2016/08/31

演奏会情報:愛知県長久手市の須川展也×ボーンカンプ

あのアルノ・ボーンアンプ氏が、愛知県にやってくる。

ボーンカンプ氏の来日は2013年、須川氏が東京芸術大学の特別招聘教授として招いて以来だろうか。バッハ作品を中心とした作品を演奏するコンサートを開き、好評だったと聞く(私は聴きに行けなかった)。

昔は頻繁に日本を訪れリサイタルなども開いていたが、最近あまり来日してくれないのが寂しい所…と思っていたら、なんとこのたび愛知県へとやってくるそうで。しかも、共演は20年以上の友人、須川氏!プログラムは、比較的新しめのものが多い。お互いの最近のお得意レパートリー(須川氏:組曲、ボーンカンプ氏:アルル)に、デュオのピアソラ、長生淳。きっと面白い演奏会になるはずだ。

ボーンカンプ氏、CDを何枚か出しており、最近のCDを聴くと「昔の録音に比べておとなしくなったなあ」などと要らぬ感想を持ってしまうのだが、実際の演奏に触れると、その熱さに驚く。近づいたら火傷しそうなほどの熱量で、観客を一気に巻き込むのだ。バエズの「アルルの女」は、私もボーンカンプ氏の実演に触れたことがあるのだが、理屈では説明できない何かに頭がぼうっとしたことを思い出す。つべこべ言わず、せっかくの来日の機会、ぜひ聴いてみるのが良いと思う。

個人的には、またトルヴェール×アウレリア、やってほしいなあと思っているのだが…(アウレリアはだいぶメンバーも変わってしまった)。

…と、話が逸れたが、長久手市は、他に観光場所も多い。遠くからお越しの方は、愛・地球博跡地のサツキとメイの家や、トヨタ博物館に行ってから、コンサート鑑賞というのも良いのではないかな。

…って、また話が逸れたが、期待の新星~充実の中堅を経て、今や世界を代表する大御所でもある須川氏とボーンカンプ氏、この二人のデュオを聴く機会はこれから先もそうそうないはずだ。興味がある方は、ぜひ伺ってみてはどうだろうか。

【アルノ・ボーンアンプ×須川展也 with 小柳美奈子 Saxophone Duo Recital】
出演:アルノ・ボーンアンプ(sax)、須川展也(sax)、小柳美奈子(pf)
日時:2016年9月17日(土曜)14:00開演
会場:長久手市文化の家 森のホール
料金:前売・当日/一般4000円、前売のみ/フレンズ会員3,500円、前売・当日/学生2,500円
プログラム:
J.S.バッハ - G線上のアリア(須)
F.サイ - 組曲~アルト・サクソフォンとピアノのための Op.55(須)
S.バエズ - 「アルルの女」による幻想的協奏曲(ボ)
A.ピアソラ/J.ブラガート編 - ブエノスアイレスの春・夏・秋・冬(須&ボ)
長生淳 - パガニーニ・ロスト(須&ボ)ほか
詳細:
https://www.city.nagakute.lg.jp/bunka/bunka_ie/ongaku/sugawaarno.html


2016/08/28

エネミー・ゼロとマイケル・ナイマンと

先週金曜日、体調を崩して寝込んでいたのだが、そんな中ふと思い出したことがあった。遥か子供時代に遊んだゲームのことである。

タイトルは「エネミー・ゼロ」。往年の名機セガ・サターン用に開発されたゲームで、ディスク4枚からなる超大作。時は32bitゲーム機戦争時代、ソニーのプレイステーションと、セガのセガ・サターンとが、雌雄を決する戦いを繰り広げていた最中に発売された。開発元のWARPが「Dの食卓」に続くインタラクティブ・ムービーとして送り出したのが本作である。

最終的に60万枚を売り上げるヒット作となったが、ゲーム内容については賛否両論を巻き起こした。当初プレイステーション向けに発売される予定だったものを急遽セガ・サターン向けに変更したとか、敵が"見えない"ため音を頼りに倒すしかないとか、セーブ/ロード回数に制限があって数多のユーザーが最初からやり直しを強いられたとか、シナリオが映画「エイリアン」と酷似しているとか、とにかくゲームを取り巻くエピソードや内容に関してネタが尽きなかった。総合的に言えば、注目度に比して必ずしも評価が高いとはいえないゲームだった。

