2016/06/30

演奏会情報:松下洋リサイタルvol.5 with ニキータ・ズィミン

おなじみ、松下洋さんのリサイタルが間もなく開催される。

いつも思うのだが、やはり彼の「やりたいことを実現させる」そのパワーは見事という他ない。さらに企画の側面のみならず、演奏クオリティも毎度期待以上のものを提示してくることは、本当に凄いと思う。そういった演奏者の演奏会にこそ足を運びたいものだ。

さて、今回はなんと、ロシアの俊英、Nikita Zimin氏を招いての演奏会。演奏家のサブタイトル通り、ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールで1位を獲った奏者だ。松下くんとは、ストラスブール・フィルハーモニーの演奏会で共演(ズィミン:ラーション、松下:ロセ)している。松下くんの演奏の鮮烈さは、このブログでも何度か取り上げたので、そちらに譲るとして、ズィミン氏の凄さを少々書いておきたい。

グネーシン音楽アカデミーでマルガリータ・シャポシュニコワ氏に師事したのち、フランスに渡りパリ国立高等音楽院でクロード・ドゥラングル氏に師事。この間、ディナンのコンクールを始めとする数多くの国際コンクールで入賞している。私的な印象だが、特にアレンジ作品を得意としているように感じる。パリ国立高等音楽院の修士課程の卒業試験では、フランク「ヴァイオリン・ソナタ」、デニゾフ「ソナタ」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」を、サクソフォンとピアノで演奏し(特殊編成が流行している同音楽院の修士課程試験にあっては、逆に奇異に映るほど真っ向勝負の曲・編成)、見事審査員全員一致のTres bienを得た。正統派路線を相当突き詰めることで、サクソフォンの可能性を追求している、まさに求道者といった雰囲気の演奏家だ。

サラサーテは、YouTubeに演奏がアップされている。ぜひいちどご覧頂きたい。


そのズィミン氏と、あの松下くんの演奏会である。面白くならないはずがない。7/1はぜひフィリアへ(私も行きます)。

【松下洋サクソフォンリサイタルvol.5 ~6thアドルフ・サックス国際コンクール第1位ニキータ・ズィミンを迎えて~】
日時:2016/07/01 (金) 開場 18:30 開演19:00
会場:青葉区民文化センター 東急スクエア5F フィリアホール
料金:全席自由 一般3000円、学生2500円
プログラム:
セコーン - パズル・ソナタ
旭井翔一 - ジャズ・ソナタ
ピアソラ - エスクヮロ
ジュナン - ヴェニスの謝肉祭変奏曲
プーランク - トリオ 他
問い合わせ:sax.subscription@gmail.com

松下くんから来た紹介文がなかなかアツかったので、転載。

今年は遂に第5回目を迎える事になりましたのでご案内させていただきます!毎年コンセプトを決めて、サクソフォンにしか出来ないアプローチを発信する場としてリサイタルをさせていただいております。
実は、サクソフォンの世界大会には大きなものが2つあります。そして一昨年になりますが2014年はサクソフォンにとってのコンクールイヤーでした。4年に1回のアドルフ・サックス国際コンクール、3年に1回のロンデックス国際コンクールが重なるという、12年に1度の年だったのです。
今回はその内の1つ、最も権威のあるサクソフォン国際コンクールで2014年に優勝を果たしたロシア人、ニキータ・ズィミンを迎えて演奏会をする事になりました。彼はまだ日本に来たことはないですが、勿論現在も世界中で引っ張りだこです。彼の演奏を初めて聴いたのは6年前、ロシア人の血を感じる力強く壮大な演奏は強烈で、その頃から「凄いロシア人がいる」と話題になっていましたね。そして圧倒的な超絶技巧、、、これが同い年だと、、、?!wという感じで、自分にとっても凄く刺激的なプレイヤーです。
世界最高峰のプレイヤーの1人と言っても過言ではないニキータを日本に紹介したく、リサイタルのゲスト以外にも東京・名古屋・大阪とツアーも組みました。さぁ、ニキータに負けない為にはどうしようなんて考えたのですが、アメリカの共同委嘱コミットにより作曲された「パズル・ソナタ」という曲の日本初演を担当させていただく事にしました!
ダグラス・オコナーの声掛けにより、ティモシー・マカリスターやジョーン・サンペン、ジェローム・ラランにオーティス・マーフィーと一緒に「その話乗ったぁ」的な感じで参加させてもらったのでこの機にやってみよう的な感じです。新しいアメリカンピースの誕生も是非ご覧ください。
そして、いつも仲良しの天才作曲家、旭井君のジャズ・ソナタも演奏します。昨年フランスでも演奏しましたが、もちろん超大好評の作品でした!
お楽しみにしていてください✨
それから、サクソフォンだけでは演奏会は出来ませんので、今回も素晴らしいピアニストに共演していただきます。永井キーシンという、東京芸大に入ったと思ったらすぐにパリ音楽院に行っちゃった早熟の天才でございます。力強くて構造力豊かな演奏はきっと心に残る演奏となるでしょう。
是非お楽しみにしていてください!!お越し頂けますと嬉しいです!よろしくお願い致します(p‘・ω・〝q)

