2012/09/30

雲井雅人サックス四重奏団 第10回定期演奏会

雲井雅人サックス四重奏団の演奏会、素晴らしかった。追加公演があるとのことなので、即日記事にするかどうか迷ったのだが…ま、いいか。追加公演を楽しみにされている方はネタバレ?を含むので読まないほうがよろしいかと。

もしまだ追加公演に行こうかどうか迷っている方、ぜひ行かれるべきと思います。

(いちおう、記事はスクロールして下の方に…)

















(もうちょっと下…)



















【雲井雅人サックス四重奏団 第10回定期演奏会】
出演:雲井雅人サックス四重奏団
日時:2012年9月30日 16:00開演
会場:銀座ヤマハホール
プログラム:
J.S.バッハ/D.マスランカ - ゴルトベルク変奏曲(世界初演)
D.マスランカ - 来たるべき日への歌 Songs for the Coming Day(世界初演)
D.マスランカ - Peace(アンコール・世界初演)

今回の演奏会のチケット、かなり早い時期に完売してしまったということだ。節目となる第10回、マスランカ氏が編曲したゴルトベルク、マスランカ氏への新作委嘱、演奏会に合わせてのマスランカ氏来日など、話題性という点では国内における本年の演奏会中でもトップだったかもしれない。もちろん、事前評のみならず演奏会もすばらしいもので、感銘を受けた。

発売日当日にぴあでチケットを購入したのだが、なんと通路直後の席真ん中ブロックの一番左というとても良い席。周辺の顔ぶれがまた濃ゆいというか凄いもので、通路を挟んだ左側にはマスランカ夫妻がおり(マスランカ氏より真ん中寄りに座って良かったのだろうか)、さらに奥にはKさん、すぐ右隣には初めてお会いしたばばーるさん、ヒロエさん、上野耕平くん、しんべえさんご夫妻、すぐ後ろに小田桐さん、ちょっと右にうきがいさんという…なんとまあ。こういう同窓会的な?雰囲気は素敵ですね。

マスランカ氏編曲の「ゴルトベルク変奏曲」は、原曲より半音上げた調での演奏。原調でないことは雲井さんのFacebookの書き込みで知っていたので、どのような演奏になるかが気になっていた。冒頭、「あ、高い」と一瞬感じた違和感はすぐに頭の中で音楽の明るさへと変換され、そのまま聴き通してしまった。マスランカ氏のアレンジは(予想に反して?)実にシンプルだったが、各楽器の、いやもしかしたら雲井雅人サックス四重奏団の各奏者の特性を十分に引き出したもので、聴き応えがあった。いちいち出現する和音が美しく、初版の出版から250年を経過してなお、この曲の新たな側面を引き出すことに成功した演奏だったと思う。演奏時間は意外と長く、およそ1時間10分ほどであったか。

新作となる「来るべき日への歌」は、9つの曲から成立する組曲。各楽章には、次のタイトルが付けられている。
I. 今この時に
II. 息吹き
III. 目覚め
IV. 死者へ
V. 過去との決別
VI. 世界は新しい
VII. 愛の無いとき、僕は朝を待ちわびる
VIII. 魂はここに、自らの喜びのために
IX. 来るべき日への歌

「耽美」という言葉が似合う精神性の高い最初の7曲。第4曲は、「レシテーション・ブック」の第2楽章を思わせる息の長いメロディが印象的であり、第6曲は賛美歌を基にしたコラール変奏で「マウンテン・ロード」の終楽章を想起させるものだった。そういった冷静な感想は、8曲目で完全にリセットされる。それまでの印象を一気に覆すような激烈な楽章で「マウンテン・ロード」の第6楽章や「レシテーション・ブック」の第5楽章を想起させる。そして最終曲で賛美歌「満ち足りてあれ、穏やかであれ」を基にしたコラールが演奏される。5年前に東京文化会館で「レシテーション・ブック」の初演を聴いた時の、あの感動が蘇ってきた。

それにしても、音一つ一つの存在感が、いかに聴き手に強烈な印象を与えるのかを改めて思い知らされた。また、和音を一発決めるだけで、「この音は雲井雅人サックス四重奏団の音です」と判ってしまうグループなんて、世界を探してもめったにないだろう。

演奏会後は台風が迫っているということで早めに退散したが、なんと自宅最寄りの2駅手前で電車が停止!20分ほど待ったが動く気配がなかったので、さっさと見切りをつけて25分ほど歩いて帰ってきたのだった。幸い、雨足はそれほど強くなく、ずぶ濡れという事態は避ける事ができた。

サクゴレン&TsukubaSQジョイントコンサート終演

無事終演。いやー、楽しかった。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

【アンサンブルサクゴレン&Tsukuba Saxophone Quartetジョイントコンサート】
出演:アンサンブルサクゴレン、Tsukuba Saxophone Quartet、中島諒(賛助出演)
日時:2012年9月29日(土)14:00開演
会場:保谷こもれびホール・小ホール
料金:入場無料
プログラム:
<Tsukuba Saxophone Quartetステージ>
J.B.サンジュレ - 四重奏曲第一番より第1,4楽章
P.ゴールドシュタイン - フォールト・ラインズ
J.ノレ - トカデより第1,4楽章
<アンサンブルサクゴレンステージ>
渡辺雅也 - サクゴレンのテーマ~魔法じかけの壊れた時計~
C.ドビュッシー/中村均一 - ベルガマスク組曲より"プレリュード"
M.ルグラン/大島忠則 - キャラバンの到着
横内章次 - バラード・フォー・トルヴェール
ひょっこりひょうたん島のテーマ
<ジョイントステージ>
長生淳「八重奏曲」
NAOTO/啼鵬 - for you...(アンコール)

こもれびホールさんからお話を頂戴し、共催事業として開催した今回の演奏会。今年頭あたりにまずは会場をおさえる目処がたったのだが、続いてどのような企画にしようかなと思案し、他団体とのジョイントコンサートを思いついた。そうなると次は団体だが、ここはやはりサクソフォンつながりでお友達であり、演奏レベルが非常に高いサクゴレンさんしかないだろう!と考え、今年2月頃に共演を申し入れ、快諾いただいて実現の運びとなった。

構成は、単独ステージ前半がTsukuba Saxophone Quartetステージ、後半がアンサンブル・サクゴレンさんのステージ。休憩を挟んでジョイントステージ。まずジョイントステージ内容は、八重奏として有名な長生淳「八重奏曲」しかないだろう!ということで決まり。ただ、特に第2楽章がとても難しくて、限られた合わせ時間の中で作っていくのが大変だった。単独ステージはだいたい30分弱で内容は各団体おまかせ、としたところ、こんなに対照的なプログラムができあがったのだった。