しかし、音楽が妙に印象的であった。シンセサイザーを中心とした、ポピュラー・スタイル、ロック・スタイルといった音楽とは一線を画するものだったのだ。ごくごく少ない音数の主題が印象的なピアノ・ソロ、しかし場面によっては時折何とも形容しがたい厚みの音楽が流れる。実は、この「エネミー・ゼロ」の音楽を担当していたのが、なんとマイケル・ナイマンだったのだ。演奏は、マイケル・ナイマン・オーケストラ。空を切り裂くようなソプラノサクソフォンはジョン・ハール、ガリガリした刻みのバリトンサクソフォンはアンディ・フィンドン、透明かつ叙情的なソプラノはサラ・レオナルド…と、ナイマン周辺のお馴染みの音楽家達がクレジットされている。

当初、マイケル・ナイマンはこのゲームに音楽を提供することを渋ったようだ。しかし、ディレクターの飯野賢治氏の説得により、提供を決めたようだ。しかも、驚いたことに出来上がった作品の数々は過去作品の流用ではなく、完全なオリジナルであった。それどころか、後年ナイマンはDziga Vertov監督のサイレント映画「これがロシヤだ(カメラを持った男)(1929)」に音楽を付ける、というプロジェクトを手がけているが、その際「エネミー・ゼロ」の音楽を転用している。憶測にすぎないが、よほどの自信作であったと思われる。この事実からも言えるのだが、ゲームの内容としては疑問が残るが、音楽の内容はピカイチだと思っている。

私がマイケル・ナイマンの音楽を認識したのは、大学入学の直前、ジョン・ハールが演奏する「蜜蜂が踊る場所」や、アポロ・サクソフォン四重奏団が演奏する「トニーへの歌」を聴いた時だ…と、長いこと思い込んでいたのだが、そこから遡ること6年前に、マイケル・ナイマンの音楽に触れ、ジョン・ハールやアンディ・フィンドンのサクソフォンを聴いていたのだなあと、驚きと嬉しさがあったのだった。

"オブサンズ"にてしらこばと音楽団演奏

うっかり書き忘れていたのだが、先週末に参加した演奏の話。"しらこばと音楽団"のメンバーとして、軽井沢のフレンチ居酒屋"オブサンズ"で演奏してきた。終わってみれば、1泊2日、計7ステージという、ハードな内容となったが、楽しい2日間であった。参加メンバーは、わんわんさん(sa)、ニジマスさん(sat)、mckenさん(b)、kuri(t)。

南浦和駅からニジマスさんご夫妻の車で移動。渋滞もなく、天気も良く、快適なドライブ。2時間半ほどで目的地の"オブサンズ"へと到着した。普段は森下で営業しているが、夏季限定で軽井沢で営業しているお店だとのこと。1階部分がレストラン、2階部分が裏方用のフリースペースとなっている。1階の一角には、ドラムス、ベース、PAが完備されており、オーナー(バンドでサクソフォンを吹いているそうだ)の音楽好きが出ているなあと感心しきり。

夜は2階の仮設ベッドで休むことができたが、さすが軽井沢、涼しくてとても過ごしやすかった。到着後、ほぼずっと雨が降ったり止んだり、という天気で、散歩や観光には厳しい天気で、その点ちょっと残念だったかな。

8/19の夜に3ステージ、8/20の昼に2ステージ、8/20の夜に2ステージ。1ステージあたり5~10曲程度。以下の20曲程を使いまわしながら、全部で40曲分くらい吹いただろうか。リハーサルは基本行わずにその場の一発勝負なので、頭フル回転、私も昔はもう少し初見能力もあったんだが、やっぱり錆びついてるなあ(汗)などと思いつつ、なんとか(皆様に助けられつつ)こなすことができた。

September
L-O-V-E
Someone to Watch Over Me
Close to You
Someday My Prince Will Come
バードランドの子守唄
トトロメドレー
勇気100%
海の見える街
やさしさに包まれたなら
銀河鉄道999
君の瞳に恋してる
Pink Panther
はじめてのチュウ
サウンド・オブ・ミュージック・メドレー
津軽海峡冬景色
長崎は今日も雨だった
酒と泪と男と女
さそり座の女
時の流れに身をまかせ
赤いスイートピー

共演者の皆様、ありがとうございました!