2016/06/29

デニゾフ「ヴィオラ協奏曲」初演録音

デニゾフ「サクソフォン協奏曲」の原曲である「ヴィオラ協奏曲」の初演録音がYouTubeにアップされている。ヴィオラがユーリ・バシュメット、シャルル・デュトワ指揮ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー管弦楽団という豪華な取り合わせ。1986年9月2日、ドイツでの録音とのこと。

じっくり聴きこんだわけではないが、とにかくバシュメットの素晴らしい演奏が耳に残る。一歩踏み込んで作品を冷静に聴いた時、確かにサクソフォンにマッチしそうな音運びだ…特に中低音での持続音は、サクソフォンへの相性の良さを感じることができる。



以前、ブログに書いた曲目解説は、こちらから。しっかり聴いていけば、サクソフォン版との差分などをピックアップできるかもしれない。

2016/06/25

マルセル・ミュール、映画音楽を奏でる

6/24は、マルセル・ミュール氏の誕生日。1日過ぎてしまったが、ミュール氏ネタを1点。

その昔、このブログでもさらっと話題にしたことがあったが、Michelangelo Antonioni監督の映画「Cronaca di un Amore(1950年)」において、BGMの演奏をマルセル・ミュール氏が担当している。

私は、全編が収録されたDVD(ただし、海外版なので観ても内容がさっぱり)を持っているが、随所で表れるサクソフォンの演奏は感動的だ。まるで、1930年代録音のイベールが蘇ったかのような、圧倒的なヴィルトゥオーゾ・スタイルの演奏から、イタリア映画にピッタリの甘くとろけるような音色まで、ミュール氏の妙技と音楽性を堪能することができる。このレコーディングについては、ポラン氏にインタビューした時にも、少しだけ聞くことができた。ポラン氏曰く「イタリアに招聘されてレコーディングを始めたが、なんと全てワンテイクで録り終えてしまった」とのことだ。

YouTubeに予告編がアップされており、BGMとしてちょうどオープニングの音楽があてられている。ご存知ない方はぜひ一聴を。

2016/06/24

Ties Mellema氏のSoundCloudアカウント

オランダのサクソフォン奏者、ティエス・メレマ Ties Mellema氏のSoundCloudに、なかなか面白い演奏が揃っている。

デニゾフ「サクソフォン協奏曲」、ドナトーニ「ホット」、P.v.オンナ「クラッシュ・オブ・カルチャーズ」、バートウィッスル「パニック」など、大曲&玄人向けのラインナップが揃う。いくつか聴いてみたが、演奏クオリティも抜群。気になる方はぜひチェックしてみては。

https://soundcloud.com/ties-mellema

メレマ氏、ボーンカンプ氏の後継と目されるほどの存在であったにも関わらず、事故による手首腱損傷治療や、最近ではガンの発症による闘病生活を送るなど、演奏そのものへフルパワーを割くことが難しい(と思われる)状況にあり、なかなかいちファンとしてもどかしくある。手首腱損傷の際は、左手だけで演奏できる作品を集めた「On the Other Hand」なるアルバムをリリースするなど、転んでもただでは起きない、強い精神力に驚かされた。現在のガン治療(いったん寛解期には入ったようだが)も無事に終えてほしい。

2016/06/22

マルセル・ミュール独奏SP復刻準備(木下直人さんから)

おなじみ、木下直人さんに微力ながら協力する形で、マルセル・ミュール氏の独奏SPの復刻準備を進めている。

Pierre Clementカートリッジの復活によってRTFと同等の再生環境が得られたところまで来ていたが、このたび、ターンテーブルについてもPierre Clement H4L6の復刻が完了し、決定盤として復刻することが決定したのだ。イコライジング(プリアンプ)はマランツ#1、そのラインアウトからCDR録音機へと接続し、焼き付けている。

