2014/02/28

GD-2057収録曲目について(その3)

3回にわたって、マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤:グリーンドア音楽出版GD-2057に収録されている曲目について、雑多なことを書いている。

第1回はこちら
第2回はこちら

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今回の復刻盤のメインコンテンツはErato盤の復刻だが、ボーナストラックとして、ジャン・フランセのオペラ・ブッファ「私たちのパリ!」を収録した。ボーナストラック…という名前は付いているが、Erato盤とは一線を画す内容、さらに非常にレア。ぜひボーナストラックだと軽んじず、じっくり聴いていただきたい内容なのだ!

パリで仕事を探している若者を、キャリアコンサルタントが芸術サロンに連れて行き、若者はそこを取り仕切る女主人に取り入る…という話。これだけ書くとなかなか伝わらないが、とにかく台本(原文はフランス語)の隅から隅までエスプリたっぷりであり、実に面白いのだ。さすがに解説に台本の全訳を載せる…などということはできなかったが、解説を書くにあたって英語訳を最初から最後まで斜め読みした。

その面白さたるや…例えば、こんな一場面が描写されている。芸術サロンに集う人々に、女主人が4人のサクソフォン奏者を紹介する(=伴奏だけではなく、劇中にもサクソフォン四重奏は"役"として一瞬登場するのだ)。芸術サロンの人たちは、無知で滑稽な人々として描かれている。

女主人:本日、私はこの4人の紳士をお呼びしました。彼らは知性的・形式的しかし進歩した音楽を奏でます。
芸術サロンに集った人々:素敵、ほら、聴いて!
サクソフォン四重奏:チューニングをする
女主人:なんて素晴らしく、神聖な音楽!
芸術サロン:本当、素敵!
マトモな知識人:(彼らはただチューニングしているだけなのに…)


…という具合。これが台本だけでなくてさらにフランセの音楽も付いて演奏されるのだから、面白く無いはずがない。サクソフォン四重奏のパートも相当テクニカルで聴き応えは十分。単独で間奏曲的に演奏される部分も、もちろんあり。

響きそのものを楽しんだあとは、ぜひ台本を入手していただきたい。Netherlands Saxophone QuartetのLPのジャケット裏に掲載されているが、他にどこかで読むことはできないのかな。もちろん楽譜には付いていることと思うが…。

クローバーSQ演奏会ご案内(3/2@加須市)

クローバーSQの演奏会のご案内。コーディネイターの恩地元子様よりご案内いただいた。

クローバーSQの東京近郊でのリサイタルというと1年に1回というところなのだが、地方公演の数も数えるとかなり演奏を頻繁に行っているようだ。クローバーSQの高い技術・音楽性でもって、サクソフォン音楽に関する啓蒙が進んでいると考えると、嬉しくなってしまう。

【クローバー・サクソフォン・クヮルテット コンサート】
出演:クローバー・サクソフォン・クヮルテット
日時:2014年3月2日 15:00開演
会場:パストラルかぞ・小ホール
料金:大人2000円、学生1000円、高校生以下500円(全席自由、その他の料金体系はチラシを参照のこと)
プログラム:
E.モリコーネ - ニュー・シネマ・パラダイス
J.S.バッハ - ゴルトベルク変奏曲
R.ロジャース - サウンド・オブ・ミュージック・メドレー他
問い合わせ:
0480623001(パストラルかぞ)

最近クローバーSQ自身が頻繁に取り上げている「ゴルトベルク」を中心としたクラシック作品と、耳に馴染みのある映画音楽を取り混ぜたプログラム。サクソフォンの魅力が伝わる内容だ。ちなみに個人的には…またいつか伊藤康英先生の「サクソフォン四重奏曲第二番」を吹いてほしいなあ、などと夢想している。ライヴでも聴いたし録音を送って頂いて持っているのだが、あのパワーは本当にすごい。

ちなみに、パストラルかぞ=加須市と聞いてピンとこなかったのだが、埼玉県の市で、東武伊勢崎線沿いとのこと。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。3/29にも日光で演奏会があるそうだが、そちらは別途ご案内したい。

(チラシはクリックして拡大)

2014/02/26

GD-2057収録曲目について(その2)

3回にわたって、マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤:グリーンドア音楽出版GD-2057に収録されている曲目について、雑多なことを書いている。

第1回はこちら

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アプシルも、確証は持てないが世界初録音なのだろう。本作品はミュールの率いる四重奏団に献呈されたものではなく、1956年にフランソワ・ダニール氏率いるベルジュ四重奏団(ベルギー)に献呈された作品である。作品中に何の民謡が使われているか…は上記CDの解説文を読んでもらうとして…えーと、グールデ氏の受け売りなのだが、そこはご勘弁を…作品を初めて聴いた時の印象を。

この作品を初めて知った、ジャン・ルデュー四重奏団Opusレーベルから出版されているCDに収録されている、その演奏を聴いた時である。ファブリス・モレティ、フィリップ・ポルテジョワ、ドゥニ・バルド、ジャン・ルデュー各氏による演奏で、悠々としたバリトンサクソフォンと、その上で超絶技巧を展開する上声部、といった対比が実に面白い。第3楽章のバリトンの音色など、ルデューファンには垂涎モノである。

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「グラーヴェとプレスト」が最後に置かれているのは、これはミュール四重奏団のリサイタルを模しているのだ。ミュールたちの四重奏団は、プログラムの最後に頻繁にこの作品を置いたとのこと。ピエルネと同じく、ギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団時代の録音が存在する。それと聴き比べてみた時の、30年という年月を感じられる興味深い録音である。

2014/02/25

GD-2057収録曲目について(その1)

3回にわたって、マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤:グリーンドア音楽出版GD-2057に収録されている曲目について、雑多なことを書いていく。