そういえば、ホール側の提案により整理券制としたのも初めてだった。ホール共催事業ということで、こもれびホール側でなんとチラシを4000部、整理券を100部も撒いてもらい、もちろん出演者側でも120部近くの整理券を配布したため、宣伝についてはほとんど心配いらなかったことは幸いだった。むしろ、最後は整理券が足りなくなるのではないかと心配したほどだった。結果的に、141人も入ったとのことで、集客についても成功。

ひとつ大変残念だったのは、バリトンサックスのHが仕事のため出演できなくなってしまったこと。長生淳の「八重奏曲」は彼女あっての…というところもあっただけに。どうしても調整がつかないとのことで急遽出演をお願いした中島諒くんには、とても助けてもらったのだった。

Tsukuba Saxophone Quartetのステージは、開場5分前まで「フォールト・ラインズ」をバタバタとステージでさらっていたのだが、なんとか集中力を保って演奏できたのかな。「トカデ」の面白さを知ってもらう機会を持てたのは幸いだった。サクゴレンさんのステージは、MCを含めてさすがであった(2団体がとても対照的だ、というアンケート評がたくさん書かれていた)。長生淳ステージは特に第2楽章は爆速でスリリングだったが、なんとかなって、また比較的好評だったようだ。

打ち上げは練馬駅近くのネリマノダイコンヤにて、4時間半にわたって続いた。メンバーのみならず、サックス吹きが25名近く集合というちょっとしたオフ会の様相となり、とても楽しかった。

大学の吹奏楽団の後輩にあたる、Gutio___さんに描いてもらったプログラム冊子表紙のイラスト。似ているなー(笑)。気になる方はコンタクトを取られてみては。→http://about.me/Gutio

2012/09/28

オルガン伴奏で聴くマルタン「バラード」

スイスの作曲家、フランク・マルタン Frank Martinの「バラード Ballade」は、サクソフォン奏者が取り組むべきレパートリーのひとつとして有名である。名手シガード・ラッシャーに献呈されたためか、楽曲中にはフラジオ音域がふんだんに使われており、容易には登攀し難い作品としても知られている。あまりライヴで聴く機会はないが、全般を通して「渋い」響きが大半を占めるためか、難しさの割に演奏効果が上がらないためだろうか?

通常、ピアノ伴奏やオーケストラ伴奏で演奏されるが、最近、このマルタン「バラード」のオルガン伴奏版があることを知った。「Spectrum Saxofonis Vol.2(Musicaphon m56843)」Jakoba Marten-Busingというオルガン奏者の編曲によるもの。どんな経緯で編曲されたかは良く分からないが、CDとして出版されているということは何かしらの許可等は取っているのだろう。独奏は、ラッシャー派の高弟の一人として有名なHarry K. White氏。

ピアノ版やオーケストラ版では「間が持たない」印象のあったおどろおどろしい冒頭部分が、オルガンだとこのように違和感なく聴ける、ということに驚いた。ラッシャー派独特の音色は、オルガンの音色と実によく融け合い、おどろおどろしいだけではない、その奥に見える美しさをも表現する事に成功している。速い部分は、オーケストラ版に比べればやはり少々色彩感に乏しいが、それでも実に健闘している。オルガンがこのような多彩な表現が可能だ、ということに驚かされた。

2012/09/27

9/29の演奏会チラシ挟み込みについて

今週末の演奏会、現時点でホール収容数の200名ほどのお客様を見込んでいます。チラシ挟み込みを希望される方は、12:25に保谷こもれびホール・小ホールホワイエにチラシを200部~220部程度持参していらしてください。挟みこみの際には、お手数ですが手伝いをお願いいたします。

連絡なしでいらしていただいても問題ありませんが、もし事前にわかっていましたらメンバーもしくはkuri_saxo@yahoo.co.jpまであらかじめご連絡いただけると助かります。

よろしくお願いします。

2012/09/26

今週末は演奏会本番!

9/29のTsukuba Saxophone Quartet&アンサンブルサクゴレンさんのジョイントコンサートが迫っている。詳細はこちらから。おかげさまで整理券もほぼなくなり(残り5枚程度なので、もしまだの方はお早めに連絡を!)、プログラム冊子も本日到着し、あとは週末を待つばかりとなった。

今日は会社から帰ってきた後に、「トカデ」と長生淳「八重奏曲」を練習。どうしても転ぶフレーズ(一度クセがついてしまったため)が数カ所にわたって存在し、それを矯正するための練習だった。およそ1時間半。改めて、さらい初めの段階で要点を押さえておくことの重要性を思い知らされた。

2012/09/25

TSQ琉球幻想曲の動画が…

イトーミュージックのブログ「いとーみゅーじくんの ぐるぐるブログ」でTsukuba Saxophone Quartetの「琉球幻想曲」サクソフォン四重奏版の演奏動画が紹介された(と、イトーミュージックのS様より連絡があった)。「琉球幻想曲」を初めて本番に乗せたということもあり、演奏の質にはやや難ありなのだが、よろしければご覧いただきたい。

http://itomusic.blog.fc2.com/blog-entry-115.html

以前、バッハ/伊藤康英編「シャコンヌ」を楽譜販売ページでご紹介いただいたこともあった。

http://www.itomusic.com/%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97-%E6%A5%BD%E8%AD%9C-%EF%BD%83%EF%BD%84%E8%B2%A9%E5%A3%B2/%E6%A5%BD%E8%AD%9C-%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%B3/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%8C-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F/

2012/09/24

平野公崇氏のウェブサイトとBASQ楽譜

これまで幾度となく開設→閉鎖を繰り返してきた平野公崇氏のウェブサイトだが、このたび新たなサイトが開設されたようだ。

http://masatakahirano.com/

今度はドメインまで取得し、デザインもきっちり作りこんである。これまでのようなCDリリースのためだけの…という雰囲気は感じない。情報が充実していくことを祈るばかりである。

ざっとコンテンツを眺めてみた。CD情報、演奏会情報(ソロ&BASQ)、エッセイ(多事奏音がまた読める!)、プロフィール…といったところだが、「Score」が目を引く。なんと平野公崇氏編曲のBASQ用楽譜販売コーナーということで、これは嬉しい!しかもなんとバルトークの「ミクロコスモス」を取り扱う予定とのことではないか!ファーストアルバムを聴いて最も気に入った曲だったので、これは買いだなあ:-)