取り急ぎ、ヘッドフォンを使って前回の復刻との聴き比べを行った。繊細な違いではあるが、高周波成分を強調してみると、明らかに今回のほうが明瞭に聴こえる、音場が一歩近づいたというか、"開いた"エッジの効いた音色が鮮烈な印象を持って迫ってきた。もう少し良いヘッドフォンかイヤフォンを買って、聴いてみよう。

ノイズ非処理の音のリアルさについては、今更述べるまでもないだろう。仮にノイズ処理をした場合、原音に影響を及ぼさずに処理をかけることは(ノイズが発生する仕組み上)ほぼ不可能。ノイズ非処理とすることで、原音の響きをいっそうダイレクトに感じることができるのだ。

イベール、ヴェローヌ、ディロン等、有名どころの他に、デュリュフレなど珍しいSPからの復刻も入る予定。解説も準備するので、期待してお待ち下さい。

協会誌"サクソフォニスト"校正開始

次回のサクソフォーン協会誌"サクソフォニスト"の初稿が届き、校正を開始している。まずコングレスの記事を見始めた所で、記事間で整合をとるのが大変そうな印象。あまり時間もないので、がんばらなければ。

他には、田名部有子さんの記事が、大変興味深かった。内容については発行まで差し控えるが、あまりこういう着眼点の記事ってなかったような。それだけ少ない、ってことなのかな。

2016/06/20

フィル・ウッズ「ソナタ」の原型「Pieces」の初演録音

フィル・ウッズ Phil Woods「ソナタ Sonata」といえば、ジャズ/クラシックの語法を融合させた、サクソフォンのための有名な作品だ。本作品は、最初からこのような形で存在していたわけではなく、大きな変遷を経て現在の形に落ち着いている。

よく知られているのは、出版がKendor MusicからAdvance Musicに移った時の改訂であるが、本記事で取り上げるのはその話題ではない。初めてウッズの手による作品が世に出た時には、もっと違う形をしていたのだ。

委嘱者はヴィクター・モロスコ Victor Morosco氏。クラシックのみならず、ジャズにも精通したアメリカのサクソフォン奏者である。彼がカーネギー・ホールで開催したリサイタルに臨むにあたり、ウッズに新作を委嘱。そうして生まれたのが、サクソフォン、ピアノ、ベースのトリオ編成のために書かれた、「Pieces (Four Moods) for Saxophone, Bass and Piano」と呼ばれる作品だ。初演は成功し、好意を持って迎えられたようだ。

その1962年12月2日のリサイタルにおける初演録音が現存し、以下のYouTubeリンクより聴くことができる。サクソフォンはもちろん、委嘱者であるモロスコ氏。ピアノはAbraham Stokman氏、ベースはJohn Beal氏である。一部音飛びが残念であるが、当時の様子を非常によく伝える音質に驚かされた。



現在の「ソナタ」とは別の作品と言えるほど、全く別の作品ではあるが、全体の構成や、フレーズの共通点など、「ソナタ」の原型であることがはっきりとわかる。第4楽章などは、ベースのオスティナートが非常に緊張感のあるテンションを生み出しており、興奮させられる。

こののち、1974年には、ウッズはベースを編成から削除し、第1楽章に即興パートを挿入して、「ソナタ」と名付けた。1994年には別の楽章にも即興パートを挿入し、これがKendor Musicから出版されたバージョンとなった。1997年にはさらに改訂が施され、Advance Musicから出版されている。

2016/06/19

荒木浩一氏演奏の無伴奏チェロ組曲iTunes配信開始

九州を中心に活躍するサクソフォン奏者、荒木浩一氏のJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1-5番」の録音が、iTunesに登場した。

iTunesへのリンク:
https://itunes.apple.com/jp/album/cello-suites-no.1-no.5/id1121463694

「無伴奏チェロ組曲をバリトンサクソフォンで」、というアプローチは、比較的昔から存在し、また、CD化されているものも多い。例えば、Henk van Twillert氏の「Bach: Cello Suites」、Todd Oxford氏の「Finesse」、栃尾克樹氏の「影の庭」「エヴォカシオン」などである。"無伴奏"作品、かつ、同曲は非常に基本的な音楽の構造をしているということもあって、奏者の個性やアプローチの違いが如実に表れる、という点で、注目すべき内容と思う。