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個人的に一番好きなピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」の演奏は、マルセル・ミュール氏がギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団時代にSPに吹き込んだ録音だ。Disque Gramophone L-1033という型番で、「1936年のディスク大賞を受賞」とされているSPである。表面と裏面の両面で一曲を構成するという、いまであれば考えられない大胆な収録の仕方。技術的にはもちろん現代の演奏のほうが優れているのだろうが、その「トムとジェリー的雰囲気(この言い回しの引用元がどこか、分かる方には分かるだろう)」において、これを上回るものは未だ存在していないと思われる。

今回復刻された録音は、ミュールとしては再録音になる。ミュール以外全員メンバーが変わり、演奏はモダンになり、まろやかそのものだった音色も、現代風のエッジの効いたスタイルになっている。だがしかし、やはりそこはミュール。随所でひびくその音楽性は、1936年当時とくらべても遜色ない。

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デザンクロ「四重奏曲」。世界初録音だろう。技術的・音楽的にここまで完成された録音を、作品の成立後わずか数年で世に送り出してしまうことは、まさに驚異としか言いようがない。現代にあって聴いても、もちろんヴィブラートなどに時代は感じるが、「違和感」と呼べるものはまったく存在しない演奏なのだ。つまり、後に続く世代は、全てのプレイヤーたちがこの解釈に影響を受けているのだろう。

乱暴に言えば、ミュールが演奏活動から引退した以降は、アカデミック作品の演奏に関してはサクソフォンは進化をやめてしまったとも…。よほど現代風に新しい解釈で取り組むか、さもなくば模倣か。現代にあってこの曲に取り組むことの難しさを改めて思い知った。

話が逸れたが、記録としてももちろん貴重だが、演奏内容としても一聴の価値あり、と言うことができる。デザンクロ「四重奏曲」に取り組む方は、ぜひ。

2014/02/24

Academie HABANERA Grands ensembles de saxophones

ちょっと珍しいCD。毎年夏にフランスのポワティエで開催されているハバネラ・アカデミーの、受講生によるラージアンサンブルコンサートの模様を収録したCD。ハバネラ・アカデミーとは、ハバネラ・サクソフォン四重奏団と周辺のメンバーによる夏のサクソフォン講習会で、主にサクソフォンを専門的に学ぶ学生が参加して互いに技術・音楽性を高め合う機会として、毎年人気を博している。このCDは、2001年8月開催のアカデミーでのライヴ録音ということで、第1回か第2回くらい、かなり初期ではないだろうか。そして自主制作盤だろう…。

「Academie HABANERA Grands ensembles de saxophones(ACADHAB01)」
Claude Debussy - La plus que lente (with Laetitia Duflot)
MIchel Legrand - Quand ca balance
Michel Legrand - Les demoiselles de Rochefort
Antoine Tisne - Hymne pour notre temps
Maurice Ravel - Pavane pour une infante defunte
Piotr Tchaikovsky - Serenade pour cordes - Elegie
Pedro Iturralde - Pequena Czardas (with Quatuor Habanera)

Guillaume Bourgogne, direction

まず目を引くのは指揮者がギョーム・ブルゴーニュ氏であること。ハバネラ四重奏団へのアレンジメントの提供で、たびたび目にする名前だ。収録されているドビュッシー、ラヴェル、イトゥラルデは、ブルゴーニュ氏による編曲である。また、ルグランはフィリップ・ポルテジョワ氏の、チャイコフスキーはジャン=ドニ・ミシャ氏の、それぞれ編曲である。

メンバーについて…ブックレットの中には参加者の名前が書かれているが、日本人らしい名前が2名ほど。Shinji Komori…とはきっとアリオンSQ他で活躍されている小森伸二氏のことだろう。Takayuki Sasakaとは大阪音楽大学出身の佐坂貴之氏のことだろうか。イトゥラルデは、ラージアンサンブルとハバネラ四重奏団の共演。驚いたことに、ソプラノをヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏が担当している!どういうこと??小森さんのブログ記事にも「ハバネラB」として記されていたが…。

ティスネの「Hymne pour notre temps(現世讃)」は、非常に珍しいサクソフォン・ラージアンサンブルのためのオリジナル作品。かつてREMレーベルから出版されていたリヨン・サクソフォン・アンサンブルの録音(聴いたことはない)に収録されていることで名前を知っていたが、まさかこんなところで聴く機会が訪れるとは思わなかった。

さて、肝心の演奏だが、さすがにアカデミー期間限定のアンサンブルということで細かい部分はいろいろとツッコミどころがあるものの(音程とか、音程とか、音程とか…)それなりに積極的な表現もあり、楽しめた。ドビュッシーやルグランの作品はなかなかのもの。ルグラン作品での勢いは爽快だ。逆に、高難易度かつ精緻な作品…ティスネなどはちょっと苦笑してしまう部分もあり。まあアカデミーのライヴ録音であるので、完ぺきを求めるのはちょっと難しいのだろう。また、驚いたのが音色に関して非常にクリーンなこと。「汚い音色」を出している人は皆無で、その辺りフランス周辺のサクソフォンの教育水準の高さを反映しているかのようだ。

ということで、好事家向け。vandorenscoresで買える。おそらく、ヴァンサン・ダヴィッド氏が参加したハバネラ四重奏団(ハバネラB)の演奏は、このCDでしか聴けないのでは(笑)

PC購入

およそ5年使ったPCを買い替え。WindowsXPのサポート期間が4月に切れるとの情報を受けて、昨年12月あたりから買い替えを検討していたのだ。OSだけの入れ替えも考えたのだが、旧PCの全体的なパフォーマンスが低く気になっていたのと、"5年"ということでハードディスクのクラッシュも気になったため、思い切った。昔からあまり最上位機種には興味がなくて、真ん中くらい。Core i5(Haswell)搭載、OSはWindows 8.1、メーカーはDELL。予算に収まって良かった。

土曜日に到着して、初回起動時から独特のUIに困惑しつつも(正直な話、Windows PCのUIはXP以上進化させてほしくなかったのだが…)、リカバリディスク作成、データの移行、各種ソフトウェア、ドライバのインストールを実施。およそ日曜日の昼間までかかって、ほぼ一定の環境を整えた。動画再生等のウェブ上のりッチコンテンツ閲覧や、音声加工などはストレスフリーとなり、満足。静音性も想像以上に良い。対して、普通のオフィスソフト等作業の体感速度向上はほとんどない…って、当たり前なのだが。とりあえず、問題なく環境整備が終えられてよかった。

新しいPCにわくわくすることもなくなってしまったなあ。それだけPCというものがコモディティ化しているということなのだが…。

2014/02/22

ミュール四重奏団復刻盤発売!

