2006/05/16

無伴奏CD二題

友人から借りたラーフ・ヘッケマ氏演奏のパガニーニ「24のカプリス(MDG 619 1379-2)」は噂どおり物凄かった。無伴奏だけでふつうCD作るかねー、その心意気は店頭で見かけたときから感じていたけれど、実際にサックス一本でここまでやるか、空いた口がふさがらない演奏とはまさにこのこと。訳あって耳にする機会の多い24番も、とてもかっこいい!

楽器のことは良くわからないけれど、クランポンのサックス(赤ベル?)を使っているようだ(いつだったか試奏したときに飛び上がるほど美しい音が出た記憶がある)。ヘッケマ氏の本ディスクでの音色はどんな難所でも涼しげで、超絶フレーズなど、まるで眼前で水しぶきが飛び散るかのよう。

もうひとつ最近聴いた無伴奏もの。オーボエのフランソワ・ルルー氏演奏の無伴奏ディスクで、Fontecから出ているライヴ盤(Fontec FOCD-9210)がすごい。2002年の来日時にたしか野中貿易が全面的にプロデュースしたコンサートで、さすがに当時はそれほど興味もなかなかったのだが、いつのまにかディスクとして発売されていた。今年の初めにラッキーなことにこのCDが図書館に入架し、ベリオやブリテンが入っていたこともあって最近借たというわけ。

ブリテン「オヴィディウスによる6つの変容」はハルモニア・ムンディ盤でもその超級の演奏に腰を抜かしたが、今回は表現力が増しての再録といった感じ。音色も以前より柔軟性に富み、聴きやすくなったとの印象を受けた。こんなppが出せるんだ!と、そのよく通る弱音と、対照的にパワー溢れる強音とが、曲の構造をまざまざと見せ付ける。まるで2つの楽器で吹き分けているようなめくるめく音色の変化など、聴いているうちにオーボエであることを忘れてしまいそうだ。

ベリオ「セクエンツァ7a」は期待通りのすばらしい演奏。特殊奏法もなんのその、技術が技術のために終わらずに音楽の本質を突く…といった賛辞はありきたりすぎかも。舞台裏に2人のオーボイストを携えてのスピード感溢れる録音だった。持続音の音程がちょっと低いのは気のせい?

しかし収録された中でも、シルヴェストリーニの「5つの絵」の圧倒的な技術には特に驚かされた。「オーボエって吹くのが難しい…」という一般常識を根本からひっくり返し、オーボエという楽器のすばらしさが頭の中に刷り込まれていく。たった5曲を聴き終えるまでに、あまりに凄すぎて眩暈が(笑)終わった瞬間に「今聴いていたのはオーボエ…?」とまで思うが、しかしこれこそが「オーボエ」であり「音楽」なのかも。

ヘッケマ氏もルルー氏も、無伴奏ですら説得力ある音楽を紡ぎだすことのできる類稀な現代ヴィルトゥオーゾ。こういった、抜群のテクニック、フレージング、音色を持つ奏者たちにさらに魅力的な音楽を奏でて楽器の限界を打ち壊し続けてほしいものである。願わくば自分も…と言いたいことだけれど、さすがにこういった演奏を聴いてしまうと怖気づきます(笑)。

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