荒木氏の演奏を少しだけ試聴してみたが、バリトンサクソフォンの持つパワーのある音色を基礎として、横向きへの繋がり(フレーズの持続性)をも併せ持つ、そのような演奏だと感じた。実は私自身はiTunesユーザーではないので、全曲を聴く…というわけにはいかないのだが、いずれ入手しようかと考えている。

試聴(プロモーション用の動画)は、以下のYouTubeからどうぞ。

2016/06/17

Tokyo Rock'n Sax "プログレナイト"@音響ハウス

とても興味深く、面白いライヴだった!そして、実に贅沢な時間だった。

ライヴの様子を収録した、"ライヴ録音"や"ライヴDVD"というものは良くあるけれど、今回のライヴはその逆。レコーディング・セッションの一部にお客さんを入れて、レコーディングをしながら聴いてもらう、という試みとのこと。主催=仕掛け人がどなたなのかイマイチわからなかったのだが、こういった企画が実現するとは…これからのTokyo Rock'n Saxの活動がますます楽しみになってしまった。

銀座の中心街から少し離れた場所にある、新富町駅最寄りの「音響ハウス」。そのスタジオNo.1が今回の会場だった。いわゆるレコーディングスタジオ、その言葉通りの会場で、10~20人ほどの聴衆が、巨大なミキシング・コンソールの後ろに座って、巨大なスピーカー(Dynaudio M4のカスタム・バージョン、体験したことのないようなクリアな音が発せられていた)から出てくる音を楽しむ、というもの。最初こそ、いつもとの違いに(聴き手ながら)戸惑ったものの、非常に贅沢な環境、そして流れ出てくる音にいたく感激してしまったのだった。

音響システムについては公式ページを見ていただくとして、映像について少々。録音と同時に録画も行われていたのだが、スタッフの方を捕まえて聞いた所、メインのカメラはSONY α7Sだった。同カメラから、非圧縮の4K映像をHDMIで出力させ、ミキサー室に置かれた4Kディスプレイで即時出力する、というシステムが組まれていた。そうやって出力された映像の、美しいこと!しかし、映像に関して、確かにお高い機材とはいえ、ベースとなる機材は頑張ればコンシューマからでも手が届く…というもので組まれていることに、最近の映像技術の進歩とコモディティ化の波を感じたのだった。確かに、いまやスマホで4K映像が撮れる時代ですからね。

【Tokyo Rock'n Sax "プログレナイト"】
出演:松下洋(sat)、山下友教(sa)、東秀樹(a)、加藤里志(at)、丸場慶人(t)、塩塚純(b)、川地立真(b)、田中拓也(bs)、山本真央樹(drs)
日時:2016年6月16日(木曜)19:15開演
会場:音響ハウス Studio No.1
プログラム:
Rush - YYZ
Yes - Siberian Khatru
U.K. - In the Dead of Night
U.K. - Time to Kill
Yes - Heart of the Sunrise
Genesis - Dancing with the Moonlit Knight
Yes - Roundabout
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
King Crimson - Red
Toto - Child's Anthem (encore)

プログラム内容は、プログレ尽くし。なんと"俺得"な内容であることか!イエスの「シベリアン・カートゥル」「ラウンドアバウト」「燃える朝焼け」や、キング・クリムゾン「21世紀の精神異常者」「レッド」など、同一アーティストの名曲を一気に聴けたのが楽しかった。しかも、大好きな曲ばかりだ。「燃える朝焼け」また、音響環境の素晴らしさゆえ、普段のライヴでは聴くことができない細かい部分まで、耳をダンボのようにして聴くことができた。アレンジのこだわりや、繊細なバランス・コントロールなど、新たな発見がいくつもあった。演奏者は、緊張もするしおそらく大変だったことと思うが…。

後半は、スタジオ後方のブース内で、演奏者と同じモニター・ヘッドフォンを使って聴く、というものだったのだが、これがまた面白い。聴きたい奏者の出力レベルだけ上げてみたり、パンで左右に振ってみたりと、そんな遊びができる、これまたなかなか無い経験であった。最後、アンコールが終わった後には、スタジオ内に移動し、各奏者が手に持つタマゴ型スピーカーから、録音したばかりの「燃える朝焼け」を聴く、というオマケの素敵イベントもあった。

いやー、楽しかったなあ。お誘いしてくれた松下くん、ありがとうございました。10月には、おなじみカフーでの次のライヴも予定されているとのこと。絶対行こう!