ピエルネ、デザンクロ、アプシル、リヴィエが収録されたErato盤(国内では日本コロムビアから出版された)、非常に珍しいVersailles盤(ジャン・フランセ「私たちのパリ!」という、サクソフォン四重奏伴奏のオペラ・ブッファを収録)をボーナストラックとして付加した、マルセル・ミュール・サクソフォン四重奏団の復刻盤が昨日2/21に発売となった。世界初復刻、原盤提供・復刻は木下直人さんによる。

http://greendoor.jp/products/products_new.php?pnum=GD-2057

ネットで買うには、Googleで「マルセル・ミュール 四重奏団 1960」などで検索してもらえば良いのだが、例えば下記で扱っている。

Amazon
タワレコ
楽天

私はブックレットの解説を担当させていただいた。木下さんには貴重な機会を提供いただき、改めて感謝申し上げる次第。CDに解説を付けるというのは初めての経験で、なかなか刺激的だった。本日届いたのだが、こうして手にとってみると、感慨深いものがある。多くの方に聴いていただけたら嬉しいなあ。

Works of Richard Ingham

スコットランドのセント・アンドルーズ大学他で教鞭をとる、サクソフォン奏者・作曲家のリチャード・インガム Richard Ingham氏。これまでもブログ上でたびたび取り上げているが、彼の作品をまとめて簡単に紹介しておく。ジャズやスコットランドの伝統音楽を取り入れた音楽は、演奏しても聴いても楽しいものばかりだ。

Mrs Malcolm, Her Reel (Funky Freuchie)...(SSTB)
Scottish Saxophone Ensembleの十八番。リールのリズムをベースにし、中間部ではファンキーなアドリブソロも飛び出す。
http://youtu.be/oPoc4zjZiTU?t=2m11s

Walking the Cowgate...(SSTB)
「Mrs Malcolm, Her Reel」のコンセプトをさらに推し進めた作品で、よりアイロニーが強く、難易度も高い。中間部からのバリトン無双状態はなかなか鮮烈である。
https://soundcloud.com/largo-music/walking-the-cowgate

Traditions, Old and New...(SaxEns:SSSSAATBBs, pipes/whistle, fiddle, accordion)
2012年のWSCのために書かれた作品で、タイトルもそのWSCのコンセプトを継承している。そのタイトル通りの編成(サクソフォン+スコットランド音楽の楽器!)、前半の悠久たる大自然を思わせるドローンから、後半のリールへのなだれ込みが見事。演奏者がさりげなく豪華!Stottish SEに加え、ドゥラングル、フィリップ・ガイス、サラ・マーカム、ケネス・チェ他(敬称略)。演奏してみたいが、編成が編成だけに…

2014/02/21

John Harle & Marc Almondの新アルバム情報

ジョン・ハール氏の新しいアルバムの発売が迫っている。「The Tyburn Tree(Sospiro Records)」と題された、ロンドンの歴史をコンセプトにした内容とのこと。Tyburn Treeとはかつてイギリスのミドルセックス州に存在した「タイバーン刑場」に設置されていた絞首刑台のことなのだそうだ(現在はロンドンの一部となっている)。ジャケット表面のΠのマークがその絞首刑台を表していることは明らかだろう。

入手したらレビューする予定。試聴用のYouTubeのリンクを貼りつけておく。これを聴いてもわかるが、なかなか面白そうだ。

Fortress


My Fair Lady


2014/02/19

無人島に持っていく80分CD-R

1枚のCD-RとポータブルCDプレーヤーを持って無人島に一ヶ月滞在するとして、お気に入り曲を集めたCD-Rを作るとしたら中身はどうなるだろう…?考えてみたのだが、今であれば次のような感じになるかと思う。「今であれば」というのがポイントで、頻繁に聴く曲はその時々で流動的であるので、ひと月も経てば変わっているかもしれない。こういう時に、「カザルスのバッハ無伴奏チェロ組曲だけあれば良い!」とか「ライヒの18人の音楽家のための音楽だけあれば良い!」とか言えればカッコ良いのだが、そうはいかなかった…。

R.ブートリー - ディヴェルティメント(ダニエル・デファイエ)8'51"
A.ヴェーベルン - 四重奏曲作品22(MAアンサンブル)6'11"
P.グレインジャー - ローマの権力とキリスト教徒の心(ダラスWS)14'55"
A.ピアソラ - AA印の悲しみ(アストル・ピアソラ五重奏団Live)22'03"
S.ライヒ - エレクトリック・カウンターポイント(パット・メセニー)14'42"
合計76"42'

まあ、今だったらiPodの空き容量があるかぎりありったけの…というのが普通なのかもしれないが、こういった思考はとても楽しい。例えば「46分だったら?(カセットテープの長さ)」「4Gbytesだったら?(ビットレートやフォーマット調整可能)」…一日かけて、CD棚やPCのストレージを探索し、考えてみるのも面白いかもしれない。

また、一時的なお気に入りの80分間ではなく、これまでの人生で聴いた音楽のベスト盤CD-Rを作るとすれば何を入れるか…?これは非常に難しく、選定も大変だが、考える過程はさらに楽しいだろうな。上記のうち、ピアソラとデファイエのブートリーはそちらにも入ると思う。

昨日は交流会打ち合わせ

第5回サクソフォン交流会、無事参加団体の枠が埋まったところで、打ち合わせ。いろいろと決めることがあるのだ…。仕事がおして大遅刻してしまったが、先立っていろいろと打合せていただいており、助かった。懸案だった"企画ステージ"の内容についても、何とか落ち着きそう。