2012/09/23

toysparkがコミュニティFMラジオ出演

おなじみ角口圭都さんが所属するサクソフォン、パーカッション、ピアノ(作曲家)のユニット、toysparkが、コミュニティFMラジオで取り上げられるそうだ。コミュニティFMでは、20:00から(ああ、もう始まってしまった)。YouTubeのファーストミニアルバム試聴動画を聴いて気になっていたので、調度良い機会だ。

インターネット経由で聴くには、サイマルラジオから適当に放送局を見繕って再生ボタンをクリックするだけ。私は水戸のFMぱるるんを使って聴いている。

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(放送終了後追記)

いやー、面白かった。toysparkの誰かが出演したというわけではなく、1stミニアルバムを軸にプロデューサーの井出氏が語るという形式。アルバムの内容をほぼ丸々聴くことができたのだが、選曲のバランス感覚の良さ、そして演奏のフレッシュさである。サクソフォンでは演奏されすぎてやや食傷気味なバルトークを、このような新鮮な切り口で聴けるとは思わなかった。冒頭に流された「砂漠の唄」(?)も良い曲だなあ。

ちなみに、井出祐昭氏、カノンさんの二人が繰り広げたDJトークの中で、盛んに「アーティスティック」という言葉が出てきたのが面白かった(ヴィジュアルを推すのではなく、音楽性やテクニックを重視する、という文脈で使われていた)。

インターネットサイマルラジオ(FMたちかわ?)では、23:00からの放送なので、興味ある方はぜひ。
http://www.heavens-radio.com/cat/program

そういえばtoysparkには全然関係ないのだが、番組中になぜか「Eyes on Me」が流れ、FF8の記憶がフラッシュバック(わかる人にはわかる)。

ドゥラングル教授ライヴ"Next"チケット購入手続完了

何度かご紹介していた10月のドゥラングル教授のリサイタル@静岡、ようやく購入手続きを完了。

チケットぴあから購入しようとしたところ、一階席一番後ろの端しか候補席が出てこなかった。さすがにそれはあんまりだと思ってAOIに問い合わせたところ、あっさりとホール中央付近の座席を確保できた。良かった。というわけで、これからチケットお求めの方はAOIへの問い合わせをおすすめする。

IRCAMで世界初演され、WSCでも聴くことのできた「息の道」。一回聴いてしまうとさすがに個人的に新鮮さには欠けるが、名曲であることに間違いはないので再びの機会を楽しみにしている。ちなみに、AOIのページにはブーレーズ「二重の影の対話」のサクソフォン版が日本初演と書いてあるのだが、大石将紀さんや佐藤淳一さんによる演奏履歴が存在するため、さすがにこれはちょっとよろしくないのでは…。

土曜日ということなので、午前中に出発して鈍行で途中下車しつつカメラ持って写真でも撮りながら向かって、帰りは新幹線を使う、というのが良いかな。帰りも鈍行で、乗っているうちにLifeTouch Noteでブログ記事をまとめてしまう、というのもアリかなあ。

【クロード・ドラングル サクソフォン・ライブ2 "Next"】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、ホセ=ミゲル・フェルナンデス(electronics)
日時:2012年10月13日(土曜)18:00開演
会場:静岡音楽館AOI
料金:全席指定4000円、22歳以下1000円
プログラム:
P.ブーレーズ:二重の影の対話
G.グリゼー:アヌビとヌー
M.ストロッパ:...of Silence(静岡音楽館AOI委嘱作品・第3版)
L.ベリオ:セクエンツァIXb
野平一郎:《息の道》4つのサクソフォンを奏する1人のサクソフォン奏者と電子音響のための(静岡音楽館AOI委嘱作品 IRCAM制作作品 日本初演)
問い合わせ:
054-251-2200 (静岡音楽館AOI)

また、もちろんこちらのレクチャーも申し込み済み。いろいろと面白い話が聞けそうでたのしみ!

【講演会"クロード・ドラングルとIRCAM"】
講師:鈴木純明(作曲家)
日時:2012年10月13日(土曜)16:00~17:30
会場:静岡音楽館AOI・講堂(7階)
料金:無料(要事前申し込み)

2012/09/22

本日まで!9/29打ち上げ参加調査

この演奏会の打ち上げですが、メンバーとも相談し、9/29は参加自由の打ち上げにしたいと考えております。下記Facebookイベントページより参加表明いただくか、メンバーまで連絡をお願いします。本日24:00までに連絡をください。

当日17:30開始。会場はネリマノダイコンヤ@練馬駅です。よろしくお願いします。

https://www.facebook.com/events/114832895332552/

2012/09/21

安井寛絵さん、CNSMDP第三課程へ

おなじみ、安井寛絵さんが、3e cycle supérieur(第三課程)のDiplôme d'artiste interprète (DAI) de la musique contemporaineというコースに合格されたそうだ。女性初・日本人初の快挙。ちょっと調べてみたが、普通の博士課程とは少々違う。コンサル付き演奏活動支援コースのようなイメージだろうか。基本的に在籍は1年で、希望によりさらに1年延ばすことも可能(?)。

いやー、それにしても安井寛絵さんのフランスでの活躍っぷりは凄まじいものがあるな。願わくば日本で活動を続けて欲しかったところではあるが…日本のサクソフォン界は、実はとても貴重な一人を失っているのかも。ともかく、(同じ長野出身としても)今後の活躍を陰ながら応援したい。

2012/09/20

筑波大学サックスコンサート:プログラム冊子の曲目解説

先日の演奏会のプログラム冊子に提供した曲目解説を公開。「トカデ」の文体が少々ユルいのだが、意図的。イベールともなると盛り込みたい情報が多いのだが、それを選定する作業が大変だった。

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アトムハーツ第1楽章:
2009年に手がけた映画「ヴィヨンの妻」で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞、2012年には大河ドラマ「平清盛」の音楽を手がけるなど、今や日本を代表する作曲家の一人となった吉松隆(1953-)。交響曲を始めとする大規模作品ばかりが注目されがちですが、その真髄は「やりたい放題」の室内楽に凝縮されているといっても過言ではありません。中でも人気が高いのが、プログレッシブ・ロックを愛してやまない吉松が、そのエッセンスを散りばめた「アトムハーツ・クラブ・カルテット」。本日演奏する第1楽章がELP「タルカス」の影響下にあることは説明の必要もないでしょう。変拍子を駆使しながら走り抜けるように一気に聴かせてしまいます。

