2014/02/25

GD-2057収録曲目について(その1)

3回にわたって、マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤:グリーンドア音楽出版GD-2057に収録されている曲目について、雑多なことを書いていく。

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個人的に一番好きなピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」の演奏は、マルセル・ミュール氏がギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団時代にSPに吹き込んだ録音だ。Disque Gramophone L-1033という型番で、「1936年のディスク大賞を受賞」とされているSPである。表面と裏面の両面で一曲を構成するという、いまであれば考えられない大胆な収録の仕方。技術的にはもちろん現代の演奏のほうが優れているのだろうが、その「トムとジェリー的雰囲気(この言い回しの引用元がどこか、分かる方には分かるだろう)」において、これを上回るものは未だ存在していないと思われる。

今回復刻された録音は、ミュールとしては再録音になる。ミュール以外全員メンバーが変わり、演奏はモダンになり、まろやかそのものだった音色も、現代風のエッジの効いたスタイルになっている。だがしかし、やはりそこはミュール。随所でひびくその音楽性は、1936年当時とくらべても遜色ない。

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デザンクロ「四重奏曲」。世界初録音だろう。技術的・音楽的にここまで完成された録音を、作品の成立後わずか数年で世に送り出してしまうことは、まさに驚異としか言いようがない。現代にあって聴いても、もちろんヴィブラートなどに時代は感じるが、「違和感」と呼べるものはまったく存在しない演奏なのだ。つまり、後に続く世代は、全てのプレイヤーたちがこの解釈に影響を受けているのだろう。

乱暴に言えば、ミュールが演奏活動から引退した以降は、アカデミック作品の演奏に関してはサクソフォンは進化をやめてしまったとも…。よほど現代風に新しい解釈で取り組むか、さもなくば模倣か。現代にあってこの曲に取り組むことの難しさを改めて思い知った。

話が逸れたが、記録としてももちろん貴重だが、演奏内容としても一聴の価値あり、と言うことができる。デザンクロ「四重奏曲」に取り組む方は、ぜひ。

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