2014/02/17

木山光「ハデヴィッヒII」

今日の芸大サックス、行けず…仕事してました。(;ω;`)ブワッ

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木山光は、日本人作曲家。東京音楽大学、ブリュッセル王立音楽院を経て、ベルギー・モンス王立音楽院に在籍(Wikipedia情報が2011年時点なので、もしかしたら既に修了しているかもしれない)。ベルギーを拠点にして活動している。

「ハデヴィッヒ」とは、本人の言葉を引用すると「13世紀に現オランダ、現ベルギーの領土で活躍していた詩人のHadewijchの詩の言語の発声やイントネーションをテーマに作曲した」とのこと。「ハデヴィッヒ2」はサクソフォン四重奏のために書かれ、海老原恭平氏、松下洋氏、塩塚純氏、小川卓朗氏のカルテットによって、第1回洗足現代音楽作曲コンクール・サクソフォン作品部門にて演奏され、入選ならびに洗足賞を獲得している。

楽譜や録画・録音を大宅裕さん経由で送ってもらい、所持している。パワーに圧倒される作品なのだが、楽譜を眺めると、非常に細部まで綿密に書かれたスコアであることが印象深い。だがしかし作曲者が求める響きは楽譜の注釈にもあるとおり「This piece need noisy tone. And this piece is not so colled comtemporary musc, this is noise Jazz - Rock music.」「Composer wants to produce as fast as possible & as loud as possible like Free Jazz - Rock improvisation」とされており、精密な現代音楽の表現とはかけ離れたものである。そのギャップが実に面白い。かの中川俊郎氏は「音楽の枠組みの向こう側、ゾッとする「彼岸」を覗こうとする探求心を見る(第6回JFC作曲賞本選に選出された「ハデヴィッヒ」の評より)」と表現した。オプションでPAの使用によって120dbへのアンプリファイが推奨されている。

洗足現代音楽作曲コンクールでの演奏を、このリンク先(Ustreamへのリンク)の22:00くらいから聴くことができる。まず圧倒され、そして聴きこんでいくうちに作品の骨組みの細部が見えてくることだろう。

2014/02/16

交流会申し込み締め切り

すでにサクソフォン交流会ページにてアナウンスされているが、第5回サクソフォン交流会参加団体の募集を締め切った。昨日の22:00に開始したのだが、30分で残り1団体まで到達しまったから驚いた。

これだけ早く締め切りとなると、出演したかったけれど少し出遅れたという団体の方が出られなくなってしまう、というような事態にもなっている可能性があり、それなりに交流会の存在が周知されてくると、そういった点は扱いが難しいと思いながら運営を進めている。リピーターが多いのは、内容が楽しかったり参加者同士の交流が楽しいからというようなモチベーションがあるからと、それはそれで嬉しい事ではあるのだが。どういったところに着地させるのかは、試行錯誤を続けていきたい。

飲み会と、TSQ練習と

土曜日は、千葉県某市にて5人が集結して飲み会。交通機関も遅延はあったものの閉じ込めに遭うなどということもなく、無事皆集まることができた。ビールやらワインやら肉やら何やらを持ち寄り、ぐだぐだと過ごす。私は、シメイ・ブルーのグランドレゼルブやフーガルデン・ヴィット、カーズのテーブルウォーター、そして角煮を仕込んで持参。いろいろと新しい試みの話なども出て、面白かったが、だいぶ酷く酔っ払ってしまい…Facebookの爆撃度合いが凄かった。写真は、家主が作った一品。13:30頃に集合して、結局終わったのが23:00くらい。あー、面白かった。

で、空けて日曜日は、午後からTsukuba Saxophone Quartet練習。「琉球幻想曲」「タンゴ・ヴィルトゥオーゾ」「レシテーション・ブック」などをそれぞれ軽く合わせた。とりあえず6月の交流会を目標に、少しずつ着実に練習を進めていきたい。

2014/02/14

プログレ聴き返し

あまりコアな所までは勉強不足で知らないのだが、最近プログレッシヴ・ロックを聴き返している。超オーソドックスなキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」「Red」、イエスの「危機」「こわれもの」、ピンク・フロイド「原子心母」「狂気」、ELP「タルカス(ただしB面収録曲は聴かない)」、ジェネシス「月影の騎士」…あたりを中心に、さらにキャメル「ミラージュ」、ディスカス「トット・リヒト!」、ムゼオ・ローゼンバッハ「ツァラトゥストラ」、イングランド「Garden Shed」等々。いやー、楽しいな。たまにはこういうのも良い。

私がプログレを(まがいなりにも)聴くようになったのは、トルヴェール・クヮルテットのアルバム「My Favorite Things」(21世紀の精神異常者、ラウンダバウト収録)と、Sax 4th Avenue「Delusions de Grandeur」(タルカス収録)によるところが大きい。形式美ともいうべき構成の壮大さと、サウンドの幅(アコースティックからエレクトロニクスまで!)、そして時折現れる強烈なビートやリズムに惹かれた、ということになるのだが、、、時折、サクソフォン・アンサンブルの演奏でこれらの響きを再現してみたいなあと夢想することもある。キング・クリムゾンやイエスならばバンドスコアも手に入るし編ky(以下略)。

その昔演奏した「タルカス」サクソフォン四重奏版の動画を貼り付けておく。もう2年以上前の演奏なのだが…。

2014/02/13

ロンデックス氏のCrest盤(1980年録音)

島根県のF様より、ジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeix氏のアルバムをCD-Rにトランスファーして送っていただいた。Golden CrestのRecital Seriesで、RE 7098という型番が付いている。以前MD+Gより復刻されたPortrait(→過去のブログ記事での紹介はこちら)には、このアルバムからケクランの「エチュード」しか復刻されていなかったため、ほとんどが初めて聴く録音だ。お送りいただいたいF様には、この場を借りて改めて感謝申し上げる次第。