トカデ:
ジェローム・ノレ(1951-)は、フランスの作曲家。世界最強の現代音楽アンサンブル「Ensemble Intercontemporain」にトロンボーン奏者として籍を置く一方、作曲家として聴衆に親しみやすい作品を世に送り出し続けています。その不思議なギャップは、サクソフォン界の語り草となっているほどです。
「トカデ」は5楽章からなる組曲で、クラリネットもしくはサクソフォンの四重奏で演奏されるコンサート・ピース。本日は、決然とした印象を残す「タンゴ」と、16分音符が延々と続く「常動曲」の2曲を演奏します。

コンチェルティーノ:
150年以上に及ぶサクソフォンの歴史の中で、最も優れた作品の一つとされるジャック・イベール(1890-1962)の「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」。楽器の機動性を活かした軽妙な作品で、めまぐるしく変わる曲想がサクソフォンを聴く楽しさを教えてくれます。イベールは20世紀前半を代表するフランスの作曲家で「寄港地(1922年)」や「祝典序曲(1940年)」といった魅力的なクラシック作品を次々と世に送り出す一方、劇伴音楽や映画音楽も手がけていました。サクソフォンのコミカルな側面をよく知っていたからこそ、このような楽しい協奏曲が完成したと言えるでしょう。1935年に完成し、当代随一の名手、シガード・ラッシャーに献呈されています。
タイトルの「カメラ」とは「(室内楽に適した)コンパクトな空間」を表す語で、原曲は小規模のオーケストラとともに演奏されます。本日演奏されるのは、サクソフォン研究家ジャン=マリー・ロンデックスがオーケストラ・パートをサクソフォン合奏に編み直した版で、6種類11本のサクソフォンが独奏パートに華を添えます。

テンポについて

2011/5/22のコンサート@大田区民プラザで演奏したバッハ/伊藤康英「シャコンヌ」は、演奏時間がおよそ12分30秒。2012/7/13@WSCでの同曲の演奏時間は、およそ12分15秒。練習を重ねれば重ねるほど、慣れのためか速いテンポを選択するようになってしまったようだ。改めて両方の演奏を聴き返してみると、2011/5/22の演奏でもせわしない部分が散見され、その傾向はWSCでの演奏でさらに強くなる。WSCでの、バリトンサクソフォンソロに入るまでの部分は、特にせかせかして落ち着きがないような印象を受けた。

テンポを作ることに関して、意味なく速くなり過ぎないようなリハーサルを重ねる必要があると感じた。これは、録音して冷静に聴いてみた時の感覚を元にして修正をかけていくしかないのだろう。特に指定テンポが明記されていないようなアレンジ作品については、テンポを良く吟味しなければならないなあ(自戒を込めて)。

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「シャコンヌ」のネタつながりだが、YouTubeを眺めていたら、こんな「シャコンヌ」のアレンジを発見した。Pacific Saxophone Quartetの、1991年の演奏だそうな。「Charlton/Scudder」のアレンジと書かれているが、楽譜は現存するのだろうか。とはいえ、やはり私は伊藤康英先生のアレンジが好きだなあ。

http://www.youtube.com/watch?v=McRmrFXlMBk

2012/09/18

Arno Bornkamp plays Milhaud & Adams

ジョン・アダムズ指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ダリウス・ミヨー「世界の創造」、ストラヴィンスキー「Les noces」、ジョン・アダムズ「シティ・ノワール」。言わずもがな、ミヨーとアダムズにはサクソフォンが含まれているのだが、サクソフォンの演奏はアルノ・ボーンカンプ氏!



「世界の創造」は、もちろんバーンスタイン&デファイエの演奏がトドメだ、という考えは変わらないのだが、特にオーケストラの中における音色の美しさという点では、他の奏者の「世界の創造」録音から群を抜いているものだと思う。ある部分では「デファイエに迫るのではないか?」という響きすら聴こえてくる。

「シティ・ノワール」は、ティモシー・マカリスター氏の独奏でも有名であるが、この演奏がオランダ初演ということになるのだろう。スタンドプレイも交えた驚異的な演奏をご堪能あれ。もし仮に、「シティ・ノワール」が日本で演奏されることになった時、誰がサクソフォンを担当することになるのだろうか。

2012/09/17

筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート

ちょいちょいブログにも書いていたコンサート、昨日無事終演した。お越しいただいた方には、改めて御礼申し上げる次第。

【筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート】
日時:2012年9月16日(日) 開場15:00 開演15:30
会場:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩5分)
客演:松雪明
プログラム:
R.プラネル - バーレスク
J.S.バッハ - イタリア協奏曲
吉松隆 - アトム・ハーツ・クラブ・カルテットより第1楽章(TsukubaSQ)
J.ノレ - トカデより第1,4楽章(TsukubaSQ)
J.イベール/J.M.ロンデックス - コンチェルティーノ・ダ・カメラ(客演:松雪明)
J.シベリウス - フィンランディア
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール

大学の吹奏楽団の後輩のY氏(6つ年下で、吹奏楽団一緒に活動したことはない)が企画し、実現させてしまった演奏会。現役のカルテットあり、松雪先生の客演あり、卒業生が参加してのラージアンサンブルありと、盛りだくさんの内容。初回からこのような充実した内容の演奏会を企画できることに驚いた。

カルテットの質も高い。ラージは、指揮のF氏の指示や引っ張りが的確で、短い合わせながら最大限まで質を高められたのかなと思う。そして、やはり驚いたのは何と言ってもイベールである。ジャン=マリー・ロンデックス編の超高難易度(バックで演奏したことを経歴に書けるレベル)のアレンジを、一般大学の吹奏楽団のサクソフォンパートが演奏してしまうのだ。実によくリハーサルがこなされており、とても聴き応えのあるレベルに仕上がっていた。指揮はラージと同じくF氏で、彼の手腕によるところもあるのだろう。我々のいたころのサクソフォンパートのレベルからすると、想像すらできないほどだ。

もちろん松雪先生のソロはこれまた素晴らしいもので、紛れも無い「松雪明先生のイベール」だった。技術的、音色的(11人のサクソフォンをバックに、明るい音色で圧倒した)な完成度はもちろんのこと、にこれまで聴いたことのない、しかし非常に魅力的なフレージングがいくつも現れては消え、感動しっぱなしだった。

TsukubaSQで演奏した2曲は、お恥ずかしいことにアトムハーツの最後で少々やらかしたが、あとは何とかなった…か?「トカデ」は、特に第4楽章はドタバタしてるうちに終わってしまった感があるので、さらに精進が必要。

打ち上げはおなじみ「灯禾軒」で。19:00に始まり1:00にお開きという、久々につくば時間な飲み会を楽しんだ。松雪先生と飲む機会は初めてだったなあ。少々飲み過ぎてしまったが、とても楽しい時間を過ごすことができた。お酒が入るとついつい賑やかになってしまうという、いかにもサックスっぽいノリはここでも健在ですね。

2012/09/15

ダメ押しで明日の宣伝!

