2015/07/24

TSQヨーロッパ演奏旅行2015(1日目:フランスへ)

7/9、22:55羽田空港発のエールフランス機でパリのシャルル・ド・ゴール国際空港へ。チェックイン時、テナーサクソフォンが持ち込めるかどうかびくびくしていたのだが、「サックスですねー、はいどうぞー」と超あっさりとチェックイン。感動。羽田空港を発ち、およそ12時間機内で過ごした。夕食、朝食の機内食は美味しく、映画を(インターステラーやら宇宙開発のドキュメンタリーやら)観るのも楽しかったが、騒音と狭さのためか一睡もできなかった。

現地時間7/10、早朝3:30頃にシャルル・ド・ゴール国際空港に到着。1時間半ほど滞在し、電車でパリ北駅へと移動した。パリ北駅の中は変な匂いがしてゴミが散らかっていて汚くて、ああ、外国に来たんだなあという実感が沸いた。様々な人種の方が歩いているのも、パリならではの光景であろうか。パリ北駅からパリ東駅までは徒歩移動。パリ東駅を上から眺めたときの、規模の大きさに驚いた。

パリ東駅からはストラスブールまではTGVで移動。パリを出発してものの10数分、窓の外に農村の風景が広がり、ストラスブールまでの行程2時間に渡り、ほぼずっと森か畑かという風景が続く(まるで北海道の美瑛)。実に美しく、のどかな風景だ。よく見ていると、小さな集落が見え、その集落の真ん中には教会の尖塔が見え、その周りを畑が取り囲んでいるという…わかりやすい。TGVそれ自体は、途中のことは考えず、とりあえず都市と都市を結んでいるざっくりした感じが面白い。

10:44予定で、ほぼ定刻通りにストラスブールに到着。快晴で、少し暑いくらい。トラムに乗って宿泊先に荷物を預けるために移動した。賑やかで活気がある街、しかし人が多すぎたり、うるさかったり、ということはない。

今回、ストラスブールの宿はアパルトマン・モーツァルトという、最大10人まで宿泊可能なアパルトマンを借りた。10人泊まれて1泊180ユーロ(ひとりあたり1泊18ユーロ!)という安さ、しかしベッドルーム5つ(シングルx2が4部屋、ダブルが1部屋)、シャワールーム3つ、広々としたリビング、ダイニングキッチンも付いており、おまけに近くには夜遅くまでやっているコンビニもあり、とても快適に過ごすことができた。

ストラスブール全体が非常に充実した交通網で網羅されているのだが、これはどちらもCTSという会社が運営している交通機関で、トラムとバスが共通のチケットで乗り降りでき、さらに乗り継ぎも可能なのだ。宿泊先と演奏会場の間は、このバスやトラムで移動した。1回の乗降に1.6ユーロ、10枚綴り券を買えば1回あたり1.3ユーロ、コングレスのために用意された3日乗降自由パスは6.2ユーロと、いずれもかなりお安く、また10分前後に1本のペースで走っているため、とても便利だった。しかも、アパルトマン・モーツァルトの目の前に、音楽院方面行きのバス停が!アパルトマンから音楽院まではものの12分で着くのだ。

到着して荷物を整えた後は早速会場へ。受付で簡単なカードを記入し、事前登録しておいた名前を伝えてパスを受け取った。パスには全日パス、3日パス、1日パスがある。各コンサート会場では、入り口でパスをチェックされ、すべてのコンサートに出入り可能。いくつかのコンサートについては、事前にチケットの予約(そのコンサートの日のパスを買っていれば、パスに付帯するコードを使って無料で予約可能、パスを持っていない一般入場者でも、何ユーロか払えば予約可能)が可能であり、優先的に会場に入場することができる、というシステムであった。

今回、日本人の参加者がかなり多かったと聞いた。ウワサでは100人を超えていたとか…。お知り合いも多く、なんとなく安心感があり、日本とあまり変わらない感じもあり(笑)。前回のスコットランドのコングレスでは、日本人演奏者が我々や留学組含めて10人ちょっとだということを考えると、ずいぶん変わったなあという印象を持つ。

早速コングレスのコンサートを見学。まずはジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeix氏の講演を聞きに…。Studio400という、100人ほどが入ることができる明るく開放的なスペース。椅子が埋まっているが、地べた(絨毯)に座っている観客が普通にいるのが欧米的というかなんというか。しばらく立ったまま聞いていたところ、前の席が空いた♪ので移動したのだが、いざ座ってふと後ろを振り向くと作曲家のフランソワ・ロセ Francois Rosse氏やらティエリー・アラ Thierry Alla氏が!なんだかとんでもない場所に座ってしまい、変な汗をかきながら聞いたのだった。ロンデックス氏が話し、ウィリアム・ストリート William Street氏が英語に訳す、そんな進行で進んだ。作曲家との共同作業を何よりも大事にする、ロンデックス氏のスタイルを強く感じることのできた講演内容だった。

