2013/02/28

D.Brutti plays Koechlin

イタリアのサクソフォン奏者、David Brutti氏がケックランの「エチュード」を演奏した動画を見つけた。Brutti氏はBrilliant Classicsにケックランのサクソフォン作品の全集を吹き込んでいるが、その録音との関係性がありそうだ。第1曲~第3曲は、先日の田村哲のリサイタルでも聴いたが、「エチュード」という名を持ちながらひとつのコンサート・ピースとして成立しておりと感じる。少しずつこの曲をリサイタルで取り上げる奏者が増えてくれれば良いなと思っている。

第1曲


第2曲


第3曲

岩永知佳 - America「都市の肖像」

今度フェスティバルで大阪芸術大学が演奏する岩永知佳氏の作品について調べていたところ、試聴ページを発見した。演奏者が妙に豪華で、松原孝政、林田祐和(ソプラノ)、波多江史郎、作田清美(アルト)、松田宏幸、田中麻樹子(テナー)、東涼太、福井健太(バリトン)という布陣。作品もなかなか面白く、特に第1楽章のまさに"都市"を想起させるモダニズムなどは耳にとても残った。

http://www.ontomovillage.jp/ontomo/hole/band/3174/0

フェスティバルで大阪芸術大学がどのようにこの曲を料理してくるのか!?今から楽しみだ。

2013/02/27

ご案内:ダグラス・オコナー氏マスタークラス&コンサート

速報。サクソフォーンフェスティバルに合わせて来日するアメリカの若き名手、ダグラス・オコナー氏が、アクタスにてフル・リサイタルを開くそうだ。プログラムを参照するに、なんとも強烈なことこの上なく、充実したリサイタルとなりそうだ。私も仕事次第ではあるが、なんとか伺いたいところ。

「シャコンヌやるんだΣ(゜□゜)!?えっ、オルブライトも!?ワークソングはもちろんとして、ええっグラディエントってあの超かっこいい曲じゃん!!」というノリ。というわけで、強烈におすすめする次第。

【ダグラス・オコナー コンサート】
出演:ダグラス・オコナー(sax)、黒岩コウキ(pf)
日時:2013年3月5日(月曜)18:30開場19:00開演
会場:アクタス渋谷6Fアンナホール
料金:一般2500円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
R.ムチンスキー - ソナタ
J.S.バッハ - バイオリンパルティータ2番よりシャコンヌ
W.オルブライト - ソナタ
C.ロバ - ワークソング
C.カスター - くらげ
S.ラフマニノフ - チェロソナタよりアンダンテ
B.セコーン - グラディエント
チケット:
yo_14th@yahoo.co.jp(松下)

同時にマスタークラスも予定されているとのこと。受講希望の方は、同じく松下さん(yo_14th@yahoo.co.jp)まで連絡を。

オコナー氏の経歴を載せておく:
アメリカ・メリーランド州出身。イーストマン音楽学校を卒業後、メリーランド大学にてサクソフォンクラスの修士・博士号を取得。オークレアのウィスコンシン大学にてサクソフォンのアシスタント・ディレクターを務めたのち、海軍バンドに入隊。これまでにサクソフォンをデール・アンダーウッド、ティモシー・ロバーツ、チェン・クワン・リン、レイモン・リッカーに師事した。2008年第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォンコンクールにて第2位受賞。第15回世界サクソフォンコングレス(タイ・バンコク)にて、クリスチャン・ロバの15番目のエチュード「Worksong」を初演した。また、タイ・フィルハーモニー管弦楽団とともにBaljinder Sekhonのサクソフォーン協奏曲の世界初演を行った。これまでにソリストとして、ナショナル管弦楽団、シンフォニー・イン・C、ムジカ·ノヴァ、イーストマンジャズアンサンブル、等と共演。Red Line Saxophone Quartetのソプラノサクソフォン奏者。

私にとってオコナー氏といえば、何よりもまず「ワークソング」の強烈な映像が印象的である。一時期は、JML2nd本選のライヴ映像も話題になった(前半後半)。

アリオンSQ x Quatuor Bジョイントコンサート

とても楽しみにしていた、ArionSQとQuatuorBの演奏会!次から次へと素敵な演奏を聴くことができて、とても嬉しかった。

【Arion Saxophone Quartet x Quatuor B Joint Concert】
出演:Arion Saxophone Quartet、Quatuor B
日時:2013年2月26日 19:00開演
会場:台東区ミレニアムホール
プログラム:
W.A.モーツァルト「"フィガロの結婚"序曲」(ASQ&QB)
G.ピエルネ「守護天使の歌」(QB)
高橋宏樹「アルルのサックス展覧会」(QB)
八木澤教司「アリオンの竪琴」(ASQ)
F.ティケリ「アウト・オブ・ザ・ブルー」(ASQ)
M.ラヴェル「ボレロ」(ASQ&QB)
江原大介「インフィニティ」(ASQ&QB)
長生淳「八重奏曲」(ASQ&QB)
F.ロウ「踊り明かそう」(ASQ&QB、アンコール)

上野駅で降りて向かったものの、徒歩15分以上かかるかなりの距離。鶯谷からのほうがまだ近かったかな…。そういえば昔、BCSEの演奏会のために伺ったことを思い出した。内装が木でできた、よく響くホール。

「"フィガロの結婚"序曲」から、とても快活な音楽。美しい音色、そして技術的にも素晴らしく、オープニングに相応しく、続く演奏に期待が高まる。それぞれがお得意のレパートリーを披露する第一部は、まずQuatuor Bがピエルネの小品と、高橋宏樹氏の「アルルのサックス展覧会」を。実は東京で聴くのは初めてだった?かもしれないが最近ますます高まるアンサンブル力に感銘を受ける。「アルルのサックス展覧会」は、実演で聴くとよりそのパロディっぷりが前面に押し出されており、とても楽しむことができた。アリオンSQの演奏は、代名詞ともいえる「アリオンの竪琴」でYouTubeでも聴いたすばらしい演奏を堪能し、続いてティケリ。至難かつクールなこの作品を、まさか実演で聴くことができるとは思っていなかった!

純度の高いよく揃った音色を武器とするQuatuor B、4者がそれぞれに特徴的な音を持つアリオンSQと、2つのカルテットを聴き分けるのはとても面白い。それぞれがそれぞれの良いところをプレゼンテーションする競演会でもあり、そうかと思えば8重奏では意外なほどに息があった演奏も聴くことができる。意外とこういう形態での演奏会って少ないな。レパートリーも充実してきているし、とても面白いと思うのだが。

後半は、有村氏の編曲という「ボレロ」から。照明まで交えた演出と、まさかという驚きにも満ち溢れた、しかし決してハメは外さないアレンジは、才気を感じさせる。江原大介氏の新作は、3楽章構成の急緩急という構成の佳曲。最初こそシリアスな響きでこれ、楽譜が出版されさえすれば、かなり流行るのではないかな(急速楽章は5分くらいだったので、例えばアンサンブルコンテストの新たなレパートリーとして…)。日本国内に留めておくのがもったいない、という気もした。2015年のコングレスで…どうでしょう。タイトルの「インフィニティ」は、名手たちの演奏に感じる"無限"の可能性を…ということで付けた、とは作曲家の江原氏のコメントだが、個人的には八重奏の"8"を90度傾けて∞としたところから着想したのかなあ、とも思った。

そして、2団体の聴き分けの面白さは、やはり最後の長生淳「八重奏曲」でのバトルでこそ本領発揮されていたと思う。TsukubaSQとサクゴレンでも昨年9月にやったばかりで、なんだか懐かしく聴いたのだった。それぞれの奏者が魅力的で、それぞれのカルテットが魅力的で、そして一体となって突き進む8本のサクソフォンアンサンブルが魅力的で…と、実に豪華な15分間を過ごした。

アンコールに「踊り明かそう」。終演後はロビーが大混雑。実はアリオンSQの皆様とは初めましてだったのだが、ご挨拶できて良かった。打ち上げにも伺い、とても楽しかった!…見事に終電を逃してしまったのだが(^^;

2013/02/25

YAMAHAの歴代サクソフォン

銀座のヤマハで一ヶ月弱にわたり開かれていた「ヤマハ創業125周年記念「ともに」展~楽器と写真でたどるヤマハヒストリー~(リンクはこちら)」が本日最終日を迎えたとのこと。残念ながら伺うことはできなかったのだが、その展示に関連し、サクソフォンに特化して面白い写真を数枚ご紹介したい。

昨年12月に開かれたユージン・ルソー氏のトーク&ミニコンサートの際、ロビーにヤマハの歴代アルト・サクソフォンのトップモデル(8xx系列&6x系列)が展示されていた。「ミシェル・ヌオーからアドバイスを受けた」という初代YAS-61に始まり、最新のYAS-875EXまで、実機・ケース・簡単な説明がひとつずつ展示されていたのだ。それでは、新しいモデルから一枚ずつ。特に説明等は書かないが、クリックして拡大できるのでじっくり眺めていただければと思う。

YAS-875EX 2002/10~現在



YAS-875(第2世代)2012/10~現在



YAS-875(初代)1988/10~2002/9



YAS-855 1988/10~2002/9



YAS-62(第3世代)2002/9~現在



YAS-62II(第2世代)1994/9~2002/4



YAS-62(初代)1978/5~1994/8



YAS-61 1966/12~1978/4
最初期モデルの61には、お付きの人がいらっしゃいました(笑)