2016/08/20

演奏会情報:大阪市でのミーハ・ロギーナ&李早恵コンサート

大阪市で開催される、ミーハ・ロギーナ氏と李早恵氏のデュオ、"Duo Kalypso"の演奏会をご案内。

2007年のサクソフォーン・フェスティバルへの出演以来、日本でもおなじみのデュオだ。華々しいコンクール入賞歴は、聴けば納得という感じ。高い技術力、見事な音楽性など、万人を納得させる演奏を聴かせてくれる。今年の4月にも関東で私自身聴くことができたが、やはり素晴らしく、しかも聴くたびにさらに進化していることに驚いたものだ。

珍しい関西方面での演奏会、今までこのデュオの演奏会を聴いたことが無い方はぜひ聴くべきだし、また、これを聴き逃すと次の開催がいつになるか分からない(今回は個人の企画)。また、デニゾフ、シュルホフ、吉松、フランク等、スタンダードの極み、というプログラムを徹頭徹尾取り上げるという点でも興味深く、そういった意味でも注目のコンサートである。

私も、時間さえあれば聴きに行ってしまいたいくらいなのだが…(笑)。

【Duo Kalypsoコンサート】
出演:ミーハ・ロギーナ(sax)、李早恵(pf)
日時:2016年8月26日(金) 18:30開場 19:00開演
場所:大阪市阿倍野区民センター小ホール(JR天王寺・地下鉄御堂筋線天王寺・近鉄阿倍野橋から徒歩10分、地下鉄谷町線阿倍野・阪堺上町線阿倍野から徒歩3分)
料金::2500円(当日500円増)全席自由
曲目:
E.デニゾフ - ソナタ
E.シュルホフ - ホット・ソナタ
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
C.フランク - ソナタ
チケット申込:
http://sskproject.net/index.php/contact
から各項目を入力していただくか、
ticket@sskproject.net
に名前、メールアドレス、必要枚数をご連絡ください。

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2016/08/16

第43回プリンセスペペ コンサート(松下洋、細川慎二、小倉大志、塩塚純)

松下洋君は、これまで5回ほどこの会場でのコンサートを行っており、会場の名前は知っていたのだが、伺うのは初めてだった。今回は、小倉くんのライヴ・ツアーの宣伝の意味合いが強い催し。

20席弱の小さなスペース。さすがに4人のパワーに対して会場の大きさとしての物足りなさはあったが、間近で音を浴びるのもたまには良いものだ。

【第43回プリンセスペペ コンサート】
出演:松下洋、細川慎二、小倉大志、塩塚純
日時:2016年8月13日(土)16:00開演
会場:プリンセスペペ(西横浜)
プログラム:
R.インガム - マルコム夫人のリール
M.ルグラン - キャラバンの到着
L.シフリン - 「燃えよドラゴン」のテーマ
久石譲 - 久石譲メドレー
B.ウィラン - トリップ・トゥ・スカイ
D.エリントン - A列車で行こう
G.ガーシュウィン - バット・ノット・フォー・ミー
伊藤康英 - 琉球幻想曲
オムニバス - ユーミン・メドレー
オムニバス - ラテン・メドレー
R.ピーターソン - ゴスペル・フィーバー(アンコール)

雑多に様々な曲が並んだが、クラシカルであろうとジャズであろうと、強いパワーとともにビシっと決めてくるあたり、やはりこの4人(全員様々な場所で活躍されている)の地力の高さとセンスの高さを感じる。私のようなアマチュアの奏者が、縦と音程を必死に合わせた所で、決して超えられず表現できないようなグルーヴを、様々な場面で感じた。どういった過程を経て、そのようなものを身に着けていくのか、そんなことにも考えが及んでしまう…のだが、まあそもそも練習量や触れる音楽の多さは圧倒的に違うわけで、そんな考えを及ばせることも無意味かもしれない。

なんだか、知っている曲が多いとそんなことまで考え始めてしまってダメだなあ(笑)もっと単純に愉しめば良いのだが、、、(いや、もちろん楽しかったのだけど)。

特に、アドリブ(と思われる箇所)も交えた、最終プログラム「ラテン・メドレー」やアンコールの「ゴスペル・フィーバー」は圧巻。音楽は屋外へも漏れ出して、道行く人が足を止めるほどだった。

演奏会情報:小倉大志氏のライヴ・ツアー

フランスのブーローニュ音楽院で学ぶサクソフォン奏者、小倉大志くんのライヴ・ツアーをご紹介。

かつてだいぶ長いこと一緒に演奏していたが、数年前からフランスに留学、ブーローニュ音楽院ジャズ科のVincent Le Quang氏に師事し、その後、クラシック科のJean Michel Goury氏に師事している。現在、クラシック科の一年目を終えて、シーズン終わりのヴァカンス中のため、一時帰国中。それに合わせて全国ツアーを組んだとのこと。

