2015/08/31

London Saxophonicのウェブページ

全く知らなかったのだが、いつの間にかイギリスのLondon Saxophonicのウェブページが出来ていた。知っているメンバーとはかなり変わっているがこのように新しいページができているということは、未だに活動が定期的に続いているということなのだろうか。

http://www.londonsaxophonic.com/

私にとっては、いつかライヴで聴いてみたい団体のひとつだ。

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アルバム"An Eye for a Difference"の鮮烈さたるや、私的サクソフォン関連驚き10選に入るほどのもの。冒頭のトラックが「An Eye for a Optical Theory」のサクソフォン版。「英国式庭園殺人事件」の「An Eye for a Difference」から「Queen of the Night」の流れが、本当に凄い。

ブレーン・アンサンブルチャンネル

YouTubeのブレーン・アンサンブルチャンネルには、多くのサクソフォン関連録音がフルバージョンアップロードされている。つい最近も、Quatuor B×高橋宏樹関連の演奏がアップされた。

初めて知った時は「フルバージョンで録音を公開するとはなんと太っ腹な!」と思ったのだが、楽譜もセットで扱っている事業者ゆえ、こちらのほうがトータルでは良いということなのだろう。録音試聴と楽譜購入がセット、というビジネスモデルは、今後も益々広がって行くに違いない。

https://www.youtube.com/user/brainensemble/videos

2015/08/30

Mario Marzi "Rapsodie française"

イタリアのサクソフォン奏者、マリオ・マルツィ Mario Marzi氏がフランス作品に取り組んだアルバムをご紹介。マルツィ氏といえば、ひとむかし前まではイタリア・サクソフォン四重奏団のテナー奏者としての活動が有名であった。最近、独奏活動や、教育・執筆活動等、取り組んでいる内容について、録音・録画・書籍といった形で目にする機会が多くなり、その多才ぶりにますます注目しているのだ。

15年近く前のアルバムだが、当時からマルツィ氏が独奏者として素晴らしい音楽性を備えていたことが良く分かるアルバムだ。イベール、ジョリヴェ、ミヨー、ドビュッシー、フランセ、シュミット、デザンクロと、サクソフォンを学ぶ者なら必ずこの中の一つや二つは取り組んだことがあるだろう…それだけ、王道中の王道といえるフランス作品を取り上げている。

J.イベール - 室内小協奏曲
A.ジョリヴェ - 幻想的即興曲
D.ミヨー - スカラムーシュ
C.ドビュッシー - ラプソディ
J.フランセ - 5つの異国風舞曲
F.シュミット - 伝説
A.デザンクロ - PCF

確かに疑いようもないクラシックなのだが、日本で普通の("普通"だなんて、そんな定義はないけれど、"大多数の"と言ってもよいかも)演奏を聴いているばかりだとめったに出会うことのない、新鮮な演奏を次から次へと聴くことができる。

これがどのような演奏であるかは、聴いてもらうしかないだろう。ひとつ言えることは、イタリアのサクソフォンって、どこかしら"歌"が出てしまうものなのだなあ…と、これはステレオタイプでもなく、実際にそうなのだろうと思わせる演奏だ。ちなみに、技術的にスキがないのはもちろんだ。録音も優秀。

お気に入りはイベールとフランセ。特にフランセは、原曲が持つ明るさの中のどこかしらの切なさ、哀しさをも、"音"として表現しているかのようで、何とも味わい深い。ちなみに、ミヨーの「スカラムーシュ」の第3曲"ブラジレイラ"は意外にもおとなしいなあ。

2015/08/28

アンサンブルの心構え(AmherstSQのThe Rules for Working Ensemble)

1978年創設の老舗サクソフォン四重奏団、Amherst Saxophone Quartetのページ内に書かれている「The Rules for Working Ensemble アンサンブルの心構え」が面白い内容だったので、とりあえず見出しだけ訳してみた。

見出しを読んで興味を持たれた方、ぜひ内容を精読されることをおすすめする。諸手を挙げて同意!と思う内容もあり、立ち止まって考えてしまう内容もあり…。

http://amherstsaxophonequartet.com/content/rules-working-ensembles

※以下は個人的な翻訳メモであり、間違いを含む可能性があり、内容がそのまま一人歩きすることは好ましくないと考えます。以下は参考に留め、内容を参照・引用する際は、必ず原文サイトをご覧ください。

