2013/03/31

松下洋&PEDROSAXO(横浜公演)!!

最高のライヴだった!!午後から正統派クラシック・サクソフォンの王道を聴き、夜からクラシック・サクソフォンの極北を聴くことができるなんて!

【PEDROSAXO&松下ようDUO LIVE ~"世界のサクソフォニストより"第1弾~(横浜公演)】
出演:松下洋、PedroSaxo、塩塚純(以上sax)、岩本健吾(pf)
日時:2013/03/28(木)19:00開場19:20開演
会場:かなっくホール(京浜東北線東神奈川駅)
プログラム:
~松下洋ステージ ゲスト:塩塚純~
Chick Corea/旭井翔一 - Children's Songs [ssax, pf]
Chick Corea - Addendum [ssax, tsax, pf]
Chick Corea/旭井翔一 - Armando's Rumba [asax, bsax]
Gary Schocker - Three Dances [asax, asax, pf]
~PEDROSAXOステージ~
PedroSaxo - Estrella Altair [tsax]
PedroSaxo - La Compañía Libre [tsax]
PedroSaxo - Selectron (Space Music?) [tsax]
PedroSaxo - Abalalia [tsax]
PedroSaxo - Agua [tsax]
PedroSaxo - Broken but Walking [tsax]
~デュオ・ステージ~
PedroSaxo - YO STYLE(新作初演) [asax, tsax]

プログラム冊子ナシ、MCあり、演奏者は出ずっぱり。コンサートではなく、まさにライヴといった趣。

まず、松下洋さんによるチック・コリア。これがとにかく凄いんですわ。「Children's Songs」はピアノとソプラノサックスのデュオだが、鮮烈。ピアノのクラスター強奏から導き出される中世からの叫び声のようなソプラノサクソフォン。開いた口が塞がらないとはこのことか。直管のキャパシティを最大限に引き出し、容赦なく音をばらまいていた。旭井翔一氏によるアレンジもトンデモなくて、一曲目はRob Bucklandの録音がベースになっていたものの、二曲目は完全なオリジナル。旭井氏のチック・コリアへの尊敬の念、そして愛を感じた(旭井氏はチック・コリアが大好きなんだそうだ)。

ここで塩塚純さんが登場。「Addendum」は、チック・コリアのアルバム「Children's Songs」の最終トラックに収録されたピアノトリオ作品のアレンジ。爽やかな印象から始まるが、似たようなフレーズを執拗に繰り返し、激烈なフレジオ音域(ヴァイオリンパートなので…)を交えながら徐々に盛り上がる。「Armando's Rumba」は、デュオ。このスタイルの音楽は本当に好みだ。繰り返しの美学と興奮が入り混じった、最新のポピュラー音楽にも通じる楽しさを堪能した。アレンジの面白さと、奏者の遊び(もちろん、下地となるテクニックがあってこそである)が化学反応を起こし、魅力的な音楽に変貌していた。

最後の実質的な第一部アンコール扱いの「Three Dances」はフルートにこんな作品あるんだ!という驚きと、また2本のサクソフォンのフリーダムな遊びが楽しくて、あっという間に聴き終えてしまった。ああ、とにかく楽しい!

稀有な機会に臨席できた僥倖。音楽の本質が"ライヴ"にあることを実感させられる。演奏者の覇気をこれほど感じたライヴは久々だったかもしれない。このままブルーノートかスイートベイジルにでも持っていけそうだ。音大生なんかけっこう聴きに来るかなあと思ったのだが、それほど若い人がいなかったのは残念(すごくもったいなかったと思う)。ぜひ再演を期待したいところだ。もしYouTubeに上がったら、ぜひご覧いただきたい。

(PedroSaxoのステージのことは続きの記事から)

ドゥラングル教授リサイタル@上野

ドゥラングル教授の演奏会といえば、2007年、2012年の静岡音楽館AOIでの素晴らしいステージを思い出す。いずれもサクソフォンエレクトロニクスのための作品を中心に取り上げたプログラムであり、前衛的なプログラミングと、それらを難なくこなすドゥラングル教授の演奏に驚いたものだ。

…打って変わって今回は、サクソフォンのための「古典作品」ともいえるようなラインナップ。しかもピアノは野平一郎氏ときたもんだ。ドゥラングル教授自身の選曲なのか、外部からのリクエストなのかは分からないが、ともかくまたまた素晴らしいステージを楽しんだ。

【クロード・ドラングル サクソフォン・リサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、野平一郎(pf)
日時:2013年3月30日(土)15:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
料金:S席5000円、A席3500円、U-25席1500円
プログラム:
J.B.サンジュレ - 2つのカプリス
D.ミヨー - スカラムーシュ
F.プーランク - クラリネット・ソナタ
P.ポルトジョワ編 - フランス・シャンソン集
P.ヒンデミット - アルト・サクソフォン・ソナタ
J.ブラームス - ヴィオラ・ソナタ第2番
M.ラヴェル - ハバネラ形式による小品(アンコール)
E.サティ - ジュ・トゥ・ヴ(アンコール)
C.ドビュッシー - シランクス(アンコール)

チケットは、「チケットれすQ」なるシステムを使って購入。オンラインでクレジット決済を済ませるとQRコードが送られてきて、コンサート会場受付の読み取り機にそのQRコードをかざすと、座席の場所が印字されたレシートのような紙を渡された。これがチケット代わりらしい。発券手数料が安いのがありがたかった。

客席は見た目8〜9割ほどの入り。いつもよく見かける音大生っぽい方々は少なくて、一般の音楽ファンのような方々が多かったような。

ソプラノサクソフォンによるサンジュレ。ピアノで演奏された短い序奏は、まるでモーツァルトの交響曲の冒頭をオーケストラで聴いているような気分にさせられた。やはり野平一郎氏のピアノは凄い。そしてドゥラングル教授のサクソフォンである。しぶしば、サクソフォンが円錐管であることを忘れさせてしまうような、上から下まで完璧なコントロール、そして音程。音色もキラキラとして、いったいどこから音が出ているのかわからないほどだ。そもそも、ただ演奏されるだけではつまらないサンジュレをあのように見事に聴かせてしまう、という時点でそもそも大前提からして違う。

「スカラムーシュ」は、お二人の丁々発止といったやり取りが面白かった。ドゥラングル教授も、細かい所は吹き飛ばしてしまっているように聴こえる(実際はそんなことないのだろうが)。ヴァンドレンレーベルにレコーディングされた同曲の演奏を知っている人からすると、別人の演奏のようでちょっと衝撃的かもしれない。それにしても、野平一郎氏がスカラムーシュを弾くというのも実に面白い機会であることだ。プーランクも、フランスのエスプリの薫り高く、細かな仕掛けがはっきりと浮き彫りにされており、楽しかった。ついつい、プーランクがサクソフォン作品を書いてくれたら、どんな作品になったのかなあと思い巡らせてしまった。

前半最後はフランス・シャンソン歌曲集。編曲者のフィリップ・ポルテジョワは、ルデューQのアルト奏者としても有名な人物だ。リラックスした音色、草書体のようなフレージング。会場全体がまるでパリのカフェの昼下がり、といった雰囲気に包まれた。「愛の讃歌」「バラ色の人生」「パリの空の下」「枯葉」といったおなじみのナンバーが、抑制の効いたアレンジで奏でられた。純粋な音楽を聴く幸せを感じた。ただひたすらにメロディに身を委ねるような聴き方をしてしまったが、そんなのもたまにはアリかなと。

後半はヒンデミットから。メカニカルなサクソフォンとピアノの絡まり…まるでスコアが透けて見えるようだ。技術的に完璧であることは間違いないのだが、熱いようでいて冷静というか不思議な体温で奏でられていた。そして最後はブラームス!私はこの作品の第2楽章の憂鬱な感じと幸福な感じが入り混じったテンションが好きで、サクソフォンで演奏されることでその感情がより強調される気がしている。ヒンデミットもブラームスも、より精神性云々といったところに近い演奏だったような。だから、文字で感想を起こすのがためらわれる。

アンコールは3曲。最後に演奏された「シランクス」がことのほか印象深い。師弟繋がりということで、先日聴いた伊藤あさぎさんの奏でたラヴェルの「ソナチネ」を思い出した。会場の外は寒かったが、なんだかほっこりした気持ちでホールを後にしたのだった。

このあと、一蘭でラーメンを食べて東神奈川駅まで移動。松下洋&PEDROSAXOも驚異的だったのだが、その感想は次の記事にて。

2013/03/30

海老原恭平サクソフォンリサイタル

仕事を終えたのち、つくば市へ。会社からドアツードアで2時間ほどかけて移動し、つくばカピオ・ホールで開かれた海老原さんのリサイタルに伺った。遠かったが、無理して聴きに行った甲斐のある、素敵なコンサートだった。

【海老原恭平サクソフォーンリサイタル ~Song Book~】
出演:海老原恭平(sax)、富山里紗(pf)、田村拓也(marimba)
日時:2013年3月29日(金)18:30開場、19:00開演
会場:つくばカピオホール(Txつくば駅より徒歩5分)
プログラム:
G.Fitkin -
R.Rogers - Lessons of the sky
武満徹 - めぐり逢い
J.Canteloube - Chants d'Auvergne(1ere)
湯山昭 - ディヴェルティメント
D.Maslanka - Song Book
?(アンコール1曲目失念)
小六禮次郎 - さくらのテーマ(アンコール)

さすがに開演には間に合わず3曲目の武満徹作品から聴く。ストレスフリーな美しい音色(音色だけ聴くと"軽い"セッティングで吹いているように聴こえるが、実際どうなのだろう)が実に印象深い。武満徹が創り出すポピュラー音楽の側面を、とても良い形で聴き手にプレゼンテーションしていた。

続く伊藤康英先生のアレンジによるカントルーブ作品は、美しいアレンジにも関わらずあまり演奏機会がない。何がきっかけでここに目をつけたのかな…。原曲が持つ「美しいメロディを奏でる喜び」という、人間の本能にも絡む愉しみがひしひしと伝わってくる演奏だった。ことさらに「3つのブーレ」でその印象が強い。海老原さんのサクソフォンは、フォルテは普通のサックスのように聴こえるのだが、弱音や管が短い音になった瞬間に音色が幾種類にも変化してゆくのが面白い。ピアノやピアニシモで音色のヴァリエイションを持つことは、演奏家としての強い武器だ。

後半はサクソフォンとマリンバ。エヴリン・グレニーとジョン・ハールの演奏で昔から慣れ親しんだ湯山昭「ディヴェルティメント」と、初めて聴きに行ったフェスティバルで雲井雅人氏が演奏していた「ソング・ブック」。いずれも、曲名はよく聞くが実演に接する機会はあまりない。特に「ソング・ブック」は5オクターブマリンバ必須という制約もあるのだという。

「ディヴェルティメント」では海老原さんのキャラクターが活かされる曲で、"準ポップス"という装いのこの作品を、聴かせどころをおさえながら上手くまとめていた。まとめていた、と書くと何だかマジメな演奏だったというように聞こえるがそういうことではない。捉えどころのない(どこに重心を置けばよいかわからない)この曲をちゃんと演奏できる人はなかなかいないのではないか。終わった瞬間の客席の興奮もかなりのものだ。

マスランカ作品は、非常に内省的というか、それまで演じていたキャラクターとは違う切り口を見せてくれた。音数が少ないが、終始一貫して高い集中力に満ちた演奏だ。派手な部分は限定的で聴き手としては「難しい」作品だと思うが、敢えてこの作品を取り上げたことによって退路を断って真正面から作品に向き合う、その姿勢に感化された。マリンバの田村氏もとても良く弾く方(海老原さんの高校の同級生とのこと)で、自身の内面を掘り下げていくような音楽の捉え方は、この作品に実にマッチしていると感じた。

