2006/11/27

No Man's Land

以前投稿した記事(こちら→トンでもないCD) に書いたCDをゲットしたのでご紹介。結局、とある知人を通じて音だけ入手することになった。

1. フランク・ザッパ - FZ for Alex (originally for Saxophone?)
2. フィル・ウッズ - ソナタ (originally for Alto Saxophone)
3. グラハム・フィトキン - GATE (originally for Soprano Saxophone)
4. エンリコ・ピエラヌンツィ - Elisions du Jour
5. パクイト・ドリヴェラ -小組曲 (originally for Saxophone?)
6. 吉松隆 - ファジイバード・ソナタ (originally for Alto Saxophone)
7. カルロ・ボッカドーロ - エレジー マイルス・ディヴィスの思い出に (originally for Trombone?)
8. フランコ・ダンロレア - トレント

アレッサンドロ・カルボナーレ Alessandro Carbonare 氏(クラリネット)と、アンドレア・ディンゴ Andrea Dingo 氏(ピアノ)のアルバム「No Man's Land(CVLD07000)」。カルボナーレ氏と言えば、リヨン歌劇場管弦楽団やフランス国立管弦楽団、スーパー・ワールド・オーケストラの主席を務め、ソリストや教育者としての名声も高い有名な奏者。何年か前に知人が来日時のコンサートを聴きに行ったらしいが、それは良いコンサートだったとのこと。ブラームスのようなロマン派には、イタリア人ならではの「歌」で、そして現代モノには圧倒的なテクニックと美音でと、とにかく器の広い奏者なのだ。

そしてこのCD。セルマーのサポートを受けて、2003年に録音・発売されたアルバムだそうだ。もう何度か聴いたけれど、こいつは凄い!最近聴いたCDの中では、いちばんのヒット。

何が凄いって、まずサクソフォンのために書かれた曲をBbクラリネットで演奏してしまっていること。須川さんの演奏で慣れ親しんだ、あの吉松隆「ファジイバード・ソナタ」がBbクラリネットで演奏されているのだ!ちょっとサックスをかじったことのある人であれば、衝撃的ではないか?

ファジイバードだけではない。フィル・ウッズ「ソナタ」に、グラハム・フィトキン「GATE」、ジャズサックス奏者のドリヴェラ d'Riveraの作曲した「小組曲」と、フランク・ザッパのメドレー「FZ for Alex」…クラシックの範疇を超えながらも、一貫してコンセプチュアルなプログラム。この選曲のセンスは、他のクラシック・クラリネット吹きには到底、真似できないだろう。

クールでカッコよくて、クラシックなのかロックなのかジャズなのか…こういう世界はサックスの独壇場であるとばかり思っていたが、クラリネットでもできるんだな(しみじみ…)。失礼ながら、こんなに幅広い表現を持っている楽器だとは思いもしなかった。

吉松、ウッズ、フィトキンの作品はサックスで聴いたほうがさすがにしっくり来ると思ったが、これはこれでクラリネットがクラシックを飛び出した形態の極限形と断言できる。演奏テクニック、ノリ、即興演奏、音色、どれをとっても文句のつけようがないすばらしいCDだ。

フィトキン「Gate」はオリジナルのソプラノ・サックス版の演奏を聴いたことがないが、ここでのカルボナーレ氏の暴れっぷりはすさまじいの何の。アルバム収録曲中で白眉の演奏だと思う。ウッズやファジイバードの即興部分も聴きモノ(サックスではこうは吹けないだろうな)。ザッパのメドレーは特殊奏法も生かしながら、ネジが一本外れた感じを表現しているし、小組曲での愉悦感も楽しい。

あらゆるクラリネット吹きにオススメ。クラリネットを見る目が変わるとはこのことだ。サックスを吹いている方も、ちょっとキワモノを聴いてみたい方はどうぞ(笑)。

日本語でこのCDについて書かれたページが見つからなかった。日本ではまだほとんど知られていないCDなのだろうか?もったいないなあ。

0 件のコメント:

コメントを投稿