2013/02/24

サクソフォンとオーボエのコンサート(菊地麻利絵、水村一陽、大嶋千暁)

【Saxophone and Oboe~菊地麻利絵 水村一陽 1st Concert】
出演:菊地麻利絵(sax)、水村一陽(ob)、大嶋千暁(pf)
日時:2013年2月23日(土曜)19:00
会場:海老名市文化会館・小ホール
プログラム:
A.ピアソラ - リベルタンゴ、オブリヴィオン、エスクヮロ[ob, tsax, pf]
G.プッチーニ - 歌劇「トゥーランドット」より"お聞きください王子様"、"誰も寝てはならぬ"[ob, pf]
J.W.カリヴォダ - サロン小品[ob, pf]
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ[asax, pf]
J.B.サンジュレ - デュオ・コンチェルタント[ob, asax, pf]
J.フランセ - オーボエ、ファゴット、ピアノのためのトリオ[ob, tsax, pf]

事情により寝不足な土曜日午後は、海老名市のこの演奏会へと伺った。初めて行く場所だったのだが、思いの外遠く(自宅から1時間以上)またあまり経路を考えず出発してしまったため、乗り換えも多くて大変だった。

サクソフォン+オーボエだという編成だと知った時に、その響き方が頭にぱっと思い浮かばなかった。例えば音量の点をどのようにクリアするのかとか、何の曲やるのかとか。最初のピアソラはその答えだったのかな。ちょっとびっくりするくらいの大きい音量・美しい音のオーボエの水村氏、また、菊地さんはここではテナーサックスを繰っていた(豊かな美しい音)。音域を分離させてそれぞれが独立した役回りを演じることで、違和感なく面白いアンサンブルになっていた。

カリヴォダのオーボエのための作品は、ロマン派の時代に書かれた堂々たるヴィルトゥオーゾ・スタイルの佳曲。しっとりと始まるが、最後は超絶技巧も交えながら盛り上げて一気に幕となる。大喝采。こういう曲って、サックスにないよなあ。「ファジイバード・ソナタ」は、奇しくも?菊地さんのソロを聴く初めての機会となったのだったが、びっくりするくらい楽器を鳴らすそのスタイルにまず驚いてしまった。改めて、大嶋千暁さんとの相性の良さを感じた。細かい部分では事故もあったようだが、かなり積極的な表現も各所に聴かれ、特に第2楽章~第3楽章は聴き応えがあった。アドリブも、そう来るか!という感じで面白い。各種の積極的な部分はそのままに、さらに洗練された演奏をまた聴いてみたいな。

そういえば、ピアノ大嶋千暁さんは先週日曜日(蓼沼さんと野口さんのコンサート)、先週水曜日(日下部さん試演会)に引き続き1週間にサックス関連だけでフル・リサイタル級のプログラムを3度こなしているわけだが、いったいどのようにして、あの高いクオリティを保ち続けていられるのだろうか…?驚異的。

休憩を挟んだ後半は、サンジュレ。サンジュレ作品が、サクソフォンを意識して書かれたものではなく、いかに楽器非依存で書かれたかということを再認識する思いだった。ソプラノサクソフォンをオーボエに置き換えることで、サロン的な可愛らしさが、より強調されていた。最後のフランセは、3者が一体となって繰り広げる濃密なアンサンブルが魅力的。アイロニーたっぷりのフランセが、編成を変えたとはいえ高い技術とアンサンブル力で聴けたのは、つても嬉しかった。

アンコールに、C.ドビュッシー「小さな黒人」と、M.D.プホール「Candombe de los buenos tiempo(古き良き時代のカンドンベ)」。プホール、初めて知ったがいい曲だなあ。そういえば、全体を通してMCが入れられていて、MCはだいぶ上滑り系?だったのだが、フリとか構成とかセリフとか、もうちょっと聴き手のことが考えられていると良かったかな(と、自らに対する戒めも込めつつ書いてみた)。コンサート中のMCって難しいですよね。。。

終演後は、打ち上げに参加させてもらった。ほとんどはサックス吹き&出演者で占められていたが何人か他の楽器の方も参加されていた(他の楽器の人と話すのはちょっと面白い)。ごく自然な成り行きで終電を逃し、そのまま10人弱で朝の5時まで宴会が続いた。最後には頭も回転しなくなってしまい…。始発で帰宅。ということで、2日連続で寝不足状態となり、日曜日午前の練習は体力的にキツイ状態で臨まざるをえなかったのだった…いや、練習は良いのだけれど、何度電車を寝過ごしそうになったことか(苦笑)。

2013/02/23

横井彬士サクソフォンリサイタル

横井さんのリサイタルだった。仕事が終わった後に会場へ向かい、演奏を聴いて、打ち上げに参加して、ウチで部屋飲みして、そのまま雑魚寝して、起きて…と、なんだかずいぶんと長い半日だった。

【横井彬士サクソフォンリサイタル】
出演:横井彬士(Saxophone)、松浦真沙(Pf)
日時:2013年2月22日(金) 18:30開場19:00開演
会場:大田区民ホール・アプリコ(小ホール)
プログラム:
A.シモネッティ - マドリガル
R.ムツィンスキー - ソナタ
松浦真沙 - 海の石
F.デクリュック - ソナタ嬰ハ調
D.ベダール - ファンタジー
C.フランク - ヴァイオリン・ソナタ
J.M.ダマーズ - ヴァカンス(アンコール)

いち演奏者として強い意志に沿ったプログラミングをすること、20分~30分に及ぶ大曲を終始一貫して「正しく」作り上げてくるその努力やセンス、さりげない弱音での(特にヴィブラートに頼らない部分での)歌い方など、様々な部分に感銘を受けた演奏会だった。確かに横井さんはアマチュアではあるのだが、こういう演奏会を聴いたあとではプロフェッショナルとかアマチュアという言葉は無意味になってしまうかもしれない、とも思うのだった。

前半では、特にピアノの松浦さんの自作による「海の石」の演奏が印象深い。ピアノの幾重にも重なった和音の中で、繊細な響きでもって優雅に歌うサクソフォンが美しかった。もちろん、そのほかの曲も!シモネッティは横井さんの美的センスが顕著にあらわれた演奏であったし、ムツィンスキーやデクリュックでは、あの高難易度のパートを高い技術で吹きこなしていた。

後半の、ソプラノサクソフォンによる「ファンタジー」は、とても良いアクセントで、軽やかな音色やテクニックも相まってとても楽しく聴くことができた。最後のフランクは、思い入れの強さが良く表れた演奏で、サクソフォンを始めてからこれまでの演奏活動を全て回顧するような、そんな聴きながら昨日の横井さんのブログ記事の内容を思い出して、なんだかあまり冷静には聴けなかったのだった。最後に置かれたダマーズの「ヴァカンス」が、今でもぐるぐると頭の中を回っている。

いやはや、素晴らしかった。演奏を終えてロビーに出てきたときの横井さんの充実した顔。アマチュアからこういう人が出てくるのを、同じくアマチュアの末席で活動している私としては、とても誇りに思う(上で"プロフェッショナルとかアマチュアとか云々…"と書いておきながらのこのコメントではあるが)。私も頑張らないとなあ。Tsukuba Saxophone Quartetの活動はもちろんさらに充実させていきたいが、個人的な何かも5カ年計画くらいで考えてみよう。

打ち上げは20人以上が参加して大盛り上がり。最後に残った横井さん、小倉君、吉田君と私は、"しんか"でラーメンを食べた後タクシーに4人乗り合わせて私が住んでいるアパートまで。夜中の2時半くらいまでサックスのCDやらなんやらを聴きまくりながら飲み直し、そのまま狭い1K 6畳の部屋で雑魚寝して朝となった。まだちょっと眠い(^^;

2013/02/21

【再掲】ご案内:横井彬士サクソフォンリサイタル

もう明日に迫っている、ということで再掲。お時間ある方はぜひどうぞ。

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横井彬士さんのリサイタルをご紹介。一般大学に通いながらサクソフォンを学んでいる横井さんだが、今年度いっぱいで大学を卒業されるとのことで、その前にこれまで学んだ曲の披露の場としてリサイタルを開くとのこと。

クラシカルの作品を中心とした、アマチュアと呼ぶのが憚られるほどの、非常に挑戦的なプログラム(選曲には横井さんの師である有村純親氏の影響を感じる)。これだけボリューム感あるプログラムは、音大生ですらなかなか登攀しがたいものであろう。ブログを拝見する限り、練習も順調そうで、積極的に応援していきたいところ。もちろん伺う予定なのだが、実はきちんと横井さんのソロの演奏を聴いたことがないので、そんな意味でも楽しみだ。

【横井彬士サクソフォンリサイタル】
出演:横井彬士(Saxophone)、松浦真沙(Pf)
日時:2013年2月22日(金) 18:30開場19:00開演
会場:大田区民ホール・アプリコ(小ホール)
料金:チケット500円(当日1,000円)
プログラム:
A.シモネッティ - マドリガル
R.ムチンスキー - ソナタ
松浦真沙 - 海の石
F.デュクリュック - ソナタ嬰ハ調
D.ベダール - ファンタジー
C.フランク - ヴァイオリン・ソナタ

