2016/06/14

大栗司麻サクソフォンリサイタル(3/12)

だいぶ前になるが、当時の多忙にかまけてレビュー未執筆。他に、サクソフォーン・フェスティバル、塙さんのリサイタルについても追って書かなければ。

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お知り合いになって以来ずいぶん経ち、"栗"つながりということもあってお会いすれば挨拶をする仲ではあったのだが、演奏をまとめて聴くのは初めてだった。今回の演奏会は、大栗さんが2015年度に企画した計3回のリサイタルシリーズのうちのひとつで、その最後を飾るものであった。(おそらく)3回のうちもっともヘヴィなプログラムとなった。

【大栗司麻サクソフォンリサイタル】
出演:大栗司麻(sax)、永原緑(pf)
日時:2016年3月12日(土)16:00開演
会場:アーティストサロン Dolce
プログラム:
W.オルブライト - ソナタ
R.ムチンスキー - ソナタ
P.クレストン - ソナタ
K.フサ - エレジーとロンド
A.K.グラズノフ - 協奏曲

前半はアメリカのソナタ3曲。密度の高い音色は、日本の奏者だなあという印象を受けるし、独特のフレージング感覚は、やはりフランス仕込みだなあ、という印象を受ける。日本人のフランス留学帰りの奏者って、両国で学んだことを上手くミックスしている方、多いよなあ。

オルブライトは、若干遅目のテンポで、楽譜をクリアに見せ、丁寧に音符を紡いで行く演奏。テンポ感は徐々に気にならなくなってきて、"Mad Dance"にはぐっと引き込まれた。ピアノの永原氏も、実に良く弾く人(伴奏っぽくなく、器楽ソロ的な巧さが随所から感じられる)で、サクソフォンとピアノの互いの妙技に聴き惚れた。ムチンスキー、クレストンは、いずれも大栗氏のキャラクターに非常にマッチしていると感じた。聴き手にとっても分かりやすいということもあり、客層(ご年配の方が少し多め)の共感度も、この2曲が特に高かったように感じた。

休憩を挟んで、フサとグラズノフ。これだけ重いプログラムを、ドルチェのアーティストサロンのような場所で説得力持って聴かせ続けることは、逆に難しいと思うのだが、見事なバランス感覚で最後まで突き進んだ。グラズノフの後半なんて、なんだかこれまでのサクソフォン人生を振り返るかのような(いや、もちろんまだまだこれからだとは思うのだが)説得力で魅了した。

自身で"Quarante ans がんばろうシリーズ(大栗さんのブログより)"と銘打ったうちの一環だけあって、実に密度の濃い内容、そして聴き応えのあるリサイタルだった。そういった区切りのみだけではなく、ぜひ今後も積極的に演奏活動を展開してほしいものだ。

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