先日、小倉くんが参加したプリンセスぺぺのライヴ(まだ感想を書いていないが…)も楽しかった。本ライヴにも期待大、といったところ。これまで取り上げたことのある自作のほか、旭井翔一氏に委嘱した新作も演奏されるそうだ。さわりの参考演奏を聴かせてもらったところ、とてもカッコ良く、フルバージョンの仕上がりが楽しみな内容だった。

残念ながら私は自分の予定と重なってしまい、公演を聴きに行くことができないのだが、お時間ある方はいかがだろうか。

【Ogura Taishi Project: My Space Improvisation】
出演:小倉大志、松下洋、塩塚純、細川慎二、崔勝貴(以上sax)、田代あかり(pf)、秋元修(dr)、長谷川慧人(bs)
日時・会場:
2016年8月20日(土曜)19:00開演@和光大学ポプリホール(東京公演)
2016年8月26日(金曜)19:30開演@名古屋栄Live DOXY(名古屋公演)
2016年8月28日(日曜)18:30開演@南港サンセットホール(大阪公演)
2016年8月31日(水曜)20:00開演@New COMBO(福岡公演)
料金:一般3000円、学生2000円(当日各500円増)
問い合わせ:
concert.live.info@gmail.com

詳細は以下のチラシからどうぞ(クリックして拡大)


2016/08/15

帰省

昨日8/14から長野の実家に帰省。

着いた瞬間は「長野もずいぶん暑いなあ」という感じだったが、夕刻になると涼しい風が吹いてきて、一晩空ければ寒いほど。過ごしやすくて嬉しい。たぶん雨が降ったのもあるだろう。雨が降ると一気に気温が下がるのもこちらならでは。

帰省のために乗った飯田線という地元のローカル線で、バカンス期間を使ってオランダから来日中だというギターを携えたBart Corverという若者(アムステルダム音楽院在籍中だそうだ)に話しかけられた。なんでも、関西の音楽祭に参加した後、飯田線沿線に住むインド出身のチベット音楽演奏家のところへ遊びに行くのだとか。武満徹やらJacobTVやらの話でひとしきり盛り上がった。まさか見ず知らずの外国の方と飯田線の中でJacobTVの話をすることになるとは思わなかった。

2016/08/13

井上ハルカ サクソフォンリサイタル~影と光の対話 B-Side~

関東圏初となる井上ハルカさんの本格的な演奏機会であった。聴きに行くことができて良かった!

安定したベース技術に、ご自身がこだわったプログラミング。また、演奏のみならず「場」としての雰囲気にも神経を使った、完成度の高い、素晴らしいリサイタルだった。この内容に対して、DACという会場は少々小さかったかも知れない、と思ってしまったほどであった。

制御され抑制されたヴィブラートや、音域に関係なくコントロールの効いた音色など、さすがCNSMDPの出身!という感心ごとはもちろんあったが、さらに感じ入ったのはよく響いて拡がっていく輝かしい音色だった。これはもう、理屈ではなく出自(関西方面)がそうさせるのだろうか…と邪推。ベースとなる音色の美しさがしっかりしているので、近代だろうが現代だろうが、どんな曲でも説得力がある。

【井上ハルカ サクソフォンリサイタル~影と光の対話 B-Side~】
出演:井上ハルカ(sax)、松岡優(pf)、有馬純寿(electro)
日時:2016年8月12日(金) 開演19:00 開場18:30
会場:管楽器専門店ダク・スペースDo (東京都新宿区百人町2-8-9、管楽器専門店ダク地下 新大久保駅より徒歩約3分)
プログラム:
クロード・ドビュッシー - アルトサクソフォンと管弦楽のための「ラプソディー」(ピアノ伴奏版)  
ステファノ・ジェルヴァゾーニ - ソプラノサクソフォン独奏のための「ファネス2」[日本初演]
高昌帥 - アルトサクソフォンとピアノのための「ぬばたまの…」  
クリス・スウィシンバンク - ソプラノサクソフォンとエレクトロニクスのための「something golden in the night」
ピエール・ブーレーズ - サクソフォンとテープのための「二重の影の対話」
田中カレン - アルトサクソフォンとエレクトロニクスのための「ナイト・バード」

