2006/09/07

デザンクロ「四重奏曲」の譜面ミス?

デザンクロ「四重奏曲」の解釈で常々問題になる「あの」二箇所だが、今まで受けた何回かのレッスン、また本曲の初演者であるマルセル・ミュール四重奏団のLPを聞いてほぼ確信した事柄を載せておこうと思う。

・第一楽章[H]2小節前 シンコペーションリズムについて
 問題→第一楽章でのひとつの山場であるこの箇所だが、ソプラノのシンコペーションが楽譜上では16分音符に直すと[3-3-3-3-4]であるのに対し、アルト、テナー、バリトンは[3-4-3-3-3]である。楽譜どおりに吹くポリリズムも面白いのだが、なーんか合わせづらいしイマイチパワーも足りない。

 結論→[3-4-3-3-3]は記譜、もしくは浄書のミス!である。ここはアルト、テナー、バリトンも[3-3-3-3-4]と吹くのが正しい。
 その昔この曲に取り組んでいた際、四重奏のレッスンを頂いたお二人のサックスの先生曰く、「友人の作曲家にもアドバイスをもらったが、ここのリズムがずれるのは音楽的におかしい」「このほうが合わせ安いし、初演者も[3-3-3-3-4]で吹いているのだから演奏を聴いたデザンクロが訂正のアドバイスをしたのだろう」とのこと。
 このたび世界初録音のLP(MHS)を入手し、実際の音で確認をすることができたが、やはりミュール四重奏団は[3-3-3-3-4]だった!デザンクロと親交があったミュールのこと、ほぼ間違いないと考えて良いだろう。

・第三楽章[M]2小節目 テーマの変奏、楽譜上はスラーだけれど…? 問題→第3楽章の最終部のテーマの変奏にはスラーがついているのに、なぜかいろんなCDを聴くとスタッカート、外国の奏者もスタッカート、アンコンでもみんなスタッカート…なぜ?

 結論→デザンクロは最初スラーつきで書いたが、実演を聴いた後アドバイスをしてスタッカートで吹かせるようにした。つまり、スラーを取ったほうがデザンクロの意図に沿っている、ということになる。
 これもやはりサックスの先生に聞いた話だが、デザンクロが実演を聴いた後にアドバイスをしたらしいのだ。なぜ初稿のままLeducから出版されてしまったのかは謎だが、曲の完成後出版の準備が早々に進んでいたことが推測できる。
 ミュール自身、またはミュール直系の比較的初期の録音(ミュール四重奏団、ギャルド四重奏団、デファイエ四重奏団)がスタッカートで吹いているため、間違いないだろう。
 中高生のアンコンとかでは知らずにスラーを取っちゃうけれど、実はそんなウラがあったのですね。

とまあ、こんな感じでまとめなおしてみました。人気のある曲だし、これからの季節はまさにアンサンブルシーズン。演奏する機会があって、万が一このエントリを見つけた方に、ちょっとした参考になれば幸い。

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