終演後は打ち上げにちょっとだけ参加させてもらい、松下さん、塩塚さん(本日かなっくホールで演奏会を控えている)とともに東京へ戻った。

2013/03/28

Bornkamp plays Bach

アルノ・ボーンカンプ氏が最近注力しているバッハの無伴奏作品の演奏に関連したビデオ。抜粋とはいえ「シャコンヌ」を聴けるのは嬉しいなあ!ぜひ全編聴いてみたいのだが、CDになる予定はないのだろうか。その他、BWV1003やBWV1008などが演奏されている。

http://www.toccatamusic.nl/video3.html

「シャコンヌ」はヴァイオリン奏者にとっては無伴奏作品の金字塔的存在である。サクソフォン奏者がバロック期の無伴奏作品に(アレンジとして)取り組む際にも、そろそろ「シャコンヌ」が広まり始めることなのではないだろうか。アレンジにあたっては重音の表現にも頭を悩ますことになるだろうし、アルペジオをどう扱うかについても思案のしどころだろう。また、たった一本で14分に及ぶ作品を聴かせるのは並大抵のことではない。それでもいずれ、見事な演奏をする奏者が現れることを期待している。

2013/03/27

木曜~土曜の演奏会をまとめてご案内

木曜日:松下洋&PedroSaxo名古屋公演
金曜日:海老原恭平リサイタル
土曜日(午後):ドゥラングル教授リサイタル
土曜日(夜間):松下洋&PedroSaxo横浜公演

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木曜日は、PedroSaxo&松下洋の名古屋公演。

24日には東京公演を終えているが、FacebookやTwitterを観測するとまさに衝撃的なライヴだったようだ。私自身も昨年WSCでライヴに接したが、衝撃的というか世界がひっくり返るというか…全く新しいサクソフォン演奏のアプローチとして、これは大いに知られるべきである。コモディティ化していたと思われていた特殊奏法から、非常に面白い部分を上手く取り出し曲としてまとめ上げるそのアイディア、そして演奏能力。WSCではスライドサックスを繰るボーンカンプ氏とのデュオ演奏も面白かったなあ(笑)。あと、もう一つ楽しみなのが松下氏が演奏するチック・コリア。話を聴いているとなかなかとんでもないことになりそうだ。

【PEDROSAXO&松下ようDUO LIVE ~"世界のサクソフォニストより"第1弾~(名古屋公演)】
出演:松下洋、PedroSaxo、瀧彬友(以上sax)、倉田弓(pf)
日時:2013/03/28(木)18:30開場19:00開演
会場:名古屋市千種文化小劇場(ちくさ座)(地下鉄桜通線吹上駅)
料金:一般3000円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
松下洋ステージ - チック・コリア特集
PEDROSAXOステージ - PEDROSAXOオリジナル作品
デュオ・ステージ
問い合わせ:
yo_14th@yahoo.co.jp




金曜日。なんとつくば市での海老原さんのリサイタル。ご出身が取手市なのだそうだ。

とにかくプログラムがツボである。ピアノとともに演奏されるロジャースはともかく、「カントルーブの歌」の伊藤康英先生によるアレンジは、素晴らしいにも関わらずめったに聴く機会がない。後半は、マリンバとサクソフォン。名曲中の名曲、湯山昭の「ディヴェルティメント」と、秘曲「ソング・ブック」。実に豪華な催しとなりそうだ。仕事が終わってから、なんとか駆けつけられる…かな?

【海老原恭平サクソフォーンリサイタル ~Song Book~】
出演:海老原恭平(sax)、富山里紗(pf)、田村拓也(marimba)
日時:2013年3月29日(金)18:30開場、19:00開演
会場:つくばカピオホール(Txつくば駅より徒歩5分)
料金:一般\2,000、学生\1,500(全自由席)
プログラム:
R.Rogers - Lessons of the sky
J.Canteloube - Chants d'Auvergne(1ere)
A.Yuyama - Divertiment
D.Maslanka - Song Book
問い合わせ:
09049103145(海老原)
ebichan20#mail.goo.ne.jp(#を@に変更)



土曜日は、午後からドゥラングル教授のリサイタル。

まさかのサンジュレ、まさかのスカラムーシュ、まさかのブラームスのヴィオラ・ソナタ第2番(クラリネット・ソナタ第2番と書かなかったのは何かのコダワリかな)…昨年静岡音楽館AOIで、ブーレーズとストロッパと野平一郎のエレクトロニクス作品を演奏していたドゥラングル教授の出で立ちからは想像できないほどの曲目だ。それがまた逆に気になってしまうというか…なんとも魅力的である。野平一郎氏が弾く「スカラムーシュ」も想像できない楽しみがある。

【クロード・ドラングル(ドゥラングル)サクソフォン・リサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、野平一郎(pf)
日時:2013年3月30日(土)15:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
料金:S席5000円、A席3500円、U-25席1500円
プログラム:
J.B.サンジュレ - 2つのカプリス
D.ミヨー - スカラムーシュ
F.プーランク - クラリネット・ソナタ
P.ポルトジョワ編 - フランス・シャンソン集
P.ヒンデミット - アルト・サクソフォン・ソナタ
J.ブラームス - ヴィオラ・ソナタ第2番
問い合わせ:
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_1346.html



ドゥラングル教授のリサイタルが終わったあとは、京浜東北線に乗ってかなっくホールへ移動しましょう!電車で40分乗り換えなし、といったところだろうか。PedroSaxo&松下洋の横浜公演!

【PEDROSAXO&松下ようDUO LIVE ~"世界のサクソフォニストより"第1弾~(横浜公演)】
出演:松下洋、PedroSaxo、塩塚純(以上sax)、岩本健吾(pf)
日時:2013/03/28(木)19:00開場19:20開演
会場:かなっくホール(京浜東北線東神奈川駅)
料金:一般3000円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
松下洋ステージ - チック・コリア特集
PEDROSAXOステージ - PEDROSAXOオリジナル作品
デュオ・ステージ
問い合わせ:
yo_14th@yahoo.co.jp

2013/03/24

日本サクソフォーン協会第10回アンサンブル・コンクール本選

Tsukuba Saxophone Quartetとして、日本サクソフォーン協会主催の第10回アンサンブル・コンクール本選・一般の部に参加。Benjamin Boone「Alley Dance」という、New Century Saxophone Quartetの委嘱作品(同団体のアルバム「Home Grown: Commissions, Volume 1」所収)を演奏した。日本初演だったのかな?

午前中、福山雅治の同名曲で有名な「桜坂」の近くの文化センターで練習。桜はちょうど満開で、曇り空とはいえ美しかった。溝の口へ移動し、洗足学園音楽大学の講堂で16:09から演奏。演奏中は小さな事故が多発してしまったが、テンションを保ちながらなんとか通ったのは幸いだった。一般の部7団体中2団体が金賞で、IBC SAXOPHONE ENSEMBLEさんが金賞・グランプリ、TsukubaSQは次点で金賞。IBCさんの、音出し部屋でドカンと協和音を出した時の豊潤な響き…さすが、であったm(_ _)m

結果掲載のページ:http://homepage2.nifty.com/hiromitsu/NewFiles/10ec-fainal.html

演奏終了後にIBCさんと一緒に撮ってもらった!(写真はIBCのアルトKさんのFBタイムラインより)

上野耕平WSC演奏「ウズメの踊り」 on YouTube

出発まで時間がないので取り急ぎお知らせだけ。

上野耕平氏が昨年のWSCで演奏したピート・スウェルツ「ウズメの踊り」の演奏録画がYouTubeにアップロードされた。まさに怒涛の10分間…まあ聴いてみてくださいな。

https://www.youtube.com/watch?v=41jh4DmlfKU

2012/7/11、セント・アンドルーズのYounger Hallでの演奏である。クラーク・ランデル指揮王立北部音楽院吹奏楽団。

2013/03/23

明日はいろいろ

明日はTsukuba Saxophone Quartetで日本サクソフォーン協会主催の第10回アンサンブルコンクール・一般の部に出場。演奏時刻は16:09で、曲目はBenjamin Booneの「Alley Dance」。お暇な方は冷やかしに来てください(^^;

http://homepage2.nifty.com/hiromitsu/NewFiles/10ec-time.html

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15:00からはPEDROSAXOのコンサート!超オススメのコンサート。小さい会場ゆえまだチケットが残っているかどうかはわからないが、興味ある方はお問い合わせの上伺ってみては。こちらに参加できなくても、横浜公演もあるのでご安心を。
会場:アクタス渋谷6F・アンナホール
日時:2013/03/24(日)14:30開場 15:00開演
https://www.facebook.com/yosaxophonist

関西では、伊藤あさぎさんのリサイタルの大阪公演が開かれる。東京公演では、流麗そのものといった素晴らしい演奏を聴かせてくれたので、大阪公演も素敵なコンサートになること間違いなし!である。
会場:ザ・フェニックスホール
日時:2013/03/24(日)13:30開場 14:00開演
http://itoasagi.blog12.fc2.com/blog-entry-169.html

2013/03/22

スピーカー購入(エレクトロニクス作品演奏用)

今は亡き音響メーカー、ソリッドアコースティックスの12面体スピーカー「SA-365DSN」を2本購入。当時の1本あたりの定価が84,000円、2本で168,000円のところ、デッドストック?と思われる新品を2本セット15,000円で購入できた。佐藤さん、情報ありがとうございました。

これはオーディオ用として購入したのではなく、エレクトロニクス作品の演奏の際に使うために購入したものだ。例えばJacobTVの作品などを演奏する際に、自分でもスピーカーを所持している必要があると考えてずっと購入を検討していたため、渡りに船という具合だった。

どうやら定格で80W、最大で300Wまで鳴らせるらしい。…いや、そこまでは使わないって(笑)。

とりあえず、たった20W+20Wしか鳴らせない安物のパワーアンプ(要はミニコンポのスピーカー出力)につないでみたが、非常に面白い。12面から全方向に向かって飛び出す音は、モノラルであっても妙な立体感があって不思議な感覚。ステレオにして2本を離して置いてみると、面白いほどの定位感が感じられる。Pierre Jodlowski「Mixtion」のパッチなど鳴らすと、なかなかの解像感。ただし低音はそこそこ(ひとつひとつのユニットは5センチ径なのでこんなもんか)といったところ。曲によっては、イコライザで増強したり、場合によってはウーファーを繋ぐ必要があるかもしれない。

これでJacobTVの作品を演奏したら楽しいだろうなー。全方位に音が飛ぶため、モニタースピーカーが要らなくなりそうなところもマル。エレクトロニクス作品の演奏に必要な機器は、少しずつ買い揃えて行きたい。次はパワードミキサーか、MacBookか。

Legere Signatureを使ってみた

アメリカのLégère Reeds Ltd.が開発&販売を行い、日本国内ではグローバル楽器が輸入代理店を務める合成樹脂のリード「レジェール」。だいぶ前になるが新シリーズである"Signature"が出たとのことで、ようやく入手して使ってみた。

普段のテナーサックス(楽器本体はSelmer Reference 54)のセッティングは、Selmer S-90 170に3 1/2のヴァンドレンリード。リガチュアはBayのGP。ここに、3 1/2のLegere Signatureを付けてみた。普段使いで心地よく感じる硬さよりも若干柔らかくて、もう1/4ぶん硬いものがあったら、そちらを買ってしまうかもしれない(ただし、シリーズ中一番大きい数字が3 1/2であるため、これ以上の硬さは望めない)。