日下部任良ソロ試演会

【日下部任良 ソロ試演会】
出演:日下部任良(sax)、大嶋千暁(pf)
日時:2013年2月20日(水曜)19:00開演
会場:練馬文化センター第一リハーサル室
プログラム:
C.P.E.バッハ - フルートのためのソナタイ短調Wq132
P.スウェルツ - クロノス
C.ロバ - ワークソング
F.クープラン - 演奏会のための5つの小品
L.E.ラーション - サクソフォン協奏曲

来週に迫っているというKONSERVATORIUM WIEN UNIVERSITYの受験を前に、その受験曲を発表する試演会に伺った。進行やスタイルこそ"試演会"という形を取っているが(聴き手は感想や意見を講評用紙に記入)、中身は立派なリサイタル・プログラムである。バッハ、スウェルツあたりこそ控えめな印象を受けたが、ロバ以降は本領発揮といったところ。ロバは、循環呼吸の点を除けば高レベルであったし、ラーションは、試演会という枠を超えてかなり積極的な表現を様々な場所で聴くことができ、とても充実した聴後感を得ることができた。クープランでのテナーは、私もあんな音が、表現ができたらいいなあと、はからずも思ってしまった。

細かい感想は余すところなく講評用紙に書いたので、ここではひとつひとつ詳しい感想を書かなくても良いかなあ…。

そういえば、日下部さんの師匠である雲井雅人氏、林田和之氏、そして小田桐さんが臨席しており、そこだけ切り取ればさながら試験のような様相を呈していた。なんだか聴いているこっちまで緊張してしまった。

打ち上げは、ネリマノダイコンヤにて。21:00にはスタートし、時間がたっぷりあったのでかなり深酒をしてしまった。ずいぶんと下世話な話で盛り上がってしまったような…って、いつものことか(苦笑)。初めましての方や、お久しぶりの方とも話せて、とても楽しかった。

2013/02/20

第20回東京芸術大学サクソフォーン専攻生による演奏会

毎年のことながら、この演奏会を聴くと、いよいよ年度末が近づいてきたのだなという実感を得る。

【第20回東京芸術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京芸術大学サクソフォーン科(田中拓也、丸場慶人、三浦夢子、土岐光秀、中井伶、山崎憂佳、川島亜子、竹田歌穂、中嶋紗也、中島諒、上野耕平、竹内理恵、藤本唯、田島沙彩、都築惇、宮越悠貴、松下洋、塩塚純)、須川展也(指揮)、大城正司(ソロ)
日時:2013年2月19日(火曜)19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
D.マスランカ - マウンテン・ロードより第1,2,6楽章
F.プーランク - トリオ
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア(独奏:田中拓也)
D.ミヨー - スカラムーシュ(独奏:大城正司)
C.モンテヴェルディ - 聖母マリアの夕べの祈りより
中橋愛生 - 静寂の森・饒舌な雨(委嘱作品・世界初演)
A.ドヴォルザーク - スラブ舞曲集より
P.M.デュボワ - りす(アンコール)

若いカルテットを聴くのは楽しい。もちろん荒削りな部分もあるけれど、予定調和なところに落ち着かない新鮮な解釈を発見できる可能性があるからだ。一音目、美しい冒頭の和音が響き渡ってすぐ、刷り込みとなっている雲井雅人サックス四重奏団の演奏との違いを感じた。フランスのカルテットが「マウンテン・ロード」を吹いたらこうなるのかな、というイメージ。やや事故もあったが、テクニカルな面は高いレベルでクリアされている。第六楽章の急速部分は、史上最高速だったかも(まあ速けりゃ良いってもんでもないが)。

プーランクは、先週末に蓼沼氏×野口氏×大嶋氏という組み合わせで聴いたばかりだったが、本日聴いて、改めて、その作品としての完成度の高さ、サクソフォンへのマッチングに驚く。特にソプラノ⇔テナー、2本の間での即興的ともいえるアンサンブルの妙を楽しんだ。弘中氏のピアノは、アンサンブルとしての完成度をさらに押し上げていた。ピアンはサクソフォンに対して意外にも抑制された響きだったのだが、意図的だったのだろうか。

田中拓也氏をソリストに迎えての「ファンタジア」は、なんと藝大サックス科男性陣のみ、という布陣。アレンジは、ソリストの田中氏自身によるものだった。第一楽章は、想像していたよりも骨太な印象を受けたが、第二楽章の微妙な音色変化、そして特に第三楽章での音のバラ撒きは、本領発揮といったところだろう。ソロリサイタルを聴いてみたいなー、と、ふと思ったのだった。そうちえば、吹いている最中とそうでない時のギャップが大きくて、なんだか可笑しかったなあ。

第一部最後は、大城正司氏、独奏での「スカラムーシュ」。今回20回を迎えたこの演奏会だが、実は大城氏が藝大の学生の時に立ち上げたものだそうで。今回ソリストとして迎えられたのは、その理由もあったとのことだ。こんどは、バックがすべて藝大サックス科女性陣。大城氏の演奏に内包される、どこかフランス的ともいえる華やかさやリラックスしたテンポ感は、どういった過程で獲得されたものなのだろうか。…大城さんて、実はフランス人だったりして(笑)終始すばらしい演奏で、最後には喝采を浴びていた。

休憩を挟んで、モンテヴェルディ。ここのサックス科の演奏会には、いつもひとつやふたつ、実験的な内容が含まれているものだ。さすがにブーレーズの「二重の影の対話」ほどのものは極端でめったに体験できないけれど、常に先端を走り続ける「藝大」という看板を背負った学生の宿命のようなものがあるのかなあ(なんだか誤解を招きそうな書き方だが)。とにかく、誰がモンテヴェルディを選曲し、あの配置…ステージ&上手側入口付近&下手側入口付近にそれぞれ数名ずつ…で演奏する、というアイディアを実現させたのか、気になるところだ。とてもよい試みであると思った。バッハ(第18回)、ヴィヴァルディ(第19回)、モンテヴェルディ(第20回)と来れば、そろそろジェズアルドやギョーム・デュファイが聴きたくなる。さらにサクソフォンの持つプリミティブな響きを突き詰めることで、曲の魅力が表出しそうなものであるが。

中橋愛生(なかはし・よしお)氏の「静寂の森・饒舌な雨」は、サクソフォン・オーケストラの新作としてこの演奏会で発表された作品だが、間違いなく名曲!本日の白眉であった。この作品は、本日指揮を担当した須川氏が、20周年を機に委嘱、サックス科にプレゼントした作品なのだそうだ。前半部分は、特殊奏法を交えた「音色のヴァリエーション」といった趣。時折その折り重なった音色の地層の中に、ペンタトニック風のメロディが現われては消える(解説によれば、ドビュッシーがピアノ曲「雨の庭」で引用しているフランスの童謡「もう森になんか行かない」からの引用とのこと…わからなかった)、シリアスな曲調。スラップ、フィンガースナップ、キイクリックを皮切りに突入する怒涛の後半部分は、ジャズやロック、はたまた民族音楽から影響を受けたような、力強いリズムがベースとなった超高難易度のパート。あれだけの名手が集まって演奏される機会はめったにないと思うのだが、ぜひいつかまた実演を聴いてみたいなと思う。

最後は「スラブ舞曲」。須川氏の指揮にも触発され、しっかりした"地"を持ちながら音楽を追求し、聴き手を楽しませることに徹した演奏にはとても興奮した。これだけ演奏できたら楽しいだろうなあ。アンコールは、G管のおもちゃリコーダー?やバスサックス用ソガデル?まで交えたスペシャルバージョンのデュボワ「りす」。

2013/02/18

ご案内:ライブ・エコロニクス!(佐藤淳一博士による)

3/1はいろいろとイベントが重なってしまった…大宅ピアノデュオ、佐藤淳一氏のライブ・エコロニクス、そして自分が幹事の会社の部署飲み会(苦笑)。ということで、いずれの演奏会にも行けませぬ(´・ω・`)

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まずは佐藤淳一さんのライヴをご紹介。サクソフォンとエレクトロニクス…ならぬエコロニクスによる演奏会である。この言葉が意味するコンセプトについては、佐藤さんの言葉をそのままお借りしよう。

(前略)…3.11からの電力事情によりライブ・エレクトロニクス作品の演奏は控えていました。何故ならライブ・エレクトロニクス作品はその本質として電力を使用するので、このような時勢には合わないかもしれないと考えたためです。ですがライブ・エレクトロニクス作品には価値あるものも多く、どのようにしたら電力の問題をクリアして演奏出来るかと考えた時に出会ったのが太陽光発電による蓄電池を用いたシステムです。これは大容量のバッテリーを使用することにより、音響システム(スピーカー、ミキサー、ラップトップ・コンピューターetc)の電力全てをクリーンなエネルギーで賄うことが可能になります。こうしたエレクトロニクスとエコを融合させた形態がライブ・エコロニクスです。…(後略)

このチラシのイラストは、上記コンセプトをそのまま表したものだ。ちなみに佐藤さんはすでにこのシステムを利用した演奏を成功させており(明記はされていないが、この演奏会)今回はさらにそのコンセプトを前面に押し出したものとなる。

【Doctor SAX Project - ライブ・エコロニクス!】
出演:佐藤淳一(sax)、有馬純寿(electro)
日時:2013/3/1(金曜)19:00開演
会場:トーキョー・ワンダー・サイト本郷
料金:2000円
プログラム:
JacobTV - Grab It!
JacobTV - The Garden of Love
Steve Reich - New York Counterpoint
John Coltrane/斉藤和志 - Giant Steps
湯浅譲二 - 私でなく、風が…
Karlheinz Stockhausen - Spiral Nr.27

プログラムが面白い!東フィル主席フルート奏者、斉藤和志氏が編んだ「ジャイアント・ステップス」は(これまでもこのブログで紹介したことがあるのだが)ループサンプラーを効果的に利用したとても楽しい作品だ。ご存知ない方は、下記の動画をどうぞ。ボイパもやるのかな?