1. Respect the abilities of your partners.
あなたのパートナーの能力を尊重しなさい。

2. Try every idea before making a decision.
何かを決める前に試すことができることはすべて試しなさい。

3. Make comments and encourage the others to do so.
何かコメントしなさい。自分だけではなく、他のメンバーにもコメントするよう促しなさい。

4. Don't conduct all the time and don't follow all the time.
常にリードすることは避けなさい。また、常に付いていくだけの状態になることも避けなさい。

5. Always remember that the problem might be you.
あなたが間違っているかもしれない。

6. Do not be thin skinned.
心を広く持ちなさい。

7. Have fun—remember, you're playing!
演奏は楽しいもの!

9. Don't be a jerk.
自分勝手になるな。

9. Forgive others when they are jerks.
他のメンバーが自分勝手になっても、許してあげなさい。

10. Hope they forgive you.
まあ、ちょっとくらいは許されるかも。

11. Talk about developing problems before they become big problems.
問題が大きくなる前に話し合いなさい。

12. Don't be afraid to fight about the music, but fight fairly and keep an open mind—be prepared to loose.
音楽に関することで、戦うことを恐れてはなりません。公平に、オープンマインドで…時には負けることもあるので、覚えておくこと。

13. Do some social, non-musical stuff together.
たまには音楽に関係のない社交性を重視したことも一緒にしましょう。

14. Don't hang together all the time.
メンバーと一緒にいすぎないように。

15. Discuss and agree upon goals and levels of commitment.
ゴールと目標のレベル合わせについて話し合い、合意しなさい。

16. Change things sometimes.
時には何かをがらっと変えてみましょう。

17. Learn to give a good compliment.
良い褒め方を学びなさい。

18. Learn to take a good compliment.
良い褒められ方を学びなさい。

19. Work for perfection.
完璧を目指しなさい。

20. Don't try to be too perfect.
完璧を求め過ぎないようにしなさい。

21. Don't misunderstand each other.
メンバー間で誤解を生まないようにしなさい。

22. Sound good together and enjoy it.
一緒に演奏することを楽しみなさい。

23. Leave extra-musical stuff outside the rehearsal.
リハーサルには、音楽以外のことを持ち込まないこと。

24. Marry someone who can support you.
あなたをサポートしてくれる誰かと結婚しなさい。

2015/08/26

藝大ミュージックアーカイブよりThe Rev SQのグラズノフ

The Rev Saxophone Quartetのツイートで知ったのだが、本年頭に行われた藝大定期室内楽第41回第1日での、彼らの演奏が藝大ミュージックアーカイブにおいて公開されたそうだ。



藝大ミュージックアーカイブとは、東京藝術大学で開かれた演奏会の記録音源・映像を配信するサービスである。私も時々覗いているのだが、非常にクオリティの高い演奏がアップされ、また教育とともに研究を旨とする"大学"という組織だけあって、プログラムも挑戦的なものが多く、楽しんでいる(まあ、そういったプログラムに限って、著作権処理中で聴けなかったりするのだが…というか、大部分が著作権処理中だ)。

The Rev Saxophone Quartet演奏のグラズノフ「サクソフォン四重奏曲作品109」の演奏は、以下のリンクから。

http://arcmusic.geidai.ac.jp/3315

Soprano Sax 上野耕平
Alto Sax 宮越悠貴
Tenor Sax 都築惇
Baritone Sax 田中奏一朗

ヴィブラート過多に陥らず、響きに任せない精緻な音楽作りは、最近のトレンドだ。このようなロマン派の薫り高く、しかもポリフォニックな作品(独奏部分が非常に目立つ)では、奏者のセンスが問われるが、4人共さすがである。多くのグラズノフの演奏がある中で、相当な高レベルに位置する録音ではないだろうか。ぜひご覧いただきたい。

2015/08/25

NATO Saxophone Orchestraの演奏

SaxOpen会期中、7/9にSalle Bourseで開かれたNATO Saxophone Orchestraのフル・コンサート動画をYouTube上で視聴可能。



その名の通り、NATO(北大西洋条約機構)に所属する軍事組織が擁するバンドのサクソフォン奏者が集結したアンサンブル。USAREUR(U.S. Army in Europe)Bandの他、8つの国の組織(アメリカ、オランダ、イギリス、エストニア、ラトヴィア、スロヴェニア、イタリア、フランス)から12名のサクソフォン奏者が集まっている。指揮は、USAREUR Bandのエグゼクティブ・オフィサーであるAaron Morris氏。以下の3曲が演奏された。

F.Schubert - Marche militaire
Steve Reich - New York Counterpoint
Steven Dankner - Symphony for saxophone chamber orchestra

響きが拡散する場所であり、最初の2曲は少々アンサンブル精度が苦しいが(やっぱりライヒは難しい)、最後に演奏されたダンクナーの作品はとても感動的な演奏に仕上がっている。ぜひご一聴を。

2015/08/24

Eastman Sax Project plays "地球はおどる"

伊藤康英先生の「地球はおどる」を、イーストマン音楽院のサクソフォン・クラスの学生によって構成されるアンサンブル、通称"Eastman Sax Project"が演奏した動画がYouTubeにアップロードされている。個人的にとても好きな作品であり、もちろんイーストマン音楽院の演奏も見事なもの…アップロードされたのはだいぶ前なのだが、ついつい繰り返して観てしまう動画の一つだ。ふと気がつけば、動画に伊藤康英先生の「Bravissimo!!」というコメントが付いている。