どりゃー!ダメ押しで宣伝じゃー!

秋葉原からTXに乗ってたったの45分、つくば駅近く。

大学の吹奏楽団のメンバーを中心に、カルテットを3曲、松雪明先生を独奏として迎えてJ.イベール/J.M.ロンデックス「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」、そして最後にラージアンサンブルで「フィンランディア」「カンタベリー・コラール」を演奏するとのこと。Tsukuba Saxophone Quartetもちょっとだけ出演させてもらいます。チラシのデザインは、サックスパートの現役団員のひとり、GUTIOさんの手によるもの。

【筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート】
日時:2012年9月16日(日) 開場15:00 開演15:30
会場:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩5分)
客演:松雪明
料金:入場無料
プログラム:
J.S.バッハ - イタリア協奏曲
J.イベール/J.M.ロンデックス - コンチェルティーノ・ダ・カメラ(客演:松雪明)
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール 他

2012/09/14

演奏会のご案内:角口圭都サクソフォンリサイタル

今週末日曜日の筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート、ぜひお越しください!松雪明先生のイベールとか聴けちゃいますよ。詳細はこちらから。

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おなじみ(?)角口圭都さんが、故郷の富山県で初のリサイタルを開くそうだ。前々回管打楽器コンクールでの衝撃的な第3位入賞ののち、東京藝術大学の大学院を卒業され、各種演奏を中心に据えて活動している。レコーディングからライヴまでいろいろと手を広げているようだが、そういえば最近の角口さんの演奏聴いたことないなあ。

衝撃的だったのは、管打楽器コンクールの入賞記念にフェスティバルで演奏されたティエリー・エスケシュ「テネブレの歌」。一位の上野耕平さん、二位の小澤瑠衣さんらの演奏とともに、純日本のサクソフォンがこういうレベルに到達していたのかと、感銘を受けたのだった。ピアノを弾いていた弘中佑子さんも、驚異的なアンサンブル力で驚いたっけなあ。

【角口圭都サクソフォンリサイタル】
出演:角口圭都(sax)、弘中佑子(pf)
日時:2012年11月22日(木) 開場18時30分開演19時00分
会場:富山市民プラザアンサンブルホール
料金:一般2500円、高校生以下1500円
プログラム:
C.ロバ - ワークソング
C.ドビュッシー - ラプソディ
H.トマジ - バラード
A.ヴィヴァルディ - "四季"より
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
チケット問い合わせ:
communi_keito☆yahoo.co.jp(☆を@に変えて下さい)

トマジは角口さんが東京藝術大学のサクソフォン演奏会で柏原卓之さんのアレンジを初演したのを思い出した。あの演奏も、なんだかとても感じ入ったっけ。無伴奏アルトサクソフォンの傑作、ロバの「ワークソング」を取り入れるという試みも面白い。「ファジイバード・ソナタ」など、角口さんが取り上げるというだけでなんだかワクワクしてしまう。…ということで、プログラム的にもかなり気合が入ったものだ。ご都合が合う方はぜひ。

2012/09/13

9/29演奏会の打ち上げについて

この演奏会の打ち上げですが、メンバーとも相談し、9/29は参加自由の打ち上げにしたいと考えております。下記Facebookイベントページより参加表明いただくか、kuri_saxo@yahoo.co.jpにメールを送ってください。9/22までには人数を確定させたいと思っていますので、早めの参加表明をよろしくお願いします。

https://www.facebook.com/events/114832895332552/

2012/09/12

Zzyzx Quartetの2007年~現在

今週末の筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート、ぜひお越しください!松雪明先生のイベールとか聴けちゃいますよ。詳細はこちらから。

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最近、ブログ上でZzyzx Quartetのことを2回取り上げた。
The Story of Zzyzx Quartet
Zzyzx Quartet - Zzyzx Rd

もうひとつ紹介しておきたいのがこの動画。Zzyzx Quartetの結成(2007年)から現在まで、一年ごとに重要なイベントを、簡単な解説・録音・写真により、駆け足で眺めることができる。素晴らしいキャリアを積み重ねているのだなあと改めて実感するのだが、さらに驚くべきはどの録音においても非常に質が高いことだ。2010年以外がすべてライヴ録音ということが信じられない。

2007年:David Werfelmann「Hypercolor」初演
2008年:NASAのコンクールで第2位受賞
2009年:最初の演奏旅行
2010年:ファーストアルバム「Zzyzx Rd」録音
2011年:大阪国際室内楽コンクール出場
2012年:NASAコンサートにおいてマスランカ「地獄の門」演奏、ジョン・マッキーへの新作委嘱

2012/09/11

つくば×サクソフォン

東京に来る前は、6年間つくば市に住んでいた。「研究学園都市」「秋葉原からTXで45分」「国際交流都市」…といったキーワードが即座に思い浮かぶが、今考えてみると面白い環境で過ごすことができていたのだなと、改めて思う。

閉鎖的な土地であるせいか外界の雑音がなく、何かを集中してこなすにはもってこい。手頃な娯楽が少ないため、勉強・研究以外だとサークルくらいしかやることがない。必然的に同じ人達と長期間にわたってつるんでいることになるので、なにか一つのことを醸成する環境ができやすい。とはいえちょっと頑張って東京に出れば、様々な刺激を得ることもできる。etc.

そんな土壌のためか、私の知る限りこれまでに3回、大学時代の吹奏楽団を起点としたサクソフォン・パートの隆盛が起きている。始まりはツクバ・サキソフォン・アンサンブルだろう。私たちの4~5つ上の先輩方が結成したカルテットで、自主公演の開催、ジョイントコンサート開催、独自編曲作品の演奏、ウェブページ作成等、当時、大学生のみで結成されたアンサンブルとしては画期的なほど、幅広く活動を展開していた。その活動の広さ、場数の多さは驚異的なもので、このページからその活動の濃さを参照することができる。

そのおよそ5年後、私を含む吹奏楽団のメンバーが立ち上げたカルテットは、大学の吹奏楽団が主催するアンサンブル・コンサートでツクバ・サキソフォン・アンサンブルの演奏の一端に触れた。そこで「アトムハーツ・クラブ・カルテット」を聴いて受けた衝撃は、間違いなくカルテットとしての活動を見直すきっかけとなり、そのおかげで現在まで演奏を続けていられるのだと思っている。当時MuseSQなどと名乗っている時期もあったが、協会のコンクールに参加したことをきっかけにTsukuba Saxophone Quartetと名乗り(これもツクバ・サキソフォン・アンサンブルの影響を受けていることは明らか)、自主公演の開催などを行った。ちなみに「アトムハーツ・クラブ・カルテット」に挑戦したことは、ツクバ・サキソフォン・アンサンブルから私たちが受けた影響に対する、答えというか落とし前の付け方だったのかもしれない。