JacobTVやReichの作品群は、いまさら私がその魅力を語るまでもないほどの傑作だ。湯浅譲二作品も、あまり演奏される機会がないのだから、ぜひこの機会に体感していただきたいところ。シュトックハウゼンの作となるソロ奏者と短波ラジオのための「シュピラール」は、これは本当に当日まで何が起こるかわからない傑作。本当に(AMやFMじゃなくて)短波ラジオを使うのか、とか、ラジオでどんな番組を受信するのか、とか、興味は尽きない。

…と、いずれも面白そうなのだが、伺えないのが本当に残念。。。

2013/02/17

河西麻希 plays Dubra's Oratorio on YouTube

昨日、内田しおり氏(Green Ray SQのアルト奏者)や雲井雅人氏のFBタイムラインに流れてきた動画。ラトヴィアの、Rihards Dubraという作曲家による「Omnes sitientes venite ad aquas, oratorio」という作品の動画だ。独奏サクソフォンに、4部合唱が2組、サクソフォン四重奏が2組、オルガンとパーカッションが入るという大編成。独奏は日本人サクソフォン奏者の河西麻希氏。サクソフォン四重奏は、ストックホルム四重奏団とリガ・サクソフォン四重奏団(動画の説明にはエルサレム四重奏団と書いてあるが、おそらく間違い)。初演データはこのページで見つけられた。

とてもかっこいい。宗教音楽を取り上げて「かっこいい」という感想もなんだか変なのだが、聴いてみればわかるとおり実際にそうなのだ。演奏場所であるリガ大聖堂の響きも相まって、聴いているうちに敬虔な気持ちになってしまう。似たようなコンセプトでは、イギリスのサクソフォン奏者、Christian Forshawがやはり合唱と独奏サクソフォンの編成でオリジナル作品を取り上げたCDを何枚かリリースしているが、こちらの動画にはまた別の魅力がある。

4分割してアップされている動画もあるが、下記は全曲まとめてアップされている動画へのリンク。25分近くに及ぶ壮大な旅を、お楽しみいただきたい。

NBEのニュー・イヤー・コンサートより on YouTube

Nederlands Blazers Ensembleのニュー・イヤー・コンサートより。ソプラノサクソフォンソロはJohan van der Linden氏(アウレリア四重奏団のソプラノ奏者)である。最初は何気ない気だるい民族音楽風の雰囲気なのだが、とりあえず最後までご覧頂きたい。まさにエンターテイメント!こんな演奏、日本でも聴くことができないかなあ。ちなみに、バリトンサクソフォンを吹いているのはアウレリアQのバリトン奏者、Van Merwijk氏ではないかな?


2013/02/16

蓼沼雅紀x野口紗矢香デュオコンサート

最近なにかとお世話になる機会の多い、ピアノの大嶋千暁さんのご案内により伺った。

【蓼沼雅紀x野口紗矢香 Duo Concert ~蓼沼と野口がコンサートやります~】
出演:蓼沼雅紀、野口紗矢香(sax)、大嶋千暁(pf)
日時:2013年2月16日(土曜)14:00開演
会場:アーティストサロン"Dolce"(管楽器アヴェニュー東京内)
プログラム:
G.F.ヘンデル - シバの女王の入城
J.S.バッハ - オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調BWV1060a
E.ボザ - ファンタジー・パストラル
F.プーランク - トリオ
C.ドビュッシー - ラプソディ
C.ドビュッシー/福田洋介 - 小組曲
P.シェーンフィールド - カフェ・ミュージック
E.クローンケ - 2匹の蝶々(アンコール)
G.ガーシュウィン/? - ガーシュウィン・メドレー(アンコール)

どういった経緯でこのメンバーでの演奏会が…と考えたが、プロフィールを読んだところ、全員東京音楽大学の関係者だったのだった。なるほど。

蓼沼さんの演奏を聴くのは久しぶりだったなあ。非常に美しい音色とヴィブラートは、蓼沼さんの昔からの武器の一つであるが、さらに磨きがかっており、さらに作品ごとの表情の変化など以前に比べて持ち手が増えたような印象を受けた。野口さんの演奏を聴くのは初めてだったが、非常に明るくストレートな音色と芯の通った揺るぎない音楽性、というところが印象深い。特にテナーの演奏スタイルは、非常に管楽器的というか男性的というか、最近主流の軽さを押し出したタイプではなく、個人的にとても好きな演奏であった。大嶋千暁さんのピアノももちろん好サポート…というレベルを超えて魅力的であり、単なるデュオ・コンサートではなく"トリオ"として室内楽が成り立っていたのだった。難曲揃いのなか、また、他の本番も多数抱える中、どのように練習をこなしているのだろう…?

ヘンデルは蓼沼さんの編曲で、2本のソプラノサクソフォンとピアノのために編み直されたもの。四重奏版の響きが頭にあったため、最初はやっぱりあの16分音符なのかな…と思って聴き始めたところ、原曲の2本のオーボエパートが2本のソプラノサクソフォンに割り当てられており、とても新鮮なサウンドが響き渡った!冒頭から嬉しいサプライズだ。続くバッハはとても端正な演奏。

ボザは野口さんのソロだったが、ゆったりしたカデンツァから始まり、何気なしに聴いていたら、途中から恐ろしいほどのテクニックの連続で音をバラ撒く。ああ、びっくりした。第一部最後のプーランクは、非常に高速なアンサンブルで、聴いてとても興奮した。特に、複雑なパズルが噛みあうような第一楽章は、ライヴで聴いた中では最高速!ぎりぎりの鬩ぎ合いを楽しんだ。

後半は、蓼沼さんのソロのラプソディから。昨年のドビュッシー・イヤーも含めて、ここ最近「ラプソディ」って何回聴いているかなあ(笑)。何版だったかまではブラインドで判断できなかったが、いたるところに「らしさ」が出ていて嬉しくなってしまった。続くドビュッシーの「小組曲」は、最近何かと話題の福田洋介氏によるアレンジ。こちらも、各所で工夫が施されたアレンジで、とても楽しむことができた。

最後に置かれた「カフェ・ミュージック」は、名前からは想像もできないような全三楽章構成の堂々たるヴィルトゥオーゾ・スタイルの作品。もともとはヴァイオリンとチェロのための作品だそうだが、サクソフォンでの演奏はおそらく世界初(笑)とのこと。どうやってこの曲を見つけてきたのだろう。上辺だけ見ればとても楽しい曲なのだが、演奏者は三者三様に場面場面で表情を切り替えながら、高難易度のフレーズの欧州を見事に切り抜けていた。曲が終わった瞬間、大喝采である。アンコールに、可愛らしいクローンケのフルート二重奏+ピアノと、ボリュームたっぷりのガーシュウィンメドレー。ガーシュウィンは、とても面白いアレンジで、出版したら人気が出そう。

軽い気持ちで聴きに行ったのだが、予想の2倍の量の音を浴び、満足度も比例して大きかった。嬉しい誤算だ!

2013/02/15

"八ヶ岳サクソフォンセミナー"のしおり

おなじみ京青さんより、89,90,91年のヤマハ八ヶ岳サクソフォンセミナーのしおりをお貸しいただいた。かつてヤマハが主催していたイベントで、国内外から著名なプロサクソフォン奏者を招聘し、レッスン、コンサート、レクチャー、親睦会などが企画され、学生・社会人が数日にわたってサクソフォンを学ぶという…言ってしまえば今でも良くある"サクソフォンキャンプ"とか"サクソフォンセミナー"と同じなのだが、時代が時代だけに講師陣が豪華、そして受講生も豪華なのが面白い。フォントは明らかにワープロ打ち。今の若い人たちに、ワープロ専用機を使ったことがある人はいるのだろうか?(笑)

例えば1989年のセミナー。この年の講師陣は、ジャン=イヴ・フルモー氏、ピエリック・ルマン氏、ギィ・ドゥマール氏、ジョエル・バトー氏(以上フルモーQ)、ユージン・ルソー氏、小串俊寿氏、亀井明良氏、雲井雅人氏、須川展也氏、鈴木英之氏、須田寔氏、中村均氏、服部吉之氏、前沢文敬氏、太田聖士氏…といった、今では考えられない呆れ返るほどに豪華な布陣である。そして受講生も凄いもので、若き日の松雪明先生、大和田雅洋氏、斎藤了氏といった、今ではサクソフォン界を支えている先生方が参加しているという、ちょっと想像もつかない事態になっている(とめ氏とThunderさんとmae-saxさんと松雪明先生と斎藤了氏が同一部屋というのもすごいなー)。