Jean Marie Londeix, saxophone
Lucie Robert, pf

GOLDEN CREST RE 7098 (New York)
Lucie Robert - Cinq Strophes
Charles KOECHLIN - Etudes no.8,2,9,3
Lucie Robert - Tourbillons
Graciane Finzi - De l'un à l'autre
Alain Louvier - Hydre à cinq têtes

ロンデックス氏のCrest盤というと、1975年録音のもの(デザンクロ、ダルヴァンクール他所収)があまりにも有名で、こちらは比較的珍しいのではないかと思う。「カデンツァ」が有名なルーシー・ロベール氏の作品が2つも収録されており、さらにピアノを弾いているのもロベール氏と、ジャケットの情報を読んだだけでもアルバムとしてロベール作品に偏重している印象を受けるが、実際の内容もその通りである。

5つの楽章に分かれた「Cinq Strophes」と、15分以上に及ぶ「Tourbillons」は、いずれも非常に聴き応えのある内容であり、また「カデンツァ」を知っていれば、一聴してすぐにロベール作品だということが認識できるだろう。サクソフォン、ピアノともどもかなりのテクニックを要する作品で(実際サクソフォンの一部にはミスも散見されるほど)、だがしかし真正面からそれにぶつかっていくロンデックス氏の演奏は、まさに作品との一騎打ち!という印象を受ける。長い作品だが、耳が離せない。中堅というポストへと進んだロンデックスの、大きな挑戦の様子を耳にするようだ。

ケクランは、さすがにロベール作品のあとに聴いてしまうと箸休め的な印象を受けてしまうのだが、ちょっとしつこいくらいに隅々までよく歌われており、ただそれが厭らしく聴こえてこないのはロンデックス氏の持つ技術・センスに因るところが大きいだろう。ちなみに、パリ国立高等音楽院サクソフォン科の歴史の中で、「審査員全員一致の一等賞ならびに審査員特別賞」を得て卒業したのは、ロンデックス氏のほかに、わずかにモレティ氏だけである。卒業当時からぶっ飛んでいたのか、それとも当時の審査員はよほど見る目があったのか。

フィンツィ、ルヴィエの2曲も、それぞれおよそ3分程度ながらとても密度の濃い作品であり、言ってしまえば「ゲンダイオンガク」に分類されるのかもしれないが、とても楽しく聴けた。高い集中力が心地よく、いつもは不自然に聴こえるCrestの録音ポリシーも、心なしかプラスに働いているような気もする。

いずれも素晴らしいえんそうだけに、MD+Gの復刻の際にケクランしか取り上げられなかったのが不思議だ。特にロベールの録音は、ピアニストが作曲者自身であるということを仮に抜きにしたとしても、いずれも後世に伝えるべき内容ではないだろうか。

ジャケット裏面には、使用楽器とセッティングが書いてあった。Selmer Mark VII、Selmer S-80 C*マウスピース、Omega 2 1/2リードを使用、とのこと。Omegaというリードメーカーは寡聞にして知らなかったが(訂正:Omegaはセルマーのリードのブランド名なのだそうです。コメント欄にて情報を書いてくださった"わんこ"様、ありがとうございました)、2 1/2ということはかなり柔らかめのはず…そんなセッティングでこんなにギラギラした音色が出るのか。

2014/02/12

"シルクロード"中古盤入手

雲井雅人氏が岩代太郎「世界の一番遠い土地へ」を吹いている「シルクロード(日本ビクター BVCC-2519)」の中古盤を入手。ずっと前にThunderさんにお借りして音は聴いたことがあったのだが、これはぜひ手元に置いておきたいと思い、探し続けていたところたまたま某所で中古が安く売りだされていたのだ。Amazonのマーケットプレイスでは本日時点で20000円近くという、いくら何でも…という値段が付いており(こちら)、閉口していたのだが、現実的な値段(1000円くらい)で見つけられて良かった。

感想についてはこちら(過去のブログ記事へのリンク)を参照していただきたい。とにかく、企画内容が何とも凄い…端的に言えば、バブル期の面影を感じるとでも言おうか。。。

井上道義指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
1. 岩代太郎「世界の一番遠い土地へ」(雲井雅人:ソプラノサクソフォン)
2. 山本純ノ介「法顕伝交響曲」

ケース裏の写真を貼り付けておく(クリックして拡大)。

2014/02/11

Collection Jeunes Solistes - Joonatan Rautiola

フィンランド出身のサクソフォン奏者、ヨナタン・ラウティオラ氏のCDで、メイヤー財団の出資により制作される「Jeunes Solistes」の一枚。アレクサンドル・スーヤ氏のCDと同じく、小倉君からお土産としてもらったものだ(ありがとうございました)。タイトル・型番は「Norden(CREC-audio 11/082)」。

ヨナタン・ラウティオラ氏の名前は、まだまだ日本で広く認知されているとは言い難く、簡単に経歴を書いておく。1983年、フィンランドのヘルシンキ生まれ。シベリウス音楽院でペッカ・サヴィヨキ Pekka Savijoliに学ぶ。その後フランスへと留学し、パリ区立音楽院にてニコラ・プロスト氏とクリステャン・ヴィルトゥ氏に師事。その後パリ国立高等音楽院に入学し、クロード・ドゥラングル氏のもとでさらに研鑽を積んだ。サクソフォン以外にも、クラリネットのポール・メイエ氏やオーボエのモーリス・ブルグ氏らに教えを受ける。ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールを始めとし、入賞歴多数。フィンランド放送交響楽団ほか数々のオーケストラと共演実績がある。公式サイトはこちら→http://www.joonatanrautiola.com/

2010年のディナンのコンクールで第4位に入賞しており、そこでヨナタン氏(なんとなくファミリーネームで書くより、ファーストネームで書くほうがしっくりする)の名前を知った方が多いだろう。また、2011年のサクソフォーン・フェスティバルにあわせて来日しており、そこでの演奏に触れた方もいるだろう。ロマン派からコンテンポラリーまで自在にこなす適応能力の高さと、音色の美しさが印象的であった。