無印に比べて、ずいぶんと音色はケーンらしくなったような気がする。ブラインドであれば聴いている方にはわからないかも。自分の奏法の問題もあると思うのだが、高音ではあまり無茶な吹き方をすることができないが、きちんとアンブシュアを作れば、全音域にわたって問題無さそう。「正しく」演奏することで本番にも十分対応可能なリードではないだろうか。

さらなる改良を望みたい部分もあるが、無印の頃から比べて確実に進歩を続けているようで嬉しくなってしまった。合成樹脂のリードがケーンのリードを席巻する日も、あるいは近いのかもしれない。

2013/03/20

須川展也氏の大きな演奏予定

今日は吉松隆氏の還暦コンサートで須川展也氏が「サイバーバード協奏曲」を吹いたとのことだが、伺えず…残念。ちなみに「タルカス」も演奏されたらしいが、なんとキース・エマーソン氏が隣席していたそうな。まじっすか。で、急遽ステージに上がって「ハッピー・バースデイ」をピアノで弾いたそうな。すごいなー。

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さて。今年3月3日にNHK-FMの番組「現代の音楽」に須川展也氏が出演していたが、その番組の最後に大きな演奏情報が須川氏の口から語られた。

2014年が須川氏のデビュー30周年ということで、2014年4月29日に東京都内で「大きなコンサート」を開催予定とのこと。どのようなコンサートになるかは想像もつかないが、楽しみにしていよう。私も早速手帳に書き込んでしまった。またそれに先立って、2013年11月2日に「スガワまつりのようなコンサート(と須川氏ご自身がおっしゃっていた)」…ピアノとの共演や、弟子によって結成されたサクソフォンオーケストラとの共演を予定しているそうだが…も開かれるとのこと。こちらもぜひ伺いたいなあ!

カメラのこと

珍しく、カメラの話題。

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2010年の春に、Canon PowerShot S90(以下PSS90)を購入して以来、カメラで写真を撮ることが楽しくなってしまった。2012年の春にはSony NEX-5N(以下NEX)を購入して弄り倒し、さらにカメラの面白さを感じている。

PSS90を購入するまでは、特にデジカメというものに興味を持っておらず、せいぜい重要場面やメモしたい対象を携帯電話付属のカメラで撮影する程度だった。なぜデジカメを購入したいと思ったのかは覚えていないのだが、とにかくデジカメを買おうと考え、当時評判となっていたPSS90を選んだ。

手元に届いたその日の夜、アパートを出て街中を数枚撮影。暗い場所でもブレない写真が撮れることに驚いて、嬉しくてTwitterに写真をアップしたところ、D氏に「絞り優先で2.0まで開いて、ISO400くらいにすると良い」とのアドバイスを受けた。その通りにしたところ、先ほどのものとは格段に違う美しい写真が撮影できた。思えばこの瞬間からハマってしまったのかもしれない。

約32,000円という価格は決して安くなかったが、結果的に良い選択だった。暗がりも綺麗に撮れるし、明るい所ではAUTOにしておけば間違いなく良い写真が撮れる。サイズも魅力で、ジーンズのポケットにも収まってしまうほどの小ささは、常時の持ち歩きを促すものだった。スナップ用途が多いので、持ち歩きが気にならないサイズはありがたかった。二年間かけて20000枚以上を撮影。バカみたいな写真から渾身の一枚、さらに偶然の美しさというような写真まで、様々なショットが混在しているが、しっかりと減価償却できたと思っている。

ひとつ不満だったのは、プロ写真家が撮影する人物のポートレイトで見るような、被写体がくっきり&背景が良くボケる、という写真が撮れないことだった。ずっと不思議だったのだが(調べろよ、って話だが)、ある時カメラ好きの友達にその話をしたところ、そのような写真が撮れる条件は、下記の3つだと教えてもらった。

・焦点距離が長いこと
・F値が小さいこと
・撮像素子のサイズが大きいこと

PSS90は、F値は最小2.0だが、とにかく撮像素子のサイズが小さいと(1/1.7インチ)。そのため、どのような設定で撮影しても背景ボケは望めない、とのことだった。よし、それならと、PSS90の購入から二年を迎える頃に次のカメラを検討。一眼レフは大きすぎて持ち歩かなくなるのが目に見えてるし、コンパクトはセンサーサイズが小さいものばかりだし、ということで、カメラ界を席巻しつつあったミラーレスにターゲットを定めた。

オリンパス、パナソニック、ソニー等、各社がミラーレスを取り揃えており、かなり迷った。最終的には、高感度性能に定評があったNEX-5Nに決めた。操作性はこの際考えないことにして、基本性能と価格のバランスを考えた。また、レンズのラインナップがそこまで広がっていないこと(=レンズ沼にハマらない)も、決め手の一つだった。

タイの洪水の影響を受けて、なかなか価格が下がらないところ、NEXのダブルレンズキットをエイヤッと60,000円ほどで購入。さらに、背景がよくボケるポートレイトレンズ「SEL50F18」も同時に入手。お金は一年かけて貯め続けた500円玉貯金から出した(苦笑)。

結果、こちらもとても良い買い物をしたと思っている。サイズや操作性は予想通りいまいちだが、それを除けば非常にしっかりした画を出してくれるのだ。特に高感度におけるノイズ処理は見事で、ISO3200程度までは易々と扱えることには驚かされた。バリアングル液晶、ムービー性能(フルHD/60p)、スウィングパノラマ、連射性能といった、購入時にはあまり重視しなかった付加要素も、意外なほどに使用機会が多く、単純な写真撮りにプラスされた楽しみを覚えてしまった。

所持している標準ズームレンズ(18-55mm)、パンケーキレンズ(16mm単焦点)、ポートレイトレンズ(50mm)の3本を取り替える楽しさ。レンズを替えるとここまで見える世界が変わってしまうのかという驚きに虜になり、昨年末にはパンケーキレンズ用のフィッシュアイコンバータを買いたした。

特に演奏関連のイベントではよく持ち歩き、これまでにおよそ12,000枚ほどを撮影。昨年のWSC参加時の写真をはじめとして、このカメラでしか撮ることのできなかった写真がたくさんある。なにか気合を入れて撮影するということはほとんどなく、スナップがほとんど。明るい所でも暗い所でも、AUTOでマトモな画を作ってくれる、というのはありがたい。


上から順に、ポートレイトレンズ(人物)、ポートレイトレンズ(風景)、フィッシュアイコンバーターでそれぞれ撮影した写真。

ポートレイトレンズ(50mm=換算75mm)を使って撮影した写真は、Facebookのアルバムにしてある(友人以外には公開していないが…)。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.3525284222719.2144681.1590563815&type=3

そういえば、サックス吹きにはカメラ好きの方も多く(藝大サックス科にはカメラ部があると聞いたけれど、ホントかなあ?)時々話が合うのが面白い。所詮私のレベルでは趣味というほどにはおこがましいほどではあるが、視野や交友関係を広げる意味でも、これからも細々とカメラ弄りを続けていきたいと思っている。

ご案内:松下洋&PedroSaxo!

オススメの演奏会のご紹介。松下洋さんとPedroSaxoのデュオ・リサイタルだ。

松下洋さんについては、今更説明の必要もないだろう。演奏が凄いのはもちろんなのだが、企画力や行動力に常々驚かされている。もしまだ松下さんの演奏を聴いたことがない、という方はとりあえず昨年のリサイタルの動画をこちらから参照いただきたい…やっぱ凄いなあ。今も暖めている企画がいくつもあるようだが、その一つが実現したのが今回のPedroSaxoを招いてのリサイタルなのだそうだ。

PedroSaxoは、スペインのサクソフォン奏者。本名をPedro Rafael Garcíaという。グラナダ音楽院を卒業後、テレビ番組「Got Talent」でのオリジナル作品の演奏によりブレイク。以降"PedroSaxo"を名乗りながら、アンプリファイアとエコーのみからなるPAシステム、そして様々な特殊奏法を使ってオリジナル作品を演奏、聴衆を魅了している。文字で書いても何のこと?という感じだが、下記動画をご覧頂きたい。だいぶ昔の動画(「Got Talent」での演奏)だが、PedroSaxoを知るための入門編動画として最適ではないかな。


PedroSaxoは、昨年セント・アンドルーズで開かれたWSCにも出演した。ByreTheaterでの演奏。たしか、石渡先生、松下くん、小澤瑠衣さん、上野耕平君と並んで、私も最前列で彼の演奏を堪能したのだが、まさに空いた口が塞がらない30分に及ぶステージを楽しんだ。あれは衝撃的だったなあ…。今回は松下洋さんによるプロデュースのもと、来日する。東京・名古屋・横浜の3ヶ所での公演、楽しみだ。私は横浜公演に伺う予定。

以下、松下さんからの案内をちょっとだけ整形して貼り付けておく。

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PEDROSAXO&松下ようDUO LIVE
〜"世界のサクソフォニストより"第1弾〜
☆東京・横浜・名古屋ツアー
主催:YTJミュージック

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≪東京公演≫
JR・東急東横線・東京メトロ 渋谷駅
会場:アクタス渋谷店6F アンナホール
日時2013/03/24(日)
14:30開場15:00開演
PEDROSAXOワンマンライブ
17:00より東京公演限定
【ペドロによるサクソフォンBEATBOXエクササイズ講座】

≪名古屋公演≫
地下鉄桜通線 吹上駅
会場:名古屋市千種文化小劇場(ちくさ座)
日時:2013/03/28(木)
18:30開場19:00開演

≪横浜公演≫
JR横浜線・京浜東北線 東神奈川駅
会場:かなっくホール
日時:2013/03/30(土
19:00開場 19:20開演
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各公演、チケットは3000円となります。学生は2000円です。
当日500円増しです。

プログラム:
松下ステージ/チック・コリア特集
ペドロステージ/ペドロワールド
松下&ペドロステージ/ペドロ新曲

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最後に、来日に際してのPedroSaxoからのメッセージ動画を。…日本語うまっ(笑)

2013/03/18

TsukubaSQ直近の演奏予定

現時点で、ざっと下記の通り。自主公演用に練習しなければならない曲の練習がかなり積み上がってきている。そして、今週末に迫ったコンクールの曲は難しすぎて未だにイン・テンポで通りません…さて、どうなることやら。

【日本サクソフォーン協会主催 第10回アンサンブル・コンクール】
日時:2013年3月24日(日曜) TsukubaSQの演奏は16:00頃
会場:洗足学園音楽大学・講堂
プログラム:Benjamin Boone - Alley Dance

【Tsukuba Saxophone Quartet - Saxophone Concert Vol.5(東京公演)】
出演:Tsukuba Saxophone Quartetほか
日時:2013年5月18日(土曜) 午後
会場:大田区民プラザ・小ホール
入場料:500円(全席自由)
プログラム:
A.ピアソラ/啼鵬 - ブエノスアイレスの春・夏・秋・冬 他

【Tsukuba Saxophone Quartet - Saxophone Concert Vol.5(長野公演)】
出演:Tsukuba Saxophone Quartet
日時:2013年6月16日(日曜) 午後
会場:下諏訪町ハーモ美術館・ティーセントホール
入場料:500円(全席自由)
プログラム:
吉松隆 - アトムハーツ・クラブ・カルテット 他

伊藤あさぎ サクソフォンリサイタル(東京公演)

素晴らしいリサイタル。フランス近現代音楽を巡るプチ旅行、といった雰囲気を楽しんだ。

※大阪公演に行こうかどうか迷っている方!行かなければ損ですよ!

