2006/01/08

サクソフォーンフェスティバル2005 その2

サクソフォンフェスティバル2005の感想その2。協会員によるコンサート。

最初は宗貞氏によるデュオ。ルクレールの二重奏といっても、未出版のロンデックス編E-durのものなのだそうだ。短いコラール風の序奏を抜けたとたんにすさまじい跳躍を繰り返す二本のサクソフォン。音のパレットが限定されている以上、(サクソフォンが苦手な)アルペジオが多くなってしまうのは仕方がないと思うが、スマートな美しい演奏だった。宗貞氏の、まるで生まれたときから身についているるような、自然なフレージングセンスに耳を奪われた。

ガヴロッシュのサンジュレはまさに室内楽。pp~pを基調とした美音が耳に心地よい。古典作品だからというのもあるが、サクソフォンの運動性能や音量を生かした曲も聴きたかったような。

クノールのサクソフォンソナタは石川県で活躍されているという筒井裕朗氏による演奏。このソナタはドイツのサクソフォン奏者シーグルト・ラッシャーに献呈され、ナチス政権の中で埋もれたままになっていたが、1989年にラッシャーの努力により出版、さらに2003年にはジョン=エドワルド・ケリーによって改訂版が出版されたという作品なのだそうだ(うろおぼえ)。そんな緒方英子さんの解説があったものだからフラジオがたくさん出てくるのかなーと聴いていたら、三楽章の真ん中に一発と、四楽章最後に一発、高い音が出てきました。最後のフラジオを決めた後の筒井氏は、なんだかものすごくかっこよく見えたなあ。

トラクシオン・アヴァンの演奏でプッスール「秘密の園の眺め(禁断の園への眼差し)」。グリッサンドを繰り返す現代的な書法の中に、中間部でふと織り込まれるバロックの響き。その調性が美しくて、なんとも素敵な曲、そして演奏に出会えたものだと思った。聴衆も大変に集中し、密度の濃い時間が流れていた。機会さえあれば取り組んでみたいかも…難しいか。

板橋区演奏家協会による金井宏光編ラヴェル「クープランの墓」は、最後によく聴かれるリゴードンを排し、替わりにトッカータを持ってくるという選曲、さらに編曲も良かった。演奏は、最終部に向けてテンションが爆発する、という派手な響き。成田徹氏のソプラノのすさまじいテクニック、いやあすごい。

そして須川さんの「ウズメの踊り」。同じスウェルツ作品である「クロノス」の100倍くらい難しそうな感じだが、やっぱり須川さんは須川さんらしい演奏だった。演奏にアイデンティティを感じられる演奏家ってなかなか現代にあってはいないのだから、やっぱりすごい人なんだなあ。

一番楽しみにしていたキャトル・ロゾー演奏の照屋正樹「Hommage a Ravel」。恥ずかしながらキャトル・ロゾーは初めて聴いたが、やっぱり上手い。縦の線とか発音はあまりあってないんじゃないかとも思ったが、むしろその大河のような音楽の流れに観客を飲み込んでいく感じだ。個人が主張しあって、その主張のぶつかりがとてつもなく魅力的な音楽に化けているというか…気がついたら曲が終わっていた。ぜひ今度は正統派フランス作品の演奏も聴いてみたい。…つづく。

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