そのヨナタン氏の「Jeunes Solistes」シリーズだが、プログラムに逆の意味で仰天した。なんと、サクソフォンとピアノのみ。ジェローム・ララン氏ミーハ・ロギーナ氏アレクサンドル・スーヤ氏のプログラミングを眺めると、非常に挑戦的というか、エレクトロニクス有り、特殊編成の室内楽有り、といったものばかりだったもので、このシンプルなコンセプトに驚いたのだ。プログラムもシンプル。シベリウスの歌曲・器楽曲を軸に、ヨナタン氏に捧げられた同時代の音楽が2つ含まれている。

Joonatan Rautiola, sax
Mikko Merjanen, pf

Jean Sibelius - Luonnotar, op.70
Jean Sibelius - Narciss
Jean Sibelius - Var det en dröm, op.37/4
Jean Sibelius - Norden, op.90/1
Olli Virtaperko - Crimes of the Past
Jean Sibelius - Arioso, op.3
Jean Sibelius - Den första kyssen, op.37/1
Jean Sibelius - Söf, Söf, susa, op.36/4
Tapio Tuomela - Pilke 1
Jean Sibelius - Kirinmyllyn tarinaa, op.143
Jean Sibelius - Sehnsucht, op.50/2

ソプラノ(声楽)とオーケストラのために書かれた「Luonnotar」から、そのシンプルな響きにすっと身を委ねたくなる。ピアノ(弱音でますます美しい演奏をする)との上質なアンサンブル。完璧なコントロールや、音程感。クールに進むのかなと思いきや、熱い部分はなかなか情熱的に歌い上げていく。うーん、これは良い!現代のサクソフォン・アルバム…特にアルトに特化したものの中では、相当良いものなのではないか。音色やフレージング、さらにこのプログラムも相まって、変な例えだが、サクソフォンの初学者に積極的に薦められるものだ。また、サクソフォンのプログラムはいかにも"サックスっぽい"ものばっかり、ということで食傷気味になっている方が聴けば、耳が洗い直されてしまうことだろう。

2曲置かれた「Crimes of the Past」「Pilke 1」がアルバム中で良いアクセントとなっている。アクセントとなりつつも、異質感は感じないのが不思議。作品のせいでもあり、演奏のせいでもあるのだろう。テクニカルな作品だが、ここでのヨナタン氏、相当なレベルで吹いており、こういったコンテンポラリーへの適応能力を、改めて感じさせる演奏だ。

室内楽の盤として、これはぜひサクソフォン関係者のみならず、普通のクラシック音楽愛好家にも耳にしてほしい!とても素晴らしく、クラシックのCDとして他の編成に負けないと、私自身は思うのだが、そういった方々の耳にはどう聴こえるのだろう。私も、きちんと原曲となる歌曲その他を聴いた上で、きちんとレビューしなければならないなと思うのだった。

ご案内:芸大サックス2014

毎年都合がつけば伺っているのだが、今年はどうかなあ。これに限らず最近もちょくちょく演奏会案内をいただいているのだが、都合を合わせるのはなかなか。今回はとにかくプログラムが強烈であるので、何とか…と思っている。エスケシュ、カルメル、木山、あたりは演奏機会が少なく、しかしそれぞれとても良い作品であるので、ぜひ多くの方に聴いてほしいところ。

エスケシュ「テネブレの歌」については、ぜひThunderさんのブログ記事を参照いただきたい。今回の独奏は、なんと原博巳さんとのこと!

カルメル作品は「協奏曲」と書いてあるが、ロンデックスの目録を引くかぎり「協奏曲」という名前の作品はないので「合奏協奏曲(=コンチェルト・グロッソ)」のことであろう。聞こえてくる噂によれば、本当に弦楽オケが入るとか…。サクソフォン四重奏のための協奏曲のなかでも、傑作の一つと言える作品だ。あのデファイエ四重奏団が、日本でのコングレスを最後に解散した際、最後に演奏したのがこの作品だった。その時の神奈川県立音楽堂での録音も残っている。

木山光氏は、現在ベルギーを拠点として活動する1983年生まれの若手作曲家。これまでに作曲コンクールに入賞しまくっており、次世代を担う作曲家の一人として認知されつつある。作風は、おそらくこの作品(YouTubeへのリンク)あたりを聴いてもらえばわかってもらえるかと。サクソフォンの作品も数多く発表しているが、なかなか聴く機会に恵まれず…。「ハデヴィッヒ2」は洗足現代音楽作曲コンクールのサクソフォンアンサンブル部門で聴衆賞を獲得している。その時の海老原氏、松下氏、塩塚氏、小川氏による演奏は、このリンク先(Ustreamへのリンク)の22:00くらいから聴くことができる。

【第21回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:三浦夢子、松下洋、川島亜子、竹田歌穂、中嶋紗也、中島諒、上野耕平、竹内理恵、藤本唯、田島沙彩、都築惇、宮越悠貴、塩塚純、田中奏一朗、戸村愛美、西原亜子、大坪俊樹、土岐光秀、張誠(以上東京藝術大学サクソフォーン専攻生)、原博巳(特別出演)
日時:日時2014年2月17日(月) 19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
料金:前売り1200円、当日1500円
プログラム:
A.K.グラズノフ - サクソフォン四重奏曲より
R.カルメル - 4本のサクソフォンと弦楽オーケストラの為の協奏曲
木山光 - ハデヴィッヒⅡ
T.エスケッシュ - テネブレの歌
A.ボロディン - 交響曲第2番ロ短調 より
チケット問い合わせ:
090-2440-1538(藤本)