【伊藤あさぎ サクソフォンリサイタル(東京公演)】
出演:伊藤あさぎ(sax)、佐野隆哉(pf)、有馬純寿(electro)
日時:2013年3月17日 14:00開演
会場:東京オペラシティ・リサイタルホール
プログラム:
M.ラヴェル/D.ワルター - ソナチネ
C.サン=サーンス - 序奏とロンド・カプリチオーソ
P.ルルー - SPP
坂田直樹 - Missing Link
F.シュミット - 伝説
F.デクリュック - ソナタ
C.ドビュッシー - 亜麻色の髪の乙女(アンコール)

ラヴェルの最初の数フレーズを聴いた瞬間に、これまで聴いてきたサクソフォン・アレンジ版「ソナチネ」の演奏に対する諸々のイメージがゼロクリアされた。これまでに聴いたこの曲の演奏に対するイメージ…まるで借り物のような…を覆して、素晴らしい音楽を奏でていた。こんな感覚はいままで味わったことがない。驚異的なまでのコントロール、そしてラヴェルの作品にピタリとはまるキラキラした音色。ダグラスが伊藤あさぎさんの演奏を評した「So grace!!」という言葉を思い出した。衣装も素敵すぎる!

サン=サーンスは、もしかしたらサクソフォン版は日本初演だったかもしれない。13区からCNSMDPに入ったサクソフォン奏者、Nicolas Arsenijevic氏お得意のレパートリー。まさか日本で、しかもあさぎさんの演奏で聴けるとは思ってもいなかった。若干アルティシモ音域に難しさが散見されたものの、循環呼吸を駆使した怒涛の音のバラ撒き方や各所での歌い方など、さすがである。

前半最後はSPP。サクソフォンとピアノの緻密なアンサンブルが要求され、さらに特殊奏法も満載、ということで容易には登攀しがたいレパートリーのひとつ。あさぎさんも相当なキレっぷりをみせ(ちょっと恐怖すら感じたほど)、さらにフルオープンにした佐野氏のピアノも遠慮無く、豪華絢爛ともいえる化学反応が発生していた。実は2人ともフランス人だったりして。本日のプログラム中、"エスプリ"を最も感じたのは不思議とこの作品の演奏だったような。

後半は新作のサクソフォン+エレクトロニクス作品から。愛知県立芸大で寺井尚行氏に師事し、エコール・ノルマルを経て現在パリ国立高等音楽院在籍中の作曲家、坂田直樹氏によるもの。非常に洗練された響きの電子音(もしかしたら一部ミュージック・コンクーレトもあったかな?)は、最近のフランスのトレンドを表しており、まるで日本人が書いた作品には思えない。全体を通してなかなか面白い作品に仕上がっており、さらに鬼気迫る演奏も相まって、とても素晴らしい時間を過ごすことができた。

古典的なシュミット、デクリュックのような作品では、隙なく仕上げるのはもちろんのこと、さらに"grace"な表現や表情の変化なども付随し、いずれも長大な作品であるが、聴いていたらあっという間だった。お手本、という域を軽々と飛び越えて、その先にある演奏者の個性という極地に近づこうとする気迫があった。すでにぶれない芯を持っているが、さらに1年後、2年後に、どのような演奏を聴かせてくれるのかがますます楽しみだ。

アンコール曲は、「亜麻色の髪の乙女」。シンプルそのもの、プリミティブな美しさ。

新世代のサクソフォン奏者のひとり、という印象を受ける。さり気ない一音、さり気ないワンフレーズの吹き方に、少し上の世代とは明らかな違い…誤解を恐れず言えば、断絶のようなものすら感じる。今後どのような方向に進んでいくのだろうか。そろそろ耳が追いつかなくなりそうだ。

演奏会の後はビックカメラと新宿西口の場末で服部先生との会合(楽しかった)。その後、二次会の後半だけ合流させてもらった。最後まで残っていたみなさんでパシャリ。あさぎさんのさいごの〆の言葉は、なぜか「あざーっす!」でした(謎)。

2013/03/16

大室勇一氏と大宮市立桜木中学校

Googleで大室勇一氏(1940 - 1988)のことを調べていたら、こんなページが出てきた。

http://www.musicabella.jp/concours/viewcond/flag:s/conductor:002229

1963(昭和38)年
大宮市立桜木中学校(関東:埼玉県)
[課] 中学 : 行進曲《朝のステップ》 (小川原久雄)
[自] 交響組曲 (C.ウィリアムズ)
関東:1位・代表
全国:3位

中学校で吹奏楽部の指揮を振っていたとは聞いたことがない。一回しか支部大会にも出ていないようだし、最初は同姓同名の別人かな?と思った。しかし、大室勇一氏は埼玉の出身だし、本人の可能性もあるなと思い、もう少し調べてみたところ、下記のページが出てきた。

http://t-akiyamabiography.blog.so-net.ne.jp/1964-03-28

なるほど。大宮市立桜木中学校の吹奏楽部は秋山紀夫氏が振っていたが、1963年のコンクール、秋山氏渡米のため代役で指揮を振ったのが大室勇一氏だった、ということのようだ。秋山氏は上記1964年の演奏会までには帰国したため、1964年以降のコンクールは秋山氏が振っている。

大室勇一氏の吹奏楽界に対する貢献の大きさは知っているつもりだったが、細かく見ていけば様々な功績があるのだな、と思ったのだった。

須川展也「ARIAS(アリア)」

だいぶ昔になるが、ヤマハの方に送っていただいた須川展也氏のCD。これからサクソフォンを始める方が、「何かおすすめのCDないですか」と聞いてきた時には、演奏・曲目・入手のしやすさなどの理由から、このCDをオススメすることにしている。

「ARIAS(Avex AVCL-25192)」
須川展也(サクソフォン)
金聖響指揮 東京交響楽団
G.カッチーニ/朝川朋之 - アヴェ・マリア
C.サン=サーンス/加藤昌則 - あなたの声に心は開く(歌劇「サムソンとデリラ」)
V.ベルリーニ - 清らかな女神(歌劇「ノルマ」)
G.プッチーニ/伊藤康英 - トスカの接吻
G.プッチーニ - 私のお父さん(歌劇「ジャンニ・スキッキ」)
G.プッチーニ - 誰も寝てはならぬ(歌劇「トゥーランドット」)
E.モリコーネ/長生淳 - ガブリエルのオーボエ(映画「ミッション」)
G.フォーレ - ピエ・イェズ(レクイエム)
加藤昌則 - スロヴァキアン・ラプソディ
朝川朋之 - セレナード

このCDの購入を検討したとき、タイトルの「アリア」や収録曲から受けるイメージは…比較的ゆっくりとした曲ばかりと思い込んでしまい、なかなか購入に踏み切れなかったのを思い出す。やはりサクソフォンのCDであるならば、機動性を活かした演奏も聴きたい、と思ってしまったのだ。しかし、実際に聴いてみると実に面白いアルバムに仕上がっていると感じた。

サクソフォンのモノローグから始まる1曲目、「アヴェ・マリア」からグッと引き込まれる。美しい音色、ヴィブラート、歌心。シンプルなメロディだけに聴かせるのは難しいが、ゆっくりした作品をこのように抜群のセンスで演奏することこそ、須川さんの最大の個性だ。オーケストラとともに奏でられる息の長いメロディなど、涙が出てしまうほどだ。

続く2曲も同一の傾向だが、オーケストラもきちんと弾いていることに妙に感動を覚える。さすが国内オケ、ムラなく良い仕事をするなあ(笑)ソロ・コンサートミストレス(クレジット情報にはソロ・コンサートマスターとある)の大谷康子氏が要所で奏でるヴァイオリンソロも絶品だ。

そして4曲目、伊藤康英先生の「トスカの接吻」がガツンと響く。オーケストラの強奏に続いて大見得を切るサクソフォンのカデンツァは圧巻で、この部分だけでも聴く価値はあるだろう。原曲、アレンジ、演奏者の三位一体の幸福な瞬間だ。デザンクロ「PCF」のカデンツァのようなフレーズが聴こえるのは気のせいだろうか…。オーケストラとサックスが官能的に呼応し、最後はクライマックスに達して素晴らしいエンディングを迎える。

再び緩徐トラックとなるが、特に「私のお父さん」や「ガブリエルズ・オーボエ」などの世界屈指の美しいメロディが次々と歌われ、全く飽きることがない。

加藤昌則「スロヴァキアン・ラプソディ」は、超絶技巧を織り交ぜながら、須川氏の魅せどころのツボをこれでもかというほど押さえた作品で、聴いていてとても興奮した。時には激しく、時には楽しく、時には甘く、様々な場面を見事に表現している。終盤の、大衆的娯楽趣味と荘厳さが入り混じった仕掛けは、これはサクソフォンならではのものであろう。

最後はやはりとても美しい「セレナーデ」でクールダウン。いやはや、完璧。

ということで、非常に素晴らしい内容。「アリア」というコンセプトだけ眺めて敬遠気味にしているのは、もったいないと思うのだった。甲種推薦盤!Amazonでの購入リンクはこちら→こちら

ムジクケラーのブランデンブルグ協奏曲第2番

部屋を片付けていたら、音楽事務所「ムジクケラー」の主催コンサート「ブランデンブルグ協奏曲全曲演奏会」の第2番のライヴ録音が出てきた。ライヴとは思えないほどに格段に洗練されている録音で、昔頻繁に聴いていた。一度うっかりしまい込むと、なかなか取り出さないのは悪い癖(?)だ…。

クレジット情報は、下記の通り。このうち誰が第2番に参加しているのかは、わからなかった。ただし、雲井雅人氏、浦川宜也氏、渡瀬センセが参加しているのは確実である。
ヴァイオリン:浦川 宜也/植村 薫/高瀬 美保/池畑玲子
ヴィオラ:大野 かおる/福本 とも子/細川 亜維子
チェロ:宮澤 等/広瀬 純/宮坂 俊一郎
コントラバス:田所智子
フルート:渡瀬 英彦/広川伸
オーボエ:姫野 徹/名雪 あかね/三原 隆正/槇 智子
ホルン:井手 詩朗/並木 博美
ファゴット:神山 純
ソプラニーノ・サックス:雲井 雅人
チェンバロ:渡邊 温子

雲井雅人氏がソプラニーノ・サクソフォンで参加している。まさに極上の音色、天の声である。さらにヴァイオリンの浦川宜也氏がまたいい音色を出しているのだ。渡瀬英彦先生によるフルートの音色も、なんだかバロック風ともいえるような感じ。そこだけタイムマシンに乗せて現代に運んできたかのようだ。

2013/03/13

ご案内:井上ハルカさんリサイタルと伊藤あさぎさんリサイタル

パリ国立高等音楽院では先輩・後輩にあたる(厳密にいうと少し違うかもしれないのだが)伊藤あさぎさんと井上ハルカさん。おふたりとも今週末に演奏会を控えているとのことで、ご案内したい。

まずは井上ハルカさん。愛媛県八幡浜市出身のサクソフォン奏者。ESA音楽学院を卒業後、フランスのリヨン音楽院に入学し、ジャン=ドニ・ミシャ氏に師事。リヨン音楽院を特別賞を得て卒業後、2011年にパリ国立高等音楽院に入学し、現在クロード・ドゥラングル氏に師事。昨年第1課程を卒業し、引き続き第2課程で研鑽をつまれている。