ふと思い返してみると、Opus Bandもそうだが、大編成のアンサンブルに感銘を受けたことはこれまでに何度もあるなあ。イーストマン音楽院によるストラヴィンスキー「春の祭典」、ロンドン・サクソフォニックによるナイマン「光学理論の眼識」、アポロ・サクソフォン・オーケストラによるトンプソン「セレブレーション」、ウィーン私立音楽院によるシュトックハウゼン「左目の踊り」、ミ・べモル サクソフォンアンサンブルによるブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」、東京藝術大学による中橋愛生「静寂の森、饒舌な雨」…と、挙げていったらキリがない。

サクソフォンアンサンブルの響きは、安易な選曲・演奏は食傷気味に感じてしまうこともあるのだが、気合いの入った内容を聴くと、まだまだ発展の余地があるのだと思える。

2015/08/23

イタリアの"Opus Band"

SaxOpenの最中、衝撃を受けたアンサンブル団体は多かったが、"Opus Band"という団体の演奏には興奮させられた。

この超怪しい身なりで、鐘と太鼓を鳴らしながら街を練り歩き、広場に到着したかと思えばバッハやオルフの作品を、ロック風なんだか民族音楽風なんだか良くわからないアレンジで、激しく踊りながらものすごい音圧で演奏する。途中には寸劇?も交えて、聴き手を興奮の渦に巻き込んでいく。アレンジには、カッコ良さと適度なありがちさが同居しており、とにかくエキサイティングそのもの、という趣。一発で気に入ってしまったのだった。

その演奏を目にした時、一体何者だと思ってプログラムを見ても、次のような記述があるだけで、イタリアの団体であるということ以外、詳細が全く分からなかったのだった。

《Opus Band》, an unusual brotherhood of onks, between the sacred, the profane, rock, Gregorian chants, the Middle Age or electrofunk will involve you in this 《trip saxofonico on the way to heaven.》

日本に帰ってから調べたところ、BadaBimBumBandというサクソフォン団体の一形態であるということがわかった。
公式ページはこちら→http://www.streetband.it/
Facebookページはこちら→https://www.facebook.com/pages/BadaBimBumBand/92930048890

BadaBimBumBandは、ストリート系のサクソフォン・アンサンブル。様々な屋外イベントに登場しているようだ。編成はOpus Band以外にも、BanditaやWanna Gonna Showという、違った装い・レパートリーの団体名義で演奏することもあるようだが、暗譜でアレンジ作品や民族音楽を演奏しまくる&踊りまくる、といった基本コンセプトに沿って活動を展開しているようだ。

Amazon MusicでBadaBimBumBand名義のセッション録音を見つけることができる(ゼンブ買ッチャッタヨ…)。まずは試聴してみてくださいな。気に入る方はきっと多いはず!
BadaBimBumBand

YouTubeでも演奏映像をいくつか見つけることができる。このOpus Band名義の動画はパーカッションが入った箇所で音がマスキングされてしまい、本来の響きとはちょっと違う感じになっているようだが…。

2015/08/20

荒木浩一氏の演奏会予定

九州で活躍するサクソフォン奏者で、先日のポラン氏訪問の際にも大変お世話になった荒木浩一氏。その荒木氏が出演するコンサートの情報をご紹介。NHKの大河ドラマでも有名な"軍師官兵衛"こと黒田官兵衛の妻、光姫の命日に執り行われる「光姫忌」に合わせて開かれるコンサートとのこと。荒木氏は、バッハの「無伴奏チェロ組曲」から第2番、第5番を演奏予定だそうだ。

【光姫様法要&警固神社お狐さま再建支援チャリティコンサート in 圓慶寺】
出演:荒木浩一(sax.)、逆瀬川剛史(gt.)
日時:2015年8月26日 18:30開場 19:00開演
会場:圓慶寺(福岡市中央区大手門3-1-7)
予約・問い合わせ:
info@happy-heart-company.com













昨年開かれたバリトンサクソフォン独奏コンサートの模様(動画の内容は、宣伝用に収録されたものだが)を、YouTubeからも参照することができる。

2015/08/19

四重奏邦人作品三選

邦人作品の中で、好きなサクソフォン四重奏曲三選。

伊藤康英「四重奏曲第2番」
1990年作曲、1991年にトルヴェール・クヮルテットにより初演。サクソフォンが持つ音程の未完成さを利用し、非常にヴァリエーション豊かな音程感、伊藤康英先生ならではの音列の駆使・響きの厚さが垣間見える。Thunderさんが、The SAX誌上の「私の選ぶサックスカルテット名曲ベスト5」に挙げている。サクソフォーン・フェスティバルでの再演に合わせて、2009年に改訂、改訂版はクローバーSQにより演奏された。

上野耕路「N.R.の肖像」
上野耕路氏が幼少の頃より親しんだ、フェデリコ・フェリーニ作品、そしてニーノ・ロータの音楽を、氏独自の解釈で再構成した4楽章から成る作品。フェデリコ・フェリーニ監督の最高傑作「8 1/2(はっかにぶんのいち)」を核として、ニーノ・ロータの音楽が、時にグロテスクに、時に美しくコラージュされる。アルモ・サクソフォン・カルテットが初演。