受講生のレッスン曲目やスペシャルコンサートの曲目など眺めていると、どんな音が響いていたのかなとなんだかその場にいなかったのにその"良き"時代に思いを馳せてしまう。89年のスペシャルコンサートの曲目を載せておく。小柳美奈子氏が、「須川美奈子」と名乗っていた頃があるのだな。

亀井明良&須川美奈子
P.モーリス - プロヴァンスの風景
P.ランティエ - シシリエンヌ

ジョエル・バトー&服部真理子
E.オズィ - ソナタ
J.モロー - 追跡
H.ビュッセール - 叙唱、主題と変奏

須川展也&須川美奈子
A.グラズノフ - 協奏曲
P.ボノー - カプリス

フルモー四重奏団


小串俊寿&白石光隆
G.ガーシュウィン - 3つの前奏曲
M.デ=ファリャ - 火祭りの踊り
I.ゴトコフスキー - ブリヤンス

雲井雅人&服部吉之
A.ベルノー - ソナタ
F.プーランク - トリオ

ピエリック・ルマン&須川美奈子
M.アイシェンヌ - ソナタ
E.ボザ - アリア

ユージン・ルソー&服部真理子
D.ミヨー - スカラムーシュ
R.ムツィンスキー - ソナタ
F.J.ハイドン - オーボエ協奏曲よりアレグロ

前沢文敬&須川美奈子
L.バセット - ミュージック

ギィ・ドゥマール
F.バズレール - 協奏曲
F.シュミット - コッペリウスの歌

ジャン=イヴ・フルモー
A.デザンクロ - PCF
L.ベリオ - セクエンツァIXb
P.M.デュボワ - ディヴェルティスマン

ところで、最も衝撃的なのは講師陣・受講生の全住所・電話番号リストが掲載されていること!個人情報保護が声高々に叫ばれる現代では考えられないことだが、当時はインターネットも普及しておらずこのようなリストがなければ連絡を取る手段が途切れてしまうのであった。

2013/02/14

第32回フェスティバルのFBイベントページ

3月3日のサクソフォーンフェスティバル、Facebook上に原博巳さんの手によりイベントページが作成されているのだが、定期的に見どころが語られており面白い。Facebookのアカウントが無くても参照できるので、フェスに興味のある方は定期的にチェックすべし(アカウントを持っている方は、イベント"参加予定"とすれば、更新時ににフィードが飛んでくるはず)。私も、ますます楽しみになってきた。

https://www.facebook.com/events/365898286783163/

今や、Facebookはチラシやウェブやブログよりも、より興味を持つ人に対してはずっと宣伝効果の高い媒体であるのかもしれない。コメントやいいね!のインタラクションを目にするたびに、そう思うのだ。

2013/02/13

ご案内:クローバーSQコンサート追加情報

先日紹介した週末のクローバーSQのワンコインコンサート、詳細なプログラムを恩地様より教えていただいた。さり気なく置かれた委嘱初演作品や、名曲「トリツカレ男」など、非常に食指が動く内容!山根氏って、eX.の主宰なんですね。知らなかった。

プログラム:
J.S.バッハ/栃尾克樹 - イタリア協奏曲より第1,3楽章
J.S.バッハ/田村真寛 - トッカータとフーガ
E.モリコーネ/石毛里佳 - ニュー・シネマ・パラダイス
松岡大祐 - トリツカレ男
山根明季子 - 水玉コレクション No.16(川口リリア委嘱作品 世界初演)
E.ボザ - アンダンテとスケルツォ

山根明季子プロフィール:
1982年大阪生まれ。音を視る、音で造形をデザインするというコンセプトで「ポップな毒性」をテーマに作品を描いている。京都市立芸術大学卒業、同大学院修了。ブレーメン芸術大学派遣留学。日本音楽コンクール第1位、芥川作曲賞受賞。これまでにNHK交響楽団、読売日本交響楽団などのオーケストラや国内外のアンサンブル、多くの演奏家によって作品が委嘱、また上演されている。2011年京都にて作品個展及びサウンドインスタレーションを行う。同年avant dossier よりCDシングル「水玉コレクション No.06」をリリース。2013年2月福島、ニューヨーク及びワシントンでMFJ委嘱「水玉コレクションNo.13」上演、8月サントリー芸術財団委嘱の琵琶協奏曲「ハラキリ乙女」初演等。現代音楽コンサートシリーズ「eX.」主宰。http://akikoyamane.com

(クリックして拡大)


一緒にお送りいただいた"面白い資料"とは、これのことである。クローバー、2005年の結成当時のライヴお知らせチラシだ。クローバーSQのプロフィールを調べると「2005年、東京藝術大学の同窓生で結成」というくだりがあることから、まさにその結成直後のライヴということになる。写真の中のメンバーの顔が、若い!コーディネートに恩地様の名前があるが、どういったきっかけ・経緯でクローバーSQをピックアップしたのだろうか。気になるところだ。

(クリックして拡大)

2013/02/12

日本サクソフォーン協会誌No.24が到着

日本サクソフォーン協会の会報"サクソフォニスト"No.24が到着した。下記のような内容である。

須川展也×吉松隆クロストーク(聞き手:栃尾克樹)
第16回世界サクソフォン・コングレス・リポート(原博巳、kuri)
クロード・ドビュッシー《ラプソディ》を巡る諸問題に対する考察(佐藤淳一)
ティエリー・エスケシュの《テネブレの歌》研究(浜里明)
東日本大震災被災地支援事業/カルテット・スピリタス ミニ・コンサート報告(松井宏幸)
パルテノン多摩25周年記念事業「つながる・パルテノン・25の出会い」報告(服部吉之)
第28回日本管打楽器コンクール入賞者の声(上野耕平、小澤瑠衣、角口圭都)
フランス便り2012「第3回パリジャン・サクソフォンコンクール2012」の報告(千春ルマリエ)
留学生リレーレポート・デンマーク編(加藤和也)
新しいリード調整法の勧め(花井宏維)
第31回サクソフォーンフェスティバル報告書(田村真寛)
野平一郎の世界(聞き手:佐藤淳一)
フェスティバル「音大生によるアンサンブル」を聴いて(冨岡和男)
音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ2012報告(服部吉之)
第9回サクソフォーン新人演奏会報告(服部吉之)
第31回サクソフォーンフェスティバルCD(制作:浅利真)

今回はなんと計173ページ!全号所持しているわけではないので憶測だが、協会誌の史上最多ページ数を更新したことだろう。私の手元にはNo.17からNo.24までが保管してあるが、それらのページ数の推移は次の通りである。各号かなりムラがあるが、確実に増加傾向にある。もちろん、ページ数だけ増えれば良いというものでもないが、内容についても質は上昇傾向にあると思う。
39(17号)→55→81→107→105→75→167→173(24号)

圧倒的なのは、なんといっても佐藤淳一氏のドビュッシー「ラプソディ」にまつわる論文である。資料収集のみならず現地調査をも行なって仕上げた、なんと60ページ近くに及ぶ渾身の作。これまで"常識"と思われていたドビュッシー「ラプソディ」に関する情報をひっくり返す研究成果が満載である。ドビュッシー「ラプソディ」に取り組まれる方はもちろん、サクソフォンを吹いている方は必読の内容だ。続く浜里明氏によるエスケシュ「テネブレの歌」の成立調査・アナリーゼもすばらしい。おそらくこれはThunderさんのこの記事をきっかけとして書かれたものではないかなと推察するが、どうだろうか?須川展也氏と吉松隆氏のインタビューは、サクソフォンのための重要なレパートリーを創り上げてきたお二人のリアルな声がそのまま記録されたという趣で、ファン必読だ。

後半は特に「リード調整法の勧め」と「野平一郎の世界」が、内容的にも充実しており楽しく読むことができた。「リード調整法…」はリードマイスターの関連記事である。その時々でトレンドとなった話題をすぐさま取り込もうとする企画内容は、とても読み手としても興味深いことであろう。最終ページにはフェスティバルの内容を集めたCDまで付属。これが年会費3600円で届くというのだから…なんとまあ。

私は今回「第16回サクソフォン・コングレス・リポート」と題して、原博巳先生とともにWSCに関する記事を提供した。これまでもコングレスのレポートは開催翌年の協会誌に掲載されていたが、今回は半共著状態だったため、かなり充実させることができた。これを読んで次回ストラスブールのWSCに参加してくれる方が増えれば嬉しいなあ。協会誌中では須川展也氏&吉松隆氏インタビューの直後、という場所もいいですね(笑)。




2013/02/11

ご案内:クローバーSQ、リリアのワンコインコンサートに登場

時折、埼玉県立近代美術館に関連した催し物情報を送っていただいている恩地元子様より、クローバーSQの演奏案内を頂戴した。

【リリア・ワンコイン・コンサート 「クローバー・サクソフォン・クヮルテット“いま”の響き」】
出演:クローバー・サクソフォン・クヮルテット
日時:2013年2月17日 14時開演
会場:川口リリア・音楽ホール
料金:全席自由 500円
プログラム:
J.S.バッハ:トッカータとフーガ
E.ボザ:アンダンテとスケルツォ
E.モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス 他
詳細:http://www.lilia.or.jp/event/2013/20130217/index.html
チケット申し込み:TEL 048-254-9900 営業時間 10時~19時(年中無休 ※休館日除く)

クローバーSQがリリアのワンコインコンサートに登場する。このワンコインコンサート、低めの料金設定と全体の適度な短さ(60分程度とのこと)から、かなり人気のコンサートシリーズのよう。出演者によっては前売りが完売してしまうこともあるそうだ。この日は午前中に予定があるのだが、もしかしたら行ける…かな?気になる方は早めに問い合わせをしてみてはいかがだろうか。

一緒に、クローバーSQに関連した面白い?資料をお送りいただいたのだが、ブログでご紹介できるか問い合わせ中。

菅平から帰還

昨日は午前中から軽く滑り、午後2時くらいには菅平高原を出発して、上田市内のひな詩の湯に立ち寄り。いやー、スキーの後の温泉は最高ですね!(笑)途中横川SAでの休憩を挟みつつ、上信越道~関越自動車道と小さな渋滞に巻き込まれながら移動。車内では、90年代のJ-POPのイントロドンで騒いでいたのだが、改めて名曲ばかりで驚いてしまった。また、曲名は分からなくとも歌い出した瞬間に、どのアーティストであるのかわかる、というのもすごいな。

こちらまで戻った後に、数人で武蔵小杉のNATURAというお店で夕食をとったが、意外なほど美味しくびっくりしてしまった。

写真を小さく載せておく。楽しかったー!

