2006/10/20

ソプラノ・サックスアルバム

ここ最近クラシック・サクソフォンのCDは国内版、海外版問わず増えてきた、とも言えるだろうけれど、アルバム全編がソプラノサックスで演奏されたCDはほとんどあるまい。ソプラノサックスのために書かれた素敵な作品は数も多いのだから、アルトで演奏されたプログラムの合間に入れるだけじゃなくて、全部ソプラノ!というアルバムがあっても良いと思っていたのだけれど。

アンディシュ・パウルソンのCDは有名ではないだろうか?珍しいSACDのアルバムだということで、この業界ではちょっぴり有名なのかもしれない。ただ、トドメを刺すかと言えば、ちょっと「?」。演奏内容とプログラム、どちらもさらなる充実の可能性を残しているだけに、ちょっと残念だった。

などと思っていたら、昨年遂に?待望のオール・ソプラノサックス・アルバムがリリースされた。過去の記事にも書いた、ケネス・チェ氏のCDで、「Lyric Soprano(Crystal Records CD658)」というアルバム。ソプラノオンリーなのは、タイトルどおりだ(笑)。

ケネス・チェ氏は香港出身、インディアナ大学に留学してルソーの下で学び、現在はアイオワ大学のサクソフォーン科教授を務めている。「Sonate(RIAX RICA-2002)」の一部の楽曲でも聴かせてくれたソプラノの音色はそのままに、今回はさらに充実したテクニックが冴える。録音もRIAXのものとは比べ物にならないほど良い。

フォーレ「3つのロマンス」やピアソラ「タンゴの歴史」は、編曲物として幅広く愛奏されて久しいが、あらためて今回の録音には魅力が満載。どんな高音までも良く伸びる音色と、安定したフレーズ感。音域を移行しても、ひたすらにニュートラルな音色。ソプラノ吹いている人に一度は聴いてほしい。

オリジナルもベダール「ファンタジー」やウォーレイ「6つのダンス」には惹かれる。しかしジェローム・ノレの15分に及ぶ大曲「サックス・ドゥ・ヴォヤージュ」は、テクニックに終始せず、ノリや小細工のようなエンターテイメント性をも前面に押し出した演奏!15分を録音で聴かせられる奏者、クラシック・サックスの世界でも稀なんだろうなあ。もちろん、曲自体の楽しさもあるとは思うが。

私自身はと言えば、ソプラノサックスはほとんど吹けないのだが、たまに吹くとコントロールの難しさにほとほと閉口するのが常。チェ氏の演奏を聴くと、まるで同じ楽器を吹いているとは思えない(笑)。

チェ氏の公式ページ(→http://www.kenneth-tse.com/)で買えます。ソプラノ吹きな皆様、ぜひどうぞ。

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