2016/07/10

デアクライス・ブラスオルケスター 第7回定期演奏会

雨の降りしきるなか、デアクライス・ブラスオルケスターの定期演奏会を聴きに伺った。文京シビックホールは、以前プリモアンサンブル東京の演奏会を聴いて以来。客席の椅子の角度が不思議ですよね(笑)。

【デアクライス・ブラスオルケスター 第7回定期演奏会】
出演:佐川聖二(指揮)、デアクライス・ブラスオルケスター
日時:2016年7月9日(土)14:00開演
会場:文京シビックホール大ホール
プログラム:
酒井格 - たなばた
矢藤学 - マーチ・スカイブルー・ドリーム
樽屋雅徳 - 白磁の月の輝宮夜
G.プッチーニ/後藤洋 - 歌劇「蝶々夫人」より
S.バーバー/C.カスター - アダージョ
O.レスピーギ/木村吉宏 - バレエ組曲「シバの女王ベルキス」
真島俊夫 - シーガル(クラリネット:佐川聖二)(アンコール)
真島俊夫 - 五月の風(アンコール)

この団体の演奏は、佐川聖二氏の還暦記念コンサートにて聴いたことがあった。当時、まだ結成1年足らずだったはずだが、よく練られたサウンドに感銘を受けた覚えがある。その印象は、今回の演奏会においても変わること無く、さらに安定度や地力の高さに印象的を受けた。木管、金管、打楽器ととにかく基礎的な鳴りやアタックについて隙がなく、とにかく「上手い」と思えるバンドだ。とても広いホールだが、しっかりと響きを会場に満たしている。

佐川氏の的確なバトン。さすが吹奏楽界を代表する指揮者のひとりだ。じっくり振り方を観察しても、特別なことをやっているようには見えないのだが、瞬間瞬間のバランスの作り方が絶妙。ポリフォニックに織りなされる各フレーズの、特に裏で鳴っている対旋律を前面に押し出すような作り方が心地良い。その対旋律の、フレーズの持続性を重視しているようにも聴こえる。

特に吹奏楽コンクール向けに取り組んでいると思われる矢藤作品と樽屋作品、そしてメインのレスピーギ作品は、完成度の高さが伝わってきた。「白磁の月の輝宮夜」は、断片的なフレーズが徐々に集積されて、クライマックスを形作る、とにかく演奏者側にとっては演奏に難儀する作品だと思うのだが、バンドの性能もあって、高い完成度に仕上がっていた。「シバの女王ベルキス」は、輝かしい音が響いたパワー系の部分はもちろん、繊細なソロなども聴き応えがあり、メインに相応しい内容だった。ところで、フルートが樽屋&レスピーギ作品で何度かソロを取っていたが、安定的かつ規範となるような演奏で、唸らされたのだった。

アンコールは真島俊夫氏追悼。佐川氏がクラリネットを持ってサクソフォン協奏曲「Birds」から「シーガル」を演奏するというのには驚かされたが、感動的というか、ちょっと感じたことのない心の動かされ方をした。ここぞ、という箇所で織り込まれるヴィブラートまでをも交え…クラリネットって魅力的だ。「五月の風」も、久々に聴いたが良い作品だ。

ということで、大満足の演奏会。願わくば、これだけ質の高い演奏ができるのであれば、取り上げる作品についてもさらなるコダワリが欲しいな。吹奏楽は久々に聴いたが、やはり作品や編曲によって良し悪しがあるというか…いやまあどの世界でもそうなのだが。

いやー、でも吹奏楽、良いですね。これだけ良い演奏を聴くと、何だか自分も吹きたくなってしまうなあ。

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