冒頭のドビュッシーは、ピアノの面白さが際立った。自分がイメージとして持っていた「およそこのくらいの響き」という枠を押し拡げるような、ちょっと聴いたことのない響きが連続した。和声の響きのみならず、各声部がほぐれていくような、柔らかい音並び(テンポも少し控えめ)。ピアニストの松岡さんは、この作品を「初めて弾いた」とおっしゃっていたので、そういうバックグラウンドがそうさせた部分もあったのかもしれない。サクソフォンとしても、難易度の高いヴァンサン・ダヴィッド編の楽譜を相当作りこんであった。技術的な部分をしっかりとクリアして、室内楽としての妙を聴かせるような演奏だったと思う。

ジェルヴァゾーニ作品は初めて聴いたが、特殊奏法を多分に含めつつ、耳に優しい音の並び(まるでポピュラー音楽のような)が、時折混ぜ込まれるのが面白い。全体的にはかなり難易度が高い。その中で作品がもつ繊細さをしっかりと表現することは大変だと思うが、お見事!のひとことである。音符間の時間間隔の伸縮のような雰囲気から、何となく日本作品のようなイメージも受けたが、そういった要素は関係ないみたい。

高昌帥作品は(この日演奏された作品群の中では)際立ってわかりやすく、かつ、聴きやすいものであり、もっと多くの方に演奏されて然るべきものだと思った。もともと、長瀬敏和氏に献呈されたとのこと。サクソフォンの叙情性や機動性を見事に織り込んでいる内容。ハルカさんの演奏は(もちろん基本的には冷静なのだが)ある瞬間では作品へと没入して、その中から何が出てくるかわからないものを引っ張りだしてくるような、そんな個性も垣間見えて、作品と、演奏者の性格との相性の良さ、のようなものも感じた。

休憩を挟んで、後半はエレクトロニクス作品。スウィシンバンク作品は、舞台上に配置されたギミックにスポットを当てて浮かび上がる影絵と、演奏がリンクしていく、というもの。サクソフォン、そしてエレクトロニクスの響きがマッチして、機械のパントマイムを見るような、なんとも言えない不気味さを演出していた。あのギミックはどんな仕組みなのかなあと(意外と回転がスムーズでびっくり。モーターはUSMかな…?)ぼんやり考えるなど。

本日のメインとなる大作「二重の影の対話」は、こちらもかなり気合いの入った演奏。正直、この作品は音運びが速くかつ鋭くて、耳と頭がついていかないのだが、裏付けのある技術と、作品そのものの魅力を伝えようとする立ち振舞いには、大きな感銘を受けた。ちなみに、スピーカーから流れるプレ・レコーディング・パートについても、上手いなあと思いながら聴いていたのだが、なんとハルカさんご自身の録音とのこと。準備も相当大変であったはずだ。エレクトロニクスは有馬氏だったが、相変わらずのみごとな音響セッティングであった。

「ナイト・バード」は、実質的なアンコールのような扱いだった。照明を効果的に利用し、まるで海の中のような音響・視覚効果で魅せ、最後を締めくくるに相応しい。

ということで、お盆二日目、なかなかボリュームのあるプログラムを聴くことができ、嬉しかった。普段あまり活動していない関東圏でのリサイタル開催に対しては、準備や宣伝等難しさがあったと思う。またぜひ関東でも大きな機会を作ってやってほしいものだ。

打ち上げにもお邪魔し、初めてお会いする方も多く、楽しい時間を過ごしたのだった。

写真は、スウィシンバンク作品で使われていたギミックの本体。何の形なのだろう?

2016/08/10

演奏会情報:井上ハルカ氏のリサイタル

金曜日に迫っている井上ハルカさんのリサイタル@DACをご紹介。井上ハルカさんは、ESA音楽院、リヨン地方音楽院を卒業したのち、パリ国立高等音楽院のドゥラングル・クラスに入学。第一過程、第二課程、そして第三課程DAIを修了している。その後帰国し、現在は日本で活躍中。何度か演奏に接したり、録音を聴いたこともある。小柄な身体からは意外なほどのパワフルさ、そしてさすが、最高学府で学んだならではの正確性が印象に残る。今回のリサイタルにあたり、ハルカさんの「演奏のアイデンティティ」といったものを感じられると良いなと、とても期待している。

プログラムとしても、非常に面白い。ジェルヴァゾーニの独奏作品は、以前井上さんが取り上げたこともあるが、ちょっと聴いたことのない(個人的には、音運びにポピュラー・ミュージックの遠いエコーを感じる)響きで、面白いと思う。また、ブーレーズ「二重の影の対話」は、これはちょっと前までヴァンサン・ダヴィッド氏くらいしか演奏できなかったはずだが、国内でも大石将紀氏や佐藤淳一氏につづいて、少しずつ演奏できる奏者が増えているんだなあ…などと感じ入ったり。スウィシンバンク作品は、YouTubeにあるようなギミックの仕掛けも見られるかな…?

