2015/01/23

アリアSQに提供した曲目解説

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昨日のアリア・サクソフォン・カルテットのリサイタルに、3曲ぶんの曲目解説を提供した。こちらに置いておく。

斎藤高順「サクソフォン四重奏曲」
 斎藤高順(1924 - 2004)は、東京音楽学校(現東京藝術大学)を卒業し、航空自衛隊中央音楽隊隊長、警視庁音楽隊隊長を歴任した作曲家・指揮者である。一般的には「東京物語」を始めとする小津安二郎監督の映画作品への楽曲提供で名が知られているが、吹奏楽曲、室内楽曲の作曲も多い。
 本日取り上げる「サクソフォン四重奏曲」は、日本で初めて作曲されたサクソフォン四重奏のための楽曲。2本のアルト(1本はソプラノまたはクラリネット持ち替え)、テナー、バリトンのために書かれている。全4楽章にわたり、注意深くシンプルな音運びが印象的で、国内サクソフォン音楽の黎明期における、試行錯誤の跡が見て取れる。日本のクラシカル・サクソフォンの父、阪口新(1910 - 1997)を始めとする奏者によって1952年に初演された。国内サクソフォン史上、重要な楽曲のひとつである。

西田直嗣「泣いた赤鬼」
 童話作家、濱田廣介(1893 - 1973)の代表作「泣いた赤鬼」。赤鬼と青鬼の友情を描きつつも、寂しげな結末を迎えるが、相手を思いやる心・優しさに満ち溢れた名作として教科書にも収録され、多くの人々に愛読されている。この童話の赤鬼のごとく、目の前の欲望対象にとらわれ、気が付けば大切なものを失い、無に流れていく…という、全ての人間が抱える宿命を、サクソフォンの特殊奏法を交えながら表現した楽曲である。トラクシオン・アヴァンの委嘱により1999年に作曲、第13回世界サクソフォン・コングレスにおいて初演された。
 作曲の西田直嗣(1968 - )は、東京芸術大学を卒業し、現在は群馬大学において准教授を務める。主に歌曲・合唱曲の制作を手がけ、日本音楽コンクール作曲部門に入賞するなど、楽壇における評価も高い。

上野耕路「N.R.の肖像」
 作編曲家、キーボード奏者として活躍する上野耕路(1960 - )。かつては"ニューウェーブ"と呼ばれる音楽ジャンルの一翼を担うなど、実験的ロックの先端を走る音楽であった。近年は、特にCM音楽や映画音楽に精力を注ぎ、キューピー「たらこ・たらこ・たらこ」のCMや、日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した「ゼロの焦点」「のぼうの城」他、よく知られた楽曲も多い。
 「N.R.の肖像」は、アルモ・サクソフォン・カルテットの委嘱により作曲された。上野が幼少の頃から親しんだ、フェデリコ・フェリーニ監督の世界、その映画を彩るニーノ・ロータ(= N.R.)の音楽を、上野なりのオマージュを交えて再構築した、4楽章から成る楽曲。「8 1/2」「甘い生活」「悪魔の首飾り」他、フェリーニ作品の劇中に使われたメロディの断片が現れては消える、一種のコラージュ風楽曲である。

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