2015/02/02

第34回サクソフォーンフェスティバル2015(その1)

今年のサクソフォーン・フェスティバル。2日目(2015/2/1@パルテノン多摩)を最初から最後まで聴いた。以下に感想を。

♪音大生によるアンサンブル - 東邦音楽大学・短期大学
A.コレッリ/圓田勇一 - 合奏協奏曲集作品6より"クリスマス協奏曲"

コレルリの「クリスマス」とは、また曲が良いですね。少人数ながらかなり鳴らしている印象で、この曲が持つポリフォニックな効果がよく出ていた。この団体に限らず、中編成〜大編成であっても、光る奏者は目立ちますね。そういえば、大石さんの(サウンドペインティングではない)指揮って初めて見た気がする(笑)。

♪音大生によるアンサンブル - くらしき作陽大学
A.ヴィヴァルディ/長瀬敏和 - ヴァイオリン・ソナタ作品5より

30名弱の専攻生がいるところ、有志10名での参加とのこと。岡山から新幹線で4時間かかった、という紹介があった。整ったアンサンブル、そして音色が美しい。そして「ラ・フォリア」とは、なんという良いセレクト!こういった、関東圏以外の音楽大学のアンサンブルと、関東圏のアンサンブルの、上手い交流の場があると面白いのかも、などと思った。

♪音大生によるアンサンブル - 国立音楽院
A.ポンキエッリ/早川菜美 - 歌劇「ジョコンダ」より時の踊り

もともとの曲のせいなのか、編曲のせいなのか、全体的に音が薄くて、中規模編成の利点が活かされていないのが残念。波及的に音楽の流れが停滞してしまっていた。こういったサクソフォン編成での、編曲の難しさを感じさせられた。

♪音大生によるアンサンブル - 東京藝術大学
J.S.バッハ - トッカータとフーガ

「スペイン奇想曲」の旭井さんのアレンジも聴いてみたかったが、曲が変更。「トッカータとフーガ」は、誰のアレンジだったのだろう?(とても良いアレンジと思ったのだが)各個人はもはや当たり前のように鉄壁に漏れなく上手いのだが、指揮に指揮科の学生を迎えて、アンサンブルとしても良く練られていた。

♪音大生によるアンサンブル - 上野学園大学
G.ホルスト/梶原未知 - セント・ポール組曲

3人の先生がローテーションして教えるシステムを採っているそうだ。門下、という概念が無いということになるのかな?面白い。アンサンブルとして、丸く整った音色がポーンと飛んできて、最初の一音を聴いた瞬間に「おおっ」と思った。「セント・ポール組曲」は、個人的にとても好きな作品だが、サクソフォン・アンサンブルへとアレンジした際の相性の良さを感じた。

♪音大生によるアンサンブル - 東京音楽大学
E.エルガー - 威風堂々第一番

「威風堂々」とはまた意外な選曲、演奏時間としても短いが、面白い響きだった。ここもまた音色の丸さが良いですね。大きな集合体となってもなお(なったからこそ?)、個々の音色が増幅される、サクソフォンのラージアンサンブルのそんな性質を垣間見たような気がする。

♪音大生によるアンサンブル - 尚美ミュージックカレッジ専門学校
A.P.ボロディン/土田まゆみ - "イーゴリ公"よりダッタン人の踊り

原博巳さんの熱い指揮に煽られるように、ダイナミックな演奏が展開された。編曲のせいか、少々高音セクションの音程が気になったが、このくらいの人数が集まってpからfまでうねるような演奏となると、ぐっと引き込まれてしまう。

♪音大生によるアンサンブル - 洗足学園音楽大学
R.シュトラウス/岩本伸一 - アルプス交響曲より

最大人数で壮観。パーカッションも、ティンパニ2組、ウインドマシーンなどを駆使し=原曲と同じの、大音響。「サクソフォンオーケストラ」としては、やはり頻繁に演奏を行っているせいか、響きやダイナミクスの作り方など突出している。世界的に見ても珍しいアンサンブルだ。レパートリーは管弦楽からのアレンジが多いが、この先どのように活動を発展させていくか、注視していきたい。