2013/02/10

スキー旅行中です

大学時代の専攻の友人たちと、菅平高原でスキー旅行中。なんと10人の大所帯である。

土曜の早朝に出発し、朝から滑り始めて四時前には切り上げ。天気は良いが気温が低かった。夕食をとって部屋飲みを5時間ほど。すでに体力も限界(笑)。

サークル(吹奏楽)方面でも、専攻の方面でも、大学時代は良い友達に恵まれたんだなと実感。さすがにそろそろ結婚した人も出てきたけれど、集まれば昔と同じ雰囲気で話せるのは嬉しいことだ。

2013/02/08

田村哲氏リサイタルへ提供した曲目解説文

先週末開かれた田村哲のリサイタルに提供した曲目解説文を公開。

田村哲からの依頼は、ほぼ納期1週間以内という逼迫した状況で来るのだが(笑)最近は慣れてきた。そういえば、まさか吉田さんのリサイタルとケクランがかぶるとは思わなかったなあ。

プログラム冊子に掲載する曲目解説を私に依頼したい方がいらっしゃいましたら、kuri_saxo@yahoo.co.jpまでご連絡を。

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シャルル・ケクラン「"15の練習曲集作品188"より第1,2,3曲」
 シャルル・ケクラン(1867 - 1950)は19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家です。その作風は幅広く、83歳で亡くなるまでに実に226もの作品を残しました。伝統的なクラシック音楽に軸足を置く一方、当時まだ新参者だったサクソフォン(1846年に発明)に対しても12に及ぶ作品を提供していることから、ケクランの懐の深さが伺えます。
 「15の練習曲集」は、アルトサクソフォンとピアノのための練習曲。"練習曲"という名を冠していますが、全編に渡り音楽的に充実した作品です。各楽章には「発音のための」「リズムのための」など、何の練習に主眼を置いた楽章であるかが明示されています。本日は、シンプルで快活な曲想の中に高難易度のフレーズが織り込まれた第1曲、全曲中最も美しい旋律を持つ第2曲、ピアノパートに支えられながらサクソフォンが縦横無尽に駆け巡る第3曲を抜粋してお送りします。
 
アルフレッド・リード「子供の組曲」
 吹奏楽に関わったことのある方ならば、アルフレッド・リード(1921 - 2005)の名前はおなじみでしょう。20世紀の吹奏楽界を代表する作曲家のひとりで、アメリカを中心に活躍しながら「アルメニアンダンス」「エル・カミーノ・レアル」を始めとする数々の傑作を世に送り出しました。日本との関わりは深く、プロ・アマチュア問わず国内の数々の演奏会に客演、また日本の音楽大学の客員教授に就任するなど、来日回数は80回以上にのぼります。
 「子供の組曲」はアルトサクソフォンと吹奏楽のために書かれた2曲から成る組曲。楽章タイトルに登場する"きよこ"とは、この曲を初演したサクソフォン奏者、岩本伸一の娘の名前です。岩本伸一が家族とともにリードのもとを訪れた際、リードは"きよこ"がデンデン太鼓で無邪気に遊ぶ様子を見て、この曲を着想したと言われています。
 
ポール・クレストン「ソナタ作品19」
 アメリカの作曲家、ポール・クレストン(1906 - 1985)は本名をジュゼッペ・グットヴェッジョ・クレストンといいます。イタリア系移民の貧しい家系であったことから音楽の専門的な教育を受けることができず、15歳にして独立し、オルガン奏者として生活費を稼ぎながら、独学で作曲を学びました。1940年に作曲した「交響曲第1番」の成功により名声を得、以降アメリカを中心に幅広く活躍しました。
 「ソナタ(1939年)」は20世紀前半に活躍したアメリカのサクソフォン奏者、セシル・リースンのために作曲されました。3つの楽章からなり、アメリカ的なエンターテイメント性あふれる表現が随所に見られます。プロフェッショナルのサクソフォン奏者を目指す者ならば、避けては通れない作品です。

ジョルジュ・ビゼー/エルネスト・ギロー「"アルルの女"第2組曲より"間奏曲"」
 19世紀半ば、サクソフォンはベルギーの楽器職人、アドルフ・サックスにより発明されました。クラシックの楽器として開発されながら、その登場が遅かったため、現在もなお伝統的なオーケストラの中にサクソフォンの定席はありません。ラヴェルやプロコフィエフといったごく少数の作曲家が、自作の一部にサクソフォンを採用するにとどまっています。
 フランスの作曲家、ジョルジュ・ビゼー(1838 - 1875)は自身のスコアの中でサクソフォンに重要な役割を与えました。劇付随音楽「アルルの女」において、サクソフォンは美しいメロディを伴ったオペラ・アリアのような旋律を奏でるのです。流麗なサクソフォンのソロが聴かれる、第2幕から第3幕への"間奏曲"は、ビゼーの死後、エルネスト・ギローの手により第2組曲の第2曲"間奏曲"として再構成され、広く知れ渡りました。本日は、サクソフォンとピアノのために編み直した版を演奏いたします。
 
クロード・パスカル「ソナチネ」
 10歳でパリ音楽院に入学し、幼少時から天才の名をほしいままにしたクロード・パスカル(1921 - )。1954年にはフランス作曲界の権威ある賞"ローマ大賞"を獲得し、以降フランス楽壇において重要な位置を占めました。作曲活動と並び、ル・フィガロ誌における批評活動は有名です。
 1947年に作曲された「ソナチネ」は、パリ音楽院サクソフォン科の卒業試験のために書かれた単一楽章の作品です。当時のパリ音楽院サクソフォン科の教授、マルセル・ミュールに捧げられました。ミュールはこの曲を相当気に入っていたと見え、あるインタビューで「サクソフォンとピアノのためのレパートリーとして最も印象深い作品を挙げてください」との質問に対して、この「ソナチネ」を3曲の中の一曲として挙げています。

アンドレ・シャイユー「アンダンテとアレグロ」
 アンドレ・シャイユー(1904 - ?)は、フランスの作曲家。生涯を通してごくわずかな作品を手がけるにとどまり、現在ではトランペットのための「Morceau de concours」が時折演奏される程度です。
 「アンダンテとアレグロ」は、サクソフォンを学ぶ者がレパートリーとして取り上げることが多い小品。2つの楽章はアタッカで演奏され、演奏時間は4分程度です。"アンダンテ"は、ゆったりとしたピアノの和音連打にサクソフォンの美しいメロディが重なります。打って変わって"アレグロ"では、ピアノに導かれて現れるリズミカルな主題が印象強く、さらに最終部では上昇下降を激しく繰り返すサクソフォンの技巧的なパッセージが圧巻です。
 
ジャック・イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」
 150年以上に及ぶサクソフォンの歴史の中で、最も優れた作品の一つとされるジャック・イベール(1890-1962)の「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」です。楽器の機動性を活かした軽妙な作品で、めまぐるしく変わる曲想がサクソフォンを聴く楽しさを教えてくれます。
 イベールは20世紀前半を代表するフランスの作曲家で「寄港地(1922年)」や「祝典序曲(1940年)」といった魅力的なクラシック作品を次々と世に送り出す一方、劇伴音楽や映画音楽も手がけていました。サクソフォンのコミカルな側面をよく知っていたからこそ、このような楽しい協奏曲が完成したと言えるでしょう。1935年に完成し、当代随一の名手、シガード・ラッシャーに献呈されています。
 タイトルの「カメラ」とは「(室内楽に適した)コンパクトな空間」を表す語で、原曲は小規模のオーケストラとともに演奏されます。本日演奏は、オーケストラ版と並行して出版されているピアノ伴奏版を演奏いたします。サクソフォン、ピアノともども、非常に高度な技巧とアンサンブル能力が要求されます。
 