「世界周遊」を謳ってはいるが、何気にハードな作品(しかも名作ばかり!)も含まれており、聴き応えがあると思う。個人的オススメは、クリスチャン・ロバ「バラフォン2」とウィリアム・オルブライト「ソナタ」だが、例えば「コル・ニドライ」などでどんな歌いまわしを見せてくれるのかなど、気になるポイントは多い。まだソロでの演奏をきちんと聴いたことがないので、いつかぜひ東京で演奏会を開いてほしいところ。

【井上ハルカ サクソフォンリサイタルVol.2 -世界周遊-】
出演:井上ハルカ(sax)、安田結衣子(pf)
日時:2013年3月16日(土)開場18:00 開演18:30
会場:大阪市東成区民センター・小ホール(地下鉄千日前線・今里線「今里」駅下車、徒歩3分)
入場料:前売り1,000円 学生(小学生以上)500円 当日1500円
プログラム:
B.バルトーク - ルーマニア民族舞曲
C.ロバ - Xyl(バラフォン2)
W.オルブライト - ソナタ
B.ブリテン - オヴィディウスによる6つの変容
M.ブルッフ - コル・ニドライ
E.シュルホフ - ホット・ソナタ
チケット・お問い合わせ:
harukainoue.contact@gmail.com



そして伊藤あさぎさん。大阪出身のサクソフォン奏者。東京芸術大学にて学士号・修士号を取得し、2009年から渡仏。パリ国立高等音楽院の第2課程にてクロード・ドゥラングル氏に師事。昨年完全帰国されて以降各所でご活躍である。

今回、初のリサイタルということでプログラム・共演者など気合入りまくり!という趣。ピアノは名手佐野隆哉氏、エレクトロニクスはいまや引っ張りダコの有馬純寿氏である。坂田直樹氏の「Missing link(サクソフォンとエレクトロニクスのための作品)」は、あさぎさん曰く「とても面白い作品」に仕上がったとのこと。あの透明感のある音色・音楽性で語られるデクリュックの演奏も、楽しみにしているところ。

【伊藤あさぎ サクソフォンリサイタル】
出演:伊藤あさぎ(sax)、佐野隆哉(pf)、有馬純寿(electro)
日時:2013年3月17日(日)開場13:30 開演14:00
会場:東京オペラシティ・リサイタルホール
入場料:前売り3000円、当日3500円 全席自由
プログラム:
C.サン=サーンス - 序奏とロンド・カプリツィオーソ
M.ラヴェル/D.ワルター - ソナチネ
坂田直樹 - Missing link(移植作品・世界初演)
F.シュミット - 伝説
P.ルルー - SPP
F.デクリュック - ソナタ

ジェローム・ララン リサイタル(2013年)

【Jérôme Laran Saxophone Recital】
出演:ジェローム・ララン(sax)、長尾洋史(pf)、大城正司、林田祐和、波多江史朗、原博巳、鶴飼奈民、野村亮太、坂口大介、浅利真(以上sax)
日時:2013年3月13日 19:00開演
会場:サントリーホール・ブルーローズ(小ホール)
プログラム:
R.シューマン - 3つのロマンス
A.デザンクロ - PCF
M.ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
八木澤教司 - サクソフォーン小協奏曲
G.ガーシュウィン/M.シャポシュニコワ - 3つの前奏曲
B.コッククロフト - Rock Me!
A.ピアソラ/浅利真 - タンゴ・バレエ
アンコール2曲(曲名わからず)

シューマンこそ、借り物を装っているような…あれ、本調子じゃないのかなという印象をうけたのだが、二曲目以降は圧巻だった。

デザンクロは、圧倒的な技巧で一気に聴かせていた。「最初の"シ"のアタック?普通に吹くだけでしょ」というような、サクソフォンが円錐管であることを忘れてしまうほどのコントロール能力の高さ。時には驚くほどに楽器を鳴らすなど、熱い音楽性も感じさせる。長尾氏の、細かい所は弾き飛ばしつつも、要所要所でスナップショットのように天才的な閃きが炸裂するピアノは、ジェローム氏の演奏スタイルにピッタリだった。

アルトサクソフォンで演奏された「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、ふくよかな音色にセンスのあるヴィブラートを使い分ける。いままでジェローム氏のこういったスタイルの演奏を聴いたことがなかったので、懐の深さに改めて驚いた次第。

ヴィラ=ロボス「ファンタジア」は、最近話題のオリジナルバージョンのキーでの演奏だ。日本では、たしかドゥラングル教授に続き二人目の演奏だろうか。一般的な、Bbから始まる演奏が、陽気な中にも微妙な陰鬱を感じさせるキーであるのに対して、Cから始まる演奏はまるでトムとジェリーのような…ソプラノの可愛らしい面・キラキラした面をより引き出した内容で、興味深く聴いた。果たしてこれが今後のスタンダードとなるかどうかは分からないが、「新たな」解釈としてより広く演奏されるようになってほしいものだ。

八木澤氏のコンチェルティーノは、コラールのようなバラードのようなバッハのような、意外と軽めの作品。前半がアルトサクソフォン、後半がソプラノサクソフォンで演奏される。重要な要素として、前半後半それぞれに無伴奏の即興カデンツァが含まれており、曲はその2つのカデンツァを中心に成立している(ように聴こえた)。即興のスペシャリストでもあるジェローム氏のカデンツァが、面白くないはずがない。時には遊び心も交えた長大なソロに、聴衆一同唖然となったのであった。

さらにシャポシュニコワ編のガーシュウィンは、余裕綽々の演奏。第一楽章があんなに激アツなのに、第三楽章が意外とアッサリたったのはなぜだろう(笑)。ジェローム氏ほどの演奏家になってしまうとそんなところにすら何か仕掛けているのかなと思えてしまう。そしてやはり、「Rock Me」は超盛り上がったなあ!曲も演奏も素晴らしいのは言うまでもなく、終わった瞬間の客席のザワザワ感が面白かった。

ピアソラ「タンゴ・バレエ」は浅利氏のアレンジだった。どうやって集めたんですか、というような強力なバックの布陣とともに(いつだったか第一生命ホールでのフルモー氏のリサイタルを思い出した)、超絶技巧を披露するジェローム氏。熱い音楽の奔流を楽しんだ。

アンコールに、再び八重奏とともに一曲。ピアノと一曲。

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ジェローム氏の、実質的な日本デビューとなった2006年のゆめりあホールでのリサイタルのことをふと思い出したので書いておきたい。あの時はジェローム氏の名前を知っている人はほとんどいなくて、客席もせいぜい50人埋まったか埋まらなかったかといったところだったと記憶する。ブログ記事が残っていた。

ほとんどがサクソフォンとエレクトロニクスのための作品。カルチャーショックとも言えるような、鮮烈な演奏が続いた。日本の若手作曲家の助けを得ながら、ジョドロフスキ「Mixtion」の日本初演やJacobTV「Grab It!」の関東初演をこなし、新作「俺は作曲家だ!」「アンチエンヌ(原博巳さんとの二重奏だった)」を披露し、さらに名曲「イマージュの錯綜」や、湯浅譲二「私でなく、風が…」を作曲家隣席のもと吹き…という、今となっては伝説のリサイタルである。

その時のことを思い出しながら、今日サントリーホールのブルーローズいっぱいの(8〜9割)お客さんを目の前にしながら幸せそうに吹くジェローム氏の姿を見て、感慨深いの一言ではすまないほどのものを感じたのだった。

"第4回サクソフォン交流会 in 名古屋"参加団体募集要項公開

サクソフォン交流会のウェブページ(こちら)にて、7/13実施の「第4回サクソフォン交流会 in 名古屋」の参加団体募集要項を公開した。募集開始が今週末3月17日(日)22時~ということで、かなり期日的に迫っているのだが、ご興味ある方はぜひ参加を検討いただければ幸い。

Facebookページはこちら

2013/03/12

"第4回サクソフォン交流会 in 名古屋"打ち合わせ

「第4回サクソフォン交流会 in 名古屋」の打ち合わせを実施。懸案だった企画ステージやタイムテーブルなど、なんとか光が見えてきて良かった。それぞれの参加メンバーはまさに百戦錬磨の猛者ばかりであるため、アイディアや裏付けなど助けられる部分が多く、とてもありがたい。

近日中にウェブページに参加団体募集要項をアップロード、参加団体の募集を開始する予定。このブログでもお知らせするつもり。

ウェブページはこちら
Facebookページはこちら

2013/03/10

ご案内:Green Ray Saxophone Quartet 2nd Cocnert

猪俣明日美さんほか、国立音楽大学サクソフォン専攻の現役生・卒業生によって結成されたGreen Ray Saxophone Quartet。昨年、新大久保DACでのファーストリサイタルを成功させ、その後いくつかの演奏機会を経て2度目のリサイタルをこのたび開催するとのこと。昨年も聴いたが、"若々しい感性"という部分に留まらない、プロフェッショナルとして先を見据えた演奏をする団体だと思う。レパートリー発掘にも精力的で、デュボワの秘曲「ランプリュヴ」には演奏ともども感銘を受けたのだった

今回は、グラズノフ、ガーシュウィンといった大曲にも取り組んでいるようだ。とても嬉しいのは「トリップ・トゥ・スカイ」である。個人的に、日本国内で少しずつ広めていきたいと考えているとても素敵な曲・アレンジなので、GRSQの皆様が気に入って取り上げてくれるのは嬉しい。仕事の都合次第だが、伺えれば良いな。

【Green Ray Saxophone Quartet 2nd Concert】
出演:猪俣明日美(ssax)、内田しおり(asax)、川﨑有記(tsax)、池原亜紀(bsax)
日時:3月12日(火) 開場18:30 開演19:00
会場:ゆめりあホール(西武池袋線 大泉学園駅 北口 徒歩1分)
料金:前売¥1500 当日¥2000
プログラム:
J.B.サンジュレ - 四重奏曲第一番
A.K.グラズノフ - 四重奏曲作品109
J.ウィラン/B.メニュ - トリップ・トゥ・スカイ
G.ガーシュイン - ラプソディー イン ブルー
問い合わせ:
green.ray.sax.iuki@gmail.com

千葉大学サクソフォンプロジェクト"関東サクソフォンアカデミー"に参加

千葉大学サクソフォンプロジェクト主催の"関東サクソフォンアカデミー"に参加。楽しい一日だった!