講演後、近くのOrange(通信業者)へ出かけてsimフリーのWifiモバイルルーター用のsimカードを15ユーロで調達。1ヶ月にわたって500Mbytesまで使えるプランだ。とにかく旅先においては通信手段が必須で、前回イギリス旅行でもトライしたのだがValidationが上手くいかず、今度こそと下調べをしてOrangeに乗り込んだのだった。上手く使えるようになり、フランスのどこでも通信環境をゲット。これが実に快適で、連絡も取れるし迷ったら地図を見られるしと、大活躍なのであった。

さて、続いて、「民族音楽のサックスの響きを出すには…」的な講演へ。マウスピースに何かしらの細工をし、通常のサクソフォンの響きとは違う、妙なノイズが乗った音を、モード即興とともにパフォーマンスしていた。

その講演ののち、Apollo Saxophone Quartetのリサイタルへと伺った。さすが有名なカルテットだけあり、大人気のリサイタルで、立ち見が出るほど。正直、あまり演奏されていた作品についての印象はないのだが、パリっとした独特の響きは、大好きなまさにアポロそのもの。音色ひとつひとつを取り出してみると、妙な癖が目立つのだが、そのミックスされた響きがこんなにも面白いなんて!と驚いたのだった。昔はアポロも何度か来日していたらしいのだが、最近はさっぱり。とはいえ、前回コングレス(無声映画とのコラボ)、そして今回コングレスと、こうやってライヴで聞けるのは嬉しい事だ。

続いて、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏のリサイタルに伺うも、超行列で途中で満員となってしまい、入れず…。事前予約を受け付けていないリサイタルについては、会場がいっぱいで入れない、というものも多かったようだ。

Studio 416という、エレクトロニクスの演奏にも対応した会場へと伺い、ボルドー音楽院のアンサンブル Bordeaux Saxophones Ensembleを聴いた。Juan Arroyoの「Sikuri X」という作品は、「Sikuri I」と同様、サクソフォンのマウスピースを外して息の音だけで構築された作品。楽器に対して息を吹き入れる向きの変化、パートごとのクレッシェンド、デクレッシェンドが重なる効果など、「Sikuri I」の響きを発展させた、という印象を受けた。続くフランソワ・ロセ Francois Rosseの「Krasnayaskaya II」も、サクソフォン多重奏のオリジナル作品として充実した響きを持つものだった。ところどころに出現するソロも上手い。いずれも世界初演であった。

そしてSalle Bourseという音楽院から数百メートルほど離れた会場で、歴代ディナン入賞者のコンサートを聴く。とても古い建物で、フラットな床に椅子が並んでいるのは、前回コングレスのメイン会場を思い起こさせる。伴奏は、アラン・クレパン Alain Crepin氏指揮のブリュッセル音楽院のアンサンブル。はじめに、バックのアンサンブルだけでモーツァルトの「『フィガロの結婚』序曲」が演奏されたのだが、ふわりとした響きのアンサンブルに日本のラージアンサンブルとの違いを感じ、興味深く聴いたのだった。ソリストが入った演奏は、残念ながら時間の関係でアレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏しか聴けず。アレンジ作品を、見事に美しい音色、音楽性で奏でていた。だが、最新のサクソフォンのトレンドと比較すると、時代遅れ感は否めない。この世界も日進月歩なのだなあと感じ入った(あと、ドワジー氏の演奏に妙にミスが多いのも気になる…)。

ドワジー氏の演奏を聴いた後は、一度アパルトマン・モーツァルトに向かって、この日夕方に到着した佐藤淳一さんを迎え入れ、バスを使って移動、Palais de la Musique et des CongrèsのSalle Erasmeへとサクソフォン独奏+吹奏楽の演奏会を聴きに向かった。Salle Erasmeは、2000人以上を収容できる大きな会場で、連日夜に大規模なコンサートが開かれている。この日の演奏は、フランソワ・ブーランジェ氏指揮のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団!まさかこんなところで"ギャルド"を聴くことができるとは。極上の響き、見事なアンサンブル、さらにサクソフォン独奏が絡むとは、なんと豪華な演奏会だろう。ギャルドの団員である、クリスチャン・ヴィルトゥ Christian Wirth氏が独奏者として演奏する、というのも象徴的な出来事であるし、クロード・ドゥラングル Claude Delangle教授とブランフォード・マルサリス Branford Marsalis氏が2人で独奏を務めるというのもすごいし、いやはや、盛りだくさん。途中ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団単独で、なんと「ディオニソスの祭」が演奏された。これは嬉しい誤算だ!最後はフィリップ・ガイス Philippe Geiss氏の「サー・パトリック」で、ギャルドのサクソフォンセクション、ソリスト陣が前方で演奏し、大盛り上がりの中〆。これ、前回コングレスの王立北部音楽院吹奏楽団とサクソフォン独奏との演奏会も、こんな感じの〆だったなあ。22:00終演予定だった演奏会は、22:30まで延びた。

てPalais de la Musique et des Congrèsの近くのバス停から出ているバスでアパルトマンに戻り、就寝。40時間以上も起きているという疲れもあって、あっという間に寝入ってしまった。

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