ということで、なかなか大掛かりで面白そうなリサイタルになりそうだ。7月の関西公演も好評を博したとのこと。金曜日はみなさんぜひDACへ。

【井上ハルカ サクソフォンリサイタル 影と光の対話 - B-side -】
出演:井上ハルカ(sax)、松岡優(pf)、有馬純寿(elec)
日時:2016年8月12日(金) 開演19:00 開場18:30
会場:管楽器専門店ダク・スペースDo (東京都新宿区百人町2-8-9、管楽器専門店ダク地下 新大久保駅より徒歩約3分)
料金:前売 3,000円 当日3,500円
プログラム:
クロード・ドビュッシー - アルトサクソフォンと管弦楽のための「ラプソディー」(ピアノ伴奏版)  
ステファノ・ジェルヴァゾーニ - ソプラノサクソフォン独奏のための「ファネス2」[日本初演]
高昌帥 - アルトサクソフォンとピアノのための「ぬばたまの…」  
クリス・スウィシンバンク - ソプラノサクソフォンとエレクトロニクスのための「something golden in the night」
ピエール・ブーレーズ - サクソフォンとテープのための「二重の影の対話」
田中カレン - アルトサクソフォンとエレクトロニクスのための「ナイト・バード」
チケット・問い合わせ:
080-3401-0794
harukainoue.contact@gmail.com

2016/08/06

【探しています】ミュールの四重奏演奏SP【拡散希望】

マルセル・ミュール氏が率いていたカルテットのSP盤のうち、以下の2枚をお持ちで、お貸しいただける方を探しています。

Scherzo du quatuor n 41 (Haydn-Meyet)
Ave verum (Mozart‑Meyct)
Columbia df 1805

Chanson d'autrefois (G. Pierne)
Chanson de grand‑maman (G. Pierne)
Columbia df 1807

現在、木下直人さんがミュールの四重奏SPの復刻決定盤準備を進めています。テーブル、アーム、カートリッジを完璧にレストアされたピエール・クレマンで固めた環境で復刻すべく、上記2枚を探しています。もし周りにSPをお持ちの方がいらっしゃいましたら、情報提供いただきたく…何卒ご協力よろしくお願いします。

連絡先:kuri_saxo@yahoo.co.jpもしくはFacebookメッセージにて

東京都吹奏楽コンクール予選を聴きに

西新井文化ホールで開かれていた、東京都吹奏楽コンクール予選として開かれていた、第56回東京都職場・一般吹奏楽コンクールを少しだけ聴きに行った。

夏らしい気候、楽器を持った出演者が溢れるロビー、演奏に向かう出演者と終えた出演者のそれぞれの表情、ロビーの中継テレビ前の群がり、何団体も連続する怒涛/超速の舞台転換、あちこちから聴こえる下馬評…「携帯電話をお切りください」のプラカードを持ったスタッフが客席内を練り歩いているのは初めて見たが(東京都大会オリジナルかな?)。

中学~高校~大学と、コンクールに何度も出演した身にとっては、良い思い出も悪い思い出も様々だが、、、いや、どちらかと言えば、結果を残せなかったという意味で、特に中高は悪い思い出のほうが多いのだが…吹奏楽コンクールの独特の雰囲気がフラッシュバックするには十分な時間だった。当時の思いや緊張感が蘇ってきて、なんだかムズムズしてしまう。演奏を聞いている最中も、演奏よりはその雰囲気のほうが頭の大半を占めていたかも。

ロビーでぼんやりしていたところ、久々に、指揮者のYさんにお会いできたのは嬉しかった。

サクソフォン的興味としては、ジャック・イベールの「祝典序曲(元々はオケ曲で、サクソフォンが1本入っている)」と、ジョン・マッキーの「アスファルト・カクテル(ESPがサクソフォンラージ版で演奏した映像がYouTubeにアップされている)」が演奏されており、ちょっと楽しかった。