それからさらに5年、なんだか後輩の間に再び不穏な動き(笑)がと思ったら、あれよあれよという間に自主公演の開催が決まっていた。つくばのサックスには「5年」という何かバイオリズムのようなものがあるのかもしれない。大学の吹奏楽団のメンバーを中心に、カルテットを3曲、松雪明先生を独奏として迎えてJ.イベール/J.M.ロンデックス「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」、そして最後にラージアンサンブルで「フィンランディア」「カンタベリー・コラール」を演奏するとのこと。Tsukuba Saxophone Quartetもちょっとだけ出演させてもらいます。

チラシのデザインは、サックスパートの現役団員のひとり、GUTIOさんの手によるもの。

【筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート】
日時:2012年9月16日(日) 開場15:00 開演15:30
会場:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩5分)
客演:松雪明
料金:入場無料
プログラム:
J.S.バッハ - イタリア協奏曲
J.イベール/J.M.ロンデックス - コンチェルティーノ・ダ・カメラ(客演:松雪明)
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール 他

2012/09/10

Londeix Guide To The Saxophone Repertoire, 1844-2012買いました

今週末の筑波大学サクソフォンアンサンブルコンサート、ぜひお越しください!松雪明先生のイベールとか聴けちゃいますよ。詳細はこちらから。

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「Londeix Guide To The Saxophone Repertoire, 1844-2012」を購入。Facebookにはだいぶ前に書いたのだが、ブログに書くのを忘れていた。

後ろに見えるのは2003年版。収録数は18000作品→29000作品に大幅増加。ページ総数は646ページから770ページに増加し、かつフォントが小さくなっている。以前も書いた通り、とにかくサクソフォンのレパートリー開拓の気概がある方、サクソフォンを研究する方にとっては、必携の書である。リファレンスなので、買って隅から隅まで読むようなものではないのだが、とにかく何かあった時にすぐ引けるという安心感がある。私も、自宅のPCデスクの一番近くに置いてあるのはこの本だ(特に曲目解説の執筆を依頼されたときは手放せない)。

それにしても、この膨大な目録をどうやって情報収集しているんだろ…。メール送って聞いてみようかな。

Amazon.frで取り扱いしているのを見つけた。この記事を書いている時点で1冊在庫有り。欲しい方はお早めに。

2012/09/09

Perry Goldstein "Fault Lines"

サクソフォンのために高難易度な作品を次々と提供しているアメリカの作曲家、Perry Goldstein ペリー・ゴールドシュタイン氏。その作品リストは以下。未だ聴いたことのないものばかりだが、きっとどれも魅力的なのだろうという、作品スタイルのブレなさにこそ魅力があると思う。

About Face (ASax, StrQ)
Against the Grain! (SaxQ)
Blow! (SaxQ)
The Abundant Air (SaxQ, Band)
Filaments of Yesterday (SaxQ)
Fault Lines (ASax, Pf) (SaxQ)
Flex (SaxQ)
Heaven (ASax, Pf)
In Winter Quarters (SaxQ)
Kaleidoscope (ASax, Pf, Cl, Bsn)
Lessons of the Master (SaxQ)
Motherless Child Variations (SaxQ)
Noir (ASax, Va)
Out of Bounds (SaxQ)
Quintet (ASax, StrQ)
Sonata (SSax, Pf)

「Fault Lines」は、アルトサクソフォンとピアノのために書かれた4分程度の作品。1998年、15周年を迎えたアルノ・ボーンカンプ&イヴォ・ヤンセン両氏のデュオに献呈されている。明らかにブルースの影響を受けた和声、その上にビバップの旋律線・リズム遊びが乗る。後年、アウレリア四重奏団のためにサクソフォン四重奏版が制作された。

昨日の田村兄弟の門下生発表会では、このサクソフォン四重奏版をTsukuba Saxophone Quartetのメンバーで演奏した。おそらく日本初演?ではないかな。各パート非常に難易度が高く(特にアルトは難しい)、個人的にもどうしようもない自分のリズム音痴っぷりに苦しめられたが、なんとか一度ステージに乗せることができて良かった。ただし、指定よりもテンポはかなり控えめ。次に演奏するときは、四分音符=120くらいまで上げられれば良いのだが。

田村真寛・田村哲門下生発表会

【田村真寛・田村哲門下生発表会】
出演:田村真寛・田村哲門下生(sax)
日時:2012年9月8日(土)13:30開演
会場:杉田劇場
プログラム:
E.ボザ - アリア
P.クレストン - ソナタより
J.イベール - コンチェルティーノより
P.モーリス - プロヴァンスの風景より
P.ゴールドシュタイン - フォールト・ラインズ(Tsukuba Saxophone Quartet)
G.ヘンデル - ヴァイオリン・ソナタ第6版
A.シャイユー - アンダンテとアレグロ
C.ドビュッシー - ラプソディ
J.バーンズ - アリオーソとプレスト
F.デクリュック - ソナタ
A.ピアソラ - アディオス・ノニーノ
A.デザンクロ - PCF
久石譲 - もののけ姫&坂田晃一 - さよならの夏
E.デニゾフ - ソナタ
E.エルガー - 愛のあいさつ
D.ミヨー - スカラムーシュ
H.トマジ - コンチェルトより
杉本竜一 - ビリーブ&R.ロジャース - すべての山に登れ
A.グラズノフ - コンチェルト
P.モーリス - プロヴァンスの風景
A.デザンクロ - PCF
H.エックレス - ヴァイオリンソナタ
R.シューマン - アダージョとアレグロ
R.プラネル - プレリュードとサルタレロ
P.モーリス - プロヴァンスの風景
フェルリング - 48のエチュードより17,18
P.クレストン - コンチェルトより
G.フォーレ - エレジー
P.クレストン - ソナタ
星出尚志 - チェイサー&西村友 - スターダスト・メヌエット(田村哲,asax&田村真寛,tsax&榮萌果)

おなじみサクソフォンの田村兄弟の門下生の合同発表会。合同での試みは初だそうだ。今回は、田村哲から声を掛けてもらったことがキッカケとなり、Tsukuba Saxophone Quartetとして1曲だけ演奏させてもらった。