平部やよい「倖せヲ呼ぶ嶌」
東京サクソフォンアンサンブルの一夜限りの再結成のために、委嘱・作曲。2014年に初演された。「沖縄音階を取り入れ、クラシックとJAZZのテイストをミックスした…(作曲者談)」の言葉通り、多彩な要素が織り込まれ、奏者に幅広い表現力を要求する。

2015/08/18

クラリネットを持つポラン氏の写真

アンリ=ルネ・ポラン氏からお借りした資料の一部をご紹介。

ポラン氏は、その音楽キャリアの初期において出身地近くのCaen音楽院でクラリネットを学んでいた。しばらくはクラリネットのプロフェッショナルになるための勉強を続けたというが、手を傷めたためサクソフォンへと転向したという。しかし、時にはクラリネットを引っ張りだしてきて吹く機会もあったようだ。

この写真は、Caen音楽院の出身者によるラージアンサンブルの様子。最前列左から4番目にクラリネットを携えたポラン氏が写っている。最前列いちばん右は、Caen音楽院でクラリネットを教えていたBlachet教授。ポラン氏が最も敬愛する先生の一人だ。そして、このブログの賢明な読者…というか、デファイエ四重奏団のファンならばお気づきだろう、ポラン氏の左に、なんとクラリネットを持ったジャック・テリー氏が写っているのだ。テリー氏もポラン氏と同じCaen音楽院の出身、そしてBlachet教授に師事していたのだ。

インタビューをまとめた記事には書く予定だが、ポラン氏は、テリー氏の影響を受けてかなり近い音楽キャリアを歩んでいた。また、互いに、良き友人でもあったようだ。

2015/08/17

ポラン氏資料スキャン

先日、フランスでポラン氏にお貸しいただいた資料の数々…プログラム冊子、手紙、写真等のスキャン作業を行った。

600dpiのカラーないしグレースケール。スキャナの性能が低く、かなり時間が掛かったが、何とか2時間程度で全てをスキャンすることができた。

これらの資料は、日本サクソフォーン協会会報にインタビュー記事とともに掲載予定だが、いくつかは先行してこのブログでも紹介したい。

東京へ

日曜日の午前中に、あずさで東京へと戻った。

東京はやはり暑さが段違いで、すぐに汗が吹き出す。近くの銭湯に出かけてさっぱりし、明日の仕事再開に備えた。

2015/08/15

SaxOpen実績

SaxOpen最終日7/14、General Assemblyにおいて発表された、SaxOpenの実績について。

25000 Spectators(総動員数)
1030 Concert Tickets(コンサートチケット売上数)
2792 Pass(パス売上数)
146 Volunteers(ボランティア人数)
38 Technicians(技術者数)
350 Premieres(初演数)
47 Nationalities(参加国数)
450 Events(イベント数)
2 Exhibitions(ショー数)
380 Recitals(リサイタル数)
20 Conferences(カンファレンス数)
4 Master Classes(マスタークラス数)
6 Evening Concerts(イブニング・コンサート数)
11 Pre-Evening Concerts(プレ・イブニング・コンサート数)
10 Concerts in the Alsace region(アルザス圏開催のコンサート数)

歴代のサクソフォン・コングレス中、最大規模であったことはほぼ間違いないだろう。芸術監督フィリップ・ガイス氏を始めとするSaxOpenチームの働き、サポートにあたった各種団体の働き、インターネット時代ならではの双方向コミュニケーションの容易性、等々、様々な理由に因るのだろう。

参加するこちらとしては、申し込みと練習・演奏をがんばるだけなので気楽だが、運営側は本当に大変だったと思う。この場を借りて、改めて御礼申し上げる次第。

SaxOpenを聴いて思ったこと

先のSaxOpenでは、350の新作(世界初演)が発表された。おそらく、後にも先にもひとつのイベントで350ものサクソフォン作品の新作が発表されることはないと思う。私も、様々な編成のための新作の演奏を聴いた。それは、オーケストラや吹奏楽との協奏曲であったり、サクソフォン・オーケストラであったり、室内楽であったり、ソロであったり…。

それらを聴いて思ったのだが"新しい表現"のようなものはほぼ無かったのではないかなと。確かに、興味深い作品や面白い作品はとても多かったのだが「真新しく感じた」という感想はほとんど出てこなかったように思える。果たして"新しい表現"を追求することがクラシック・サクソフォンの世界にとって良いことなのかは分からない。しかし、様々な作品が披露されている中、99%の興奮の中に、1%の閉塞感・無力感…言い換えれば、行き詰まりのようなものを感じてしまったのも事実だ。