2013/02/07

吉田優氏リサイタルへ提供した曲目解説文

先月開かれた吉田優さんのリサイタルに提供した曲目解説文を公開。いくつかはこれまで書いた曲目解説から流用・修正した。エコシステムが構築できつつある。

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シャルル・ケクラン「"15の練習曲集作品188"より第2番」
 シャルル・ケクラン(1867 - 1950)は19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家です。その作風は幅広く、83歳で亡くなるまでに実に226もの作品を残しました。伝統的なクラシック音楽に軸足を置く一方、当時まだ新参者だったサクソフォン(1846年に発明)に対しても12に及ぶ作品を提供していることから、ケクランの懐の深さが伺えます。
 "15の練習曲集"は、アルトサクソフォンとピアノのための練習曲。"練習曲"という名を冠していますが、全編に渡り音楽的に充実した作品です。各楽章には「速いパッセージのための」「リズムのための」など、何の練習に主眼を置いた楽章であるかが明示されています。全曲中最も美しい旋律を持つ第2番は「歌心と魅力的な響きのための」楽章であり、優しく牧歌的な旋律が奏でられます。

ロドニー・ロジャース「レッスンズ・オブ・ザ・スカイ」
 アメリカの作曲家ロドニー・ロジャース(1953 - )は、アリゾナ州立大学の教授を務めながら作曲活動に邁進し、多くの作品を発表しています。
 ソプラノサクソフォンとピアノのための「レッスンズ・オブ・ザ・スカイ」は1985年に作曲されました。晴れわたる空を見上げながら、日常を忘れて物思いにふけった経験がある方もいるのではないでしょうか。作曲者は「空」を生命・開放・無限といった捉えどころのない要素について考えるキッカケを与えてくれる存在だとしており、その考えがタイトルに引用されています。透き通る青空のような爽やかな印象を残したまま、曲が過ぎ去っていきます。

野田燎「舞」
 フランスへの留学をきっかけに、1970年代から12年間にわたってヨーロッパ各地においてサクソフォン奏者/作曲家として活躍した野田燎(1948 - )。帰国後は、楽器の生演奏と患者の運動を融合した"音楽運動療法"へと興味を示し、活動の軸足を音楽から医学者へと徐々にシフトして、2004年にクラシック・サクソフォン奏者として初めて医学博士号を得たという異色の人物です。
 無伴奏アルトサクソフォンのために書かれた「舞」は1975年の所産。特殊奏法も交えながら、サクソフォンはまるで尺八のような役割を演じます。"和"の旋律を西洋楽器(=サクソフォン)で奏でるという取り合わせが、意外なほどに高い効果を上げることに驚く方もいることでしょう。

アンドレ・ウェニアン「ラプソディ」
 4年に1度開かれるイベントといえば誰しもが「オリンピック」を思い浮かべますが、サクソフォン界にとっても4年に1度、重要な催しが開かれます。ベルギー南部の田舎町・ディナン市で開かれるアドルフ・サックス国際コンクールは、世界中のサクソフォン奏者が優勝杯を切望する世界最高峰のコンクールであり、サクソフォン界のオリンピックとも例えられています。
 2010年に開かれた第5回大会で、その最終選考の覇者を決めるために作曲されたのが、このアンドレ・ウェニアン(1942 - )の「ラプソディ」です。2つの楽章から成り、技術的要素・芸術的要素の両面がバランスよく配合された名品です。第2楽章冒頭、バラードのような美しい旋律が、超絶技巧を交えながら徐々に盛り上がりゆく箇所に注目してみてください。

井上陽水「少年時代」
 「夏が過ぎ/風あざみ/誰のあこがれにさまよう…」1990年に映画「少年時代」の主題歌として作曲された井上陽水(1948 - )の名曲を知らない方はいないでしょう。リリース当初はそれほど注目されませんでしたが、ソニーのハンディカムのCMに起用されたことで爆発的ヒットを記録し、以降老若男女問わず幅広い層の音楽ファンに親しまれています。
 最も多感であった小中学生としての"少年時代"をこの地で過ごし、自身の音楽のルーツはここ宮城の地にあると語る吉田が、当時に思いを馳せながらこの美しい旋律を歌い上げます。

エンニオ・モリコーネ/真島俊夫「モリコーネ・パラダイス」
 エンニオ・モリコーネ(1928 - )はイタリアに生まれた20世紀を代表する映画音楽の巨匠の一人。モリコーネが関わった映画の挿入歌から、作曲家/アレンジャーの真島俊夫が5曲を選び再構成したのが、この「モリコーネ・パラダイス」です。
 さわやかな印象を残す「ベリンダ・メイ」(L'ALIBIより)が冒頭を華々しく飾り、さらに美しいメロディを持つ「トトとアルフレード」「成長」「メインテーマ」「愛のテーマ」(ニュー・シネマ・パラダイスより)が続けて演奏されます。

ロベルト・モリネッリ「ニューヨークからの4つの絵」
 イタリアの作曲家、ロベルト・モリネッリ(1963 -)が2001年に発表した「ニューヨークからの4つの絵」は、作曲されるやいなや瞬く間にサクソフォン界で人気を獲得しました。20分・4楽章形式・3本のサックスを使用する、エンターテイメント性にあふれた大曲です。
 第1楽章「夜明け」は、ニューヨークの街並みを照らす朝日を思わせるソプラノサックスの暖かい音楽。第2楽章「タンゴ・クラブ」は情熱的なリズムと鋭いエッジが効いたフレーズがアルトサックスによって演奏されます。第3楽章「センチメンタル・イヴニング」は、夕日に沈むマンハッタン島をバックにテナーサックスが歌うバラード。第4楽章「ブロードウェイ・ナイト」で演奏者は再びアルトサックスを手にし、"アメリカン・ドリーム"という言葉をそのまま音楽にしたような、華やかに疾走する音楽を奏でます。
 

2013/02/05

演奏会ご案内:横井彬士サクソフォンリサイタル

横井彬士さんのリサイタルをご紹介。一般大学に通いながらサクソフォンを学んでいる横井さんだが、今年度いっぱいで大学を卒業されるとのことで、その前にこれまで学んだ曲の披露の場としてリサイタルを開くとのこと。

クラシカルの作品を中心とした、アマチュアと呼ぶのが憚られるほどの、非常に挑戦的なプログラム(選曲には横井さんの師である有村純親氏の影響を感じる)。これだけボリューム感あるプログラムは、音大生ですらなかなか登攀しがたいものであろう。ブログを拝見する限り、練習も順調そうで、積極的に応援していきたいところ。もちろん伺う予定なのだが、実はきちんと横井さんのソロの演奏を聴いたことがないので、そんな意味でも楽しみだ。

ちなみに、私からはプログラム冊子用の曲目解説を提供している。

【横井彬士サクソフォンリサイタル】
出演:横井彬士(Saxophone)、松浦真沙(Pf)
日時:2013年2月22日(金) 18:30開場19:00開演
会場:大田区民ホール・アプリコ(小ホール)
料金:チケット500円(当日1,000円)
プログラム:
A.シモネッティ - マドリガル
R.ムチンスキー - ソナタ
松浦真沙 - 海の石
F.デュクリュック - ソナタ嬰ハ調
D.ベダール - ファンタジー
C.フランク - ヴァイオリン・ソナタ

チラシデザインはTSQのChisa氏。なんだか最近曲目解説がkuri、チラシデザインがChisa氏という組み合わせ、多いような…(笑)。

2013/02/04

リサイタル・ノヴァ(上野耕平氏出演)を聴いた

先の週末は、素敵な演奏をたくさん聴くことができて、本当に嬉しかったな。そして日曜の夜に、またまた素晴らしい演奏を聴けた。

【リサイタル・ノヴァ 上野耕平(サクソフォーン)】
日時:2月3日(日)午後8時20分~9時00分
出演:上野耕平(sax)、黒岩航紀(pf)
プログラム:
J.ドゥメルスマン - 幻想曲
J.S.バッハ - 組曲第3番よりアリア(G線上のアリア)
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
R.ヴィードーフ - Sax-O-Phun
R.ヴィードーフ - サキソフォビア

ということで、昨日夜のリサイタル・ノヴァを聴いた。この番組、初めて聴いたのだが面白いですね。本田聖嗣氏の名調子(あまりにも流暢な喋りに、まさか本職がピアニストだとは思わなかった)とともに楽しむ新進気鋭の音楽家の凝縮された40分、という感じで、とても充実した聴後感を得ることができる。

ドゥメルスマンから素晴らしい演奏に感銘を受けた。これまで何度か聴いた上野耕平さんの演奏の個性が、特に最近わかるようになってきたような…。音楽家として最も大切なことは、やはり1曲、ワンフレーズ、そして一音聴いた瞬間に、誰の演奏であるかがわかることである。その極地に近づきつつあるのかもしれない。「G線上のアリア」は、ちょっと今まで聴いたことのないような音色でびっくりしてしまった…。

「ファジイバード」は、管打で演奏した曲だそうだが、その演奏は上野さんにとってとても集中できた本番になったとのこと。それはぜひその場で聴いてみたかったなと思えたのだが…リサイタル・ノヴァでの演奏もすごかった!特に驚いたのは第3楽章。ここまで説得力のあるアドリブは、須川展也氏のCD「ファジイバード」と双璧をなすほどのものだったかもしれない。完全に即興だったのだろうか?

