2015/10/29

パイパーズ2015年11月号にコングレス・レポート掲載

杉原書店が出版する管楽器専門誌「パイパーズ」の2015年11月号(411号)に、サクソフォン・コングレス"SaxOpen"のレポート記事を掲載いただいた。巻頭から2番目にぶち抜きで6ページという好スポット・大ボリューム。私は本当に駄文と写真をごそっと提供しただけなのだが、素敵なレイアウトにしてくださり、感謝感激だ。見出しは「アルザスの古都で繰り広げられた過去最大規模のサックスの祭典」という、これまた目を引くテロップ(これも考えていただいたのだ)。

ブログのレポートとはまた違った構成・雰囲気で書いたので、興味ある方はぜひ手に取っていただけると嬉しい。昔から目にしていた雑誌に自分の記事が載るというのは、不思議だがとてもうれしくありがたいことだ。

詳細はこちらのサイトから。https://www.pipers.co.jp/

サクソフォン交流会打ち合わせ

水曜日の夜は、サクソフォン交流会の打ち合わせ。企画ステージの内容のアイディア出しと、進捗確認だった。企画ステージは毎度毎度頭を捻る部分で、関わる人全員が100%で納得するものはないため、その間を取って良い着地点を見つけていく作業が難しい。

なんとか内容の方向性も決まり、あとは事務局内部の共有や先生との調整、内容の詳細化が始まる。

2015/10/28

日本サクソフォーン協会のウェブページ

すでに多くの方はご存知のことと思うが、日本サクソフォーン協会のページがリニューアルした。

これまでのHTMLタグ直打ちページから一転、佐藤淳一さんがデザインの大枠を作り、大幅にリニューアルされた。

http://japan-saxophonists.com/

どのような運用形態になっているのかは知らないのだが、かなり頻繁に更新されている。もしご存じない方がおられれば、一度ご覧になってみては。

MVNOで運用2ヶ月

スマートフォンをMVNOのmineoで運用し始めてから2ヶ月と少し。現在のところ、メリットしか感じない状態だ。"通信速度が遅くなることがある"というのはよく聴く悪評だが、少なくとも私の使い方ではそれを感じたことはこれまでない。料金が安くなり、他が何も変わらない…というのは有り難いことだ。もっと早く変えれば良かったなあ。

2015/10/25

Green Ray Saxophone Quartet 4th Concert

【Green Ray Saxophone Quartet 4th Concert】
出演:Green Ray Saxophone Quartet
日時:2015年10月25日 19:00開演
会場:めぐろパーシモンホール・小ホール
プログラム:
小西遼「まだ見ぬ色へ」
A.コープランド/P.コーエン「4つのピアノ・ブルース」
R.ペック「ドラスティック・メジャー」
北方寛丈「2 Dances」
D.マスランカ「マウンテン・ロード」

グリーンレイSQの、4回目のコンサート。卒業の年…内田さんは他の三人と比べて一つ下の学年なので、ちょっと違うが…から毎年コンスタントに演奏会を続けていることに驚かされる。毎度(良い意味で)聴衆に媚びないプログラミングと、何かしらのこだわりが魅力と感じて、頻繁に演奏会に伺っている。

会場の残響が、広さに対してかなりデッドであったため、少々もったいないなと思う箇所もあった。それでもカルテットとして狙おうとしているであろう響きがあちこちから聴こえてきて、聴いていてとても楽しい。個々の点でも、皆さんそれぞれ素敵な演奏を繰り広げるのだが、今回は明日美さんのソプラノがまた良かったなあ。何気ない伸ばしの一音を、美しく響かせようという意志を感じた。

小西氏や北方氏の新作は、もっとゴリゴリにジャズorフュージョンした作品を想像していたのだが、意外にも規模や他ジャンルの影響は抑制されており、ちょっと肩透かしだったかな。代わりに、ペック「ドラスティック・メジャー」や、マスランカ「マウンテン・ロード」のようなウルトラ大曲の気合の入れようといったら!特に「ドラスティック・メジャー」は、曲の持つパワー、テンションをしっかりと表現しており、かなり聴き応えがあった。

アンコールは、山本哲也「グリーン・バラード」。第一回の演奏会のアンコール曲だ。曲も演奏も、肩肘張らない、さり気ない美しさを湛えていた。

ハバネラ・サクソフォン・カルテットの新CD情報

昨日の演奏会、CD売り場にハバネラ・サクソフォン・カルテットの新CDプロモーションフライヤー置かれていた。2015年秋(そろそろかな?)に、新しいCDのリリースが予定されているそうだ。

収録曲目は、ドビュッシー「スティリー風タランテラ」「サラバンド」「トッカータ」、ショーソン「幾つかの舞曲作品26」、ラヴェル「弦楽四重奏曲」とのこと。金曜日のコンサートでも演奏された作品、また9年前の来日で演奏された作品が収録されている。きっと素晴らしい内容になることだろう。特にラヴェルが個人的に楽しみだ。

ハバネラSQ&ブルーオーロラSQ八重奏コンサート

"祝祭"というキーワードが頭に思い浮かんだ。

ハバネラ・サクソフォン・カルテットの面々は、平野公崇氏のパリ国立高等音楽院時代の同窓生にあたる。平野氏とハバネラSQとの関係はその後もハバネラ・アカデミー等で続いており、そのような経緯から今回の共演が実現したとのこと。平野氏のMCからは、「念願の」といった雰囲気が伝わってきたのだが、演奏もまさにそのような感じだった。