アマチュアの愛好家から、田村真寛氏が教えている洗足学園音楽大学の学生、神奈川県立弥栄高等学校の生徒、一般大学の学生、音楽大学受験を準備していると思われる高校生、中学生、小学生…等々、それぞれが思い思いに演奏。13:30開演、19:30終演という大変な長丁場となった。大抵こういう門下生発表会では、年功序列というか、経験が浅い方→音大生などサクソフォンを専攻している方という順番で演奏が進むものだが、なんと今回は順不同!それがとても聴く側にとっては楽しかった。

どの演奏も魅力的であり、本当はひとつひとつについて感想を書きたいくらいなのだが、さすがに数が多く断念(^^;

驚いたのは、2008年につくば市でTsukuba Saxophone Quartetとして演奏会を開いた時に見に来てくれていた地元の高校生(いまや大学生)が出演・その友達が来場しており、再会することができたのだった。あれから4年を経ているわけで、ふといろいろを思い返してしまうのだった。

2012/09/08

Zzyzx Quartet - Zzyzx Rd

WSCのリコーブースで購入したCD。先日ブログでも紹介した、Zzyzx Quartetのファーストアルバム。この団体の成立についてはそのブログ記事をご覧頂くとして、ここではCDについて詳細にレビューしたい。

非常に意欲的なCDだ。スタンダードかつおなじみとなっている高難易度の作品が3つ(エスケシュ、ゴトコフスキー、スウェルツ)、そしてZzyzx Quartetのために書かれたスペシャル・ピースが2つ。「Zzyzxらしさ」を最大限に表したアルバムだといえるだろう。もちろん、Zzyzx Quartetの面白さはこの範疇に収まるものではないのだけれど…懐の深さを知りたい方は、YouTubeの彼らのアカウント(StacyがアップしてたりStephenがアップしてたり)から各種動画を辿っていただきたい。

Thierry Escaich - Tango Virtuoso
Ida Gotkovsky - Quatuor
Piet Swerts - Klonos
John Leszczynski - They Might be Gods
Erik Norman - Suite

まず目を引くのはスウェルツの「クロノス」だろう。ちょっとサクソフォンをかじった事のある方なら「えっ」と思われる向きもいらっしゃるかもしれないが、実はこれ「クロノス」のサクソフォン四重奏版なのだ。アルトサクソフォンとピアノの版は有名だが、スウェルツ氏の元への四重奏編曲のリクエストが多かったらしく、2008年に出版されたとのこと。作曲家自身の編曲ということもあってか意外なほどにしっくりくるものとなっており、日本でも流行りそう。

Zzyzx Quartetのために書かれたレジンスキー(と読むのか?)の作品では、シリアスな響きの中に高い精神性や時折のシニカルさが織り込まれ…そのギャップが面白い。難易度は高く、生半可な気持ちでは登攀することもままならない作品ではあろう…。ノーマンの作品は、現代風のリズムを効果的に使った作品で、こちらも非常に高難易度。レジンスキーの作品よりはまだ取り組みやすいだろうか。

Zzyzx Quartetの演奏は、実に見事である。完全なテクニックを持ちながらすでにベテランの風格さえ漂わせ、あまりにスイスイ進んでいってしまうので、逆になんだか物足りないほどだ:-)どんな箇所においてもカルテットが持つ能力の80%程度で切り抜けていく、というイメージを受けた。それだけ完成度が高い、ということでもある。また、強奏においても決してがなりたてることはない。もしかしたら録音のせいもあるかもしれない。

ゴトコフスキー作品やレジンスキー作品での弱音の表現は一聴に値する。どういったレベルでのコントロールがなされているのか、想像も付かないほどだ。ある意味では、フランスの最新鋭のカルテットにも匹敵する能力ではないだろうか。ぜひライヴで聴いてみたいなあ(WSCの時はTsukuba Saxophone Quartetの2,3団体前に演奏していたため、リハーサルで聴けなかった)。

ちなみに、スペシャルゲストとしてゴトコフスキーの「四重奏曲」の第5楽章:カンティレーナにオーティス・マーフィ氏が参加、あの美しい旋律を吹いている。マーフィ氏ファンにとっては見逃せないのではないだろうか。

2012/09/06

聴き返してみて…

ポラン氏のことについて荒木浩一氏に聞いてからというもの、なんとなくデファイエ四重奏団の演奏を聴き返してみたり、ポラン氏が独奏として参加したヴィラ=ロボス「神秘的六重奏曲」の録音を聴き返してみたりしている。WSC参加以来、現代のサクソフォン録音に偏って聴いていたせいか、逆に新鮮に感じる。「ただここに帰ってくれば良い」という安心感は、デファイエ氏や、デファイエ四重奏団を聴いた時の安心感でしょう(ミュールはちょっと違うかな、と思う)。

何か特別なことをやっているわけではなく、各々が自分の音楽を奏でているだけなのに(そしてアンサンブルはいがいと緩いのに)このように魅力的に聴こえるのはなぜだろうか。奇跡のようなアンサンブルだな。自分が生きているうちに、こんなアンサンブルを生で聴くことはできるのだろうか。

ポラン氏の写真

先日、2011年に開かれたアンリ=ルネ・ポラン氏90歳記念コンサートの情報を掲載した。その時の写真を荒木浩一氏から送ってもらったので、ご紹介したい。

ポラン氏、ポラン氏の奥様、荒木浩一の3人(カメラはOlympus XZ-1)。ご夫婦ともに御年90とのことだが、特にポラン氏の精悍な表情に感銘を受ける。サクソフォンの歴史が詰まっているような、非常に貴重なショットだと思う。

2012/09/04

Sergey Kolesov来日@香川県

mckenさんのFacebookページで知ったのだが、なんとセルゲイ・コレゾフ氏来日とのこと。しかも香川県。まさかこのタイミングとは、驚いた…。おまけにこの日はダッパーサクセーバーズさんの演奏会だ!