【関東サクソフォンアカデミー】
出演:大石将紀(講師・指揮)、グ・ワーヒル四重奏団、茨城大学、JION Saxophone Quartet、たけのこカルテット
日時:2013年3月9日(土曜)13:00開演
会場:千葉市美浜文化ホール・メインホール
プログラム:
・アンサンブル発表ステージ
 A.グラズノフ - 四重奏曲より第1楽章(グ・ワーヒルQ)
 横内章次 - バラード・フォー・トルヴェール(茨城大)
 秋透 - 3つの富山県民謡(JION SQ)
・公開レッスン:
 A.デザンクロ - 四重奏曲より第1.3楽章(たけのこQ)
・ワークショップ「初めての即興演奏」
・全員合奏ラージアンサンブル:
 J.シュトラウス - ラデツキー行進曲

11時に集合し、各種連絡のあと、大石さん指導のもとラージアンサンブルの練習。第1回サクソフォン交流会でも演奏した「ラデツキー行進曲」で、この手書きの譜面がなんだか懐かしかった。アンサンブル発表ステージには3団体が出演。どの団体も素晴らしい演奏だった。グ・ワーヒルは結成後わずか2ヶ月とのことだが高難易度のグラズノフを見事にさばいていたし、茨城大学は隅々まで丁寧なリハーサルのあとが見られ、また音色も美しく、曲にふさわしいドライブ感があって聴き入ってしまった。JION SQは初めて聴いたが、圧倒的。技術・音楽性とも日本のアマチュア・サクソフォンアンサンブルの歴史を作ってきたという名にふさわしい。各聴かせどころなど、ものすごく勉強になった…。サクソフォーン・アンサンブルの会、のみならず、JION SQでもフル・リサイタルを聴いてみたいな。

公開レッスンは、tfmくん率いるたけのこカルテット。一時間ほどにわたって、大石さんが第1楽章を重点的にレッスン。レッスン前の披露演奏もとても上手かったのだが(ここから彼らの第1楽章の演奏を聴ける)大石さんの指摘を受けて、みるみるグレードアップしていくのが印象的だった。指導内容はかなり細かい部分にまで及び、すべてメモをとったのだが、そのうち特にいくつか印象的だった内容を書いておく。
・サクソフォンのp, ppの音色を良く研究すること。f, ffよりも、こちらにより多くの音色のバリエーションを見つけることができる。
・フレーズを吹いている最中に息の抜き差しをするとよく歌っているつもりが逆に埋もれてしまう場合がある。
・曲の持つイメージを共有すること。さらに、激しいところでのイメージ、ゆっくりなところでのイメージ…と、さらに細かく分割していくこと。

そして、ワークショップ「初めての即興演奏」。tfm氏はもちろん、Thunderさん、梅沢さん、横井くん、たけのこカルテットのメンバーなどが参加。フリーの即興ということで、ワークショップとして何が飛び出すかと思っていたのだが、これが実に面白かった!!大石さん自身が言っていたように、まるで楽器を使った「ゲーム」だ。ひとつひとつの「ゲーム」をこなすうちに、徐々に耳が開き(という表現も面白かったなあ)、アイディアが湧き出てくる。例えばある音に関する特徴をディスカッションしたり、ある人が出すある音の真似をしてみたり、その音とは"反対の"音を出したり、と言った具合。最初に受講生8人で初めてやった即興演奏と、様々なゲームを経たあとに、最後にやった即興演奏は面白さで言えば格段に上がったと思う。最後の即興演奏の録音は、ここに上がっているのでぜひ聴いてみてください(笑)。1時間だけだったのが惜しまれる。この即興のワークショップだけ取り出して、さらに続きを受講したいくらいだ!

最後はラデツキー行進曲で〆。アンサンブルで慣れている方ばかりなので、ものすごく安定していることは言うまでもない(笑)。

演奏会後はまだ明るいうちから打ち上げ飲み会。様々な方とお話できて、とても楽しかったなあ。そういえば大石さんと飲み会をご一緒するのも初めてだった。結局2次会までなだれこみ、4時間以上にわたって楽しい時間を過ごすことができた。

2013/03/09

第32回サクソフォーン・フェスティバル(その2)

♪アドルフ・サックス工房からの枝分かれ:雲井雅人、宮崎真一
1. アドルフ・サックス製(1869年)
J.P.マルティーニ - 愛の喜び
G.ビゼー - アルルの女より前奏曲、間奏曲
2. ビュッフェ・クランポン社製(1875年頃)
G.ビゼー - アルルの女より間奏曲
3. エドゥアルド・サックス製(1915年頃)
M.ムソルグスキー - 展覧会の絵より古城
モンシー - ゴルコンデの王妃(?)
4. セルマー社製Model26(1926年)
C.サン=サーンス - 白鳥
C.サン=サーンス - 白鳥(ブッシャーのマウスピース使用)
5. コーン社製6M "Naked Lady"(1945年)
G.F.ヘンデル - オンブラ・マイ・フ
ドリー - セレナード(?)
再び、3. エドゥアルド・サックス製
F.フォレ - 牧人たち
F.コンベル - マールボロの主題による変奏曲

5つのサクソフォンを時代順に演奏しながら、合間に雲井氏と宮崎氏のトークが挟まれる。お二人の漫才のようなやり取りが面白く(悠々自適?といった雰囲気の雲井氏と、きっちり解説を挟み込んでくる宮崎氏、といった具合)、そのトークも面白かった。アドルフ・サックス工房制作の楽器(宮崎氏コレクション)による演奏は、現代のサクソフォンを知る向きからすれば想像すらできない、まるで金属製のおもちゃのような軽い音…しかし、まぎれもなくこの音こそがサクソフォンの原点なのであり、より肉声に近いという感覚も得ることができた。セルマーサクソフォンは、すでに現代のエッジの効いた大音量サウンドの片鱗を見せており、アンサンブルや吹奏楽の中に混ざっていても気づかないかもしれない。この日一番の衝撃は、"Naked Lady"と呼ばれるアメリカのサクソフォンである。音程や操作性に改良が加えられながら、原点とも言えるアドルフ・サックス工房の雰囲気を多分に残していることに驚いた。いつかGarage Sのブースで吹いたブッシャーのサクソフォン+ラッシャーのマウスピース、の組み合わせを思い出した。最後の「マールボロの主題による変奏曲」は、雲井氏がエドゥアルド・サックスを携えたときの十八番であるが、何度聴いてもまた新しい感動を得ることができる。大喝采!

♪フェスティバルコンサート:伊藤あさぎ
A.マルチェロ - 協奏曲
帰国後も活躍の伊藤あさぎさん、こういった機会で聴くことができたのは嬉しい。驚異的なほど響く美しいソプラノサクソフォンの音が印象的だ。音数の少ない作品で、ただ演奏するだけでは平凡になってしまうが、アタックやアクセントの取り扱いはバロック音楽の作法そのものだった。バックの弦楽四重奏は意外とフラットに音を扱っていたため、サクソフォンのほうがよほど古楽器らしくらしく聴こえた。ちなみに、ダグラス・オコナー氏も大絶賛。"So grace!!(優雅な・優美な)"と言っていた。3/17のリサイタルが楽しみだなあ!

♪フェスティバルコンサート:ジェローム・ララン
L.スタイン -
もう日本ではすっかりおなじみとなったジェローム。2006年の来日のときからすると、隔世の感がある。もしかして、フェスティバルコンサートでの外国人奏者が抜擢は初めてだろうか(間違っていたらごめんなさい)。
ジェロームの演奏は、技術的な安定性はもちろんのこと、時折熱さを交えてくるところに魅力があると思う。うねるような高速フレーズを駆け抜ける様子など、実にカッコよいことだ。演奏はとても良かったのだが、作品としては、演奏機会がなくなってしまった理由がわかるというか…それほど良い作品ではないように感じた。

♪フェスティバルコンサート:井上麻子
石毛里佳 - フラジャイル
井上麻子さんは、最近ちょくちょく関東で聴く機会が増えてきて嬉しい。井上さんの骨太な演奏がわりと好みで、いつかフルリサイタル(デニゾフやロベールなどの、ネオ・クラシカル作品がすごい演奏になりそう)を聴いてみたいなと思っている。不思議な温度を持つ作品で、サクソフォンも弦楽四重奏も熱演。ときどきゾクッとするような響きがあった。初演は田村真寛氏が行ったそうだ。

♪フェスティバルコンサート:上野耕平
G.ガーシュウィン - "ポーギーとベス"メドレー
このガーシュウィンのアレンジは、フレデリック・ヘムケ氏がCDに吹き込んでいるものと同じなのだそうだ。ガーシュウィンのメドレーと聞いてかなりテクニカルな譜面を想像していたのだが、意外にも音数はずっと少なく、ガーシュウィンのメロディメーカーとしての側面を見せつけるようなアレンジ。中間部に一瞬だけ走句が出てくるが、あとはほとんどゆったり。上野耕平氏、なんだか舞台に出てくるときから貫禄がありすぎだ(笑)。上記のようなアレンジのためか、特に全編にわたって、上野氏の「うた」の扱い方を聴けたのは、とても嬉しかった。音やヴィブラート、フレージングが丸裸になるが、隅から隅までセンスよく完成されており、恐れ入る。

♪フェスティバルコンサート:林田和之
L.E.ラーション - サクソフォン協奏曲
成本理香氏によるこの弦楽四重奏とピアノのためのアレンジは、雲井雅人氏のリサイタルのために書かれたもの。まさか再び聴くことができるとは思わなかった。曲についてはいまさら説明するまでもないだろう。新古典主義ともいうべき作風(まるでモーツァルトみたい)に、ヒロイックなサクソフォンの独奏フレーズを乗せた名曲だ。林田氏のサクソフォン・ソロを初めて聴いたのは、やはりフェスティバルでの石井眞木「オルタネーションI」の演奏だった。その時の名演をう再び思い出すような、やはり素晴らしい演奏で、終始興奮しっぱなしだった。その音色は、直前までの4人と比較して、より小ホールで聴いたアドルフ・サックスの音色からの強いリンクを感じた。

♪フェスティバルオーケストラ:池上政人指揮フェスティバルオーケストラ
A.ドヴォルザーク - 交響曲第9番より第4楽章
毎年恒例のフェスオケ。細かいアンサンブルなどなんのその、その場の何もかもをかなぐり捨ててフィナーレに向けて突っ走る様は、とても楽しい。なんて言ったって「祝祭」オーケストラですからねえ。この曲は超個人的に思い出の曲であるので、なんだか感慨深いものもあるのだった。コントラバスサクソフォンは、実行委員長の原博巳氏だった。

♪SAX大合奏
伊藤康英 - サクソフォンのためのファンファーレ(アルルの女)
L.v.ベートーヴェン - 歓喜の歌
J.P.スーザ - 星条旗よ永遠なれ
演奏はしなかったのだが、客席後ろのほうでフェスを反芻しつつ聴いていた。巨大なパイプオルガンの機械の中にいるような、不思議な体験ができるのだ。スーザのピッコロアンサンブル、ならぬソプラニーノアンサンブルにはシビレた(笑)。

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以上。非常に充実した一日を過ごすことができ、大満足。実行委員長をはじめとするスタッフの皆様には感謝申し上げたい。

2013/03/08

2013年協会誌編集委員会キックオフ

フェスの感想は、そろそろフェスティバルコンサートが書き終わるあたり。最後まで書いたらアップする予定。

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おなじみ、渋谷の串八珍にて、日本サクソフォーン協会機関誌"サクソフォニスト"の、Vol.24反省会兼Vol.25ネタ出し会。一週間に3回、串八珍に来るというのもなかなかレアかもしれない。

服部先生を筆頭に、中村先生、栃尾先生、上田先生、冨岡祐子さん、貝沼さん、大川千都さん、佐藤淳一さん、野村さんが集結し、次回に向けての摺り合わせを実施した。次回も面白くなりそうだ。個人的に、木下直人さんとそのコレクションに関する記事をぜひ準備したいと思っている(服部先生が切望している)。なんと4時間にわたっていろいろとお話できて楽しかった。特に佐藤さんとは、近々のマニアックな話や中長期的展望まで話せたのだった。

最後に佐藤淳一さん&野村亮太さんとともに横井氏オススメの春日亭の油そばで〆。美味しかった(そろろそふとるかも…)。

2013/03/07

ご案内:関東サクソフォンアカデミー

おなじみtfm氏が主催する千葉大学サクソフォンプロジェクトの第2弾となる"関東サクソフォンアカデミー"が今週末に迫っている。ちなみに私は「はじめての即興演奏」「全員合奏ラージアンサンブル」に参加予定。けっこうギリギリまで参加者は募集しているようなので、ご興味ある方はこちらのページからコンタクトを。

こういう企画、いいなあと思う。本当に受けたい・本当に嬉しいワークショップやレッスンが開催されることはまれで、自分で企画しなければ実現しないものだ。私にはそのパワーも人脈も何もないのだが、そういった企画を実現してしまうtfm氏の行動力には、いつものことながら非常に驚かされる。

サックス吹きの方は観覧のみならず、ぜひラージやワークショップにも参加してみてください。

【関東サクソフォンアカデミー】
主催:千葉大学 Saxophone Project
日程:2013年3月9日(土) 13:00開演(参加者集合時間 11:00)
会場:千葉市美浜文化ホール・メインホール(千葉県千葉市美浜区真砂5-15-2)
アドバイザー・講師:大石将紀
入場料:無料
内容:各アンサンブル団体による発表
   大石将紀氏によるアンサンブル公開レッスン
   大石将紀氏によるワークショップ「はじめての即興演奏」
   全員合奏ラージアンサンブル 曲目:ラデツキー行進曲

関東のサクソフォン団体を千葉に集め、共にサクソフォンについて学ぶと共に交流を深めようという会です。講師としてソロ・アンサンブルと大活躍中の大石将紀先生をお招きし、様々なご指導をしていただきます。

2013/03/04

再掲:明日のダグラス・オコナー氏リサイタル!