【ハバネラ・サクソフォン・カルテット リサイタル】
出演:ハバネラ・サクソフォン・カルテット、ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット
日時:2015年10月24日(土曜)19:00開演
会場:青葉区民文化センター フィリアホール
プログラム:
J.リュエフ - 「四重奏のためのコンセール」よりアントレ
J.S.バッハ - 主に向かって新しき歌をうたえ
J.S.バッハ - 「ブランデンブルク協奏曲第3番」よりアレグロ
F.メンデルスゾーン - 弦楽四重奏曲変ホ長調より第1楽章
M.ラヴェル - 「クープランの墓」よりプレリュード、トッカータ
山田耕筰/平野公崇 - 「エスプリ・ドュ・ジャポン」より赤とんぼ
真島俊夫 - ラ・セーヌ
A.ボロディン - だったん人の踊り
山田耕筰/平野公崇 - 「エスプリ・ドュ・ジャポン」より江戸の子守唄(アンコール)
A.ピアソラ - ブエノスアイレスの春(アンコール)

自発性に満ちた音楽が聴衆の眼前に広がる。2つのカルテットは、サウンドの方向性も音色も音楽性も全く違うのだが、なぜこのように魅力的なのだろうか。普通に聴いていたら「ここの音色が完全には合っていません」という感想が出てしまうはずなのに、それ以上の何か…強烈な説得力があるものだから、もはや何も言えなくなってしまうのだ。圧倒的なスピード感、多彩なサウンド…。次から次へと繰り出される響きは、底抜けに楽しく、昨日とは違う意味での「言葉では説明できない」演奏なのであった。

フランス風序曲を模したリュエフの「コンセール」のアントレ(演奏会の開始に、なんと相応しいことか)は、なんとダブルパート、8重奏での演奏。バッハでは、ポリフォニックな響きが会場をいっぱいに埋め尽くす。アンサンブルとして(個人的な感想だが)最も素晴らしい演奏を展開したメンデルスゾーンの緻密な連携プレーには、大変興奮させられた。ラヴェルでは、サクソフォンならではの機動性が光り、和声のスピーディな進行の連続を見事に表現してみせ、「赤とんぼ」ではあの冒頭のクリスチャン・ヴィルトゥ氏の超々極小の音!にやられてしまった…この2日で最も驚かされた音だったかもしれない。真島俊夫の「ラ・セーヌ」やボロディンは、演奏会のフィナーレへと向かって楽しさ、嬉しさが爆発し、その興奮の渦に会場全体が巻き込まれていくような、そのような稀有な時間を過ごしたのだった。

実に楽しい演奏会だった。文化人類学における"祝祭"とは、人々が日々の営み(所謂「仕事」)の中で少しずつ生産し続けた剰余を、ある瞬間に一気に使い果たす行為であるとされる。今宵の演奏会で、「蕩尽」とも形容されるような、たった2時間弱における圧倒的消化を目の当たりにしたのだった。非日常的な空間の共有を、演奏者と、聴衆、双方が期待し、その化学反応が期待を大幅に超えて進んでしまった…まさに、未曾有の体験であった。

2015/10/24

ハバネラ・サクソフォン・カルテット リサイタル2015

サクソフォン四重奏を聴きにいったはずなのだが、あまりに別次元の響きが続くものだから、途中から何を聴いているのか分からなくなってきてしまった。

【ハバネラ・サクソフォン・カルテット リサイタル】
出演:ハバネラ・サクソフォン四重奏団(クリスチャン・ヴィルトゥ、シルヴァン・マレズュー、ファブリツィオ・マンクーゾ、ジル・トレソス)
日時:2015年10月23日(金曜)19:00開演
会場:青葉区民文化センター フィリアホール
プログラム:
G. テレマン「水上の音楽」より序曲
R.シューマン「弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 Op.41-2」より第1楽章
E.ショーソン「舞曲 op.26」より
C.ドビュッシー「スティリー風タランテラ」「トッカータ」
P.エトヴェシュ「様々な解釈」
B.バルトーク「ブルガリアのリズムによるダンス」
P.グラス「サクソフォン四重奏曲」より第4楽章
A.ピアソラ「ミケランジェロ'70」(アンコール)
J.S.バッハ「?」(アンコール)

私は、演奏会に出かける時には、自分の中に"基準"のようなものを持っていく。あらかじめ、それまで録音や実演で接した経験をベースとして「凡そこのくらいの驚きがあるだろう」という見込みを自分の中に作りこむのだ。実演に接した時、その基準を超えると感動するのだが、ハバネラ・カルテットについては、それが全く通用しないと感じた。これまでにCDを何枚も聴いたし、映像も観たし、9年前とはいえ実演に接したこともある…しかし、そういった私の中の(大きな)期待を易々と飛び越えて、別次元の世界へと連れて行くような、そんな演奏だった。もはや書くことができる言葉は推測をベースにしたものでしかない。

技術的な面は世界最高水準だろう。消え入るような、しかし安定したピアニシモ、フラジオも難なく吹きこなし、音色はただひたすらに美しい。だがしかし、技術で説明しきれない部分だらけだ。

シューマンの辺りから、聴いたことのない響きが連続して、サクソフォン四重奏という編成をベースに演奏を語ることができない。サクソフォンが複数本折り重なっている箇所では、瞬間瞬間に、響きが変化していく。聴いたことのない響きだから、言葉を使って「弦のような」「肉声のような」と表現することもできない。だがしかし、1本に着目して聴いてみると、意外と普通のサクソフォンの音である。その、普通(と思われる)サクソフォンの音が2本、3本、4本と重なっていくに連れて、色彩が無限に拡がっていく。

エトヴェシュの新作のような、一聴すると良く分からない作品でも、なんと見通しの良い演奏であることか!だが、見通しが良いと言っても、「楽譜が見えるような正確な演奏がすごかった」ではなく「音楽を聴きました」という感想に落ち着いてしまうことが不思議だ。正確無比、ということではきっとないのだが、なぜあんなに説得力があるのだろうか。

休憩なし、アンコールまで含めておよそ1時間30分弱の一本勝負。短いMCを挟むのみで、極彩色の響きを、次へ次へと楽々紡ぎだす。きっと何か特別な凄いことをやっているのだろう…と、同じサクソフォン吹き(と言うのも憚られるほどだが)の端くれとしてそのヒントを少しでも得ようとするのだが、無駄骨に終わったのだった。