♪A会員によるプレミアムコンサート - 原博巳
G.フォーレ - ヴァイオリン・ソナタ第一番

暗譜か!と、その時点で驚いたのだが、演奏も言わずもがな凄かった…。ソプラノサクソフォンで、かくも繊細な表現の変化が可能なのかと、驚きの連続だった。表現の変化とは、紐解いていけばアーティキュレーションやダイナミクスの変化なのだが、それをこういったアレンジ作品でひょいとやってのける原さん、さすがです(もちろん物凄い練習量の上に成り立つ演奏なのだろう)。

♪A会員によるプレミアムコンサート - トリビュート to ルチアーノ・ベリオ(佐藤淳一、白井奈緒美、西原亜子)
L.ベリオ - セクエンツァVIIb
L.ベリオ - 二重奏曲よりベラ、シュロミットゥ、ロディオン
L.ベリオ - セクエンツァIXb

佐藤淳一さんによる、ミニレクチャーといった趣。興味深い内容であることは間違いないのだが、私は曲そのものや佐藤さんの論文の内容を知っているので「ふむふむ」という感じであったが、全く知らない方からすると少し難しかったかなあ。あの会場では難しいが、やはりパワポやキーノートで説明を聴いてみたい。演奏はもちろん言わずもがな、深い理解や曲に対する愛に基づく、感銘を受けるものであった。佐藤さんの7bは、冒頭の一撃〜歌手の如き繊細な跳躍まで、表現の幅が広いのが良い。デュエットは、白井さんとお弟子さんとの共演。白井さんが9bを吹くというのは意外で、7bのほうがキャラが活かせそうだなー、などと、そんなことを思ったのだった。

♪A会員によるプレミアムコンサート - 陸上自衛隊中央音楽隊サクソフォーン四重奏団
A.グラズノフ - 四重奏曲作品109

とても良い音色、そして四人それぞれの音楽性の豊かさを感じた。アンサンブルとしてもしっかりと練られており、サクソフォンの音色が重なった時の、芳醇な響きの連続に溺れた。この、グラズノフの最高傑作のひとつという、作品の素晴らしさを良く伝える演奏だったと思う。ダイナミクスの面として、やや巡航速度的なところに落ち着きがちで、ピアノ方向へのダイナミクスの拡張が、もう少しいろいろな箇所に聞こえてきてほしいなー、とも思った。

♪各メーカー楽器デモ演奏 - フィグール・サクソフォーン・カルテット
J.B.サンジュレ - 四重奏曲第一番より一部抜粋(ヤマハ、ビュッフェ、ヤナギサワ、セルマー、モモ・リガチュア各使用)

同一の曲を、各楽器メーカーの楽器を使って、同一のアンサンブルが吹き分ける…という、妄想はしてもなかなか実現しなさそうな企画。楽器メーカーの全面的なバックアップが必要…ということで、フェスならでは!ではないだろうか。興味津々で聴いたが、確かに楽器による差は、私の耳にはそれなりに聴こえてきた。響き、音量、指向性など、メーカーごとの特色を面白く聴いた。もう少し選曲の幅を広くして(サンジュレだけだと、差はそこそこと思うので)、響きの少ない落ち着いた場所で、各楽器メーカーの協賛を得て、いくつかのカルテットを立てて、なんならアドルフ・サックスの古い楽器も混ぜて…ぜひ第二弾を期待してしまう。誰か、企画しませんかね。ところで、演奏の前には、各メーカー/代理店の営業さんが簡単にプレゼンを行っていたのだが、その口上の、過不足無くはっきりと流麗な様に、なんだか驚いてしまったのだった。

♪サクソフォーン四重奏名曲館 - The Rev Saxophone Quartet
R.プラネル - バーレスク
J.フランセ - 小四重奏曲
A.デザンクロ - 四重奏曲

The Rev Saxophone Quartetは昨年もこのコーナーに登場しており、そのスタイリッシュな演奏に驚いたものだったが、今年もまた登場。やや速めのテンポ設定ながら、アンサンブルには乱れがなく、見事というほかない。プラネルやフランセでは、これでもかというほど曲の仕掛けを全面に押し出すが、嫌味にならないのが面白い。デザンクロは、なんというか2015年のデザンクロ、という感じで、伝統を見据えつつ新たな世界を構築しようとする気概を感じた。第2楽章の最後、"耽美"とも形容できるような、あまりに美しい和音の極小ピアノの伸ばしには痺れたのだった。

続く。

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