2016/06/15

塙美里サクソフォン・リサイタル ~ジュリアン・プティ氏を迎えて~(3/14)

塙さん、そしてご主人の大西さん、さらに、フランスのサクソフォン奏者で、塙美里さんの師匠、ジュリアン・プティ Julien Petit氏をゲストに迎えての公演。横浜みなとみらいホールに加え、3/19には塙さんの故郷近くのホール、水戸芸術館コンサートホールATMで、同一プログラムにて再度演奏会が開かれている。

【塙美里サクソフォン・リサイタル ~ジュリアン・プティ氏を迎えて~ 初来日記念公演】
出演:塙美里(sax)、ジュリアン・プティ(sax)、大西智氏(sax)、酒井有彩(pf)
日時:2016年3月14日(月曜)19:00開演
会場:横浜みなとみらいホール 小ホール
プログラム:
C.サン=サーンス - 序奏、ロンド、カプリツィオーソ(塙、酒井)
C.ドビュッシー - 牧神の午後への前奏曲(塙、酒井)
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア(プティ、酒井)
E.d.ファリャ - 7つのスペイン民謡(プティ、酒井)
クレツマー音楽(プティ、酒井)
M.グリンカ - 悲愴的三重奏曲より第1,4楽章(プティ、塙、酒井)
A.アレンスキー - ピアノ三重奏曲第1番より第1,4楽章(プティ、塙、酒井)
C.サン=サーンス - デンマークとロシアの歌による奇想曲(プティ、塙、大西、酒井)

プティ氏の巧さは、これはもう言わずもがな。技巧云々はもはや議論できる域を超えており、クラシカル・サクソフォンを超えた表現力で、ヴィラ=ロボス、ファリャ、クレツマー音楽を見事に演奏する。キラキラとした音を浴びながら、やはり"地"の部分の違いを強く感じる。生まれた時から目に写っていた風景、聴いてきた言葉/音楽、肌で感じてきた空気が、我々日本人とは全く違うのだな…という、サクソフォンの一発の音が物申す。国外奏者の音を聴くと時折感じる、その感覚を、久々に思い出した。無伴奏で短く演奏されたアンコール(やはりクレツマー音楽)の空気感というか覇気というか、あれを出せる奏者はなかなかいないだろう。

塙さんの演奏も素晴らしかった。ご本人もブログに書いていることなのだが、初めて聴いた水戸芸術館ATMでの演奏会とは、別人のよう。自身が心から好きな語法を会得して、それを躊躇なく、高いレベルで聴衆へとプレゼンテーションできる能力を、あれよあれよという間に身に付けてしまった。共演した師との出会いがそうさせたであろうことは、容易に想像できる。そんなわけで、塙さんは塙さんで、日本人離れした演奏を繰り広げ、感心してしまった。

ピアノトリオ、ないしカルテットで演奏された後半戦は、(やや気合いが入りすぎて硬く感じられる部分もあったが)音楽の自然な流れを表現しようとする、その一点を基底に据えながら進む。サクソフォンで演奏されていながら、曲自体の魅力が伝わる部分がいくつも見え、聴きながら何だか嬉しくなってしまった。また聴いてみたいものだ。

当日の演奏の様子は、YouTubeで公開中。ライヴで聴いてこそ、とはいえ、聴き逃した方はチェックされてみては。
https://www.youtube.com/channel/UCF-H5xPXVsLG7dBf7vNxGbw

2016/06/14

大栗司麻サクソフォンリサイタル(3/12)

だいぶ前になるが、当時の多忙にかまけてレビュー未執筆。他に、サクソフォーン・フェスティバル、塙さんのリサイタルについても追って書かなければ。

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お知り合いになって以来ずいぶん経ち、"栗"つながりということもあってお会いすれば挨拶をする仲ではあったのだが、演奏をまとめて聴くのは初めてだった。今回の演奏会は、大栗さんが2015年度に企画した計3回のリサイタルシリーズのうちのひとつで、その最後を飾るものであった。(おそらく)3回のうちもっともヘヴィなプログラムとなった。