いやはや、明日(もう今日か)の8重奏コンサートも楽しみだ。

2015/10/23

サイバーバードのピアノリダクション版が販売開始

吉松隆「サイバーバード協奏曲」のピアノリダクション版が販売開始となった。須川展也氏監修とのこと。

演奏用スコア+パート譜(電子版)
http://asks-orch.com/shop/products/detail.php?product_id=294

演奏用スコア+パート譜
http://asks-orch.com/shop/products/detail.php?product_id=293

スタディスコア(電子版)
http://asks-orch.com/shop/products/detail.php?product_id=292

スタディスコア
http://asks-orch.com/shop/products/detail.php?product_id=291

初演前に楽譜が一般販売開始されたことは意外だった。誰が初演することになるのかなあ。

2015/10/21

SaxOpenの動画が大量に公開中

7月に行われたサクソフォン・コングレス"SaxOpen"の演奏動画だが、今になって公開が一気に進んでいる。Vimeo上の、Boulevard des productionsのアカウントから辿ることができる。カメラワークや音質にかなりこだわっている動画もあり、見応え充分。

https://vimeo.com/user13732438

いろいろ公開されていて目移りしてしまう。…おお、行列で入れなかったマカリスター氏のリサイタルもアップされている。

22 CONCERT - TIMOTHY MCALLISTER RECITAL - THIMOTHY MCALLISTER & LIZ AMES from boulevard des productions on Vimeo.


最終日のSaxAssault。いやあ、楽しかったなあ。思い出が蘇りますなあ。

CONCERT - POP SAX - SAX ASSAULT from boulevard des productions on Vimeo.

千畳敷カールへ

17日の諏訪での演奏ののち、実家で一泊。その次の日は、千畳敷カールへと散策に出かけた。ふもとのバス停に車を停め、バスに揺られて30分、さらに駒ヶ岳ロープウェイで8分。日本最高地点の駅、標高2612mへ一気に駆け上がる。森林限界はとっくに超えているような場所まで、気軽に行くことができるのは実に楽しいことだ。

千畳敷カールの紅葉は終わってしまっていて、うっすらと雪が積もっているほど。しかし、むき出しの岩肌の光景は圧巻だ。宝剣岳を背にすると、南アルプスの山々が連なるダイナミックな光景が目に飛び込み、さらにその奥には富士山まで!抜けるような青空とともに、絶景を堪能した。

今度は宝剣岳や木曽駒ヶ岳まで行ってみたいなあ。

2015/10/18

諏訪の四賀公民館で演奏

昨日、10/17は諏訪の四賀公民館の文化祭で演奏だった。一昨年、昨年に引き続き3回目であり、毎回暖かく迎えてくださり、嬉しいことだ。

5重奏で本多俊之「陽だまり」と鈴木英史「フォスター・ラプソディ」を、4重奏でフラッケンポール編「ラグタイム組曲」、唱歌メドレー(日本サクソフォーン協会の楽譜)他、数曲を、1時間ほどにわたって演奏した。吹きっぱなし&(ほぼ)しゃべりっぱなしでだいぶ疲弊したが、とても楽しかった。関係者の皆様、ありがとうございました。

この日は、このあと実家へ移動した。

5重奏の演奏写真。

2015/10/16

明日は諏訪で演奏

明日は長野県諏訪の四賀公民館で演奏。ここ最近毎年続いて、3年目となる。少々ヘビーだが、楽しみだ。

朝早いので簡素な記事にて。早く寝ないと…。

2015/10/15

デファイエ四重奏団の伝説の名盤が復刻

かつてCBSソニーが出版していたダニエル・デファイエ・サクソフォン四重奏団の伝説の名盤2枚が「タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9集」のひとつとしてソニーレコーズインターナショナルより復刻される。

http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=0940&cd=SICC000001972

誰が企画し、どのような経緯を経て発売までこぎ着けたのかは分からないが、なんとも嬉しい復刻だ。また、木下直人さんに教えていただいたのだが、LP時代に何度か再発売されたことから、おそらくソニーが保管していたマスターテープからの復刻であろう、とのことだ。

ある世代以上のサクソフォン吹きにとっては「衝撃の盤」であり、「標準の盤」であるとも聞く。「衝撃」とは、その圧倒的な技術と音楽性、得も言われぬその音色という点において。「標準」とは、今では一般的とも言える、収録されたレパートリーの唯一の参考盤であったという点において。これらの盤が、日本のサクソフォン界に与えた影響は計り知れない。また、実はこのブログを立ち上げるきっかけとなったのはこの2枚のLPなのだ(詳細はこの記事の最後に)。

リュエフ、冒頭にジャン・ルデュー氏がバリトンサクソフォンで出している"シ"の音に驚くべし!こんなに裕な響きがバリトンで、しかもブリルハートで出せることに驚かされる。もちろん、その他の曲の演奏も最高である。録音は、アンドレ・シャルラン率いるCECE(Centre d'Enregistrement Champs-Elysee)への外部委託。1975年、サル・アディヤールにおいて録音され、4日間の予定のところ、1日で録りきってしまった(ポラン氏談)というから驚きだ。このシャルランの録音を、発売元のソニーのエンジニアは気に入らなかったというが、おそらく録音に対する考え方の違いだろう。

J.リュエフ - 四重奏のためのコンセール
A.ティスネ - アリアージュ
C.パスカル - 四重奏曲

まるでフルートのように聞こえ、最後がffで終わる「G線上のアリア」、ものすごいドライブ感を湛えた「3つの小品(編集ミスあり)」、ミュールの録音を思い起こさせる「メヌエット」…等々、一つ一つは小品ながら話題に事欠かないアルバム。松雪先生にMDをコピーしてもらい、その後木下直人さんに復刻してもらい、何度聴いたことだろうか。録音はこまばエミナース。