【第6回観音寺国際音楽フェスティバル】
日時:2012年10月28日 13:00
会場:観音寺市民会館大ホール
定員1,300名様(鑑賞希望者は応募申込必要:下記参照)
詳細:http://www.city.kanonji.kagawa.jp/info/k12/120719-1.html

関東にも来ないかなあ。

2012/09/03

David Maslanka - Heaven to clear when day did close

ディヴィッド・マスランカ氏のファンならば、マスランカ氏が手がけた次のサクソフォン作品を挙げることができるだろう:「アルトサクソフォンのためのソナタ」「ソプラノサクソフォンのためのソナタ」「マウンテン・ロード」「レシテーション・ブック」「地獄の門」「サクソフォン協奏曲」「ソングブック」。

私は、てっきりこれで全部かと思っていたのだが、この他にテナーサクソフォンと弦楽四重奏のために書かれた作品があることをご存知だろうか。「Heaven to clear when day did close」という不思議なタイトルが付いた作品で、上記リスト中の作品に先がけ、1981年に完成している。20分以上及ぶ大曲で、内容も非常に充実しているというのに、なぜ知らなかったのだろう。

曲はセクションごとに明確なスタイルを取る。シリアス・ミュージックのような部分から、ディキシーのような部分、マスランカ氏らしい地獄の蓋を開けたような激しい部分、ロックのような部分など、驚くほど多面的な要素が詰め込まれている。ところどころ近年のマスランカ氏らしい響きも散見される。演奏を行うにはクオリティの高い弦楽四重奏団を調達しなければならない、という障壁はあるが、誰か演奏すれば人気が出そう。Barney Childsのピアノソロ作品に対するオマージュとして書かれ、副題として「Fantasy on a theme of Barney Childs」と付けられている。

Bill Dobbins「ソナタ」のレコーディングで有名な、Ramon Rickerの録音が存在する。「EASTMAN AMERICAN MUSIC SERIES Vol.2(Albany TROY236)」という、イーストマン音楽院の企画物CD。共演者は、やはりイーストマン音楽院の学生なのだろう…若々しく、迸るような熱演である。指揮者がいる、というところも驚いたが、レコーディングセッションならではだろうか。

Eastman Musica Nova Ensemble (Bel Canto String Quartet):
James Lyon, violin
Clay Purdy, violin
Nancy Holland, viola
Carol Purdy, cello
Sydney Hodkinson, conductor

H.R.ポラン氏90歳記念コンサートの内容

先日、九州のサクソフォン奏者荒木浩一様よりメールを頂戴した。デファイエの関連記事を検索して辿りついて下さったとのことで、突然のことで驚いたが大変嬉しかった。

メールを何通かやり取りする中で、昨年荒木様がアンリ=ルネ・ポラン Henri Rene Pollin氏の満90歳記念演奏会で演奏された、ということを伺った。興味があったので、その内容を教えていただいたのだが、下記の通りである。非常に面白い。St.Martin du Vivierとは、パリからイギリス海峡の方向を向いた途中にある市である。

それにしてもポラン氏、もう90歳だとは。デファイエ氏は80歳で亡くなって、それがもう10年前の事だから、きちんと考えればなるほどと思えてしまうが…。

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2011年11月5日 18:00開演
Salle "Le Vivier", St.Martin du Vivier市

Koichi ARAKI (saxophone) Christine SIEFFERT (piano)
M.Dautremer - Tango et Tarentelle
C.Debussy - Rapsodie Mauresque

Frederic SCHMIDELY (saxophone tenor: jazz) piano, bass, drums

ロビーにてH.R.ポラン、ディファイエ四重奏団の資料展
コンサート終了後にパーティー(懇親会)

主催:
D.Delapierre(発起人:ルーアン音楽院サクソフォン科卒業生代表、St.Martin du vivier音楽院教授)
フランス・ノルマンディー・サクソフォン協会
St.Martin du Vivier市

2012/09/02

WSC最終日の動画

最終日の午前、次回コングレスを決める会議の動画。一つ目の注目は、冒頭に今回WSCの実行委員の中枢メンバー(Scottish Saxophone Ensemble)が演奏するカルテットである。2'00"くらいから開始。まさにお見事!の一言。そういえば、WSCXVI Images (final version)にも使われていた。

1'04'00"から始まるフィリップ・ガイス教授のコングレス誘致のためのプレゼンテーションは、どういった内容でコングレスを引き込むプレゼンを行えば良いのか、という指針になるかもしれない(いつか日本に誘致の際は…)。



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Lap of Honour "Olympian Saxophones"という、最終日の午後に開かれた演奏会の様子。Barry Cockcroft、RNCM Saxophone Orchestra、SONSAX、PedroSaxo、Strasbourg Conservatoire Saxophone Ensembleなど、WSC参加の注目団体が一堂に介したハイライト的なコンサート。とても盛り上がっている様子で、この場にいることができなかったのが非常に悔やまれるところだ。とても面白いので、2時間のコンサートを聴くつもりでぜひご覧頂きたい。ちなみに、最初のQueensland Conservatorium Saxophone Orchestraは、なんと「ロッキーのテーマ」を演奏。アンサンブルも大味でちょいとズッコケてしまったが、ご愛敬(^^;

SONSAXのメンバーの存在感・ステージングの手法は、さすがに群を抜いている。SONSAXの面々は動画最後のStrasbourg音楽院のサックスオケにも参加しているのだが、Strasbourg単独の演奏とは全く違って聴こえるものだ。ソプラノにSue Mckenzieが入っているのも大きいかな(ソロがファンキー)。

2012/09/01

ご案内:Four Seasons Saxophone Quartetコンサート

9/29のサクゴレン&TSQ演奏会、ぜひお越しください!詳細・整理券希望の連絡はこちらから。なにげにそろそろ手持ちの半分くらいは整理券が捌けそうです。

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おなじみ、角口圭都さんよりご案内いただいた演奏会。巷では「CGカルテット(笑)」という名前でも話題となっている、Four Seasons Saxophone Quartetの演奏会をご紹介する。

株式会社MUSICIAN所属のカルテットで、オリジナルのバリトン奏者は飯塚理乃さんとのことだが、石山佳奈さんが参加して9/4に演奏会を開催するとのこと。角口さんや石山さんの素晴らしい実力はもう十分すぎるほど存じているが、その2人、プラス演奏を拝聴したことのない2人、しかもこの華やかさ!ということで、いったいどんな演奏になるのだろうか。演奏曲目は、サクソフォンを聴いたことのない方にも存分におすすめできるものである。これを角口さんや石山さんのサックスで聴く、というのも贅沢ではないか。

【Four Seasons サクソフォンカルテット コンサート】
出演:サクソフォンカルテット"Four Seasons" 角口圭都、深澤智美、横山美優、石山佳奈
日時:2012年9月4日 19:00開演
会場:東京都民協会(下北沢駅)
料金:一般3000円、高校生以下1500円
プログラム:
W.A.モーツァルト - 「フィガロの結婚」序曲
A.ピアソラ - エスクヮロ
R.ロジャース - 私のお気に入り
葉加瀬太郎 - 情熱大陸 他
問い合わせ:
0364502013(株式会社Musician)
contact@musician.co.jp(株式会社Musician)

私はこの日、あいにく仕事が20:00まで埋まっており、伺うことができない、興味ある方はぜひ。