【大栗司麻サクソフォンリサイタル】
出演:大栗司麻(sax)、永原緑(pf)
日時:2016年3月12日(土)16:00開演
会場:アーティストサロン Dolce
プログラム:
W.オルブライト - ソナタ
R.ムチンスキー - ソナタ
P.クレストン - ソナタ
K.フサ - エレジーとロンド
A.K.グラズノフ - 協奏曲

前半はアメリカのソナタ3曲。密度の高い音色は、日本の奏者だなあという印象を受けるし、独特のフレージング感覚は、やはりフランス仕込みだなあ、という印象を受ける。日本人のフランス留学帰りの奏者って、両国で学んだことを上手くミックスしている方、多いよなあ。

オルブライトは、若干遅目のテンポで、楽譜をクリアに見せ、丁寧に音符を紡いで行く演奏。テンポ感は徐々に気にならなくなってきて、"Mad Dance"にはぐっと引き込まれた。ピアノの永原氏も、実に良く弾く人(伴奏っぽくなく、器楽ソロ的な巧さが随所から感じられる)で、サクソフォンとピアノの互いの妙技に聴き惚れた。ムチンスキー、クレストンは、いずれも大栗氏のキャラクターに非常にマッチしていると感じた。聴き手にとっても分かりやすいということもあり、客層(ご年配の方が少し多め)の共感度も、この2曲が特に高かったように感じた。

休憩を挟んで、フサとグラズノフ。これだけ重いプログラムを、ドルチェのアーティストサロンのような場所で説得力持って聴かせ続けることは、逆に難しいと思うのだが、見事なバランス感覚で最後まで突き進んだ。グラズノフの後半なんて、なんだかこれまでのサクソフォン人生を振り返るかのような(いや、もちろんまだまだこれからだとは思うのだが)説得力で魅了した。

自身で"Quarante ans がんばろうシリーズ(大栗さんのブログより)"と銘打ったうちの一環だけあって、実に密度の濃い内容、そして聴き応えのあるリサイタルだった。そういった区切りのみだけではなく、ぜひ今後も積極的に演奏活動を展開してほしいものだ。

2016/06/12

つくば市で練習

昨日土曜日は、およそ半年ぶりにつくば市へ。大学の先輩にあたるIさんが立ち上げた管楽合奏(吹奏楽)の初合わせ練習だった。伊藤康英先生の「古典幻想曲」他を音出し。久々の吹奏楽はとても面白く、あっという間に時間が過ぎてしまった。練習後は、近くの飲み屋さんで宴会。こちらもまた楽しかった。

まだまだ音出し、という段階ではあるが、いろいろとこれから話が進んで、いずれは演奏会という話もある。具体的な話が決まってきたら、ここでもお知らせしたいと思う。

2016/06/09

"NHK芸術劇場オープニングテーマ"について

以前NHK教育で放映されていた「芸術劇場」の最終期のオープニングテーマが、サクソフォン四重奏だったことを覚えておられるだろうか。小気味よい15秒程度のメロディで、サクソフォンを吹いている方は、誰しもが気になっていたはず。2011年3月には同番組が放映終了してしまったため、忘れられつつあるが…。

この曲がいったい何なのか、気になってNHKに問い合わせたことがある。小倉昌浩作曲「芸術劇場 オープニングテーマ」という作品なのだそうだ。ちなみに、演奏は田中靖人氏(ソプラノ)、彦坂眞一郎氏(アルト)、新井靖志氏(テナー)、大津立史氏(バリトン)、という布陣。そして、それに飽きたらず、小倉氏に問い合わせて楽譜まで入手し、手元に手書き譜のコピーがある。いつか四重奏の演奏会のオープニングか何かでやってみようかなと思っていた所、上記の通り放映終了してしまい、ネタとして成立しづらくなってしまい、お蔵入りしている。ちょっと寂しい。

2016/06/08

第5回ロンデックス国際コンクール要項速報(更新版)

だいぶ前のことになるが、参加要項の速報が更新されたので再アップ。大枠は変わっていないが、いくつか細かい修正が入っているようだ。

それにしても、とんでもない課題曲群だと改めて思う。ロンデックス氏は選曲に携わっていることと思うが、どのように課題曲が決定したのか、そのプロセスに興味がある。一次予選に、もはや古典ともいえる「9つのエチュード」が含まれているのは、少しでも敷居を下げようとした意思の表れだろうか。二次予選の「Mixtion」「Dissidence」「L'Air」「Chymisch」というエレクトロニクス作品の選択を必須とすることによる敷居の高さとも相反するような。