J.S.バッハ - G線上のアリア
D.スカルラッティ - 3つの小品
L.ボッケリーニ - メヌエット
W.A.モーツァルト - アヴェ・ヴェルム・コルプス
R.シューマン - スケルツォ
P.I.チャイコフスキー - アンダンテ・カンタービレ
I.アルベニス - カディス
I.アルベニス - コルドバ
I.アルベニス - セヴィリャ
C.ドビュッシー - 小さなネグロ
C.ドビュッシー - 小さい羊飼い
C.ドビュッシー - ゴリウォーグのケークウォーク

Amazon等で予約も開始しているようだ。私も早速予約した。サクソフォーン・アンサンブルの至芸


このブログを(正確に言うと、当時はジオシティーズでdiary.kuri_saxoを書いていたので、そのウェブページを)立ち上げるきっかけとなったのはこの2枚のLPの録音だった。当時の記事内容を下に転記しておく。10年以上前…2005年1月21日の記事だ。

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デファイエ四重奏団のリュエフ、ティスネ、パスカルの録音。リュエフの冒頭、一発目のバリトンの音を聴くことは長年の夢だったけれど、ああ、こんなにも豊潤な音色だとは…。まさに世界最高のバリトンの音と呼ぶにふさわしい。デファイエ四重奏団の録音を初めて聴いたときから、一番好きなバリトンサクソフォン奏者はジャン・ルデュー。OpusやPolymnieから出ているルデュー四重奏団のCDでも驚異的な音楽を聴かせてくれる(Opusへの吹き込みはルデュー氏が64歳の時、Polymnieに至ってはなんと73歳のときの録音!)。

よく取り出して聴くのはパスカル。フランスのエスプリがしっかり効いた素敵な演奏。1797年版のアントワーヌ・リヴァロル著「新フランス語辞典趣意書」において、「エスプリ」とは「速やかに見てとり、キラリと光ってみせ、打ち勝っていく能力」と説明されているが、まさにそんな感じであります。個人的に好きな第4楽章、随所に散る火花は私を魅了してやまない。

そしてこちらも感激!!ずっと聴きたかった、デファイエ四重奏団の小品集。録音は来日時にこまばエミナースにて。一曲目は「G線上のアリア」。個人的に知ってるプロのトランペット奏者の方が、エアチェックしながら最初の音色を聴いて「フルートの音色みたい」と思ったらしいが、あながち言っていることが分からないでもない気がする。曲の最後がffで終わるのは今となっては伝説であるらしいですな。フルモーサクソフォン四重奏団が2002年の来日の際に同じアレンジと解釈で演奏をし、話題になったとかならないとか。

この小品集の録音のキモはスカルラッティの「3つの小品」だろう。EMI Franceに遺された録音(ピエルネ、デザンクロ、リヴィエ、シュミット)を聴く限り、もっと(いい意味で)じゃじゃ馬な演奏を期待していたのだが、意外と統制感が漂い、さらに強烈な個々のテクニックと美しい音色が音楽としての価値を高ている。個人的には第1楽章「プレスト・ジョコーソ」のドライヴ感が大好き。

2015/10/14

ハバネラ四重奏団特集(2015年来日時)

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その3):他に面白いCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その4):演奏動画を観たいのだけど…
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その5):来日演奏会の詳細!
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その6):講習会のこと

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カルテット講習会詳細(10/23-25):
http://www.blueaurora.org/blueaurora/habanera.html

カルテットコンサート詳細、ブルーオーロラSQとのジョイント演奏会も!(10/23-24):
https://spike.cc/shop/masanoriois

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その6):講習会のこと

ハバネラ特集第6弾。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その3):他に面白いCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その4):演奏動画を観たいのだけど…
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その5):来日演奏会の詳細!

ハバネラ・サクソフォン・カルテットの面々は、教育者としても優れている方ばかりだ。

クリスチャン・ヴィルトゥ(ソプラノ)は、現在パリ市立13区音楽院教授。多くの生徒をパリ国立高等音楽院に送り込んでいることは周知の通り。スィルヴァン・マレズュー(アルト)は、現在、エヴルー音楽院教授。20歳の時、すでにサクソフォンの教員免許を取得している。ファブリツィオ・マンクーゾ(テナー)は、現在、アヌシー国立音楽院助教授。ジル・トレソス( バリトン)は、ポワチェ国立音楽院教授。なんと20歳の時に教授に任命されている。教育学の分野においても、的確な指導を行うと聞く。また、毎年カルテット全員が関わる講習会、ハバネラ・サクソフォン・アカデミーを主催しており、多くの受講生が世界中から集まって研鑽を積んでいるという。

そんなハバネラ・サクソフォン・カルテットの面々の指導を、今回日本で受けられるように、野中貿易が講習会をアレンジしたとのこと。ハバネラQならびに、ブルーオーロラQが指導陣として参加し、発表会やパート別レッスンも付いた、なかなか充実した内容だ。コンサート鑑賞もセットでついている、ということで、お得な雰囲気。私も、すぐ出せるレパートリーがあればぜひ参加したかったのだが、カルテットは最近ご無沙汰のため断念…興味あるかた、ぜひいかがでしょうか(チラシはクリックして拡大)。

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カルテット講習会詳細(10/23-25)受講者募集中!:
http://www.blueaurora.org/blueaurora/habanera.html

カルテットコンサート詳細、ブルーオーロラSQとのジョイント演奏会も!(10/23-24):
https://spike.cc/shop/masanoriois

2015/10/12

第11回国際オーボエコンクール・軽井沢 入賞者&審査委員コンサート

10/10に本選結果が出たばかりの、第11回国際オーボエコンクール。その入賞者と、審査委員が出演するコンサートを東京文化会館に聴きに伺った。妹がアマチュアのオーボエ吹きで、これを聴くために上京しており、同行させてもらった。