何人かからも似たような感想を聞いたので、あながち間違いではないのかなと。

では、クラシックのサクソフォンは今後どのような方向性を開拓していくべきなのか?ドビュッシー「ラプソディ」や、デニゾフ「ソナタ」のような、"新しい表現"を内包した真の傑作は、今後、果たしてどのような部分から生まれ得るのか?個人的には何となくいろいろ考えることはあるのだが、未だに決め手に欠けるのと、実証が不足しているので、なかなか…。

ウィーン交響楽団が「City Noir」を演奏

ウィーンに本拠地を置く名門オーケストラのひとつ、ウィーン交響楽団(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ではない)が、ジョン・アダムズ John Adams「シティ・ノワール City Noir」を演奏した際の抜粋動画をYouTubeで見つけた。

サクソフォンは誰かなあと思っていたら、なんとラース・ムレクシュ Lars Mlekuschではないか!確かに、ウィーンという土地柄を考えると、ベスト客演だろう(ムレクシュ氏は、ウィーン私立音大の教授職にある)。あれっ、と思ったのが、バリトンサクソフォン(+持ち替え用と思われる、スタンドに立てたアルトサクソフォン)奏者が映像に一瞬映ること。この作品は、オーケストラにアルト・サクソフォン1本のはずなのだが…同じステージで演奏した別の曲の都合なのか、はたまた、知らないうちに改訂でもされたのか。ナゾである。

2015/08/14

実家に滞在中

木曜日の夕方から、長野の実家に滞在している。ちょうど帰省のタイミングで気温も下がったようで、特に夜間は快適に過ごしている。

夕方になると、開け放した窓から涼しい風が吹き込んでくるこの感じを、身体が覚えている。

2015/08/10

Christian Wirth plays Albright "Sonata"

ハバネラ四重奏団のソプラノサクソフォン奏者として、また、パリ13区音楽院教授として有名な、フランスのサクソフォン奏者、クリスチャン・ヴィルトゥ Christian Wirth氏。ソロの録音は非常に少なく、手に入りやすいものは、グラモフォンレーベルのベリオ「セクエンツァ集」、カプレ作品集あたりくらいしかないのではないかな。

そのヴィルトゥ氏が、なんとウィリアム・オルブライト William Albright「ソナタ」を演奏している動画がYouTubeにアップロードされていた。説明には、今年のギャップ国際サクソフォンアカデミーでのライヴ演奏だと記されている。残響が多いため少し聴きづらいが、演奏のテンションはとても良く伝わってくる。ヴィルトゥ氏の演奏は、技術的に相当なものであり、また音の処理や密度のコントロールが非常に繊細だと感じた。ピアノの伊藤ふみえ氏も、快刀を振り回すかのようなダイナミックな演奏が面白い。

そういえばこのアカデミーにはマカリスター氏も講師として参加していたはずだが、マカリスター氏は何を演奏したのかなあ(この直前のコングレスでは、オルブライトを取り上げていた)。

第1楽章


第2楽章


第3楽章


第4楽章

久石譲「ミニマリズム2」より

久石譲氏といえば、なんといっても宮﨑駿監督作品と始めとする、様々な映画への一連のサウンドトラック提供で有名である。だが、「風の谷のナウシカ」で脚光を浴びる前は、ミニマルミュージック、ポスト・ミニマルミュージックの分野を、自身の活動の中心に据えていたと言われている。国立音楽大学在籍中より、ミニマル三羽烏(ライヒ、ライリー、グラス)の楽曲分析を行ったり、「MKWAJU」というタイトルで全面プロデュースを行った、ミニマルミュージックのアルバムを作ったりと、その分野での活動は筋金入りとも言える。

このたび、ユニバーサルミュージックより、久石譲氏のミニマルミュージック作品を中心に取り上げたアルバムが発売された。「ミニマリズム2(UMCK-1518)」というタイトルで、戦後70周年のために書かれた「祈りのうた」を始め、久石譲氏が手がけた室内楽のための最新の作品群を収録したアルバム。このなかの「Single Track Music 1」が、サクソフォン四重奏プラスパーカッション、という編成で、楽しい作品なのだ(tk氏が紹介してくれた)。単音(ユニゾン)で書かれた作品だが、特徴的な音運びが耳に残る。ぜひ一聴をおすすめする。

http://www.universal-music.co.jp/hisaishi-joe/products/umck-1518/

ところで、この「Single Track Music 1」を聴くために、Amazon Musicを使ってみたのだが、便利というか呆気無いというか、ある意味驚きがあった。tk氏から紹介が受けたあと、スマートフォンでAmazonにアクセス、目的のトラックを見つけてボタンをポチ。一瞬で250円の決済が完了し、この目的の1トラックを購入し、その場で聴き始めることができた。便利だと思う同時に、あっさりしすぎていて、なんとも…。
ミニマリズム2

漫画家でイラストレーターの小山健氏が書いたこんな漫画があるのだが、このドキドキ感、ワクワク感を感じることもあまりなくなってしまったなあ。

2015/08/09

直近のNHKでのサクソフォンネタ放映予定

一つ目は再放送。明日の早朝なんですが。以前の放送を実家で録画しており、帰省の折に観たのだが、フランク、新作とも、なかなか面白かった。フランクは、誰の編曲なのかなあ。サイ氏の新作は、ぜひ出版されてほしいと思っている。