エレクトロニクス作品を始めとするこの課題曲群に臆せず、ぜひ日本から多くのサクソフォン奏者が挑戦することを期待したい。

※公式情報と乖離している場合があります。参加にあたっては、必ず公式情報を確認してください。

https://www.facebook.com/shyenl/posts/10209888882442304

The First elimination round:
– Solo saxophone, maximum time: 20 minutes. Each competitor will present three works, two from list 1 and one from list 2.
List 1.
– Two of the 25 Capricen op. 153a (1929) by Sigfrid KARG-ELERT (1877-1933). Choice of saxophones at the discretion of the candidate based upon by the character of the Caprices chosen (Editions Zimmerman (www.zimmermann-frankfurt.de) ou Southern Music.
List 2.
– One of « 9 Études » for solo saxophone by Christian LAUBA (Alphonse Leduc Music Publications; or
– Partyta (soprano saxophone) by Christian LAUBA (Resolute Music Publications) or
– Oxyton (baritone saxophone) by Christophe HAVEL (Éditions. P.J. Tonger-Germany); or
– Strata (tenor saxophone) by Colin LABADIE (pub. AMP http://www.colinlabadie.com/strata.html); or
– Discoïdal (tenor saxophone) Thierry ALLA (Resolute Music Publications); or
– Mysterious Morning for soprano saxophone, by Fuminori TANADA (Edit. Lemoine); or
– The Angel of despair, by Hiroyuki ITOH for alto saxophone (Resolute Music Publication (for sale or download on site: http://www.resolutemusicpublications.com/)

The Second elimination round:
One piece with piano accompaniment (either personal pianist or staff pianist of competition), and one piece with electroacoustic accompaniment. A staff technology specialist will be available for consultation, as needed. Each competitor will choose one piece from list A and one piece from list B, two pieces in total, maximum time: 35 minutes.
List A.
– Légende (version for alto saxophone and piano) by André CAPLET (Resolute Music Publications); or
– Légende op. 66 (alto saxophone) by Florent SCHMITT (Édition Durand); or
– Sonate (alto saxophone, with Finale by Jean Marie LONDEIX), by Paul HINDEMITH (Édition Schott); or
- Sonate (alto saxophone) by Pierre-Phillipe BAUZIN (Édition Leduc); or
- Sonate (alto saxophone) by Edison DENISOV (Édition Leduc);or
- Chant Premier (tenor saxophone) by Marcel MIHALOVICI (Édition Heugel); or
- Music for tenor saxophone by William KARLINS (Southern).
List B.
- Mixtion by Pierre JODLOWSKI for tenor saxophone and electronics. Éditions Jobert (info@jobert.fr), 27 Bvd Beaumarchais F-75004 Paris France; or
- Dissidence Ib by Christophe HAVEL, for soprano saxophone and electronics. Éditions BABEL SCORE, 39 quai de l’Horloge –F75001 Paris, France http://www.babelscores.com contact@babelscores.com); or
- L’Air d’ailleurs by Fabien LEVY, for alto saxophone and electronics. Éditions Billaudot (info@billaudot.com) http://www.billaudot.com; or
- Chymisch by Hector PARRA, for baritone saxophone and electronics. Éditions Trito Musicals, Enamorats, 35, 37 balxos E-08013 BARCELONA – Spain- http://www.trito.es).

Final round –with orchestra :
- Wend’kreis – Cercle des vents- for saxophone (alto + soprano saxophone) and orchestra, by François ROSSÉ Éditions Hody : CAP SUD 2 Bt.D 15 rue Henri Lemarié F-35400 SAINT MALO France. (hody_emmanuel@hotmail.com)

2016/06/06

ヤマハ目黒吹奏楽団第36回定期演奏会

2011年冬の演奏会から数えて、10回目のステージマネージャー。今回も無事(?)務めを果たすことができた。

【ヤマハ目黒吹奏楽団第36回定期演奏会】
出演:ヤマハ目黒吹奏楽団、鳥谷部武夫(指揮)、大田昌穂(司会)
日時:2016年6月5日(日)開場:13:30 開演:14:00
場所:めぐろパーシモンホール大ホール
プログラム:
ポップス・マーチ「すてきな日々」(岩井直溥)
海の歌(R.ミッチェル)
アメイジング・グレイス(不詳/J.ドーソン)
バレエ組曲「ガイーヌ」より(A.I.ハチャトゥリアン)
サンバ デ アイーダ(G.ヴェルディ/真島俊夫)
アマポーラ(J.M.ラカジェ/岩井直溥)
タンゴ・ア・ラ・カルト(J.リクスナー/森田 一浩)
故郷の空 in Swing(スコットランド民謡/福田 洋介)
「天空の城ラピュタ」Highlights(久石譲/真島 俊夫)
風になりたい(宮沢和史)※アンコール
花は咲く(菅野よう子)※アンコール