本選結果:
第1位:荒木奏美
第2位:ユーリ・シュマール
第3位:フィリベール・ペリーヌ

審査委員:ハンスイェルク・シェレンベルガー、モーリス・ブルグ、古部賢一、ゴードン・ハント、小畑善昭、アラン・フォーゲル、吉田将

【第11回国際オーボエコンクール・軽井沢 入賞者&審査委員コンサート】
出演:後述
日時:2015年10月12日(月・祝)15:30開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
F.クープラン - 「趣味の融合または新しいコンセール集」よりコンセール第7番(ユーリ・シュマール,ob)
H.デュティユー - オーボエ・ソナタ(フィリベール・ペリーヌ,ob)
J.S.バッハ - 「音楽の捧げもの」より「6声のリチェルカーレ」(アラン・フォーゲル&ゴードン・ハント,ob ハンスイェルク・シェレンベルガー&古部賢一,cor anglais 小畑善昭,bass ob 吉田将,fgt)
細川俊夫 - スペル・ソング -呪文のうた-(フィリベール・ペリーヌ,ob)
J.S.バッハ - オーボエ・ダモーレ協奏曲(モーリス・ブルグ,ob d'amore)
W.A.モーツァルト - オーボエ協奏曲(荒木奏美,ob)

なんと豪華な出演者!サクソフォンの私でも、モーリス・ブルグ氏やハンスイェルク・シェレンベルガー氏、ゴードン・ハント氏の名前を存じており、そういった名オーボエ奏者が一同に会する、というのはコンクール付随のコンサートならではの醍醐味だ。

前半はユーリ・シュマール氏のバロック作品の演奏(2次予選の課題曲)、そして、フィリベール・ペリーヌ氏の近現代作品の演奏(1次予選の課題曲)を立て続けに聴く。普段サクソフォンを聴いて吹いている以上、どうしても比較のような聴き方をしてしまうのだが、数倍も繊細なコントロールと、音色やヴィブラートやさりげないフレージングへの徹底したこだわり…適当に吹き飛ばしてしまう箇所など皆無、という、こだわり磨きぬかれた演奏に魅了された。

第1部最後、審査員が集結して演奏されたダブルリード6重奏は圧巻。最初は"ダブルリード6重奏"という編成名を聴くだけで身構えてしったのだが、出てくる音楽の、なんと優しく美しいこと!和声の美しさ、各声部の絡み合いは、楽器を超えた音楽そのものの魅力だ。いやはや、鮮烈な体験だった。

第2部は、コンクール用に委嘱された無伴奏作品の演奏から。ポルタメントや重音等の特殊奏法を交えた作品で、これは自由度が小さいオーボエならではのコンパクトな響き。"自由度"というのは諸刃の剣なのだなあという思いを強くした。

ブルグ氏は、なんと吹き振り!指揮、舞台上の所作、オーボエ・ダモーレから生み出される音、全てが自然体そのものであった。ブルグ氏といえば、私にとっては本当にCD(LP)の中の人、というイメージしかなかったのだが、そんな名匠が間近で楽器を演奏している姿を観ることができたことに震えてしまったのだった。

最後は、第1位受賞の荒木奏美氏の演奏。シェレンベルガー氏が指揮する群馬交響楽団の演奏も万全のサポート、その上で闊達に(そしてまた楽しそうに)演奏する姿が印象深い。巨匠の演奏が連続する中、堂々たる演奏だった。また、以前、銀座のヤマハホールで聴いた時よりも、格段に表現に自由度が出ている雰囲気。今年、東京交響楽団への入団も決まったとのことで、今後ますます活躍する姿を観る機会が増えることだろう。

ということで、私自身の、オーボエに対する印象をがらりと変えるようなコンサートだった。たまには他の楽器も聴かないとなあ。

第7回サクソフォン交流会・速報

公式サイトにて情報が公開されたので、こちらでもご紹介。6回の開催(関東圏以外の2回開催を含む)を経ての7回目は、関東圏での開催となる。ラージアンサンブル指揮・アドバイザーに、原博巳先生を迎えることとなった。とても楽しみだ。

多くの方のご参加をお待ちしています。

【第7回サクソフォン交流会】
日時:2016年5月14日(土)
会場:高津市民館(神奈川県川崎市溝の口駅付近)
アドバイザー・指揮:原博巳
※参加団体の募集は2015年12月頃を予定しています。

https://sites.google.com/site/saxkouryukai/

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その5):来日演奏会の詳細!

ハバネラ特集第5弾。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その3):他に面白いCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その4):演奏動画を観たいのだけど…

来日演奏会では、ちょっと特殊でありながら、おそらくハバネラ・カルテットの"らしさ"を存分に堪能できるプログラムが組まれている。特に、個人的にはエトヴェシュの新作四重奏曲は興味深く、どのような響きが構築されていくのか今からとても楽しみである。グラスの四重奏曲は、いわゆるミニマル・ミュージック。きっとスマートな演奏を繰り広げることだろう。弦楽作品のアレンジものについては、すでにCDでもライヴでも素晴らしい演奏をすることを体感している。ロマン派のシューマンが、どのように料理されるのか…。

【ハバネラ・サクソフォン・カルテット リサイタル】
出演:ハバネラ・サクソフォン四重奏団
日時:2015年10月23日(金曜)19:00開演
会場:青葉区民文化センター フィリアホール
料金:https://spike.cc/shop/masanorioisを参照のこと
プログラム:
G. テレマン「Wasser Music」より序曲
R.シューマン「弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 Op.41-2」より第1楽章
P.エトヴェシュ「様々な解釈」
E. ショーソン「幾つかの舞曲 op.26」より
C.ドビュッシー「スティリー風タランテラ」「トッカータ」
B.バルトーク「ブルガリアのリズムによるダンス」
P.グラス「サクソフォン四重奏曲」より第4楽章

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カルテット講習会詳細(10/23-25)まだまだ受講者募集中!:
http://www.blueaurora.org/blueaurora/habanera.html

カルテットコンサート詳細、ブルーオーロラSQとのジョイント演奏会も!(10/23-24):
https://spike.cc/shop/masanoriois

2015/10/11

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その4):演奏動画を観たいのだけど…

ハバネラ特集第4弾。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その3):他に面白いCDは?