2014/02/10

第5回サクソフォン交流会・募集要項掲載

第5回サクソフォン交流会のアンサンブルステージ参加団体募集要項を、ウェブページに掲載しました。

http://enjoysax.michikusa.jp/

サクソフォン愛好家の皆様、ぜひ前向きに検討いただけると嬉しいです。募集開始は2/15(土)22:00、先着順となります。

なにとぞ、よろしくお願いします。

2014/02/08

ご案内:マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤発売

Facebookページにも書いたが、ブックレットの解説を担当したマルセル・ミュール四重奏団の復刻盤が、2/21にグリーンドア音楽出版より発売される。昨年末に書いていた曲目解説というのは、この盤のための作業なのだった。

http://greendoor.jp/products/products_new.php?pnum=GD-2057

ピエルネ、デザンクロ、アプシル、リヴィエが収録されたErato盤(国内では日本コロムビアから出版された)を軸として、さらに非常に珍しいVersailles盤(ジャン・フランセ「私たちのパリ!」という、サクソフォン四重奏伴奏のオペラ・ブッファを収録)をボーナストラックとして付加。いずれも世界初復刻、原盤提供・復刻は木下直人さんによる。

古今東西何度も何度も演奏されてきたフレンチ・アカデミズムの潮流に乗る傑作4作品の、正に源流の演奏という貴重な記録。ぜひ多くの方に聴いてほしいのだが、こういった時代にあってどう受け止められるのかが、楽しみでもあり不安でもある。特に、若い方の反応ってどんなもんなんだろう(そういえば、全然関係ないが、最近の中学生で、もしデザンクロを吹くことになったら参考にするのは誰の録音なんだろう)。

それにしても、このような自分のアウトプットが形になるのは、やはり嬉しい事だ。CDの解説文は初めてなのだ。この度の解説執筆に際してお世話になった木下直人さんと、グリーンドア音楽出版のY様に改めて感謝したい。

発売日が近づいたら、また内容の詳細とともにお知らせしたい。

2014/02/07

Vincent David plays Saint-Saëns on YouTube

ヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏が、カミユ・サン=サーンス「序奏とロンド・カプリツィオーソ」を演奏している動画をYouTubeで見つけた。同曲は、Nicolas Arsenijevic氏や伊藤あさぎ氏がサクソフォンで取り上げたことのあるレパートリー。

Rustam Dilmukhametov氏が指揮するノヴォシビルスク(ロシア中央に位置するシベリア地方の最大都市)のユース・シンフォニー・オーケストラとの共演。2013年12月26日のライヴ動画である。ロシア・ツアーか何かだったのかな?序奏部分の歌い方は音色やバランスなどあれっ?と思ったが、ロンド・カプリツィオーソのパートに入った途端にこの余裕のテクニックである。人間離れしたこの演奏だが(変に誤解されて「テクニック偏重」と言われてしまうことがあるのかもしれないが)、少なくとも私はとても好きだし、高く評価されるべきものだと思う。

これ、ライヴ会場で聴いたらよりいっそう興奮するだろうなあ!

2014/02/06

Robert Carl作品集

ロバート・カール Robert Carl氏はアメリカの作曲家。現在、ハートフォード大学音楽学校の作曲科長を務めながら、管弦楽・室内楽・独奏曲等、幅広い分野へと作品を提供している。「Roundabout(Innova 596)」は、そのカール氏の室内楽・エレクトロニクス作品集である。収録曲目は下記の通りである。このうち、「El Canto de los Asesinados 殺人の歌」と「Lesgedowdaheah」と「Die Berliner Hornisse ベルリンの雀蜂」がサクソフォンに関係する。

Roundabout
El Canto de los Asesinados
Bells Dance, Drums Ring
Haiku of Buson(蕪村の俳句)
Lesgedowdaheah
Die Berliner Hornisse
Nell Miller, Op. 1

「El Canto de los Asesinados」はバックヴォーカル、テノール、サクソフォン、打楽器アンサンブルによる作品であるが、なんとも聴いたことのない不思議なタイプの作品。曲の中に込められた要素が妙に独立して聴こえるような居心地の悪さとともに、人を喰ったようなサウンドが面白く聴けた。「Lesgedowdaheah」は特に後半「Slam」での乱痴気騒ぎともいうべきジャズ・サウンドが楽しい。

「ベルリンの雀蜂」では、リムスキー=コルサコフの「熊ん蜂の飛行」を意識して書かれた作品だというが、こちらはなかなか面白い。蜂の羽音を表現しているような不気味な前半部と、蜂のダンスを表現し、シーツ・サウンドで音をばらまく後半部。後半部でピアノが入ってくるところなど、その効果の大きさにドキッとしてしまう。サクソフォンはマーク・エンゲブレツォン Mark Engebretson氏だ!リチャード・ディーラム Richard Dirlam氏のアルバム「She Sings, She Screams」で名前を見て以来だ。

サクソフォン奏者としてのNorbert Nozy

ちょっと吹奏楽をかじったことのある方にはおなじみのノルベール・ノジ Norbert Nozy氏だが、サクソフォン奏者としても非常に高名であることをご存知だろか。

そもそも、ノジ氏の最初のキャリアが、1975年にベルギー・ギィデ交響吹奏楽団 Grand Orchestre d'Harmonie de la Musique Royale des Guidesにサクソフォン奏者として入団した、ということなのだ。そこから先は良く知られている通り。1985年に同楽団の指揮者としてデビュー、以降2003年までそのポストを占め、ギィデの黄金期を支える重要な役割を果たした。1972年から1975年までは、フランソワ・ダニール率いるベルギー・サクソフォン四重奏団のメンバーでもあった。現在は、ブリュッセル王立音楽院でサクソフォンと吹奏楽の指導にあたる。

サクソフォンを吹いた録音がそもそも少ないことと、さらにそのほとんどが廃盤になってしまった(よりによってRene GaillyレーベルとCalliopeレーベル!…特に、ルネガイ盤のギィデとの共演になるサクソフォン+吹奏楽作品集は聴いてみたいのだが未だに入手できていない)のは不幸なことであった。それでもいくつかの録音は現在でも入手可能だ。

