2006/08/20

遥かなる風景

ジェローム・ララン氏のCDがインターン中に実家に届いていたようで、ちょうど実家に戻ったこの機会に早速聴き始めている。

アルバムタイトルは「Paysages lointains(CREC-audio 05/048)」。フランスのメイヤー財団の助成を受けて、パリ国立高等音楽院が作成したディスク。ジャケットには「のだめ」でもおなじみのコンセルヴァトワールの新棟が描かれている。この新棟、湾曲した屋根が随分と斬新な印象を残すけれど、デザイン性ばっかりで機能性はさっぱり…という話を聞いた事があるなあ。

ゆめりあホールで演奏されたジョドロフスキ「Mixtion」や夏田昌和「西、あるいは夕べの秋の歌」、さらにマントヴァーニ「Troisieme Round」、ピアソラ「天使のミロンガ」、エスケッシュ「ショーロス」が収録され、各トラック間をララン氏の完全即興が繋いでいく。アルバムを最初から最後まで通して聴く事を前提にしている、ということか。

各曲について少し書いていくと…「Troisieme Round」は弦楽器や管楽器の中規模のアンサンブル+四種のサクソフォーン持ち替えソロという20分に及ぶ大曲。ララン氏のこのソロ以外にヴァンサン・ダヴィッドによる録音もある/「Mixtion」はパリ国立高等音楽院の卒業試験の課題曲としてかかれたサクソフォーンソロ+ライヴエレクトロニクスの曲。ジャンヴィエ・アルヴァレの「On Going On」みたい。関西で活躍するサクソフォーン奏者井上麻子さんが卒業試験で演奏した…というような話を聞いたことがある/「西、あるいは夕べの秋の歌」はドゥラングル氏がレコーディングしたので有名だろう。尺八のような不安定な音程感をソプラノサックスでコントロールし、東洋的なイメージが付きまとう/「天使のミロンガ」は言わずと知れたピアソラの名曲。ここではサクソフォーンのソロに、ピアノ+チェロ+コントラバスという編成で演奏されている/「ショーロス」はサクソフォーンソロ+ピアノ+弦楽四重奏という編成。現代的な響きと古典的な響きがうまく折り重なって興味深い。

…ふう、疲れた(笑)。「Mixtion」を手元に置けるのは嬉しいなあ。

ララン氏、どの曲も大好きでしょうがない!という気持ちがにじみ出ている。なんと言ったらよいだろうか、どの曲に対しても本当に真摯に向き合って、自らの持てる音楽を凝縮させた結晶のような録音だと思う。しかも気持ちだけではなく、きちんとテクニックが追従しているあたりはさすが。

アルバムをプレーヤーにセットして最初から聴いていけば、編成も様式もコロコロ変わってずいぶん楽しくて、次はどんな響きが飛び出すのだろう?とワクワクさせられるけれど、実は一番楽しんでいるのは、演奏しているララン氏本人なのかも。

トラック間をつなぐ完全即興もある種聴きモノだけれど、その即興トラックに参加しているピアニストがアレクサンドロス・マルケアス氏でびっくり。最近発売されたハバネラ四重奏団のアルバム「L'engrenage」で作曲家としてのクレジットを見たばかりだ。

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