ハバネラ四重奏団の動画は、公式サイト(http://www.quatuorhabanera.com/)にアップされているものが、質・量とも大変オススメできる。公式サイトにアクセスし、右上のmediathequeというリンクをクリックすると、視聴動画を選ぶことが可能。以前、大きな話題となったティエリー・エスケシュ「タンゴ・ヴィルトゥオーゾ」他、注目すべき動画が多い。これらの動画のうちいくつかは、YouTubeにも転載されており、YouTubeで「Quatuor Habanera」と検索すれば多くの動画を見つけることができると思う。

演奏動画といえば、DVDも存在する。自主制作DVD-Rで、ボルドー市の「Base」と呼ばれる潜水艦ドック内でのライヴを収録したもの。カメラワークやライティングがなかなかカッコよく構成されていて、観応え十分。バッハ「平均律クラーヴィア曲集よりBMV847, BMV863, BMV857, BMV873」、リゲティ「バガテルより1, 4, 5, 6, 7, 8」、棚田文則「ミステリアス・モーニングII」、マルケアス「コンポジション・ヴァーティカル」、ピアソラ「肉屋の死」「フガータ」「ミケランジェロ70」。

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2015/10/09

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その3):他に面白いCDは?

ハバネラ特集第3弾。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?
ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?

手に入りづらいが、ぜひ多くの人に聴かれてほしいCDを2枚(+おまけで1枚)取り上げる。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団のCD「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。第5回大阪国際室内楽コンクールの実況録音盤で、読売放送が限定盤として制作したディスク。コンクールの一次予選で演奏されたデザンクロ「四重奏曲」とドナトーニ「ラッシュ」、二次予選での野平一郎「四重奏曲」、そして本選でのグラズノフ「四重奏曲」とクセナキス「XAS」を収録している。

一次予選のデザンクロからまったく手抜きなしの全力勝負。しかし気負いを感じることはなく、純粋に良い音楽を奏でようとする意思が秘められているようにも感じる。音程が良いとかバランスが良いとかは当たり前で、決められた枠の中で各々が主張をしながらアンサンブルが動的に組み上がっていく。三楽章なんか音を間違えてるしタテだってあまり合ってないのに、ものすごくうまく聴こえる…なんだこりゃ。しかもめちゃくちゃ速いのだ!ドナトーニや野平はいわゆる「現代作品」。ドナトーニの冒頭、四本のサックスが極小音量でそれぞれのモチーフを奏でるところなんかも、ありえないほどの安定性。対して野平作品ではCDの音が割れるほど鳴らす、異常なまでのダイナミクス。一本一本の音色はぜんぜん違うのに、ユニゾンではオルガンでも聴いているようなパワーだ。

最後に向かって華麗なaccel.を魅せるグラズノフの終楽章、今まで聴いたどんな演奏よりもカッコイイよく、興奮させられる。しかし、ゲテモノではなく、正しく格のある演奏だ。爆速のエンディングを聴き終えたあとに残る高揚感が心地よい。ロマン派にありがちなトリルや装飾音を多用したフレーズも、ここまで自然に…まるで四人の他愛のないおしゃべりを聞いているようだ。グラズノフに続いて最後を飾るクセナキス「XAS」はもう凄すぎて何がなにやら。現代作品ではあるものの、音楽は常に淀みなく流れていく。


第1回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールの開催後、1996年9月16日にフランス・ボルドー市のCentre Andre Malrauxで開かれた、入賞者記念演奏会の模様を録音したディスクである。このコンクールでは、平野公崇氏が日本人として初めてサクソフォンの国際コンクール優勝を果たした。また、第2位にヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏、第3位にオーティス・マーフィ Otis Murphy氏が、それぞれ入賞している。四重奏部門の優勝は、ハバネラ・サクソフォン四重奏団 Quatuor de saxophones Habaneraであった。…なんだか凄い名前ばかりで、それぞれの演奏者の現在の活躍を見るにつけ、当時のロンデックス氏を始めとした審査員の面々は見る目があったのだなあ、という思いを強くする。

プログラムは次の通り。面白そうでしょう?
Heitor Villa Lobos - Fantasia (Masataka Hirano)
Christian Lauba - Jungle (Masataka Hirano)
Edison Denisov - Sonata (Vincent David)
Luciano Berio - Sequenza VIIb (Vincent David)
Alfred Desenclos - PCF (Otis Murphy)
Luciano Berio - Balafon (Otis Murphy)
Alfred Desenclos - Quatuor (Quatuor Habanera)

演奏内容もかなり良い。疵も散見されるが、それよりも、これらの独奏者たちが若手のホープとして活躍していた頃の空気感をダイレクトに感じられるという点で、大変貴重な録音だ。

ハバネラ四重奏団のデザンクロ。このCDの中で私的に一番の驚き。なんと丁寧で完成度が高い演奏であることか。楽譜に非常に忠実なのだが、そのように演奏されることで、ここまで魅力的な演奏に仕上がるのか…。さらに、聴こえてくる和音やリズムが、いちいち心地良すぎる。絶妙なアゴーギクや音色の変化、楽器ごとのバランス…ハバネラ四重奏団の"アンサンブル力"の源泉を垣間見る思いだ。特に第3楽章は絶品で、数多ある録音の中で、最も好きな演奏かもしれない。全体を通して聴いても、"現代のデザンクロ「四重奏曲」の演奏"として屈指のものであり、トルヴェールQ(旧録音)、アレクサンドルQあたりと比べても遜色ない。おそらく、今後デザンクロでおすすめの演奏は、と問われれば、デファイエQに次ぐものとしてこれを提示することになるだろう。それほどの魅力を感じている。まだ聴き込んでいる段階だが、20回聴いても飽きないってなかなかのものだ。


最後に…好事家向きだが、こんなCDもある。クリスチャン・ヴィルトゥ氏のかわりにヴァンソン・ダヴィッド氏が参加した、いわゆる「ハバネラB」の実況録音。







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ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?

