2014/01/14

ジョン・ハール氏関連のCDが…

ジョン・ハール氏関連のCDがAmazonにて中古品が安く出ているので、興味ある方はぜひ。どれも超おすすめ盤。

その昔に書いた文章を使ってご紹介。

サクソフォーン協奏曲集
1. Bryars, Gavin ギャビン・ブライヤーズ - The Green Ray ザ・グリーン・レイ
2. Nyman, Michael マイケル・ナイマン - Where the Bee Dances 蜜蜂が踊る場所
3. Westbrook, Mike マイク・ウエストブルック - Bean Rows and Blues Shots ビーン・ロウズ・アンド・ブルース・ショッツ
特徴ある現代音楽の録音を数々リリースし続けたArgoレーベルからのリリースによるCD。全三曲すべてがこのアルバムのために書き下ろされた新曲という、現在ではなかなか作ることのできない豪華な仕様のCDとなっている(リリースは1992年)。
一曲目タイトルの「ザ・グリーン・レイ」とは、ライナーの解説によると、太陽が地平線に沈み始めた瞬間に緑色の光を放つ現象のことだと言う。そのタイトルから連想されるとおり、ソプラノサクソフォーンによって奏でられる神秘的で表現豊かな長いメロディが楽曲の核となる。音数の極端に少ないメロディを音楽として表現できるのはハールの得意分野の一つであるが、そんな彼の長所が最大限生かされた作品だ。
二曲目の「蜜蜂が踊る場所」は、ナイマン特有のミニマル風の小気味良いパッセージが、だんだんと熱狂を帯びてゆく様がなんとも楽しい作品。今日ではすでに多くのサクソフォニスト達によって取り上げられ、サクソフォーンの重要なレパートリーの一つとして数えられている。サイモン・ハラームやジェラルド・マクリスタルによる録音もあるが、それらは項を改めてご紹介したい。
「ビーン・ロウズ・~」は変形されたブルースをモチーフとした、三楽章に渡るジャジーなコンサート・ピース。ピーター・フェアクロウのドラムス(絶品!)にのって縦横無尽に暴れまわるサクソフォンをご堪能あれ。

エレジー~スタン・ゲッツに捧ぐ
1. Myers, Stanley スタンリー・マイヤーズ - Concerto 協奏曲
2. Bennett, Richard Rodney リチャード・ロドニー・ベネット - Concerto for Stan Getz スタン・ゲッツのための協奏曲
3. Torke, Michael マイケル・トーク - Concerto 協奏曲
海外では「Sax Drive」というアルバムタイトルで売り出されているが、国内盤では「エレジー~スタン・ゲッツに捧ぐ」という名前になっている。三曲がそれぞれ別のオーケストラとの録音(アーゴ響、BBCコンサート管、アルバニー響)だが、どの曲も万全の仕上がりである。
国内盤ではアルバムタイトルにもなっている「スタンゲッツのための協奏曲」は日本の雲井雅人氏も注目する名品で、テナーサクソフォンによるアドリブ部分を交えた集中力の高い演奏が、さらにこの曲の価値を高めている。当初は委嘱者のゲッツ自身が初演する予定だったが、ゲッツの死去によりハールが初演を行ったのだという。
一方、映画「ディア・ハンター」の映画音楽作曲でも知られるスタンリー・マイヤーズの純音楽へのアプローチが、この「協奏曲」として実を結んでいる。スピード感溢れるスーパー・テクニックの演奏に、抜群の存在感を誇る曲だ。この作品はジョン・ハールに捧げられている。
トークの「協奏曲」は分かりやすい(耳に残る)旋律線を湛えた作品。前半二曲に比べるとインパクト面では少々劣るものの、やさしい調性音楽として書かれている。伴奏弦楽器とサクソフォーンがテーマを交互に演奏していく様が楽しい。


※ハール氏ではなく、Apollo Saxophone QuartetのCDだが、ジョン・ハール一派の流れを汲む重要なアルバム。
チルドレンズ・ソング
1. Corea, Chick チック・コリア - Children's Songs チルドレンズ・ソング
2. Nyman, Michael マイケル・ナイマン - Songs for Tony トニーへの歌
3. Bedford, David ディヴィッド・ベッドフォード - Fridiof Kennigs フリディオフ・ケニングス
4. Gregory, Will ウィル・グレゴリー - Hoe Down ホー・ダウン
5. Powell, Roy ロイ・パウエル - Bow out ボウ・アウト
唯一Argoから出版されたアポロ四重奏団のアルバム。ジャズ・ピアニスト&作曲家としても有名なチック・コリアの「チルドレンズ・ソング」が目を引くが、サクソフォーン四重奏という形態を生かした、ピアノソロにくらべて多様性ある演奏になっているのが面白い。「トニーへの歌」は様々な団体の録音が出ているが、このCDの演奏が一番だろう。第一楽章のアルトの歌い上げ始め、曲にどっぷりとつかった密度の濃い名演。この録音を聴くだけでも十分価値あるCDと言えるだろう。
メンバーの師匠であるハールと作曲家グレゴリーが参加した「ホー・ダウン」は、西部劇を思わせるようなスピード感あふれる作品。中盤に挟み込まれた唸るバリトンサックスのソロは一聴の価値ありだろう。吹いているのはグレゴリー氏自身だろうか?
瑞々しさと表現力がバランスよく配置されたアルバムになった。イギリスの四重奏のCDの中でも、特にオススメしたい一枚である。

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