フェスのレポートの続きは後日にまわす。現在来日中のサクソフォン奏者、ダグラス・オコナー氏のリサイタルが明日に迫っているので、再度ご紹介。

クラシック・サクソフォンの世界では、第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールで第2位を得た奏者として有名だ。その際の本選でのトマジの演奏は、非常にダイナミックなもので、当時とても感銘を受けたものだ。


こちらはクリスチャン・ロバ「ジャングル」の演奏。YouTubeのサイトにコメントでも残っているが、ロバ氏はこの動画を観て「ワークソング」をオコナー氏に献呈しようと考えたようだ。


「ワークソング」の演奏動画。昨日もフェスの会場で多くの方が堪能したと思われる同曲は、ポップスの影響下にあることが明確だが、オコナー氏はジャズを学んだ経験もあるとのことで、だからこそのあの大局的なビートを感じる演奏ができるのかなあ、などとも思った。


現在は、Naval Academy Band…いわゆる「アメリカ海軍バンド」の2大巨頭をNavy Bandとともに成す吹奏楽団のアルトサクソフォン奏者。ロンデックス国際に入賞しているのに、なぜ去年の世界サクソフォンコングレスに来なかったのかと尋ねたら、入隊直後のブートキャンプ中だったとのこと。ブートキャンプの最中は「腕立て伏せ(pushing up)ばっかりしていたよ」と笑っていた。

ということで、明日の演奏会情報。強くおすすめする次第。特に、フェスティバルで「ワークソング」を聴きそびれた方、来なければ損ですよ!バッハからコンテンポラリーまで、なかなか凄い演奏会になりそうだ。

【ダグラス・オコナー コンサート】
出演:ダグラス・オコナー(sax)、黒岩コウキ(pf)
日時:2013年3月5日(月曜)18:30開場19:00開演
会場:アクタス渋谷6Fアンナホール
料金:一般2500円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
R.ムチンスキー - ソナタ
J.S.バッハ - バイオリンパルティータ2番よりシャコンヌ
W.オルブライト - ソナタ
C.ロバ - ワークソング
C.カスター - ジェリーフィッシュ(クラゲ)
S.ラフマニノフ - "チェロソナタ"よりアンダンテ
B.セコーン - グラディエント→ここから試聴できます
チケット:
yo_14th@yahoo.co.jp(松下)

同時にマスタークラスも予定されているとのこと。受講希望の方は、同じく松下さん(yo_14th@yahoo.co.jp)まで連絡を。

アメリカ・メリーランド州出身。イーストマン音楽学校を卒業後、メリーランド大学にてサクソフォンクラスの修士・博士号を取得。オークレアのウィスコンシン大学にてサクソフォンのアシスタント・ディレクターを務めたのち、海軍バンドに入隊。これまでにサクソフォンをデール・アンダーウッド、ティモシー・ロバーツ、チェン・クワン・リン、レイモン・リッカーに師事した。2008年第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォンコンクール第2位入賞。第15回世界サクソフォンコングレス(タイ・バンコク)にて、クリスチャン・ロバの15番目のエチュード「Worksong」を初演した。また、タイ・フィルハーモニー管弦楽団とともにBaljinder Sekhonのサクソフォーン協奏曲の世界初演を行った。これまでにソリストとして、ナショナル管弦楽団、シンフォニー・イン・C、ムジカ·ノヴァ、イーストマンジャズアンサンブル、等と共演。Red Line Saxophone Quartetのソプラノサクソフォン奏者。

第32回サクソフォーン・フェスティバル(その1)

僭越ながらフェスの感想を。

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♪A会員によるプレミアムコンサート:久慈明広
J.C.ウォーレイ - ソナタ
ケネス・チェもレコーディングしているウォーレイの「ソナタ」。あまり日本では演奏される曲ではなく、ライヴで聴く機会が巡ってくるとは思わなかった。自衛隊音楽隊のサクソフォン奏者である久慈氏の演奏は、大局的な部分からスナップショット的な部分まで隅々まで良くコントロールされており、まるでCDでも聴いているかのようだった。もし機会があれば、クレストンとか聴いてみたいかも。

♪A会員によるプレミアムコンサート:白井奈緒美
酒井健治 - イニシャルS1、イニシャルS2
白井奈緒美さんの演奏による「イニシャルS1」「イニシャルS2」。「イニシャルS1(=イニシャルS)」は、以前みなとみらいで大石さんの演奏を聴いたことがあったのだが、その時との演奏スタイルの違いを楽しんだ。もちろん、技術的・音楽的に完成されていることは、言うまでもない。「イニシャルS2」は、ソプラノ(声楽)とサクソフォンで演奏される。大変な難曲だが、2人の息のあったすばらしい演奏に舌を巻いた。「舵手の書」と違って、執拗にサクソフォンと声楽を近傍で絡めていこうとするような、作曲家の強烈な意志を感じる。

♪A会員によるプレミアムコンサート:デュオ宗貞
D.ショスタコーヴィチ - トリオ第一番
ショスタコーヴィチのトリオではやはり宗貞先生のテナーの演奏に感銘を受けた。このテナーの音色が醸す不思議な空気感は、宗貞先生以外の演奏では聴いたことがない。最近の流行である羽のような軽さとも違い、純国産とでも形容できるようなものとも違う、その中間から上方に向かっているような…上手く表現できないが。ピアニストのダイナミックな表現は、2本のサクソフォンと実に良くマッチしていたと思う。

♪A会員によるプレミアムコンサート:ダグラス・オコナー
J.S.バッハ - 無伴奏パルティータ第2番よりシャコンヌ
C.ロバ - ワークソング
来日して次の日に無伴奏2曲とは、、、いずれも暗譜での演奏。バッハは、おそらくオリジナルのアレンジなのだろうが、重音部分はほぼすべて単音楽器にアダプテーションされたようなもの。循環呼吸や相当高音部のフラジオレットも使いながら、14分に及ぶ大曲を吹ききった。さすがに高音の連結部など若干無理がある部分もあったが、次の十八番「ワークソング」では本領発揮…どころか、とんでもない演奏だった!超々高速で音をばらまきながら、非常に鮮烈な印象を聴衆に与えていた。ミーハ・ロギーナ氏や、ヴァンサン・ダヴィッド氏が来日したときのような、強い電撃を日本のサクソフォン界に与えた(聴けなかった方はぜひ今週火曜日にアクタスへ!)。

♪カルテット名曲館:はやぶさ四重奏団
R.プラネル - バーレスク
P.ヴェローヌ - 半音階的ワルツ
R.クレリス - 序奏とスケルツォ
P.ランティエ - アンダンテとスケルツェット
平部やよい - Dice
滝上先生が、若手のサクソフォン奏者3人と組んだカルテット。昨年ルーテル市ヶ谷にて結成記念のリサイタルを開いたが、そのときは伺うことができずに悔しい思いをしたものだった。テナーの岩渕みずき氏は現在ドイツ留学中であるが、春休みのタイミングで帰国しているため、はやぶさ四重奏団の、フェスでの演奏が実現したとのこと。
「バーレスク」を聴いて、音色の方向性のおもしろさを知ることとなった。ポリフォニックな部分や強奏部分では、それぞれの奏者の個性が良くわかり(楽器の違いによるところもあるだろう。ソプラノはシルバー管体かな?、アルトはクランポンの赤ベル、ほか)、逆に弱奏部分ではよく揃った音の重なりとなる。曲が進むにつれ、その方向性が何なのか、ということが少しずつわかってくるような気がした。
ヴェローヌやランティエでは、まるでミュールの四重奏団のようなヴィブラートも使いこなし、なんだかタイムスリップしたような不思議なサウンドを体感した。平部やよい「Dice」は、シリアスな響きの相当な高難易度の作品であるものの、名曲だと思った。演奏は、ブラヴォー、だった。もし楽譜が入手できるものなら、自分たちでもぜひ演奏してみたい。

♪ディスカヴァリーコンサート:太田徹(チェロ)
V.ダンディ - コラール・ヴァリエ
例えば最初のさりげないいくつかの音、そのアタックやフレージングなど、弦楽器としての優位性を様々に感じたのだった。ピアノは羽石道代氏。まさに熱演であった。サクソフォン吹きとして聴くのは非常に面白いものだが、チェロ奏者として取り上げることの面白みはあるのかな?ということが気になった。演奏者に伺ってみたいな。

♪ディスカヴァリーコンサート:須藤三千代(ヴィオラ)
F.デクリュック - ソナタ
アルトサクソフォンと比べて音域が(下に)広いためか、サクソフォン譜と音形が変わっていたのが面白かった。決め所での響きや空気感などは弦楽器独特の凄みがある。急速部分では、音程のバラつきが散見され、曲を楽しむ、というところまでいかなかったのは残念。弦楽器で演奏すると難しいのかなあ。

♪ディスカヴァリーコンサート:古山真里江(コールアングレ)
C.ドビュッシー - ラプソディ
曲が持つ東方趣味が、より強調された印象(唐草文様のフレーズなど実にしっくりくるのだ)。古山さんの演奏も素晴らしく、充実した聴後感を得ることができた。サクソフォンで、例えば今日聴いたような素朴な感じと、サクソフォンの巡航速度であるキラキラした感じを自在に行き来することができたとすれば…というか、サクソフォンはそういうことが可能な楽器だと思うのだが…さらにこの曲の魅力が表出するかもしれない。

♪プロムナードコンサート:芸大メンズカルテット=松下洋、丸場慶人、田中拓也、塩塚純
妙に濃い。2曲だけ聴くことができたが、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」のアドリブのコピー・ユニゾンから始まるジャズっぽいメドレーが面白かった。タイトル失念。スーパー・インプロヴィゼイション祭、であった(笑)。

♪第15回Jr.サクソフォン・コンクール最高位入賞者披露演奏:住谷美帆
H.トマジ - 協奏曲
高校2年生でトマジ全曲とは…プログラムだけ見ても恐れ入るが、演奏も堂々たるもの。何も恐れずに大きなホールを大音量で鳴らしていこうとする意思か、それとも勢いか…が感じられる。テクニカルな面や奏法、音色でもかなり完成されているばかりか、魅せ方も上手い。急速部分で若干音の粒が見えなくなることがあったが、全体の印象からすればあまり気にならなかった。引き続き研鑽を積まれることと思うが、今の良い部分を残しながら僅かな弱点を1つずつ潰して行きさえすれば、さらに凄い奏者になるかもしれないな、と思った。

