2005/07/19

表現力の強さ・弱さ

前日のエントリのつづき。サクソフォーンの世界のことに置き換えてみると…。

日本人が国際コンクールに出場するとき、日本人が外国の楽器を使って外国の作品に取り組んでいるわけだからハンディは様々にあろう。しかしもっとも顕著な弱点として、コンクールの場での日本人の表現力の弱さが挙げられる、ということを著名なサクソフォーン奏者が話しているのを聞いたことがある。技術力は優れているがそれ以上に伝わるものがないと次の予選に進むことはできない、といった類の話だった。

外国人の表現力の豊かさはすごい。細かいところを吹き飛ばしても、全体のバランスが崩れても、感情をストレートにそのまま楽器に乗せる態度はある意味清々しくもある。でも、日本でそれをやると失笑買いますね…。たとえば日本のコンクールでなら「細かい部分にこだわりすぎて全体のバランスが~」とか「構成感に乏しい演奏~」とか言われてしまう。だからといって構成を考えた上での演奏は全体を見渡せば美しいが、瞬間の煌きがない分つまらない。日本での線引き、難しいです。

ここまで書いてふと思った。1992年の第7回東京国際音楽コンクール室内楽部門、トルヴェール・クヮルテットとアポロ四重奏団がぶつかった年だ。アポロが第一位で、トルヴェールが第二位だった。トルヴェールがアポロに負けたのって、表現力の強さが原因なのかもしれない。たしかにアポロの演奏の主張の強さは誰が聞いても鮮烈なものだし…。

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