1999年のWASBEにおける、ノルトライン・ヴ​​ェストファーレン・ユース・シンフォニック・バンドの実況録音盤(Mark Records 3141-mcd)では、Gregorij Kalinkowic「アルト・サクソフォンとバンドのためのカプリッチョ"パガニーニの主題による協奏曲"」を、見事なテクニックと音色で吹いている。現代のトレンド(現代のトレンドってなんだよ、と突っ込まれるかもしれないが)からは離れている、とても柔らかく太い音色。録音で、純粋に音色の美しさに感動するというのも、なかなか最近はなくなってしまった。

2014/02/04

Duo Kalypso plays Yoshimatsu & Khachaturian on YouTube

サクソフォンのミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏とピアニストの李早恵さんのデュオ・ユニットである"Duo Kalypso"の新しい演奏録画(映像ではない)がYouTubeにアップロードされていた。「ファジイバード」なのだが、とにかく草書体の流麗な演奏で、放物線を多用した美しい演奏に惚れ惚れしてしまう。テクニカルな曲を難しそうに聴かせるのはありがちだが、美しさを出すことに必要なレベルの高さは、ちょっと想像できないほどだ。さりげない一つの音に感動してしまう。

もちろん、李早恵さんとの息もピッタリ。このお2人のデュオ"Duo Kalypso"は、少なくともサクソフォン界では世界トップクラスの室内楽団ではないかと思っているのだが…。また、他の楽器を含めたとしても、相当高い位置にいるのではなかろうか。実際、(サクソフォンだけではない)異種格闘技の室内楽コンクールでも多くの入賞経験があるそうだ。

吉松隆「ファジイバード・ソナタ」第1楽章


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また、ミーハ・ロギーナ氏とオーケストラの共演によるハチャトゥリアンの演奏もアップロードされていた。どこのオーケストラなのだろうか。ピアノとの演奏でのぶっ飛ぶようなスピード感は若干鳴りを潜めているが、代わりにダイナミックさを堪能した。

A.I.ハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲」第1楽章

2014/02/03

アドルフ・サックス生誕200周年企画展@MIM

ベルギー在住のピアニスト、大宅裕さんからもらった情報。ベルギー・ブリュッセル市の楽器博物館(MIM)で、2014年2月から2015年1月まで「SAX200」というアドルフ・サックスとサクソフォンに関する企画展が開催されるとのこと。フロアの4階がごっそりとこの企画展のために使われるそうだ。以下、大宅さんから転送してもらったベルギー大使館の声明文。大使館がこんな文章を書いてくれるなんて、嬉しいじゃないですか。

2014年、ベルギーはサックスに纏わる全てをお祝いします。

今年はサクソフォンの発明者アドルフ・サックスの生誕200周年となります。サックスは1814年11月6日にベルギーのディナンに生まれました。記念日には音楽家、デザイナー、舞台芸術家や都市プランナーなどによる催し物が積極的に開催される予定です。

ブリュッセル楽器博物館においては、サックスとサクソフォンに関するユニークな展示が(2014年2月から2015年1月まで)1年に亘り行われます。世界でも最多の所蔵サックス楽器コレクションの全てが、この機会に展示されることとなります。詳細は以下のリンクからご覧いただけます。http://www.mim.be/sax200-exhibition

若き熟達のサックス奏者(30歳以下)であれば、全ての国から(日本からも!)隔年開催の国際サックス・コンテストに参加することができます。2002年には日本のサックス奏者、原博巳氏が優勝しています。今年の出場申し込みは2014年3月3日まで可能です。http://sax.dinant.be/concours

サクソフォン発明者生誕200周年がよい一年となりますよう!

詳細はこちらのページから。

さすがに私自身は行くことができなさそうだが(2015年のコングレス@ストラスブール向けの資金を貯めないと…)、ベルギー近くにお住まいの方や、コンクールでディナンに行く方はぜひ訪れてみてはいかがだろうか。企画展のカタログが25ユーロで売り出されており、これだけでも購入しようと思っているところ。

YouTubeには、短いプロモーションムービーがアップされていた。

2014/02/02

書籍「日本の作曲家の作品」

サントリー音楽財団の出版物「日本の作曲家の作品」をご存じだろうか。日本作曲家協議会によって編纂され、2年ごとに出版される日本人作曲家の新曲リストである。下記リンクから、「2001-2002年」「2003-2004年」「2005-2006年」「2007-2008年」「2009-2010年」計5種類のPDF版をダウンロードでき、さらに古い版に関しては実費により注文が可能だ。(2011年以降は出版されていないのだろうか?)

日本国内で作られた作品全てをカバーするものではなく、「日本作曲家協議会」とその周辺を中心とした情報なのだろうと推察するが、それでも興味深い資料であることは間違いがない。

http://www.suntory.co.jp/sfa/music/publication/

サクソフォン的興味からすると、ロンデックスの目録と重なる部分もあるのだが、やはり各ファイル内で「sax」と検索してサクソフォン関連の作品を眺めていくのが面白い。大多数は知らない作品であり、こんな作品が作られていたのだなあという驚きがたくさんあった。

2014/02/01

練習と本番

午前から練馬でTsukubaSQ練習。エスケシュの「タンゴ・ヴィルトゥオーゾ」などを合わせる。直近の本番の予定などはないが(協会のコンクールも今年は不参加)、それでもやっぱり音を重ねるのは楽しい。

練習後、つくば氏へ移動。青葉でつけ麺を食べて、つくばカピオ・ホールへ。出身大学吹奏楽団の団内アンサンブルコンサートに参加。「アルセナール」のサクソフォン・クワイアだけ参加してきた。けっこう良い演奏になったのではないかなと思ったのだが、どうかなー(今回もさすが、指揮者の方に依るところは大きく、いろいろ勉強させていただいた)。

演奏時間そのものはたった3分とはいえ、それとは別に懐かしい方にたくさん会えるのは楽しいもの。本当は飲み会も参加したかったところであるが…。空き時間には「エレクトリック・カウンターポイント」の打ち合わせも実施。