2015/08/10 午前5時00分~午前5時55分
クラシック倶楽部 ファジル・サイ・須川展也 リサイタル
http://www4.nhk.or.jp/c-club/x/2015-08-10/10/32561/1894170/

C.フランク「ヴァイオリン・ソナタ」
F.サイ「組曲(世界初演)」

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二つ目はおそらく初出。エイミー・ディクソン氏の来日はおよそ1ヶ月前になるが、東京でのリサイタルはノーチェックだったのだ。公式ページを見ると、なんだかビジュアルで押している風な感じを受ける向きもあろうが、この人はそうではない。フィリップ・グラスの「サクソフォン協奏曲」をCDに入れてきた時の、衝撃的な上手さを思い出す。来日リサイタルにおけるリサイタルも、タネジ、そしてフィトキン他、かなり気合いの入ったプログラムが並ぶ。観るのが楽しみ。

2015/08/14 午前5時00分~午前5時55分
クラシック倶楽部 エイミー・ディクソン サクソフォーン・リサイタル
http://www4.nhk.or.jp/c-club/x/2015-08-14/10/34787/1894237/

M.A.タネジ「2つの悲歌に挟まれた叫び」
G.フィトキン「ゲート」
D.ミヨー「スカラムーシュ」他

マカリスター氏とユタ大学の共演

2014に開かれた第68回ミッドウェスト・クリニックのユタ大学のステージにおいて、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏が客演し、ジョン・マッキー John Mackey氏の「ソプラノサクソフォン協奏曲」から第1楽章と第5楽章を演奏している。指揮はScott A. Hagen氏。

ソプラノサクソフォンが上手いのはもう当然のごときなのだが、バンド側もかなり健闘しており、聴き応え十分。全楽章を聴いてみたかった。しかし、こういったところにマカリスター氏の演奏録音があるとは…。見過ごされてもおかしくない。

Mark Records 51424-MCDという型番。CDを買っても良いと思うのだが、「ソプラノサクソフォン協奏曲」だけであればデジタルミュージックダウンロードで手に入れるのが良いだろう。→Utah Wind Symphony

2015/08/08

サクソフォンでビートボックス:Derek Brown

ストラスブールのコングレスにおいて、様々なプレイヤーがフィーチャーされていたのが、特に目立っていたのがアメリカのサクソフォン奏者、Derek Brown氏(→公式サイト)。シンシナティ大学でジャズを学び、Abilene Christian Universityでの講師職を経て、現在はフリーランスとしてシカゴで活動している。1983年の生まれということだ。

彼の特徴は、サクソフォンでビートボックスを演奏すること。ソロ演奏は"BEATBoX SAX"と名付けられている。言葉で説明するよりも、まずは聴いていただくのが良いだろう。





このビートボックス・サックスを武器に、ジャズ、ファンク、ポップス等の方面で様々に活躍しているそうだ。1本のサクソフォンで、これだけぐっと人を惹きつけるというのも凄いことだと思う(フルート等に比べれば、音の種別のバリエーションは少ないのいかもしれないが、それにしても)。彼のYouTubeアカウントには、様々な動画があるのでご覧いただければと思う。今後もぜひ注目を。

Derek Brown氏のYouTubeアカウントはこちら。
https://www.youtube.com/channel/UCZ0CtZksYxBrYcvkgRpF61w

フランスでの通信手段(Orangeのsimカードでモバイル接続)

先日、サクソフォン・コングレス参加のためにフランスを訪れた際、通信環境についてかなり充実しており、様々な面で助かったので、覚書きとして書いておく。

現地でsimカードを入手する前提で、simフリーの3G対応Wifiモバイルルータ(HUAWEI E586)を持参した。このモバイルルータは、3年前の渡欧に際して入手したものだったのだが、当時はsimカードは入手できたもののValidationの方法が分からず、悔しい思いをしたのだ。今度こそは!と、綿密に下調べをした上で臨んだのだった。

事前下調べで、フランスの大手キャリアOrange「Let's go pass」という種類のデータ通信専用simカードが良さそうだと分かっていた。sim本体が8ユーロ、7日間有効な1Gbytesのデータのチャージが10ユーロというもの。この情報をもとに、ストラスブールのOrangeのキャリアショップに乗り込んだ。しかし、店員さんと話すも、なぜか目的のものがない。

代わりに提示されたのが、simカード+1ヶ月有効の500Mbytesのチャージで14.9ユーロというもの。滞在は1週間以上だったし、連絡や地図参照、時々写真をアップする程度で、500Mbytesも使うつもりはなく、しかも事前の想定より安い!ということで購入を決めた。その場でパスポートを見せ、滞在先ホテルの住所等を一緒に入力し、Validationしてもらった。店を出て15分ほどつながらなく、APN設定をいろいろといじってみたもののダメで慌てて再び店に駆け込んだのだが、いつの間にかつながるようになっていた。おそらく、Validationのタイムラグだったのだろう。結局、APN設定も自動でOKだった。

