2015/10/15

デファイエ四重奏団の伝説の名盤が復刻

かつてCBSソニーが出版していたダニエル・デファイエ・サクソフォン四重奏団の伝説の名盤2枚が「タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9集」のひとつとしてソニーレコーズインターナショナルより復刻される。

http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=0940&cd=SICC000001972

誰が企画し、どのような経緯を経て発売までこぎ着けたのかは分からないが、なんとも嬉しい復刻だ。また、木下直人さんに教えていただいたのだが、LP時代に何度か再発売されたことから、おそらくソニーが保管していたマスターテープからの復刻であろう、とのことだ。

ある世代以上のサクソフォン吹きにとっては「衝撃の盤」であり、「標準の盤」であるとも聞く。「衝撃」とは、その圧倒的な技術と音楽性、得も言われぬその音色という点において。「標準」とは、今では一般的とも言える、収録されたレパートリーの唯一の参考盤であったという点において。これらの盤が、日本のサクソフォン界に与えた影響は計り知れない。また、実はこのブログを立ち上げるきっかけとなったのはこの2枚のLPなのだ(詳細はこの記事の最後に)。

リュエフ、冒頭にジャン・ルデュー氏がバリトンサクソフォンで出している"シ"の音に驚くべし!こんなに裕な響きがバリトンで、しかもブリルハートで出せることに驚かされる。もちろん、その他の曲の演奏も最高である。録音は、アンドレ・シャルラン率いるCECE(Centre d'Enregistrement Champs-Elysee)への外部委託。1975年、サル・アディヤールにおいて録音され、4日間の予定のところ、1日で録りきってしまった(ポラン氏談)というから驚きだ。このシャルランの録音を、発売元のソニーのエンジニアは気に入らなかったというが、おそらく録音に対する考え方の違いだろう。

J.リュエフ - 四重奏のためのコンセール
A.ティスネ - アリアージュ
C.パスカル - 四重奏曲

まるでフルートのように聞こえ、最後がffで終わる「G線上のアリア」、ものすごいドライブ感を湛えた「3つの小品(編集ミスあり)」、ミュールの録音を思い起こさせる「メヌエット」…等々、一つ一つは小品ながら話題に事欠かないアルバム。松雪先生にMDをコピーしてもらい、その後木下直人さんに復刻してもらい、何度聴いたことだろうか。録音はこまばエミナース。

J.S.バッハ - G線上のアリア
D.スカルラッティ - 3つの小品
L.ボッケリーニ - メヌエット
W.A.モーツァルト - アヴェ・ヴェルム・コルプス
R.シューマン - スケルツォ
P.I.チャイコフスキー - アンダンテ・カンタービレ
I.アルベニス - カディス
I.アルベニス - コルドバ
I.アルベニス - セヴィリャ
C.ドビュッシー - 小さなネグロ
C.ドビュッシー - 小さい羊飼い
C.ドビュッシー - ゴリウォーグのケークウォーク

Amazon等で予約も開始しているようだ。私も早速予約した。サクソフォーン・アンサンブルの至芸


このブログを(正確に言うと、当時はジオシティーズでdiary.kuri_saxoを書いていたので、そのウェブページを)立ち上げるきっかけとなったのはこの2枚のLPの録音だった。当時の記事内容を下に転記しておく。10年以上前…2005年1月21日の記事だ。

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デファイエ四重奏団のリュエフ、ティスネ、パスカルの録音。リュエフの冒頭、一発目のバリトンの音を聴くことは長年の夢だったけれど、ああ、こんなにも豊潤な音色だとは…。まさに世界最高のバリトンの音と呼ぶにふさわしい。デファイエ四重奏団の録音を初めて聴いたときから、一番好きなバリトンサクソフォン奏者はジャン・ルデュー。OpusやPolymnieから出ているルデュー四重奏団のCDでも驚異的な音楽を聴かせてくれる(Opusへの吹き込みはルデュー氏が64歳の時、Polymnieに至ってはなんと73歳のときの録音!)。

よく取り出して聴くのはパスカル。フランスのエスプリがしっかり効いた素敵な演奏。1797年版のアントワーヌ・リヴァロル著「新フランス語辞典趣意書」において、「エスプリ」とは「速やかに見てとり、キラリと光ってみせ、打ち勝っていく能力」と説明されているが、まさにそんな感じであります。個人的に好きな第4楽章、随所に散る火花は私を魅了してやまない。

そしてこちらも感激!!ずっと聴きたかった、デファイエ四重奏団の小品集。録音は来日時にこまばエミナースにて。一曲目は「G線上のアリア」。個人的に知ってるプロのトランペット奏者の方が、エアチェックしながら最初の音色を聴いて「フルートの音色みたい」と思ったらしいが、あながち言っていることが分からないでもない気がする。曲の最後がffで終わるのは今となっては伝説であるらしいですな。フルモーサクソフォン四重奏団が2002年の来日の際に同じアレンジと解釈で演奏をし、話題になったとかならないとか。

この小品集の録音のキモはスカルラッティの「3つの小品」だろう。EMI Franceに遺された録音(ピエルネ、デザンクロ、リヴィエ、シュミット)を聴く限り、もっと(いい意味で)じゃじゃ馬な演奏を期待していたのだが、意外と統制感が漂い、さらに強烈な個々のテクニックと美しい音色が音楽としての価値を高ている。個人的には第1楽章「プレスト・ジョコーソ」のドライヴ感が大好き。

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