昨日の記事に続き、今日はハバネラ・カルテットのCDをご紹介。手に入りやすくおすすめできる2枚を取り上げる。

「Grieg, Glazounov, Dvorak(Alpha 041)」
エドワルド・グリーグ - 組曲「ホルベアの時代から」
アレクサンドル・グラズノフ - サクソフォーン四重奏曲作品109
アントニン・ドヴォルザーク - 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」

曲目は、純粋に奏者の技量が試されるであろう古典作品。何気なくCDを聴き始めると、派手な経歴からは想像できない意外なほどの「普通の」演奏に驚くことだろう。一見するとテクニックばかりをさらけ出しているとか超絶技巧だとかいう印象はなく、上質のサウンドが小川のようによどみなく流れてゆく。続くグラズノフやドヴォルザークでも下手な小細工をせずに丹念に組み上げられたアンサンブルが心地よい。

この一見「普通の」演奏を実現する難しさ!超絶技巧を超絶技巧と思わせず、アルティシモ音域までを均一なサウンドで作り上げ、どこまでも自然なフレージングを徹底して追求した結果、「サックスのCD」というより「クラシック音楽のCD」として高いレベルで結実してしまった…とでも言えばいいだろうか。お堅い「普通の」クラシックファンの耳をも納得させる屈指の四重奏アルバム。

紙ジャケット仕様。表紙にはアルファレーベルの特徴である絵画(Georg Nikolaj Achen "Interior", 1901 オルセー美術館蔵)が使用され、アルバムに花を添えている。国内では、輸入盤のみならず、代理店経由で流通している版も存在し、日本語解説が添付されている。

「L'engrenage(Alpha 518)」
アレクサンドロス・マルケアス - 歯車のように
ルイ・スクラヴィス - 期待とダンス
ジョエル・メラ - 出会い
アラン・ベルロー - ちいさな炎いくつも
リオネル・ボール - あいまいな女たち
ファビアン・レヴィ - ドゥルフ
ルイ・スクラヴィス - 分離
ヤセン・ヴォデニチャロフ/ルイ・スクラヴィス - 黄金のしずく
ジェルジ・リゲティ - 東風(「バガテル 第3番」を固執旋律に据えた即興演奏)
ルイ・スクラヴィス - 水の花
ルイ・スクラヴィス - その民なりの幼き日
ルイ・スクラヴィス - 後日談

スクラヴィス氏はヨーロッパジャズ界屈指の演奏家&作曲家。特に即興演奏のスペシャリストとして定評のある奏者。バスクラリネットやサクソフォーンを操りながらそのスーパー・テクニックでコード上のアドリブから完全即興までをこなすが、このアルバムもその能力が遺憾なく発揮された録音だ。

記譜を受け持つハバネラ四重奏団/即興を受け持つスクラヴィス氏という、相反するサウンドが不思議なグルーヴ感を作り出している、という印象を受ける。ショックの大きさで言えばスクラヴィス氏の独特な即興演奏が上だろうが、そういった場所にあってもスクラヴィス氏を立てながら自己主張を怠らないハバネラ四重奏団。強烈な奏者同士のぶつかりが大きな実を結んだということかな。

聴きづらい曲もあるけれど、ジャズのイディオムをベースとした曲もあったりしてなかなか楽しい。リゲティの「6つのバガテル」第三楽章の伴奏を下敷きに、スクラヴィス氏が延々と即興演奏を続けていく「東風」というトラックは、アルバムのコンセプトを示唆しているようで興味深く聴いた。これ、サクソフォン奏者だけじゃなくてクラリネットの人にも聴いてもらいたいなあ。

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2015/10/08

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その1):どんな団体?

これから連続記事の形で、ハバネラ・サクソフォン四重奏団について特集を組む。団体や録音、そして今回の来日における講習会やコンサートについて、何度かにわけてご紹介していく。

1991年に、パリ国立高等音楽院のドゥラングル・クラスの奏者たちによって結成されたフランスの団体。名実ともに現代最高のカルテットの一つと言えるだろう。J.M.ロンデックス国際コンクール第1位、大阪室内楽コンクール第1位他、数々の国際コンクールで入賞しまくっている。日本にも何度か来日し、多くの聴衆を魅了し続けている。あのThunderさんをして、「ハバネラの来日は、というか存在自体が、ひとつの「事件」だ。(2002年来日時のコンサート評より)」と言わしめるほどのものだ。

ハバネラ・カルテットの凄さは、なんといっても全てにおいて「次元がひとつ違う」音世界を構築したことだと思う。これまで「サクソフォン四重奏というのはこのくらいの響き」とされていたものを、ハバネラ・カルテットは一気に拡張してしまった。それは、楽器のダイナミクスのコントロールであり、フレージングの美しさであり、アンサンブルの精度であり…。ハバネラ・カルテットの来日以降、日本のサクソフォン・カルテットが目指すひとつの方向性が築かれたと考えている。それは、まるで1961年のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のようなものである。

実際、それは確かに近年の日本のサクソフォン・カルテットのサウンドとして現れつつあると思う。超個人的な印象では、クローバーSQや、The Rev SQなどが、ハバネラ・カルテットの影響を少なからず受けていると考えているのだが…実際のところはわからないが。おそらくハバネラ・カルテットの影響がなければ、少なからず違うサウンドになっていたのではないだろうか。

2002年、2006年の後、ピタッと来日の機会が無くなってしまっていたのだが、満を持しての3度目(コンクールを入れると5度目か?)の来日。2006年の演奏は聴きに行けた。その時のレビュー、今読み返すと変なフレーズばかりが並んでいるのだが、よほど興奮していたのだろうなあ、と。あれから9年が経ち、さすがに私自身も耳が少しずつ肥えてきているが、きっとまた大きな衝撃を受けるのだろう。今回の来日で再び聴けるのが楽しみだ。

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カルテット講習会詳細(10/23-25):
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2015/10/06