ということで、フランスでWifiが捕まらないところでは、このモバイルルータを経由して、国内で普段から使っているスマートフォンを使いネット接続していた。3Gとはいっても、十分すぎるほどの速度でどこでも非常に快適につながり、連絡の取り合いや地図参照などいつでもでき、非常に便利に使えたのだった(simカード自体は、4Gにも対応している)。Wifiモバイルルータのバッテリーの持ちは少々悪かったが、消したり点けたりを繰り返せば、一日持たないこともない、という感じ。2000円程度で手に入る、インターネットに常時接続できるという安心感は、何者にも代えがたかった。

ところで、スマートフォンからの写真・動画のアップロードをうっかり有効化していたせいで、ある日、スマートフォンで動画を撮ったところ一気にデータ容量を800Mbytes近くまで使ってしまったのだった。使いきってしまった!とあせったのだが、なぜ500Mbytesで止まっていないか不思議で、その後も止まらなかった。帰ってきてから調べてみたところ、この「pochette Prêt-à-surfer 4G」というサービスだったようだ。simカード付き、データ通信のみ、1ヶ月間使えて通信料は2Gbytesまで、14.9ユーロ。500Mbytesじゃなくて2Gbytesじゃん(笑)。そりゃ500Mbytes超えても止まらないわけだ。ちなみに、事前に調べたサービスをOrangeの公式サイトで見つけることはできなかった。やはりこの世界のサービスはコロコロ変わるのだろう。現地で聞くのが確実ということだ。
http://boutique.orange.fr/tablette-et-cle/pochette-pret-a-surfer-internet-prepaye

もし本当に使いきってしまった場合は、mobile-shop.orange.fr/rechargementからリチャージ可能。フランス国内10ユーロで1Gbytesとか、ヨーロッパ全域20ユーロで500Mbytesとか、かなり割安感のある値段で利用できるようだ。フランスからベルギーに行った時は通信手段がなく困ったので、今思えばヨーロッパ全域のリチャージをしておいても良かったのかなあ、などと思う。

…ということで、現地で通信手段を得るためにこんな方法もあるよ、という紹介でした。

お使いの機器等や希望するプランによって諸々事情は変わってくるので、詳細は現地のキャリアショップで訊いていただくのが良いかと思う。実際、同行者のうち2名はNexus5向けに現地でsimカードを調達したのだが、simフリースマートフォン向けに売ってくれるsimカードは、このデータ通信専用の「pochette Prêt-à-surfer 4G」よりも、もう少し高いものだったようだ。

2015/08/06

楽隊用吹奏楽器教本より「第三章 サキソホーヌ」

 サキソホーヌ種は黄銅製なれども其性能に依る時は木製楽器の部類とす。
 此の種族は四種にしてソツプラノー、アルト、テノール及びバリトンの四種とす 而して之れ四種の楽器は吹奏団中に於て総て須要の位置を占むものなり。
 本器の構造は四種共各形状を異にして大小あれども指法は同一にして各種共六個の孔と十三の鍵とを有せり、ソプラノーの音色はクラリネットに近きも之れに比して酸音なり 然れどもクラリネットの代用たり得べし 而して音調の困難なる本器を以て真の美音を出す吹奏者は甚だ稀なり 難も時に独奏に用ひて好結果を博することあり 合奏中多くは吹き流し及びクラリネットの奏する所を重複するに過ぎず アルトは本種属中最美き音色を有する楽器にして女声に近く優美にして総て愉快なり 音階の鋭部は悲哀の意味ありて多く独奏中に之れを採用す 中部は稍大にして鈍部は威大なり 而して難所を奏するに容易く客に好く音力を増減するの能力あり 且つ流奏、「スタカト」等も見事に奏し得るも鈍より鋭に若くは之れに反するものを迅速に奏することは稍困難なり、テノールはセロに相類したる音色を有し鈍部は雄大にして中部は円滑温柔にして鋭部は稍鼻音なり、中鈍ノ二部はトロムボーヌ及びバリトンの代用たるを得て好果を奏することあり其他の鮎(?)は略アルトに同じバリトンはダブルバスの音色に相類し鋭、中、鈍共深厳なり 鋭部は微力悲哀なり 本器は独奏に美妙の成績あり 然れども困難の地位を吹奏すること容易ならず特に切れたる音譜に於て然とす 其他前項に同じ。

(一部、旧字体を新字体に直したが、送り仮名が違う箇所が多々あり、書きづらい…)

大正3年(1914年)発行の書籍、小畠賢八郎の「楽隊用吹奏楽器教本(十字屋楽器部)」から、「第三章 サキソホーヌ」を文字起こししてみた。全文(画像)は以下のサイトから参照可能だ。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/923582