2013/03/03

Saxofono Rosso 第9回演奏会

昨日は、松下洋くんから依頼を受けてダグラス・オコナーを迎えに成田空港へ。ダグラスと会うのは実は初めてで、2nd JML Competitionの直後にこのページを制作するために何度かメールをやり取りしたとか、Red LineSQのCDを買ったとか、その程度しかコネクションがなかったのだが…まさか日本で会うことができるとは思っていなかった。

アメリカの若き俊英(現在29才とのこと)。JML 2ndで2位、NASAのソロコンペで1位ほか、数々のコンクールに入賞しまくっている。イーストマン音楽学校卒業後、ウィスコンシンの大学にサクソフォンの講師として勤務したのち、現在はNaval Academy BandNavy Bandと双璧をなす、アメリカ海軍バンドの2大巨頭のひとつ)のアルト・サクソフォン奏者として活動中。クリスチャン・ロバの15番目のエチュード「Worksong」を献呈されたことでも有名(火曜日にはソロリサイタルも予定されているので、ぜひ!)。

…と、まあその経歴をよく知っていたのでなんとなく緊張して出迎えたのだが、とてもフレンドリー&フランクな方だった!心配していた時差による辛さもそれほどないとのこと(海軍のブートキャンプよりはマシだよHAHAHA、という具合)。松下洋くんとの待ち合わせ予定時刻の21時までは時間があったので、Rossoの演奏会があるよと紹介して一緒に伺うこととなった。成田空港から青砥までの道中は、いろいろと話がはずんだ(時折、英語のスキルの問題でうまく伝えられなかったのは残念だが)。楽しかったなー。

前置きが長くなったが。

【Saxofono Rosso 第9回演奏会 ~遠藤朱実先生を囲んで~】
出演:Saxofono Rosso、遠藤朱美(sax)、須川展也(客演sax)、西尾貴浩(指揮)
日時:2013年3月2日(土)18:00開演
会場:かつしかシンフォニーヒルズ・アイリスホール
プログラム:
本多俊之 - 陽だまり
A.ロイド=ウェバー - オペラ座の怪人
長生淳 - パガニーニ・ロスト
F.デクリュック - ソナタ
A.ピアソラ - ブエノスアイレスの春・冬
長生淳 - 八重奏曲
P.クレストン - サクソフォン協奏曲(独奏:須川展也)
P.I.チャイコフスキー - バレエ音楽"白鳥の湖"より

1stステージは小編成アンサンブル。ピアノとカルテット編成で2曲演奏されたが、「オペラ座の怪人」ではピアノに溶け込むような音色が印象的であった。梅沢さん旋律の歌い方うまいなー。名アレンジとの呼び声高き「ブエノスアイレスの春・冬」も熱演。エネルギッシュな部分と大人の音楽な部分を見事に吹き分ける手腕は、凄い。私も、昨年吹いたばかり&今年も5月に吹く予定があるけれど、参考になる表現が目白押しだった。サックス2本とピアノの「パガニーニ・ロスト」は、これは野村亮太さんと大山権之助さんと松浦真沙さんという鉄壁の布陣の演奏で、隙がない清潔感あふれる演奏に驚く。これだけ完璧に吹きこなすのだから、さらにアグレッシヴな表現も聴いてみたいところだ!長生淳「八重奏曲」は第1楽章のみだったが、祝祭的な雰囲気を演出して最終部に向けて疾走する様子は、聴いていてとても興奮する。技術的にもすばらしく、模範たりえる演奏だ。ダグラスも、特にピアソラや長生淳に相当な感銘を受けたようだ。

休憩を挟んで、須川展也氏を独奏に迎えてのクレストン「協奏曲」。独奏、バンドとも熱演!まず須川氏だが、技術的にも音楽的にも感性されているのは当然として、それ以上に感銘を受けたのは、"演奏者"や"音楽家"と呼ぶのは躊躇される、"アクター"とでも言うべき立ち振る舞いだ。サクソフォン奏者は舞台上でどうあるべきか、どう魅せるべきかという、その極地を体現していたと思う。サクソフォンオーケストラも、テクニカルな譜面を高精度で処理しており、さらに西尾さんの指揮にも引っ張られて実にダイナミックな仕上がり。最高のソロと最高のバックだった。ダグラスの興奮具合も相当なもので、連れて行って良かったなと思った。

松下洋くんとの待ち合わせ時刻が迫っていたので、残念ながら第3部は聴くことができなかったのだが、これもまた素晴らしい演奏だったと伝え聞いた。

都営→半蔵門線と乗り継いで、おなじみ、渋谷の串八珍へ。ビール2杯、焼酎1杯、日本酒1杯と、本当に今日到着したとは思えないタフさ。お箸も器用に使いこなして、日本食を楽しむ(ここは料理もなかなかなので、気に入ってもらえて良かった)。松下洋くんを待ちながら食事・海軍バンド・政治・経済まで話が及んだ。

3/3サクソフォーン・フェスティバルの聴きどころ!

音楽大学アンサンブルステージ…実はかなり楽しみ。プログラムは下記。もちろん、あの名作「静寂の森、饒舌な雨」の再演は楽しみだが、実はそれぞれのグループに面白そうな要素があり(一個ずつ説明したいくらいなのだけど)、どれも注目している。

・大阪芸術大学
岩永 知佳:Sax8重奏のためのAmerica「都市の肖像」
・東邦音楽大学(指揮:佐々木雄二)
W.A.モーツァルト(arr.R.シビング):弦楽五重奏K.406
・国立音楽院(指揮:成田徹)
A.グラズノフ(arr.草山ゆかり):四季より「秋」
・東京音楽大学(指揮:小串俊寿)
J.S.バッハ(arr.河原 翌真):トッカータとフーガ ニ短調
・武蔵野音楽大学(指揮:栃尾克樹)
G.ホルスト:セントポール組曲→個人的にツボな曲。
・上野学園大学(指揮:松原孝政)
P.チャイコフスキー(arr.野村秀樹):「弦楽セレナーデ」より第一楽章 
・くらしき作陽大学(指揮:貝沼拓実)
J.スーク(arr.圓田 勇一):「弦楽セレナーデ 変ホ長調 作品6」より
第1楽章 Andante con moto、第4楽章 Allegro giocoso,ma non troppo
・東京藝術大学(指揮:松本宗利音)
中橋 愛生:サクソフォーンオーケストラの為の 静寂の森・饒舌な雨
・尚美ミュージックカレッジ専門学校(指揮:原博巳)
B.スメタナ(arr.岩本伸一):交響詩《わが祖国》よ 第2曲「ヴルタヴァ」
・昭和音楽大学(指揮:栄村正吾)
G.ガーシュウィン(arr.金井 宏光):パリのアメリカ人
長生 淳:セルマーキャンプのテーマ
・国立音楽大学(指揮:滝上典彦)
P.チャイコフスキー(arr.奥野 大樹):バレエ音楽「眠れる森の美女」より イントロダクション・ワルツ
・洗足学園音楽大学(指揮:宗貞啓二)
R.シュトラウス(arr.岩本伸一):ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら

「カルテット名曲館」では、滝上先生率いるはやぶさ四重奏団が演奏。この機会に合わせて岩渕みずきさんも一時帰国しているとのこと。はやぶさ四重奏団の前回リサイタルは聴くことができなかったので、楽しみ。そして、プログラムは何になるのかあ(笑)そういえば岩渕さんは帰国中にいくつもの演奏機会があるとのこと。

伊藤あさぎさんがマルチェロの独奏者に抜擢!?とちょっと驚いたが(本人も驚いたとのこと)非常に清涼感のある音色や音楽性から、なかなか面白いものになるかもしれないと思っている。上野耕平さんは、ヘムケ氏がCDに録音しているガーシュウィン。先日聴いたばかりのヴィードーフの演奏がとても楽しかったので、そのときの演奏の魅力がそのままガーシュウィンに当てはめられたときにどうなるのか、わくわくする。井上麻子さんは、石毛里佳「フラジャイル」を演奏。作品も気になるが、それよりも、最近関西の名手の演奏を東京でも聴く機会が増えつつあることが嬉しい。おなじみ、ジェロームは、レオ・シュタインの往年の名曲を。ずいぶんとマッチしそうだ(笑)。メインとして据えられたのは林田和之氏によるラーション。林田氏の師匠である雲井氏が、かつて弦楽四重奏+ピアノという編成でこの曲を演奏したことを思い出したが、こんどは弦楽四重奏のみ。また、林田氏の独奏を聴くのも久しぶりであるため、とても楽しみだ。

A協会員によるプレミアムコンサートは、まず先日現代音楽演奏のコンクールに入賞した白井奈緒美氏の「イニシャルS1」「イニシャルS2」の演奏が気になっている。「イニシャルS(=S1)」は大石将紀氏の演奏を聴いたことがあるのだが、S2では(声楽の)ソプラノ奏者もゲスト出演するそうで、どのような展開になるのか興味深い。奇しくも、今日伺ったRossoの演奏会で白井さんにお会いし、「S2はもっと凄いよ!」とのコメントをいただいた!聴き逃してはならないだろう!

スペシャルゲストのダグラス・オコナー氏は、無伴奏で十八番の「Worksong」と、そしてなんとバッハの無伴奏パルティータ第2番から「シャコンヌ」を演奏!「Worksong」を献呈先の奏者自身の演奏で聴ける、というのも凄いことだが、もっと驚いたのはバッハ。単音楽器であの名曲「シャコンヌ」をどのように料理するのだろう!アレンジはオコナー氏自身によるものなのだろうか!?…と、気になるポイントが多い。そして、今日聴いた話によれば、両作品とも、なんと暗譜で演奏するとのころ…まじっすか。

最近何かと話題の、バジル・クリッツァー氏によるアレクサンダー・テクニークの特別講座が開催される。私の知り合いの中にも、何人かクリッツァー氏の講習を受けた、という方がいるのだが、その言葉の端から想像するに、なんだか面白そうだ。演奏以外のイベントは貴重で、こういった機会を逃すと次はまたいつか…と成りかねない。

ディスカヴァリー・コンサート…。演奏曲目は、下記。
・F.デクリュック:ソナタ嬰ハ調 ヴィオラ:須藤三千代
・V.ダンディ:コラール・ヴァリエop.55 チェロ:太田徹
・C.ドビュッシー:ラプソディ コール・アングレ:?
サクソフォン吹きとして、これらの作品の別形態を知っておくことは、普段慣れ親しんだ表現以外を吸収できるという意味で重要なことだろう。個人的には、シュミットの「伝説」も聴きたかったかなー、なんて(^^;

雲井雅人プレゼンツ「アドルフ・サックス工房からの枝分かれ」は、2007年のフェスティバルをまざまざと思い出す。非常にシリアス、かつ、ポップでエキサイティングなサクソフォンとエレクトロニクスのための5作品(それはそれでものすごく感動したのだけど)のあとに、ホール中を満たしたアドルフ・サックスの音色も、まさに涙がこぼれんばかりの素晴らしいものであった。あの音色を聴くと、なぜかサクソフォンの歴史が走馬灯のように次々と思い出される(実際生きたわけじゃないのだけど…ふしぎ)。

たぶん、他にもいろいろと聴きどころはあると思うが、夜も遅いのでこのへんで…。