ステマネ待機場所の、ステージ袖はある意味では特等席だ。演奏会の緊張感とバンドの音を間近で感じるという、稀有な体験ができる唯一の場所だ。そんな場所でいつも感じるのは、「音楽が好きだから」演奏しているのだという、非常にシンプルな事。それがサウンドとなって客席に届いていることを、舞台扉の小窓を覗きながら実感する。そんなわけで、とても楽しい時間を過ごすことができる。

全体の進行と照明をコントロールしなければならず、大したことはやってないとはいえ最後まで気が抜けないのだが、なんとか終演まで持って行けて良かった。打ち上げも楽しかったなあ。なぜか二次会ではプログレ話で盛り上がった。

ところで、今回とても嬉しかったのは、入場者数が楽団の演奏会として初めて1000人を超えた(1002人)こと。あとちょっと…!ということを何度か経験してきただけに、嬉しさもひとしおであった。私自身は宣伝には全く関わっていないのだが、そうはいっても嬉しいものは嬉しい。

2016/06/05

演奏会ご案内:ヤマハ目黒吹奏楽団第36回定期演奏会

今日の午後ということで、直前だが…いつもと同じように、ステージマネージャーとして携わる。お時間ある方、ぜひお越し下さい。

以下、公式サイトからのコピペ。

日時:2016年6月5日(日)
開場:13:30
開演:14:00
場所:めぐろパーシモンホール大ホール
入場料:無料
指揮:鳥谷部 武夫
司会:大田 昌穂
主催:ヤマハ目黒吹奏楽団
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
協力:ヤマハ目黒センター

~ 曲目 ~
♪ ポップス・マーチ「すてきな日々」 (作/岩井 直溥)
♪ 海の歌 (作/R.ミッチェル)
♪ アメイジング・グレイス (編/J.ドーソン)
♪ バレエ組曲「ガイーヌ」より
   Ⅰ. 剣の舞
   Ⅱ. バラの乙女たちの踊り
   Ⅲ. 山岳民族の踊り
   Ⅳ. ゴパック
   Ⅴ. 子守唄
   Ⅵ. レズギンカ
     (作/A.I.ハチャトゥリアン)
♪ サンバ デ アイーダ (作/G.ヴェルディ 編/真島 俊夫)
♪ アマポーラ (作/J.M.ラカジェ 編/岩井 直溥)
♪ タンゴ・ア・ラ・カルト (作/J.リクスナー 他 編/森田 一浩)
♪ 故郷の空 in Swing (スコットランド民謡 編/福田 洋介)
♪ 「天空の城ラピュタ」Highlights (作/久石 譲 編/真島 俊夫)

2016/06/04

ジョン・ハール"Desert Island Discs"に出演時の録音

引っ越し先で待ちに待ったネット開通…。ブログの更新を再開できる。

BBC Radio4の長寿番組、Desert Island Discsをご存知だろうか。週一でゲストが招かれ、無人島に持って行きたい8つの"録音"&"本"&"ラグジュアリー・アイテム"を紹介する。番組中では、その選択の理由が、ゲストの人生等に絡めて紹介されるというもの。最近、60週年を迎えて、記念コンサートも開かれている。

記念コンサートのダイジェスト動画:


この記念コンサートにも出演したサクソフォン奏者、ジョン・ハール John Harle氏が、Desert Island Discsに出演した時の録音を聴くことができる。放送は、なんと1998年の5月29日だそうだ。こんなに前の録音を、インターネット上で誰もが聴けるように公開しているとは…驚き。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p009437w

「8つのアイテム」として、デューク・エリントンの録音や、映画音楽の録音(サクソフォンが含まれている)等が紹介されている。Terror and Magnificenceのエピソードも登場する。話されている英語があまり聞き取れない…英語のリスニング能力が錆びついているのを実感。

インターネットつながった

引越し後、ようやくインターネットが開通。

文書き欲も溜まっているので、ブログの更新を再開しよう。