第7回交流会キックオフ間近

昨日(もう一昨日か)、第7回サクソフォン交流会のキックオフ・プレ・ミーティングを実施。3時間ほどにわたって、諸々を検討した。今回は関東圏開催、実はすでにアドバイザーの先生も決定して、あとは会場探しと日程決めの段階に進んでいる。

マネージャーは、今回U氏がやってくださる、ということで、実働に徹する予定。

2015/10/04

新鎌ヶ谷でOut of the Standard with Strings

出演者の啼鵬さんに誘われて伺った。啼鵬さんと会うのは、ミュンヘン・フィルハーモックの木管アンサンブルとの窓口を担当した時以来。会場の新鎌ヶ谷は自宅からのアクセスが良く、意外にもすんなり到着。とても新しい建物、綺麗な会場。

【Out of the Standard with Strings】
出演:Out of the standard:大和田雅洋(sax)、牛渡克之(euph)、啼鵬(pf, bandoneon)、弦楽合奏弓組
日時:2015年10月3日(土曜)14:00開演
会場:MT Milly's(新鎌ヶ谷)
プログラム:
?「エル・チョクロ」
A.ピアソラ編「エル・ジョロン」
A.ピアソラ「(曲名失念)」
C.ガルデル「首の差で」
C.ガルデル「想いの届く日」
H.パスコアル「ショリーニョ・プラ・エル」
D.ミヨー「スカラムーシュよりブラジレイラ」
啼鵬「Along with You...」
A.K.グラズノフ「サクソフォン協奏曲」
A.ピアソラ「オブリビオン」
啼鵬「ユーフォニアム協奏曲」

サクソフォン、ユーフォニアム、バンドネオンという、クラシック音楽の世界では使われることが珍しい楽器によるトリオ…ということで結成され、すでに活動を継続して16年(だったかな?)になるそうだ。前半は南米の作品群をトリオで、後半は弦楽合奏とともに協奏曲を演奏する、という構成だった。

前半は、これはぜひもっと南米の作品を勉強してから再び聴いてみたいものだが、もちろんピアソラの名前は知っているし、ガルデルの「想いの届く日」は聴いたこともある。最後のほうでは(フランスの作品だが)南米繋がりでミヨーが取り上げられたり、また前半最後には東日本大震災に際して作曲された「Along with You...」も演奏されるなど、バラエティ豊かなものだ。演奏者の技術は3人が3人とも非常に高く、発音機構の違う3種類の楽器ながらアンサンブルとしてキマっていたのは、さすがだ。サクソフォン的興味から言うと、もしかしたら大和田氏の演奏をソロで聴いたのは初めてか…?アルディSQのCDで聴いた時は、ちょっとクセのある発音や音色が先に耳に入ってきてしまい、「?」という感じではあったのだが、こうしてライヴで聴くとまた違った点…ブレない演奏スタイル等…が聴こえてきて、もしCDだけ聴いて敬遠しちゃっている方がいるとすれば、もったいないなと思ったのだった。テンポやフレージングの感覚が、ちょっと日本的でないのが面白い。

後半も楽しかった。グラズノフの緩徐楽章ではさすがに弦楽合奏パートが苦労している様子が伺えたが(中音域の伴奏を吹いたことがあるが、和声と音運びがウルトラ難しいのだ!)、後半に向けて盛り上がっていく様が窺えた。また、ピアソラの「オブリビオン」での啼鵬氏のソロは凄かったなあ。最初の1フレーズで鳥肌が立ってしまった。啼鵬氏のユーフォニアム協奏曲も非常に楽しく、特にシャコンヌ、オスティナートと名付けられた第2楽章と第3楽章が素晴らしかった。いずれ、ピアノ版での演奏も予定されているそうな。

2015/10/03

今週のクラシック倶楽部にサクソフォンが4回登場

今週、9/28-10/2のクラシック倶楽部(NHK BSプレミアム)に、サクソフォンが頻繁に登場していた。5回の放送中、なんと4回!再放送も含まれていたが、クラシック・サクソフォン・ファンには嬉しいプログラムであった。

9/28 オーケストラの夜明け~山田耕筰 管弦楽曲選~
→「曼荼羅の華」、1913年の作品だが、テナーサクソフォンが1本含まれている。留学先のベルリンで作曲された(サクソフォンを使ったのは、リヒャルト・シュトラウスの影響ではないかと睨んでいるが、果たして)。サクソフォン奏者は遠目でぱっとわからなかったが、誰かな?

9/29 池辺晋一郎 音の地平(フィールド)
→「軌道エレベーター」須川展也氏と猫殿(カウンターテナー)。独自のサウンド、歌詞の不気味なオチ。ご存じない方はぜひご一聴を。

9/30 吉松隆 還暦コンサート~鳥の響展~
→「サイバーバード協奏曲」。いやはや、須川氏、さすがです(としか言いようがないほどの鮮烈さ)。

10/2 藤倉大 作品展~世界を席巻する藤倉大パラダイス~
→「SAKANA」を、委嘱者である大石将紀氏が演奏。この繊細な音響世界を体現できる奏者は稀であろう。

2015/10/02

パイパーズのゲラ修正

引続き仕事が多忙。なかなかブログを書いている時間も取れない。

パイパーズに、サクソフォン・コングレスのレポートを寄稿したのだが、先日ゲラが送られてきた。平日の帰宅後の時間を2日間ほど使い、ゲラの修正作業を実施していた。8000字ほど書いて、写真も含めると6ページぶち抜きという、なかなかのボリューム。

それにしても、毎度のことながら素敵なレイアウトにしてくださって感激である。私なんかは、正直なところ駄文と写真をごそっと提供しているだけで、レイアウトにはまったく関わっていないのだが、レイアウトがきちんとするだけで、なんだか記事に貫禄が出てくるような気がするのだから、ありがたいことである。

発売は来月くらいかなあ。ぜひ手にとってお読みいただければ幸い。