2016/12/04

Amstel Quartetからメレマ氏が去ることに

昨月末のニュースであるが…オランダの中堅四重奏団で、これまでいくつも素晴らしいCDをリリースしていることで有名なAmstel Quartetから、バリトンのTies Mellema ティエス・メレマ氏が脱退することになったそうだ。後任はHarry Cherrin氏。

メレマ氏は、昨年中頃にがんを患い、化学療法により治療を試みて現在回復途中にある。数ヶ月前より演奏活動は再開しているようだが、諸々の事情により、脱退を決めたそうだ。そのメレマ氏コメント全文はメレマ氏のブログに記載されているが、(ざっくり言うと)これから音楽活動で重点的に取り組んでいくべきことを、Amstel Quartetではない他の場所で実現していくことにした、というのが脱退の理由なのだそうだ。

メレマ氏は、オランダの現代サクソフォン界における非常に有能な奏者の一人である。あのボーンカンプ氏が、自身のアルバムにおけるヒンデミットのデュオの相手としてメレマ氏を選んでいることからも、周囲からの期待の大きさが分かるというものだろう。2008年には料理中に右手を包丁で負傷し、しかしそれにめげず左手メインで演奏可能な作品を委嘱・収録した「On the Other Hand」をリリース、2015年のがん発症・治療のあとも演奏活動を行えるまでに回復している。様々な困難に直面しながらも、それに負けず演奏を続けている。Amstel Quartetを去るのは非常に残念だが、ぜひ今後もメレマ氏ならではの演奏を続けていただきたいところだ。

Amstel Quartetとしての活動は20年に及ぶ。ライヴで聴く機会はなかったが、「Straight Lines」を始めとする数々のアルバムは素晴らしく、何枚か所持、ブログで紹介したこともある。技術的な充実度は言わずもがな、取り組むレパートリーは古典・現代のバランスが取れており、演奏内容も充実と、良いことずくめ・隙のないアルバムばかりだった。今後もまずますカルテットとして円熟した活動を展開してくれる…と期待していただけに、今回のニュースは残念だった。しかし、新生Amstel Quartetが、これまで以上に魅力的なライヴ活動や、アルバムリリースを行ってくれることに期待したい。

最近のメレマ氏の演奏より。バッハの「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ」と、ジョン・コルトレーンの即興演奏を組み合わせたパフォーマンス。

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