最後は最近よく取り上げるというヴィードーフを2作品。聴き手を楽しませたい!という純粋な気持ちと、技術や音楽性の高さが、高い次元で融合している様を楽しむことができた。上野さんの演奏で、ヴィードーフの他の作品も聴いてみたいなあ。

そういえば、エアチェック(ネットラジオでもエアチェックっていうのかな?)していたのだが、うっかり録音中にUSBデバイスを挿してしまい、変なアラート音が入ったのが残念。

2013/02/03

田村哲サクソフォンコンサート(茨城公演)

つくば市で自分が乗る本番(大学時代に所属していた吹奏楽団の内輪のアンサンブルコンサート)があったのだが、その待ち時間を使って田村哲のコンサートに伺った。

【田村哲サクソフォンコンサート(茨城公演)】
出演:田村哲(sax)、榮萌果(pf)
日時:2013年2月3日
会場:つくば市アルスホール
プログラム:
C.ケクラン - 15の練習曲より1,2,3
A.リード - 子供の組曲
P.クレストン - ソナタ
G.ビゼー/E.ギロー - アルルの女第2組曲より"間奏曲"
C.パスカル - ソナチネ
A.シャイユー - アンダンテとアレグロ
J.イベール - コンチェルティーノ・ダ・カメラ
Y.ギシェール - シャンソン・プル・ママン(アンコール)
E.ボザ - プルチネッラ(アンコール)

つくばエクスプレスのつくば駅周辺には大小いくつかのホールが存在する。「ノバホール」は1000席規模の大型コンサートホール、「つくばカピオ・ホール」は400〜300席の中型ホール、「アルスホール」は図書館に併設された豊かな響きの100席ほどの小ホール。自分の本番は「つくばカピオ・ホール」だったが、田村哲のリサイタルは「アルスホール」で開かれた。彼と佐藤淳一さんを招いて開いたTSQの第一回演奏会も、実はここ、アルスホールで行われたのだった。客席はほぼ満席。MCを挟みながら和やかに進行した。

何年か前にみなとみらいホールで行われたデビューリサイタルと比較して、技術・音楽性とも圧倒的に進化を遂げており、大変感銘を受けた。安定性も高く、もちろんミスらしいミスをしないことはプロフェッショナルとしての条件ではあるが、そのようなところを軽く飛び越えて、曲の魅力を伝えるところに終始した素晴らしい演奏が続いた!

選曲の妙。サクソフォンが活躍するオリジナル作品を集めてのコンサートだったが、聴いて楽しい!という曲が多くセレクトされており、初めて聴く方にもとてもアピール度が高かったのではないかな。後輩を連れて行ったのだが、その子モとても楽しんでいたようだ。今回、プログラム冊子の曲目解説を提供したが、コンサートの雰囲気からすると若干説明くさかったか。このようなコンセプトだということがわかっていれば、もっと別の書き様があったかもしれない。

ケクラン、クレストン、イベールといったところが特に印象深い。とにかく音が明るく美しいことは昔から田村哲の武器の一つであるが、そこをベースにしつつ積極的な、しかし過度にならない絶妙な表現で吹きこなしていた。では個性はどこにあるのかといえば、こういった伝統的な名曲の数々を完璧なクラシック音楽のスタイルで吹くことこそ、実はとても稀で得難いものなのではないかとも思ったのだった。榮さんのピアノは、リズムや和声の側面がかなり高いレベルで完成されている。サクソフォンとの相性もピッタリだ。強奏におけるイギリスのピアニズム的な雰囲気は、個人的に大変好みのものであり、クレストンなど楽章が進むに連れとてもわくわくしたのだった。機会があれば「ファジィバード」のピアノパートなんか聴いてみたいなー。

2013/02/02

ご案内:リサイタル・ノヴァに上野耕平氏出演

そういえば上野耕平さんからこんなお知らせをいただいていたのだった。明日の夜かー。とても楽しみ!

http://www.nhk.or.jp/classic/nova/

NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」
出演:上野耕平(サクソフォーン)、黒岩航紀(ピアノ)
日時:2013/2/3(日曜) 20:20-21:00
プログラム:
ドゥメルスマン - オリジナル主題による幻想曲
バッハ - G線上のアリア
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
ヴィードーフ - Sax-O-Phun&サキソフォビア

視聴にはやはりネットラジオらじる★らじるが便利だろう!ネット環境があるだけで、ラジオをノイズフリーで聴ける時代が来るとはねえ。金曜日午前中には再放送も予定されているとのこと。

藝大定期室内楽第39回(第一日目)

ホントに素敵なグラズノフを聴くことができた…。

【藝大定期室内楽第39回】
出演:東京藝術大学在学生
日時:2013年2月2日 14:00開演
会場:東京芸術大学奏楽堂
料金:1500円
プログラム・出演者詳細(本日聴いたぶんのみ):
・弦楽四重奏曲 ヘ長調 ◆ ラヴェル String Quartet F-dur ◇ Maurice Ravel Vn.石田 紗樹(4年) 下田 詩織(4年) Va.松村 早 紀(4年) Vc.山本 直輝(4年)
・ブラス・メナジェリー ◆ チータム A Brass Menagerie ◇ John Cheetham Trp.金丸 響子(院1年) 重井 吉彦(2年) Hr.鈴木 優(3年) Trb.鳥越 崇裕(院2年) Tuba 田村 優弥 (4年)
・サクソフォーン四重奏曲 変ロ長調 作品109 ◆ グラズノフ Saxophon Quartett B-dur, op.109 ◇ Alexandre Glazounow Sop.Sax.山﨑 憂佳(4年) Alt.Sax.中島 諒(3年) Ten.Sax.三浦 夢子(院1年) Bar.Sax.上野 耕平(2 年)

今日はもともとつくば市で練習があったのだが、練習場所取得ができなかったとのことで急遽取りやめになってしまった。よしそれならと中島さんに連絡したところ、チケットを用意してくださり、こちらの演奏会に伺うことができた(ありがとうございました)。少々到着が遅れ、また予定があって終演までいることもできなかったのだが、弦カル、ブラス、サックスの3団体を聴くことができた。

弦楽四重奏は、ラヴェル。とても良く知っている曲だが、実はライヴで聴いたのは初めてかもしれない。4年生のみで結成されたカルテットでステージ上での立ち振舞いはやや若いなという感じを残すものの、演奏姿は貫禄充分である。繊細なppの表現…特に第1楽章冒頭の上向きのボウイングによるアタックはさすが弦楽器特有の表現!もちろん管楽器で表現しようとすると難しくなってしまうわけで、最初から猛烈なコンプレックスを覚えたのだった。撥弦楽器による独特のフレージング感、テンポ感など、やはり素晴らしいものが有り、技術的にも高く大変楽しむことができた。やはりサックスばかりではなく、たまにはこういうのも聴かなければ…。

ブラスは、アメリカ・ニューメキシコ州出身のチータムという作曲家の「金管楽器の動物園」なる作品。実にテクニカルで若干現代的な響きもするが、楽章ごとに面白いほどスタイルが変化し、演奏としても作品としてもとても楽しめた。ここで驚いたのはやはり音の指向性と音量である。直管楽器ならではのパワーは、やはりサクソフォンとは一線を画するものであり、いくらサクソフォンが現代ホール向きの大音量を獲得しているとはいっても、さすがにかなわないのだな、などと思った。ミュートによる音色変化も、全体の構造に色彩感を効果的に与えるが、これも金管楽器ならではだ。そういえば、セッティング時に下手あたりに透明な譜面台のようなものが4台置かれ、アレは何だと思っていたのだが、なんとホルン用の反響板だったのだった。こんなイメージ。指向性の強さは、やはり時には不利に働くこともあるのだな…。

ということで、弦カル→ブラスを聴く中で、妙なサックス吹き的コンプレックスが芽生え(笑)そのままグラズノフを聴き始めたのだが、あの冒頭の一音目の和音が響いた瞬間に、その陰鬱な気持ちが吹き飛んだ!サクソフォンの倍音の豊かさが、アンサンブルの魅力として挙げられることがあるが、そこで感じた響きの豊かさは弦カルやブラスより、もっと人間の本能に働きかけるような魅力を湛えたものなのだ、ということを再認識。ppの表現も、相当なレベルに肉薄しつつ、響きは決して失わない。かと思えば大音量の部分では音圧に頼らないリラックスしした心地よい響きでホールを満たしていた。一人ひとりが卓越したソリストであることも、演奏を面白くしていた要因だろう。そういえば、かつてのJrサクソフォンコンクールの上位入賞者が集結したカルテットといういことになるのだな(第9回第2位:三浦夢子さん、第10回第1位:山﨑憂佳さん、第11回第1位:中島諒さん、第12回第1位:上野耕平さん)。山﨑さんと中島くんの演奏は、フェスの会場でJrコンクールの披露演奏を聴いているし、上野くんは昨年コングレスや東京芸術劇場で聴いたし…そんな演奏家たちが集結したカルテットということで、ちょっと感慨深いような。

グラズノフが終わったのち、続く用事があるため時間切れで退席したのだが、「サックスって良い楽器なんだなあ」と、とても良い気分で会場を後にすることができたのだった。

行きと帰りはもちろん上野公園を抜けていくことになるのだが、NEX-5N+SEL16F28+VCL-ECF1で何枚か面白い写真が撮れた。天気も良く、暖かく、カメラを持って歩いていると気分が晴れ晴れとしてくる。