回も売り手が発送を忘れており、到着まで5週間もかかったが、無事で良かった。

ヘムケ氏は独奏者、教育者として名高いアメリカのサクソフォーン奏者。教育者としては、ノースウェスタン大学の教授として数々の名手を輩出しており、日本からも大室勇一氏や雲井雅人氏、佐藤渉氏などが師事している。教育者としての名声に比べて、プレイヤーとしての知名度は意外に低いのだが、それもこれも、残された録音が極端に少ないことに起因していると思われる。

このLPは、「The American Saxophone」とともに、ヘムケ氏のプレイヤーとしての全盛期を捉えた貴重な盤だ。録音は1971年。収録曲は全てテナーサクソフォンのための作品である。新井さんの「Fantasia」に先駆けること30年、こんなテナーサックスアルバムが出ていたとは…。

・James DiPasquale - Sonata
・William Duckworth - A Ballade in Time and Space
・Walter Hartley - Poem for Tenor Saxophone
・M. William Karlins - Music for Tenor Saxophone

それにしても、名前すら聞いたことのない曲ばかりだ…。ハートレーは、サクソフォンのために多く作品を書いていることで知っていたが、その他の作曲者は初耳。どんな音が飛び出してくるものか、ドキドキしながら早速図書館に持ち込んで聴いてみた。

端的に感想を言ってしまえば、面白い曲、そして素晴らしい演奏、ということに尽きる。DiPasqualeはジャズ・ミュージシャンだとのことだが、スリリングな和声を多用したクールな雰囲気が◎、Duckworthの「Ballade」は、キーノイズや重音、フラッター、グロウを多用した密度の高い音空間に惹かれた。「Poem」はいまいち魅力を感じなかったが、Karlinsの「Music...」は、モノローグカデンツァやフラジオのキメが面白い。

そしてヘムケ氏の演奏!高音から低音まで濃密なテナーサクソフォンの音色は、あの輝かしいアルトサックスの音色を思い起こさせる。その音で畳み掛けるような高難易度のフレーズの応酬をこなしていく様子には、ため息すらついてしまうほど。長い間にわたって、廃盤になっていたのがもったいないほどだ。

ちなみに、この不思議なジャケットは「The Leap(跳躍)」なるタイトルの抽象画だということだが、なんとヘムケ氏自身の手により描かれたものだとのこと。なんとなく、収録曲の雰囲気にマッチしているようなジャケットではある。しかし、サックスの名人である上に、こんな趣味までお持ちとは…いやはや。

一つだけ文句があるとすれば、収録時間か。全収録時間が27分というのは、いくらLPと言えど短すぎないか?他のテナー作品も聴いてみたかった。

ごく最近、「The American Saxophonist」というタイトルで復刻されたので、興味がある方はどうぞ。というか、この復刻CDなんとかして手に入れたいのだが、いまだ入手できずにいるのがもどかしい。入手された方はぜひ教えてくださいませ。

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