内容は、非常に興味深い。なぜなら、現代においても通じる箇所がとても多いからだ。それだけ楽器や奏者の基本的性質が変わっていない、ということにもなるのだろうか。「而して音調の困難なる本器を以て真の美音を出す吹奏者は甚だ稀なり 難も時に独奏に用ひて好結果を博することあり」など、まったくその通りである。書き起こした箇所ではなく、音階部の説明書きには「…此の種族特有の美音を発するものは稀れにして反て酸音に陥る者多し 故に初学に富り音階を十分練習したる後に在らざれば楽曲に移るべからず」…ドキッ。ごめんなさい(誰に謝っているんだ)。

また、もう一点、音楽用語の違いが面白いと感じた。例えば"高音部"のことを"鋭部"と言っていたとは知らなかったし、汚い音のことを"酸音"と言っていたとは知らなかった。ストラップは、"釣革"だそうな。西洋音楽黎明期の日本の音楽教育界における、苦労の跡がかいま見える。

十字屋ってあの十字屋?とか、著者が参考にした本(きっと西洋の本から引き出した情報が多いのだろう)はなにか?とか、なぜサクソホーヌの章の演奏姿がバスクラなのか?とか、いろいろ疑問点は多いが、それにしても楽しい資料だ。サクソホーヌの章に限っては、画像ファイルは下記からも参照できる。

(クリックして拡大)

2015/08/04

SaxOpen動画:World Streaming Show

今回のサクソフォン・コングレスでは、フランスのストラスブールに拠点を置くテレビ局"Arte TV"が全面協力を行った。各会場にはArte TVのスタッフが出入りし、要所要所をビデオ撮影している様子が見て取れた。

World Streaming Showは、コングレス中最大ともいえるイベントだ。7/12に複数会場を相互接続して行われたイベントである。ストラスブール中心街の広場、Place Kleberを中心として、ストラスブール音楽院、ストラスブール大聖堂、Le Shadok、さらには飛行機の上やドローンからの中継(中継か録画か?)、ニューヨークやリオ・デ・ジャネイロやその他云々…をリアルタイム接続し、ソロ、アンサンブル、サクソフォンオーケストラの演奏、そして演奏のみならず、インタビュー、ビデオアート、パフォーミングアート、愛の告白、果ては相互接続によるリアルタイム・セッションまで、盛りだくさんなのであった。

その様子を記録したビデオが、以下のリンクより全編参照可能だ。

http://concert.arte.tv/fr/world-streaming-show

出演は、SaxOpen Orchestra、ミ・ベモルを中心とする公募の100人のオーケストラ、ヴェルサイユ音楽院&ストラスブール音楽院合同ラージ、Derek Brown、Vincent Duboisほか。

私はPlace Kleberでこのイベントを観ていたが、本当に楽しかった。これまでの人生の中で最も楽しい演奏会であった、と断言できるほどだ。

このようなイベントは、考えたり夢想したりはするかもしれないが、今回こうして実現してしまっていることに驚嘆する。このイベントひとつだけ取っても、準備と本番にどれだけのリソースが必要であるか考えると、ちょっと怖いくらいだ。

2015/08/03

新交響楽団第230回演奏会

【新交響楽団第230回演奏会】
出演:矢崎彦太郎(指揮)、コロンえりか(ソプラノ)
日時:2015年7月26日(日)14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール
曲目:
ラヴェル - 古風なメヌエット
ラヴェル - 「ダフニスとクロエ」第2組曲
マーラー - 交響曲第4番

日本国内のアマチュア・オーケストラの中でも、最も有名な楽団ではないだろうか。1956年に発足し、かつては音楽監督に芥川也寸志氏(!)などをも迎えていたという、由緒あるオーケストラだ。近年も、年に4回(!)の公演を軸として、様々な活動を行っているようだ。

ファゴットにお知り合いが乗っており、誘われて聴きに伺った。東京芸術劇場はほぼ満席。年に4回でこの集客たるや、恐れ入る…まるでプロフェッショナルのオーケストラのごとし。

演奏技術も相当なもので、各パート非常に良く訓練されている。そもそも、ラヴェル「ダフニスとクロエ」の第2組曲をあのクオリティで演奏できるアマチュアのオーケストラが、いったい世界にいくつあるのだろうか…と思ってしまうほど、充実した響きだった。

マーラーの第4番は初めて聴いたのだが、日が昇って一日を過ごして日が沈むような、ごくごく平和な日常…天国の日常だが…を描いた作品と言われれば、この不思議な構成にも納得。最後のあっさりとした終わり方は、これまでに感じたことのない、なんとも形容しづらい聴後感を残したのだった。もちろん、ソプラノ独唱ともども、演奏の質は素晴らしい物であった。

高橋管楽器のムービー

管楽器修理の老舗、高橋管楽器のショート・ドキュメンタリー。この「修理、魅せます」という動画は、何のシリーズ物なのかわからないのだが、短いながらとても良く出来たムービーだと感じた。修理対象は、まさかのCメロである。